衛星データゴールドラッシュ!? 経済アナリストとデータ活用の金脈を探ってみた
他業界に先駆けて衛星データ活用が進む金融業界について、経済アナリストの森永康平さんにお話を伺いました。石油の在庫量が分かると何が嬉しいの?衛星データでGDPを推定する方法とは?
クレジットカードの利用データに、SNSの投稿データ。こうしたデータが「オルタナティブデータ」と呼ばれていること、ご存じでしょうか? 人工衛星による衛星データも、このオルタナティブデータの一つ。こうしたデータが、今、世界経済を読みとくために広く使われつつあります。経済アナリスト・森永康平さんと一緒に、衛星を用いて経済を知る方法やビジネスチャンスを探りました。
衛星データの活用がすでに当たり前になっている業界がある!?
世間的には、まだまだ認知されていない衛星データ。しかし、ある業界ではもうすっかりおなじみになっているんだとか。そのイノベーティブな業界はどこか?
答えは、金融業界です!
実はいま、金融業界は空前の「オルタナティブデータ」ブームの真っ最中。衛星データは、そんな「オルタナティブデータ」の一つとして注目されているのです。
では、「オルタナティブデータ」とは何か? これは機関投資家が投資判断をする際に使われるデータのうち、政府による一般的な公開情報ではない統計データ群のこと。たとえば……
・衛星データ
・POSデータ(商品の売上実績データ)
・SNSの投稿
・クレジットカードの利用データ
・ホテルサイトのクチコミ
・ウェブサイトのトラフィック
・ニュースの記事 など
従来は、こうしたデータ郡から投資判断をするのはむずかしいとされてきましたが、近年のAIの進歩によってビッグデータを利用しやすくなったことから、最近は活発に利用されているんだとか。
では、金融業界では今、衛星データはどう使われているんでしょう?
将来的に、求められるのはどんなデータなのでしょうか?
新進気鋭の経済アナリスト・森永康平さんに、『宙畑』編集長・中村がたっぷりと聞きました!
<プロフィール>
森永 康平(もりなが・こうへい)/株式会社マネネCEO・経済アナリスト
証券会社や運用会社にてアナリスト、ストラテジストとして日本の中小型株式や新興国経済のリサーチ業務に従事。日本証券アナリスト協会検定会員。著書に『親子ゼニ問答』(角川新書)、『MMTが日本を救う』(宝島社新書)がある。
あらゆる情報を使いこなす! データ・ドリブンな専門家、登場
中村:森永さん、はじめまして! 今、金融業界ではオルタナティブデータの活用が盛んだそうですね。森永さんもこうしたデータを使うことはありますか?
森永:もちろんです! 最初にぼくの仕事を説明すると、経済指標や企業業績を分析したり、今後の経済動向の予測を提供したりしています。最近は、「コロナによる経済への影響はどのくらい?」「コロナ後の経済はどうなる?」といったご質問をよく政治家やメディアの方達からいただきますね。
経済を分析する際の手法はアナリストによってさまざまですが、ぼくの場合は、総務省や経済産業省、厚生労働省などの国が発表したデータをもとに分析することがほとんど。発信するものは基本、すべてデータに基づいています。ただ、データだけでは机上の空論になってしまうので、同時に現場取材も並行しているんですよ。
中村:へえ! 現場取材もなさるんですか。
森永:国の統計って、モノによっては大企業の影響を大きく受けやすいので、一般の方の感覚と合っているかを確認するために、コンビニの店員さんやタクシーの運転手さんなどを中心に、街中のミクロな声も聞くようにしているんですよ。
中村:なるほど、取材することでマクロとミクロの両方から経済を眺めることができるんですね。
森永:経済アナリストは政府が発表する情報や過去の経験を基に今後の経済動向を予測・判断するというのが従来の仕事の内容でした。でも、最近は政府が発表するデータのみならず、”新しいデータ”も含めて、分析するデータの量と種類を増やして今後の経済動向を予測・判断するというスタイルも生まれてきていると感じています。少なくとも、ぼくはそういうスタンスを取っています。
中村:その”新しいデータ”というのがオルタナティブデータですか?
