衛星の相乗り打ち上げ、史上最多の143機。QPS研究所の2号機が宇宙へ【週刊宇宙ビジネスニュース 2021/1/18〜1/24】
一週間に起きた国内外の宇宙ビジネスニュースを厳選してお届けする連載「週刊宇宙ビジネスニュース」は毎週月曜日更新!
QPS研究所、小型SAR2号機がSpaceXのライドシェアで打ち上げ
初号機の改善点を活かして開発された2号機「イザナミ」
1月25日、九州大学発ベンチャー企業・QPS研究所の小型SAR衛星2号機「イザナミ」が打ち上げられました。
同社は、10分ごとの撮影実現を目指し、36機の小型SAR衛星によるコンステレーションの構築を計画しています。
2019年12月には、実証機である1号機「イザナギ」の打ち上げを行いましたが、衛星機能の95%を実現したものの、画像化の成功には至りませんでした。QPS研究所によると、撮影自体は計画通りに行われたものの、撮影したデータを衛星内に保存する過程でデータが劣化する不具合が起こり、画像の品質が想定していたレベルに達しなかったということです。
イザナギで検証された技術や改善点を反映し、さらにイザナミには太陽電池パネルを3枚追加し、より精細なデータ取得を目指して改良されているとのことです。
同社の衛星運用チームは、オペレーションのトレーニングとブラッシュアップを行ってきたとのことです。今回はQPS研究所様より、「少しでも早く、ファーストライト(初画像)をお見せできるよう頑張りたいと思います」とコメントをいただきました。宙畑編集部としても、同社の挑戦をしっかりと見守っていきたいと思います!
SpaceXのライドシェア、搭載された衛星は史上最多の143機
イザナギは、SpaceXのファルコン9に143機の衛星とともにライドシェア(相乗り)で打ち上げられました。ミッションは、「TRANSPORTER-1」と名付けられています。
ファルコン9のライドシェアプログラムは、2019年8月に発表されました。200kgあたりの輸送費用は、100万ドルと破格のコスト設定となっています。
今回の打ち上げでは、Spaceflight社とEXOLaunch社、Nanoracks社が衛星搭載枠を購入し、SpaceXと衛星事業者を仲介しています。
QPS研究所のイザナミのほか、PlanetのSuperDoveやSwarm TechnologiesのSpaceBee、SpaceXのStarlink衛星などが搭載されています。
地球観測衛星も多く、数日から数週間後には、各社のファーストライトが公開されるのではないかと見込まれます。
キヤノン電子の超小型衛星に搭載の超高感度カメラが夜間撮影に成功
1月18日、超小型衛星の製造を行うキヤノン電子は、同社製の超小型衛星3号機「CE-SAT-ⅡB」が撮影した画像を公開しました。CE-SAT-ⅡBは、2020年10月にRocket LabのElectronによって打ち上げられました。
一般的に、光学衛星は夜間の撮影が難しいとされていますが、CE-SAT-ⅡBは、わずかな月明かりに照らされた地表面の撮影に成功しています。これは、望遠鏡とキヤノン電子が新規開発した超高感度カメラを組み合わせた撮像装置によるものです。夜間撮影が可能となればれば、光学衛星の利用の幅はさらに広がるのではないかと考えられます。
さらにCE-SAT-ⅡBには、キヤノン製のミラーレスカメラ「EOS M100」と組み合わせた望遠鏡とコンパクトデジタルカメラ「Power Shot G9 X MarkⅡ」による撮影にも成功していて、近日中に画像を公開される予定です。
また、キヤノン電子は、衛星のコンポーネントや画像に加えて、衛星本体の販売も計画しています。日本経済新聞の報道によると、納期はわずか3カ月の見込みです。衛星事業者が衛星の完成品を購入するケースが増えれば、ますますサービスやソリューションの質が問われるようになるのではないでしょうか。
ThrustMe ヨウ素ベースの推進機を軌道上で実証
1月22日、フランスのスタートアップ企業であるThrustMeは、ヨウ素ベースの推進技術の実証に成功したことを発表しました。
宙畑メモ 電気推進システムの仕組み
推進剤をイオン化し(プラスとマイナスに分け)その粒子を加速させながら宇宙空間に放出することによって推進力を得る。軌道調整や衝突回避、衛星の寿命延長、再突入などに使用される
詳細 欧州有望宇宙ベンチャーThrustMeって?
従来の電気推進システムでは、キセノンやクリプトンが使用されていますが、希少で価格が高く、高圧下で保管する必要があります。ThrustMeが用いているヨウ素は、キセノンと同等の性質を持っていますが、比較的安価であり、固体から液体に昇華する性質も持っているため、利用しやすいというメリットがあります。
ThrustMeの推進システムは、2020年11月に、中国の宇宙ベンチャー企業であるSpacetyの超小型衛星「Beihangkongshi-1」に搭載されて打ち上げられました。12月下旬と2021年1月上旬の2回にわたって噴射試験を行ったところ、高度は合計で700mほどの移動に成功したということです。
また、SpaceNewsは、ThrustMeは2021年中に複数の顧客に推進機を販売する意向を示していることを報じています。
ヨウ素ベースの推進技術の商業化により、安価な推進システムが実現されれば、民間企業の衛星の寿命も伸びるのではないかと考えられます。
宙畑編集部のおすすめ関連記事
ThrustMeの推進機が軌道投入に成功!【週刊宇宙ビジネスニュース 11/25〜12/1】
災害や環境変化を自社で察知!小型SAR衛星が変えるリスク管理の未来
今週の宇宙ビジネスニュース
衛星データ解析コンテストを開催・運営するSolafuneが資金調達を発表【週刊宇宙ビジネスニュース 2021/01/18〜01/24】
NASA長官が辞任。長官代理としてJurczyk氏が就任【週刊宇宙ビジネスニュース 2021/1/18〜1/24】
Virgin Orbitが軌道投入に成功し、加速する輸送プレイヤーの競争【週刊宇宙ビジネスニュース 2021/01/18〜01/24】
参考
当社製の超小型人工衛星「CE-SAT-IIB(シーイー・サット・ツービー)」搭載の超高感度カメラより、夜間撮影に初めて成功
French startup demonstrates iodine propulsion in potential boost for space debris mitigation efforts