アメリカ国家偵察局(NRO)が米宇宙スタートアップ2社と新たな契約を発表【週刊宇宙ビジネスニュース06/03〜06/10】
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NROが民間衛星画像
アメリカ国家偵察局(National Reconnaissance Office:以下、NRO)が安全保障に民間の衛星画像を利用できるかについて研究するための契約の契約先として、BlackSky GlobalとMaxar Technologies、Planetの3社を選定したと発表しました。
Maxar Technologiesは傘下にDigital Globeという大手の衛星画像販売会社を抱えており、民間の衛星では最も解像度の良い衛星World View-3,4(World View-4は2019年初めに故障)を保有しています。
一方、BlackSky GlobalとPlanetは”NEW SPACE”と呼ばれる新たな動きの中で誕生したベンチャー企業で、両社とも数多くの衛星を投入することで従来よりも撮影の機会を増やすことを狙っています。
今回は一般の写真と同様の光学画像についての契約でしたが、NROはレーダー画像についても興味を示しており、今後同様の動きがあるものと考えられます。
また、今週の別のニュースとしてBlackSky GlobalがHawkEye 360と協力していくことが発表されました。HawkEye 360は地上で発信されている電波を観測する衛星群を有しているスタートアップです。
BlackSky Globalの衛星画像とHawkEye 360の電波の観測結果を組み合わせることで、例えば違法漁業の監視や、制裁違反の監視、人々のトラッキングなどに役立てることができると発表しています。
アメリカでは安全保障の分野で積極的に民間の宇宙サービスを取り入れようという政策が進んでいます。
上記の例のように、実際に使えるかどうかに予算をつけ、かつ使えることが確認できれば積極的に採用していく姿勢を政府が明確にすることによって、宇宙系のスタートアップが民間からの資金も獲得することに成功している一面があります。
さらに、政府が民間企業の参画を積極的に求めているのは安全保障の分野だけではありません。
今週、NASAは国際宇宙ステーションの民間利用を進める方針を発表しました。ステーションを引き継ぐための民間による設備の建設も同時に進める計画のようです。
ステーションで得られた知財の所在などについてまだ課題は残っているとの指摘もあり、実現に向けては時間がかかる見通しです。
また、日本の宇宙政策に目を向けると、上図のようにビジネスのフェーズ毎に様々な支援施策が設けられています。
成長段階で書かれている「政府系機関におけるリスクマネー供給」については、2018年3月に安倍首相が今後5年間で1,000億円規模の投資を行うことを発表していますが、その後表立った動きはまだ見えていません。
このリスクマネー供給だけを切り取っても、単なるバラマキで終わらない、民間の資金を呼び込み、宇宙ビジネスの持続性への道筋を見つけるための戦略的な投資が求められています。
今週の週刊宇宙ビジネスニュース
Virgin Orbit社 英国と日本で新たにサービス拡大へ【週刊宇宙ビジネスニュース06/03〜06/10】
参考
NRO awards study contracts to BlackSky, Maxar and Planet
Space station will open to tourists, NASA says
NASA releases ISS commercialization plan