森永:そうです。とくに金融業界では今、オルタナティブデータへの期待が過熱気味で、まさにブームを迎えています。衛星データもその一つとして「すごい!」と盛り上がって活用が進んできたんですよ。
衛星データを眺め、金脈を探すハンターたち
中村:金融業界内で、衛星データを積極的に使っているのはどんな人なんでしょう?
森永:ほとんどが投資関係のみなさんです。投資ってざっくりいうと「ムッ、こいつ…のびる!」というのを誰よりも早く見出した人が勝つ世界でしょう?
みんなで国が発表する統計データを待っていたんじゃ周囲を出しぬけない。誰もが「ライバルに先駆けて判断できるデータはないかな?」と常に探している。衛星データの活用もその一環です。
中村:生馬の目を抜くような世界ですね。でも、衛星データって彼らにとっては“未知との遭遇”だったと思うのですが、抵抗はなかったんでしょうか?
森永:金融業界の人って「衛星? 怪しいからムリ…」じゃなくて、「マジ? 使えるなら使うわ!」って言える人たちなんです。“グリード(強欲な連中)”だと揶揄されることもありますが、「稼ぎたい」という気持ちが強いので、良くも悪くもチャレンジングで意識が高いんですよ。
データ分析やデータ提供で稼いでいる人たちは、「あれ?これデータとして使えるんじゃない?」というアイデアを見つけてはバックテストを繰り返して、「おっ、相関性が高いな!これなら投資判断に使えるな」ってことを日々繰り返していると思います。
中村:まだ誰にも知られていない投資判断に有効なサインを常に探しているんですね。ちなみに、金融業界で衛星データが盛り上がり始めたのっていつ頃ですか?
森永:2017年くらいかな? 衛星データの話題が出たのは、オルタナティブデータが注目されはじめた初期ですよ。彼らに言わせれば「え、まだ衛星とか言ってんの〜?」って感じかもしれません(笑)。
経済アナリストが、世界経済を知りたいときに見る指標は?
中村:ここからは、衛星データが経済の分野に貢献できる可能性を探ってみたいと思います。たとえば、森永さんが世界経済を知るために見る指標ってなんですか?
森永:一番ポピュラーなのは、国が発表している「国内総生産(GDP)」ですね。どの国も出しているので、各国の成長率を比較するのに最適です。また、日本は世界第三位の経済大国とかって言いますけど、この経済力もGDPを指しています。
ただし、3ヶ月に一回しか発表されないので、投資判断の材料としては弱い。そういう意味で、毎月出されている消費者物価指数「CPI」や雇用にまつわる「失業率」も見ています。これらのデータを見ながら、各国政府の金融政策や財政政策などを予測していくんですよ。
ほかは、業界団体が出しているデータなども見ますね。たとえば、コンビニ業界、スーパー業界、百貨店業界といったところの月次の売上高など。こうしたデータを細かく見ることで、変化の傾向が見えてくるんです。
中村:それらの変化によって、株や為替も予測できるわけですね。でも、たとえば新興国ってデータがいいかげんだったりしませんか?
森永:あるある(笑)。新興国はもちろん、どこの国のデータであってもまったく当てにならないこともあります。そういうときは「このデータが正しいなら」という“if”の地点から分析していくんですよ。
たとえば、1カ月ごとのデータと言っても、データを月初に発表したいなら、その前の月の下旬には集計を締め切らなきゃいけない。こうなると1ヶ月分のデータとはいえませんよね。前月のものが今月出るというのも、タイムリー性に欠けます。
政府の統計は大事だけれど、タイムラグがあるし、実態をどこまで正確に表しているかわからない。そこで光が当たったのが、リアルタイムで取得できる生活に根ざしたビッグデータ、つまりオルタナティブデータだったのです。
衛星データで「GDP」を算出する研究がすでに始まっている!?
森永:そういえば、GDPを衛星データで算出しようという試みもあります。
中村:そうなんですね!
森永:ただ、GDPが発表されるのって3ヶ月に1回だから、答え合わせが3ヶ月に1回しかできない。検証できる回数が少なすぎるんです。答え合わせの回数で言えば、20年分くらい欲しいところ。単年で見てしまうと、大震災があったとか、大規模なテロがあったとか、特殊要因がありすぎますから。
中村:20年という数字はどこから?
