アルテミス計画における着陸船開発を担う3社が発表【週刊宇宙ビジネスニュース 4/27〜5/3】
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アルテミス計画の着陸船開発に3社が採択
NASAがアルテミス計画において月面に人類を着陸させるシステム(HLS)を開発する企業3社を採択したことを、5月1日に発表しました。
今回選ばれたのは、以下の3社です。
Blue Origin, LLC (National Team)
1社目は、AmazonのCEOであるJeff Bezos氏が創業したBlue Origin, LLCです。Blue Originを主契約者として、Lockheed Martin・Northrop Grumman・Draperという大手宇宙企業が名を連なる連合チームとなっています。彼らが手がけるのは、Integrated Lander Vehicle (ILV)という3段式の着陸船です。
着陸船ILVは3つのモジュールから構成され、各企業が以下のように担当する予定です。
- ・Blue Originは、自社が開発する液体酸素/液体水素を用いるBE-7エンジンを用いた下降機を担当
- ・Lockheed Martinは、Orion宇宙船のシステムを利用した上昇機の開発を担当
- ・Northrop Grummanは、ISSでの補給実績があるCygnus貨物モジュールをもとにしたトランスファーモジュール及び燃料補給システムの開発を担当
- ・Draperは、誘導・ナビゲーション・制御といった3つのモジュールで使用するアビオニクスシステムを担当
着陸船ILVを輸送する方法は、輸送船オリオンかゲートウェイ(※)のどちらかにドッキングしてクルーの到着を待つことができる計画となっています。さらに、一つ一つのモジュールを単体で商業用ロケットで打ち上げることも、3つのモジュールを統合した状態でNASAの大型ロケットSLSで打ち上げることも可能とのことです。商業用ロケットで打ち上げる際は、Blue OriginのNew GlennかULAのVulcanで打ち上げることを想定しているようです。
宙畑メモ
「ゲートウェイ」とは、ISSの次のステップとして開発が進められている月を回る有人の宇宙ステーションです。正式名称は、「月軌道プラットフォーム・ゲートウェイ(Lunar Orbital Platform-Gateway)」です。
6つのモジュールに分割して打ち上げ、月を回る軌道でドッキングして建設する計画となっています。
Dynetics
2社目はDyneticsです。Dyneticsは、大規模なコンポーネントを担当する企業から小規模なコンポーネントを担当する企業まで合計25社で構成されるチームを結成して、Dynetics Human Landing System(DHLS)を手がけます。DHLSは1段式の着陸船で、地球から打ち上げる段階で、宇宙船と着陸機が一体になっている予定です。
Dyneticsの着陸システムのコンセプトは、1つのモジュールで着陸と離陸の両方を可能にすることです。複数の推進システムを搭載させ、着陸と離陸など、違うミッションに合わせてエンジンに燃料を供給するというチャレンジングな試みです。
また、宇宙飛行士が乗り込むクルーキャビンが地表に近い位置にあるため、宇宙飛行士の入退出などが容易であること、DHLSはロケットに依存しない着陸船で、多くの商業用ロケットでの打ち上げが可能であることが特徴としてあげられています。
SpaceX
そして3社目は、SpaceXです。SpaceXの手がける着陸船は宙畑でも何度も取り上げているStarshipです。
ただし今回HLSとして提案されたStarshipは、これまでに公表されていたStarshipとは異なり、翼や耐熱シールドを省略した月着陸用の機体となるようです。
広いキャビンや貨物搭載量の多さ、エアロックを2つ搭載できる点などが、特長としてあげられています。
地球から打ち上げる際は、まず月面までの燃料を搭載した燃料貯蔵用のStarshipを事前に軌道投入し、月面着陸用のStarshipを地球から打ち上げ、軌道上で燃料補給したのち、月面に向かうオペレーションとなっています。
また、SpaecXはアルテミス計画と並行して、自社で手がけるSuper Heavyで2022年までに、月面着陸のデモミッションに取り組む予定です。このミッションの乗客は、前ZOZO取締役社長の前澤友作氏の予定です。
今回のHLSは、次世代宇宙探査技術パートナーシップ:Next Space Technologies for Exploration Partnerships (NextSTEP-2) の下で授与される契約です。契約総額は、9億6,700万ドルとなっています。
