NASA長官が辞任。長官代理としてJurczyk氏が就任【週刊宇宙ビジネスニュース 2021/1/18〜1/24】
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NASA ブライデンスタイン長官が退任。長官代理にはユルチク氏が任命
1月20日、NASAの長官を務めていたジム・ブライデンスタイン(Jim Bridenstine)氏が辞任したことが発表されました。
ブライデンスタイン氏は、1998年にライス大学を卒業後、海軍のパイロットとしてイラクやアフガニスタンに派遣されました。退役後には、航空宇宙博物館の館長を務める傍ら、コーネル大学でMBAを取得しました。
2012年の選挙でオクラホマ州から出馬し、当選。下院議員になり、政治家としてのキャリアをスタート。下院科学宇宙技術委員会に所属していました。その後、2017年にドナルド・トランプ前大統領に指名され、NASA長官に就任しました。
当初から有人月面着陸に関心を示していて、任期中には、アルテミス計画を推進してきました。また、ISSへの継続的な商業輸送を確立させたことも、ブライデンスタイン氏の功績だと言えます。
ブライデンスタイン氏は、バイデン政権への移行を受けて、2020年末より退任の意向を表明していました。
バイデン政権における宇宙政策は明らかになっておらず、次期長官が任命されるまでの間の長官代理に、NASAの準管理者(Associate administrator)の スティーブ・ユルチク(Steve Jurczyk)氏が任命されました。ユルチク氏は、現職以前はNASAの宇宙技術ミッション部門で、副マネージャーとして、探査用のロボット開発を推進していました。
NASAは2021年中に、アルテミス計画の最初の取り組みである無人月周回飛行試験を実施する予定です。米国は政策がNASAのミッションに大きく影響する傾向があり、政権交代のたびにその行方が話題にあがります。今回も政権交代に伴い、進行中のプロジェクトの行方が気になるところです。
三菱重工がH3の機体を初公開
1月23日、三菱重工業は次世代ロケット「H3」が機能試験を完了し、飛鳥工場にて機体が報道陣向けに初めて公開しました。
H3ロケットは、柔軟性・高信頼・低価格の3要素の実現を目指し、H-ⅡAロケットおよびH-ⅡBロケットの後継機として開発が進められています。2020年度中に初号機を打ち上げる予定でしたが、開発中のLE-9エンジンに技術的課題が確認されたため、2020年9月、「打ち上げを2021年度に延期する」と発表していました。
打ち上げの詳細な日程は明かされませんでしたが、機体は打ち上げ射場がある種子島に輸送され、いよいよ移動発射台に機体を組み立てる作業が行われます。その後、機体と射点設備を組み合わせて、燃料を充填、システムのインターフェイスを確認し、着火直前までの手順を確認する「極低温試験」や全段組み立て状態で技術データを取得する「特別点検」、実機タンクを用いたタンクステージ燃焼試験などが実施されます。
H3ロケットのイメージCG
IHI 従業員8,000人の副業解禁へ
1月21日、ロケットシステムの開発・製造を手がけるIHIが、従業員の社外での副業を認める制度を2021年1月より導入したことが報道されました。
1週間の所定労働時間の半分にあたる20時間以上IHIで勤務することを条件としていて、就業時間内に社外で勤務した時間分の給料や手当は減らされる仕組みです。
同社は、2020年11月にもグループ企業の従業員8万人を対象に、配属先以外の仕事にも挑戦できる社内副業の制度を導入するなど、働き方改革に乗り出していましたが、Covid-19の世界的なパンデミックにより、航空機の需要が落ち込んでいることが追い風となったのではないかと推察されます。
ほかの宇宙関連企業・組織では、JAXAが副業を許可制で認めています。秘密漏洩などの観点から同業他社での副業は難しいと考えられますが、宇宙ベンチャー企業にとっては、人材確保の契機となるかもしれません。
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参考
Former NASA Administrator Jim Bridenstine