森永:ふしぎなんですけれど、なぜか約10年に1回の頻度で特殊要因、つまりは経済的な世界危機が起きるんです。2020年にコロナショック、2008年はリーマンショック、2001年はアメリカでITバブルが崩壊して、97-8年はアジア通貨危機があった。
そういう意味で、10年を1セットと捉えて、20年分くらい見れば特殊要因か否かも含めて検証ができるんです。……というのはぼくが考えているだけで、業界で決まっている話じゃありません。
中村:ちなみに、森永さんはGDPを衛星データ測る場合、どのようにデータを活用するのが有効だと思いますか?
森永:やっぱり「夜間光」の光量ですね。経済活動が活発な時は工場の光自体も強いし、工場周辺の道路にある街頭の光も当然強くなりますから。光が強ければ強いほど「経済活動が活発」と見るわけです。
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森永:ただ、衛星画像だけでやると“ダマシ”のデータも多いはず。海面や雪に反射した月の光を工場の光だと勘違いすると、GDPが跳ね上がってしまう。
だから、山や湖、工場などの位置が詳しく記されている国土地理院の「土地利用調査」を使って、「ここは光ってるけれど、水面に写った月の光なんじゃないか」というようにノイズになるデータを削除していく必要があります。
中村:確かに、地図データと衛星データをクロスさせてGDPを算出することはできそうです。答え合わせのデータが溜まるまで、20年根気強くデータを蓄積し続けてみたいですね。
衛星を使った「原油の在庫量算出」は、なぜ広まったのか?
森永:実際に衛星データを活用した経済界の例はいろいろあります。たとえば……
<経済界で有名な衛星活用事例>
・港を衛星で撮影して、止まっている車の台数をカウントして出荷数を知る
・産油国の工場を衛星で定点観測して、石油タンクの影の長さから原油の在庫量を知り、それをもとにガソリン価格の上下を予測する。
中村:石油の例はとくに有名ですよね。でも、不思議だなと思っているのが、みんな競争相手を“出し抜く”ために予測手法を隠したいわけですよね。なのに、どうして石油の例はこれほどオープンになったんでしょう?
森永:それは単純な話で、「衛星」という言葉のインパクトのわりに「影の長さをみる」という小学生でもわかる内容だったからだと思いますよ。
中村:なるほど。つい“バズっちゃった”感じなのかな。
※編集部注記
有名なOrbital Insight社による石油タンク監視の例は、特許出願もされているようです。そのため、戦略的にその手法が公開されている可能性もあります。
森永:この石油ネタに関してはすでに広く知られて、みんながウォッチしているから、もう周りを出し抜くのは難しいでしょうね。今も活用している人はいるでしょうが、いろんなデータを見て「あれ、石油って今月の在庫ないかも?」と思った時に、「まあ一応、衛星データも見ておくか」という程度の使い方のはず。
中村:「衛星データ」だけを見て、何かを判断するってことはまずない?
森永:絶対にない! と言い切れます。「衛星データ」に限らず、どんなデータも組み合わせが命! 一つのデータから何かを判断するのは実に危険なのです。
たとえば、原油の在庫が残り少ないことがわかっても、それだけで日本のガソリンの価格が上がるとは限りません。なぜなら日本は石油を輸入しているから。
中村:円高の場合は為替で利益が出るから、必ずしも国内のガソリン価格が上がるわけじゃない、と。
森永:そう! となると、ぼくらは「原油価格」だけじゃなくて、「為替」も見る必要がある。「為替」は「金利」で決まるから、「金利」も知っておく必要がある。「金利」は「物価」で決まるから、「物価」も見なきゃいけない。「物価」はぼくらの「消費」で決まるから、「消費」のチェックも避けては通れない、と。
中村:あらためて順を追って聞くと、いろんなデータが連動していることがよくわかりますね。
森永:さまざまなデータをかけあわせないと実情は見えてきません。つまり、データはいろんな種類があればあるほどいい。これまでは政府統計しかなかったところに、現在はオルタナティブデータのようにいろんな種類のビッグデータが出てきてくれました。今後、分析や予測の精度はさらに上がっていくはずです。
石油タンクの「影」以外にも! 世界の石油量をチェックするならココも見たい
中村:ちなみに、森永さんが原油の在庫にまつわる分析をしようと思ったら、どこを見ますか?
