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バイデン政権がアルテミス計画を支持。気候変動対策に向けての動きも【週刊宇宙ビジネスニュース 2021/2/1/〜2/7】

一週間に起きた国内外の宇宙ビジネスニュースを厳選してお届けする連載「週刊宇宙ビジネスニュース」は毎週月曜日更新!

NASA シニア気候アドバイザーを新設

2月3日、バイデン政権における気候変動対策に向けて、NASAは新たに「シニア気候アドバイザー」の役職を新設したことを発表しました。暫定的なシニア気候アドバイザーとして任命されたのは、ニューヨークにあるゴダード宇宙研究所の所長で気候学者のギャビン・シュミット(Gavin Schmidt)博士です。

シニア気候アドバイザーに任命されたギャビン・シュミット博士 Credit : NASA

シュミット博士は、地球科学部門の気候に関連する科学ミッションへの投資や、二酸化炭素や気候変動に影響を与える物質の排出量削減にフォーカスした技術開発の促進などの役割を担う予定です。

NASAの長官代理であるスティーブ・ユルチク(Steve Jurczyk)氏は、「(シニア気候アドバイザーが就任したことにより)政府機関は、政府の気候変動対策における目標を達成するための取り組みをより効果的に調整できるようになります」とコメントしています。

バイデン政権がアルテミス計画支持を表明

米国・ホワイトハウスの報道官であるサキ・ジェン氏は、ブリーフィングでアルテミス計画について言及しました。

2月3日のブリーフィングでは、ジェン氏が宇宙軍について説明する場面があり、それに続いて記者からバイデン政権におけるアルテミス計画の状況について質問が上がりました。これに対してジェン氏は翌4日に、月探査は2021年の包括的歳出法案に詳述されていることを説明したうえで、バイデン政権はアルテミス計画を支持すると述べました。

ブリーフィングで記者の質問に回答するサキ・ジェン氏 Credit : NBC News Source : https://www.youtube.com/watch?v=sbgfDoOw288

アルテミス計画をめぐっては、大統領選でジョー・バイデン氏の当選が確実となった2020年11月に、複数のメディアがアルテミス計画最初の月面着陸は2024年から4年後ろ倒した2028年になるのではないかと報道しました。

また、NASAは2024年の有人月面着陸に向けて、33億ドルの予算が必要だとされていましたが、議会で承認されたのは、8.5億ドルでした。

さらに、1月27日にNASAは、有人月面着陸船の開発企業2社を2月末までに選出する予定を4月末に延期することを発表。NASAは提案内容を評価し、設計から開発にスムーズに移行するためだと説明していますが、遅延が発生するのではないかと懸念されています。

今回、バイデン政権はアルテミス計画を支持する意向を示されたものの、スケジュールなどの詳細は明らかになっていません。引き続き米政府の動きに関心が集まるのではないでしょうか。

NASA 商業輸送サービス委託企業にFireflyを選定

2月5日、NASAは2023年に月面に10個のペイロードを輸送する企業として、Firefly Aerospaceを選定したことを発表しました。

これは、NASAが月面輸送サービス提供企業を民間から公募するプログラムの一環で、CLPSと呼ばれています。2017年に発表され、現在は、AstroboticやIntuitive Machines をはじめとする15社が入札資格を持っています。

Fireflyは、米国・テキサス州オースティンに本社を置き、中小規模の輸送機の設計、製造、および運用を行う航空宇宙会社です。

宇宙旅行サービスの提供を目指すVirgin Galacticとの間で起きた知的財産権に関する問題が訴訟に発展し、敗訴。投資家が撤退したことにより、破産を経験しましたが、Noosphere Venturesによる投資を受けて2017年3月に再スタートを切りました。

Firefly が輸送するのは、月の土壌や磁場に関する、科学実験と技術実証のためのペイロード10個。NASAから委託を受けたペイロードの総重量は94キロで、商用には50キロ分の枠を用意しているとのことです。「危険の海(Mare Crisium)」と呼ばれる北東半球に位置する盆地への着陸を予定しています。

着陸船は社名にちなんで「ブルーゴースト」と名付けられています Credit : Firefly Aerospace 

また、Fireflyは3日に、米空軍長官を務めていた経歴を持つデボラ・リー・ジェームズ(Deborah Lee James)氏と、The Cardillo Groupの社長であり、国家地理空間情報局(NGA)でディレクターを務めていた経歴を持つロバート・カルディロ(Robert Cardillo)氏を取締役に任命したことを発表しました。

Deborah Lee James 氏(左)とRobert Cardillo (右) Credit : Firefly Aerospace 

さらに、同社は取締役として2名を迎えたことに伴い、社内体制の再編を実施する方針をプレスリリースで明らかにしました。輸送機と着陸船(ランダー)それぞれの事業部を立ち上げるほか、事業開発と政府関係のチームを拡大するとのことです。

CLPSにSpaceXやBlue Originら5社が追加された2019年11月に、Fireflyのマネージャーであるシェア・フェリング(Shea Ferring)氏は、「CLPSに参加することによって、人材採用が難しい航空宇宙分野での新たな従業員の獲得に繋がった」とコメントしていました。

実際に、創業者でCEOのトム・マルクシック(Tom Markusic)氏は、同社の従業員数が昨年の約2倍になったことを明かしています。具体的な人数は公表されていませんが、ビジネス化に向けて、勢いづけている様子が窺えます。

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参考

NASA Announces New Role of Senior Climate Advisor

Press Briefing by Press Secretary Jen Psaki, February 2, 2021

Press Briefing by Press Secretary Jen Psaki, February 3, 2021

Press Briefing by Press Secretary Jen Psaki and National Security Advisor Jake Sullivan, February 4, 2021

White House endorses Artemis program

NASA hits pause on its Artemis moon lander competition

NASA Selects Firefly Aerospace for Artemis Commercial Moon Delivery in 2023

Firefly Aerospace Announces New Board of Directors and Corporate Expansion Plans