ニュース 2020/6/22

英国独自の測位システムにOneWeb衛星の利用を検討か【週刊宇宙ビジネスニュース 6/15〜6/21】

一週間に起きた国内外の宇宙ビジネスニュースを厳選してお届けする連載「週刊宇宙ビジネスニュース」は毎週月曜日更新！

英国独自の測位システムにOneWeb衛星の利用を検討

英国はEU離脱に伴い、2018年12月にガリレオ計画からも離脱し、およそ40億ポンド（約5,000億円）で独自の衛星測位システムを構築する方針を発表していました。その続報として今年6月20日に、システム構築予算の縮小を検討していることをファイナンシャル・タイムズが報じました

宙畑メモ
ガリレオは欧州の全地球測位衛星システム(GNSS)で、欧州委員会および欧州宇宙機関(ESA)、欧州全地球航法システム監督庁(GSA)によって構築や運用が進められています。ガリレオの開発にあたり、英国はEU加盟国として12億ポンド（約1,700億円）を拠出してきました。
出典：ガリレオとは？

ファイナンシャル・タイムズによると、予算縮小後の計画として、3月に破産申請をした衛星通信事業を行うOneWeb（ワンウェブ）の衛星を利用することが検討されているようです。英国による入札が決定した場合、OneWebは衛星の生産拠点を米国・フロリダから英国に移すことを約束しています。また、同社のコンステレーションの構築には、少なくとも15億ドル（約1,600億円）を追加で調達する必要があると見積もられています。

英国のガリレオ計画からの離脱は、政策が宇宙産業に大きく影響したケースの一つ。軍事や安全保障にも関わる、測位衛星システムプロジェクトに参加する国につきまとうリスクだと言えるでしょう。

また、OneWebの衛星の周波数はKaとKuバンドであるのに対し、測位システムでは一般的にはLおよびSバンドが使用されることが多く、ほかに検討されている案と比較しその実現難易度が論点となりそうです。

米国企業が英国のスペースポートからの打ち上げが可能に

6月17日、米国企業が英国内のスペースポートからの打ち上げを可能とする新たな協定を締結したことを英国政府が発表しました。

今回の協定締結により米国企業は、英国のスペースポートの建設や運用に携われるようになります。協定の目的には、スペースポートの顧客を獲得することに加えて、開発の推進も含まれているのではないかと考えられます。

政府と宇宙庁は、2019年6月にVirgin Orbit（ヴァージン・オービット）の衛星打ち上げを支援していくことを発表しています。英国南西部のコーンウォールに建設しているスペースポートでは、2021年後半に初の商業打ち上げが可能になる見込みです。

コーンウォールでの商業打ち上げ開始までのロードマップ Credit : SPACEPORT CORNWALL

産業としての宇宙開発に積極的に取り組む英国にビジネスチャンスを見る企業も出てくるのではないでしょうか。

NASAのISSプロジェクトマネージャーが退職

NASAでISSのプロジェクトマネージャーを務める、カーク・シャーマン（Kirk Shireman）氏が6月末で退職します。

シャーマン氏は、テキサスA&M大学（テキサス農工大学）にて航空宇宙工学の学士号を取得したのち、1985年にNASAに入社。スペースシャトルの固体ロケットブースタおよび外部燃料タンクのマネージャーやISSのサービスマネージャー、そしてジョンソン宇宙センターの次長を経て、2015年に現職に就任しました。

年間予算30億ドルの巨大プロジェクトであるISSのマネージャーとして、宇宙飛行士の健康や機内の安全確保を含む全体管理や各国のパートナーとの交渉などを担ってきました。

前任のマイケル・サフレディーニ（Michael Suffredini）氏は退任後に、独自の宇宙ステーション構築を目指すベンチャー企業・Axiom Space（アクシアム・スペース）を創業しCEOを務めていることもあり、シャークマン氏の今後のキャリアに注目が集まっています。