森永:そうだなあ。まず、業界団体が毎週発表しているガソリンの在庫を見ます。続いて衛星で石油タンクの「影」を見るかなぁ。本音をいえば、見たい画像はほかにも……。
中村:お! 何が見たいですか?
森永:たとえば、アメリカ最大の石油拠点として知られている、アメリカ大陸のど真ん中にあるオクラホマ州。
森永:ここには陸路しかないので、パイプラインの間を走っているタンクローリーの数がわかれば、だいたいの石油量が算出できるはずです。
また、ヨーロッパで原油のやりとりをする場所は海の近くにあって、陸上の給油タンクが満タンの場合は海のタンカーに貯めるんです。つまり、海に浮いているタンカーの数を見れば、陸にある貯蔵がどのくらいあるのかを推定できる。
海上のタンカーがなければ陸地の石油タンクで足りている(在庫量が少ない)ことがわかるので、「よし、先物取引で今の価格で将来買えるように契約を結ぼう」とかね。そういう情報は商社も欲しがると思いますよ。
中村:なるほど、たしかにそれらのデータは衛星写真を使えば十分可能ですね。
経済アナリストが「あったらいいな」と思う衛星データ
中村:そういえば、衛星は今「時間分解能を高める」という方向に大きく変化が起こりそうなんです。
森永:というと?
中村:「Planet Labs」という企業の持つ衛星データが、地域によっては1日に7-12回の頻度で同じ地点を観測できるようにすると発表したんです。高い頻度で衛星を使えるようになったら、便利だと思いますか?
森永:うーん。実はそこまでリアルタイム性を追求してるわけじゃないんですよ。期間が短ければ短いほど特殊要因に左右されちゃうから。雨が降ったとか、近隣でライブがあったとか。こうした特殊要因はノイズになります。
POSデータも毎日上がってきますが、結局、ノイズを消すために7日間の移動平均を使ったりしているんです。だから、答えとしては「元データは細かい期間であればあるほどベターです。でも使うときは、細かいものを使うかどうかはわかりません」……というところかな。
中村:店舗の予測といえば、天候も重要ですよね。
森永:そうですね。雨が多い日は来店客が減り、逆にECでの売り上げが伸びやすい。POSデータに関していえば、気象の過去データとかけあわせて、「雨の日はこうだ」「気温が上がるとこうだ」というバイアスにまつわる過去のバックテストはすでに終わっています。だから、これからの課題は予測なんですよ。
中村:予測というと?
森永:たとえば、雨が降ると売り上げが下がる店があったとしましょう。梅雨時期、2週間にわたって雨の予測になっている場合、「このお店の売り上げはどうなるか?」。それが予測です。
予測ができていれば、晴れているうちにセールをして売り上げを高める、雨の日は入荷数を抑えるといった対策をとれますから。
中村:ちなみに、現在の気象予報の精度から見ると、(季節にも依るのですが)48時間後で精度は落ちていく印象です。お店はどのくらい先まで天気を知りたいんでしょう?
森永:店舗では、商品を発注してから入荷するまでに数日かかるので、2週間くらい先までの天気を見通せたらうれしいでしょうね。
また、天気といっても、一番知りたいのは「降水量」です。霧雨なら客足があるかもしれないけれど、豪雨なら確実に減ります。そこを予測したいのです。とはいえ、ゲリラ豪雨のように突発的な雨もあるし、今はまだむずかしいかもしれませんね。
「衛星データ×経済」の未来はどうなる?
中村:まだまだ課題はありますが、昔に比べると、ずいぶんいろんな分析がしやすくなっているんですね。森永さん、未来のデータ活用はどうなると思いますか?