採択された3社は、2021年2月までの10ヶ月間で着陸機のコンセプトを練り上げます。その過程の中で、NASAはどの企業に初期の実証ミッションを実施させるかを評価します。その後、継続して着陸船システムを担う企業を選定し、2024年までに月面に男女の宇宙飛行士を運ぶミッションに挑戦する予定です。
NASAから多額の予算が投下され、民間企業とともに進めていくアルテミス計画に、引き続き注目です。
Aerojet RocketdyneがSLSのエンジン開発の契約を獲得
引き続き、アルテミス計画に関するニュースです。
NASAは5月2日に、Aerojet Rocketdyneとアルテミス計画で重要な役割を担う大型ロケット(SLS)に搭載するRS-25ロケットエンジン18基の追加製造契約を交わしたことを発表しました。
18基のエンジンを製造する今回の追加契約は、総額17.9億ドルとのことです。これにより2015年11月当初の契約から大幅に増加し、契約総額は約35億ドルとなりました。契約の履行期間の2029年9月30日まで、合計24基のエンジンを開発し、6機ものSLSをサポートする予定です。(SLS一機につき4基のRS-25エンジンが搭載されます。)
SLSとオリオン宇宙船は、NASAの深宇宙探査の中核です。3段階によって計画されてるアルテミス計画のうち、1段階目のアルテミス1で使用されるSLSのエンジンは、現在ミシシッピ州にあるNASA Stennis宇宙センターにあり、本番と同じ状態でエンジンを燃焼させるGreen Run testが実施中です。この試験が終了すると、NASAのKennedy宇宙センターに運搬され、アルテミス1のためにSLSの他の部品と統合されます。
アポロ計画で使用された世界最大級のロケット、”サターンⅤ”と同程度の打ち上げ能力を有する大型ロケットSLS。今後の開発に注目です。
インフォステラが新規の資金調達を実施
周回衛星向け地上局共有プラットフォーム”StellarStation”の開発を手がける株式会社インフォステラが、資金調達の実施を発表しました。
今回の資金調達ラウンドには、既存投資家であるAirbus Ventures・Sony Innovation Fundに加え、新規投資家として大和エナジー・インフラ株式会社・三菱UFJキャピタル株式会社・三菱UFJリース株式会社が参加しました。調達額は、総額で3.8億円と発表されています。インフォステラが公開している資金調達は今回を含めて合計4回で、累計調達額は12.4億円となりました。
今回の資金調達は、主にビジネス開発やセールスの採用、及びマネジメント層の強化を目的としているとのことです。
上記は、インフォステラが提供するStellarStationの様子です。衛星からのダウンリンクをXバンド、アップリンクをSバンドとして、使用可能なアンテナが表示されています。既存アンテナの稼働・非稼働時間の共有が分かりやすいシンプルなwebサイトとなっています。
大和エナジー・インフラ株式会社 投資事業第二部長の田之上 拓也氏は、
インフォステラは宇宙産業の中でもユニークかつ競争力のあるビジネスモデルを展開しており、すでに優れたGUI及びAPIを組み込んだ周回衛星向けアンテナプラットフォームを完成させています。長期的に増加が見込まれる周回衛星と地上局とをつなぐプラットフォームをより一層強固なものとし、また、多様化する地上局、衛星事業者側の需要にも応えられるこたえられるよう、密に支援・連携を進めていければと思います。
とコメントを発表しています。
日本を代表するシードアクセラレーターである500 Startups Japanからシードラウンドで資金調達を実施し、 Airbus Venturesという海外の投資家を迎え、今回は日本で金融ソリューションを提供している事業会社を投資家に迎えたインフォステラ。日本の宇宙ベンチャーの中でも、特には海外の顧客とのやり取りを精力的に行っているインフォステラですので、今後はヨーロッパやアジアの衛星運用事業者との取り組みをより強化していくのではないでしょうか。
周回衛星向けGround Segment as a Service(GSaaS)プロバイダーとして業界をリードしていくインフォステラに引き続き注目です。
今週の週刊宇宙ニュース
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参考記事
NASA Selects Blue Origin, Dynetics, SpaceX for Artemis Human Landers
NASA Names Companies to Develop Human Landers for Artemis Moon Missions
NASA Commits to Future Artemis Missions with More SLS Rocket Engines