森永:さきほど、”if“として「もし人工衛星でGDPを測るなら『夜間光』だろう」という話をしましたが、未来を考えると、夜間光が正解ではなくなるかもしれません。
ぼくらの生活にロボットやAIが入ってきたら、夜中まで働く人がいなくなるかもしれないし、「工場の稼働が多い=景気がいい」という図が成り立たなくなるかもしれない。
そもそもGDPを構成している要素の6割は、ぼくらの「消費」なんです。工場よりもサーバーの稼働率をみた方が確実だね、という時代が来るかもしれない。
中村:第三次産業の活発性を測った方が、より実情に近いデータが取れる、と。
森永:衛星がもっと進化して、たとえばピンポイントで「地熱」のデータをとりにいって、「おっ、サーバーが出している熱の量がこれだけあるな」「今、この国ではこれだけサーバーが稼働しているぞ」というデータが出せたら、今のGDPよりはるかに確からしい数字が出る気がしますよ。
中村:そこまでできるようになったら夢がありますね!
森永:でも、未来という意味では、ちょっと警鐘も鳴らしておきたいんです。今、金融業界をはじめ、いろんな業界で「これは政府統計じゃなくて、オルタナティブデータを使っているんですよ」というだけで「へー!」「すげー!」「最高!」っていわれる状態です。
でも、それは真摯なデータへの付き合い方とはいえません。オルタナティブデータはバイアスがかかりがちで、デメリットもあるんです。だから、そろそろ専門家たちから「いや、どうかな?」という疑問の声が上がりはじめるはず。
そこを乗り越えたときこそ、衛星データを含めたオルタナティブデータが、ちゃんとした市民権を得られると思うんです。
近い将来、情報の受け手側も、解析する側も、提供する側も、一段階上のレベルに上がることを求められるんじゃないでしょうか。
宙畑アイデアに「喝」! 衛星データ活用アイデア6選をアップデート
中村:森永さん、『宙畑』編集部では日々、衛星データ活用についてアイデアを出し合っているんです。
中村:経済アナリストの目でご覧になってみて、ぶっちゃけビジネスになりそうなものってありますか?
森永:パッと見た感じ、気になるものが6つほどあります。まず、「桜」からいきましょう。
【人工衛星の活用アイデア1】 衛星から桜は見える! 衛星画像を使った桜の探し方
衛星から桜は見える! 衛星画像を使った桜の探し方
中村:人工衛星は紫外線や赤外線などのセンサーを搭載しています。たとえば、「桜」の特定の波長の光を探せば、今どこにどのくらいの桜が咲いているのか、リアルタイムで桜の開花状況を検出することができます。
森永:いいですね! この桜チェックは、店舗の需要予測に使える可能性が高い。日本では、お花見の動向によって、コンビニや酒屋といった店舗の売り上げが大きく変わることが今回のコロナ禍でもはっきりと明らかになっています。コンビニやスーパーは上場しているところも多いので、ひいては株価にも影響します。
【人工衛星の活用アイデア2】 東京五輪マラソンは本当に暑い? 衛星データで過去と比較してみた
東京五輪マラソンは本当に暑い? 衛星データで過去と比較してみた
中村:東京五輪のマラソンは暑すぎるといわれて、開催地が北海道に変更になりましたよね。過去の大会と比較して東京のルートは本当に暑いのか? 衛星データで地表面温度を測って比較してみた記事です。
森永:衛星って地表面温度も測れるんですね。であれば、マラソンだけじゃなく、いろんなことに使えると思いますよ。
たとえば昔から「消費」と「気温」は相関関係があると言われていますが、ぼくが過去に行った分析では「消費」と「日照時間」の方が相関が高かった。日照時間は、地熱を調べればわかるはず。もし地熱のデータを衛星で取れるということであれば、消費の分析に役立つかもしれません。
【人工衛星の活用アイデア3】 衛星データだけでグランドスラムのテニスコート素材を当てる!
衛星データだけでグランドスラムのテニスコート素材を当てる!
中村:大坂なおみ選手の日本人初グランドスラム優勝で盛り上がったとき、グランドスラム決勝コートの素材を衛星画像から当てるゲームをした記事です。全部当てられたんですよ!
森永:なるほど、地面の素材がわかるんですね。新興国の開発をしようと思ったときに、衛星データであらかじめ現地の状況がわかれば計画を建てやすいし、「今後も人が移り住むかどうか」といった不動産の予測もしやすい。
もしアミューズメントパークを作るのに適した立地なら、いずれはディズニーやユニバーサルスタジオが乗り込んでくるかもしれない。だから早めに買収しておく、という手もあるかもしれません。
【人工衛星の活用アイデア4】 アメリカ民主党支持層は本当に都市部に多い?衛星データで検証してみた
アメリカ民主党支持層は本当に都市部に多い?衛星データで検証してみた
中村:2018年11月6日に行われたアメリカ中間選挙にて「民主党支持層=都市部、共和党支持層=地方」は本当なのか、衛星画像を使って検証チャレンジしたものです。
森永:これはいい! アメリカって、大統領が誰になるかで株価が大きく動いちゃうから、エコノミストたちは「何党が強いか」をすごく気にしているんです。
彼らは、政策アドバイザーに多額のお金を支払って、そうした情報を入手しているんです。もしこのデータが提供できるなら、エコノミストたちがこぞって買うはずですよ。同時に、政策アドバイザーも買うかもしれません。「この州はこの政党を支持する人が多いから厚めに張りましょう」というアドバイスの根拠になるからです。
【人工衛星の活用アイデア5】 どの色の車が売れやすいかチェックする
森永:「景況感のいい時は明るい色の車が売れる」という話を聞いたことがあるのですが、ずっと検証してみたいと思ってました。実際、景気を動かすのは人間だから、その人間の心理が色濃く反映されるトレンドやファッションから景気を読み解けるとしても不思議じゃない。
似たもので、「サザエさんの視聴率が高い年は、株価が下がる」説も有名ですよね。サザエさんへの風評被害かと思いきや(笑)、バックテストすると意外と当たっているらしくて。
中村:「サザエさんを見る人が多い=みんな時間に余裕がある=つまり仕事が少ない=景気が悪い=株価が下がる」って図式なのかな(笑)。
森永:これに類するものはいろいろあって、昔から聞く話だと「女性のスカート丈が短くなると景気がいい」ってのもありますよ。これはイギリスで出た話で、たしかファッション雑誌なんかにのっているスカート丈の平均値と、株価やGDPの伸び率を検証したんじゃなかったかな。
【人工衛星の活用アイデア6】 衛星データで漁場を探して、実際に釣りに行ってみよう
まさに目からウロコ! 衛星データで見つけた漁場の釣果が凄かった
中村:魚が集まりやすい場所は水温に関係があるといわれていて、衛星から取得できる水温を分析することで漁場探して釣りにいった、という記事です。
森永:ぼく、釣りが大好きなので、このへんはすごく興味がありますね! 人工衛星って、水面の温度もわかるんですか。だったら、調べてみたいのが「フォールターンオーバー」。
湖って水面の温度が夏から秋にかけて冷えてくると、一定のタイミングで、水の上下がぐわっと入れ替わる瞬間が来るんです。これが「フォールターンオーバー」といわれる現象です。この日に釣りの予定を入れちゃうとマジで釣れないんですよ……。
中村:釣りの人のログ情報が集められるなら、衛星データで答え合わせできそうな気がしますね。
森永:あっ、釣り人のログは普通に得られますよ。大きな湖ならボート会社が釣船を貸し出していて、戻ってきた釣り人から釣果情報を聞いてるのです。「何が何匹」と各社がブログで出しています。
ただ、釣り人は見栄を張るから、釣れてないのに「釣れた」って報告してる人が絶対いる(笑)。そこはバイアスがかかっちゃうけど、ある程度はわかるんじゃないかな?
いや、この一覧、面白いですね。衛星で本当にこれだけのことがわかるとしたら、まだまだ衛星にはぼくらが知らない使い道が眠っていそうだ。衛星の知識が業界の垣根を超えて広く知られていけば、より楽しいことになりそうですね。
中村:ひきつづき、ぼくらも情報を発信しつつ、他業種とディスカッションを進めていく予定です。森永さん、ありがとうございました!
森永さんが登壇するTellusイベントは7/28(火)の19時から!
今回、取材にてお話を伺った森永さんに7/14(火)より50日間にわたって開催される「Tellus SPACE xData Fes. -Online Weeks 2020-」の7/28(火)に行われる「Tellus Satellite Cafe ONLINE vol.2 -衛星データ×経済の未来-」に登壇いただけることになりました。
本イベントでは本記事の内容からいくつかのテーマをピックアップして、森永さんと話を進めます。ぜひご参加ください!