宙畑 Sorabatake

Tellus

「衛星データを活用し、新規開拓に挑む」ITコンサルファーム豆蔵の挑戦

2020年6月、「衛星データ利活用サービス」の提供をスタートした株式会社豆蔵の担当者に、サービス提供に至ったきっかけやクライアント企業からの反響について聞きました。企業の事業をコンサルする上で衛星データは有効なデータとして手ごたえがあるのでしょうか?

機械学習やRPA(ロボットプロセスオートメーション)など、最先端技術を活用したコンサルティングやプロダクトサービスを展開する株式会社豆蔵は、2020年6月より衛星データ利活用サービスの提供をスタートし、同時にTellusのxData Allianceにも参画しました。

豆蔵、宇宙ビジネスに参入! 顧客が保有するデータと衛星データの組み合わせで新たなビジネスを創出 ~宇宙産業関連企業等が加盟する「xData Alliance」にも加入~

今回は、サービス提供に至ったきっかけやクライアント企業からの反響を衛星データ利活用サービスを実際に行っている担当の方に伺いました。

話を伺った方々
デジタル戦略支援事業部 スペースサイエンスチーム
・チームリーダー:石川 真之介さま
・チーフマネージャー:松永 和成さま
・コンサルタント:米丸 直之さま

天文学での経験を活かして、衛星データ事業に参入

──はじめに、株式会社豆蔵ではどのような事業を行っているのでしょうか。

松永 株式会社豆蔵は、一昨年2019年に創業20周年を迎えた、ITコンサルティングファームです。コンサルティングで終わらずに、ソフトウェア開発とお客様自身でデジタル活用を継続していけるよう人材教育まで行っていることが当社の強みです。

Credit : 株式会社豆蔵

私どもが所属している、デジタル戦略支援事業部は、数理科学的なアプローチをもとに、DX(デジタルトランスフォーメーション)による業務改革と実装を行うコンサルティングとエンジニアリングを柱としています。具体的には、要件定義や要求開発、オブジェクト指向・アジャイル開発のご支援、AIエンジンの開発、データ分析環境の構築やマネジメントなどです。お客様の業種は、製造業や金融企業、商社をはじめ、多岐にわたります。

──数理科学的なアプローチが特徴ということで、データを重要視されているのではないかと思います。データはどのように取得されていますか。

松永 お客様の業務内容をヒアリングして、一緒に課題を解決していく形式を取っています。例えば、「工業製品の販売実績を知りたい」「どのような人がサービスを利用しているのか知りたい」といったご要望に応じたデータの収集や見せ方をご提案させていただきます。

──「衛星データ利活用サービス」を構想したきっかけは何だったのでしょうか。

石川 コンサルティングやデータ分析を行っている企業は少なくはなく、やはり他社と差別化を図っていく必要があります。事業戦略を練ろうと、メンバーの特徴をあげてみたところ……なぜだか分からないのですが、宇宙関係の経歴を持った人材が多くいることに気が付きました。宇宙に関しての知識は豊富なので、これをなんとか生かせないかと考えたわけです。

スペースサイエンスチーム チームリーダーの石川さま Credit : 宙畑

私の場合は、衛星搭載機器の開発に携わっていました。データ分析の経験を活かした仕事をしたいという思いと人工知能への興味が、豆蔵に入社したきっかけとなりました。衛星データを活用する際に、衛星の軌道を理解して、いつ撮影できるか考えるところは、天文学とも共通しています。

松永 実は石川と私は、在籍していたタイミングは違ったのですが、同じ大学の同じ研究グループに所属していたことがあります。2021年度入社予定の新入社員も私の後輩で、天文系の研究を行っています。

スペースサイエンスチーム チーフマネージャーの松永さま Credit : 宙畑

米丸 2人とも似ていますが、私は大学院で特定の天体を機械学習で探す研究をしていて、機械学習を天文学や統計だけでなく、身近なところで役立てられる仕事がないか探していたところ、豆蔵に辿り着きました。

スペースサイエンスチーム コンサルタント 米丸さま Credit : 宙畑

石川 ここにいないメンバーの中にも、宇宙分野の学位を持っていて国際的なプロジェクトで活躍した人がいます。NASAやJAXAとの共同プロジェクトを経験した人や、受賞歴がある人が集まっています。

──集まるべくして集まったメンバーだと言えそうですね。

+αの衛星データで、新しい価値を生み出す

──衛星データをビジネスで利用するうえで、期待していることはありますか。

石川 衛星データ単独ではなく、お客様が持っているデータと組み合わせることで、価値を生み出せると考えています。

「衛星データ利活用サービス」のイメージ Credit : 株式会社豆蔵

やはりお客様が持っているデータは、事業所内のものが中心で、時間的にも空間的にも限られているケースが多いのですが、衛星データは広い範囲を長期的に撮影できることが強みです。

また、一般的に何かのデータを取得するには、“これから”起きることが前提にあるのですが、衛星は定常的に撮影をしているので突発的な現象に対しても対応できるのも衛星データの大きな強みですね。事件や事故も該当しますし、新型コロナウイルスのパンデミックもまさにその一例です。パンデミックの発生前と後の状況を比較するのにも、衛星データが活躍していることをお客様には説明しています。

──お客様に衛星データを提案していく中で、相性が良いと感じている業界があれば教えてください。

石川 交通関係には特に手応えを感じています。例えば、乗り物にセンサを付けてデータを収集していても、周囲の状況まではわからないので、衛星データで補完できると良いのではないかという話が出ています。

松永 不動産関連においても、マンションを建設する際に、周辺の交通量や人の移動量が解析できれば、住居者にとって住みやすい場所なのか判断する指標になるのではないかという話が出ました。

石川 既存の事業やサービスだけではアプローチできなかったお客様にもご提案できるようになり、我々としても“新しい武器を手に入れた”というような感覚です。

──クライアント企業に提案される際に、足かせとなってしまっていることはありますか。

石川 やはり衛星データを活用された経験をお持ちのお客様はほとんどいらっしゃらないのが現状です。「監視カメラのような画質でリアルタイムに撮影できる」とイメージされてしまうこともあり、分解能とリアルタイム性が向上すれば、より活用の幅が広がりそうだと感じた場面がありました。有償の画像であれば人間まで判別できるものも入手できるかと思いますが、いきなりそこに手を出すのはハードルが高く思えます。

お客様に提案する際には、最初は「ASNARO-1」の高解像度画像を見ていただくようにしています。やはり可視光のデータが一番わかりやすいですし、難しい話をしてしまうと興味を持っていただけない場合もありますから。

ASNARO-1が撮影した画像 Credit : NEC、パスコ、さくらインターネット

宙畑メモ ASNARO-1
経済産業省の支援を受けて開発された光学衛星。分解能が最大0.5mと高解像度のデータを取得することができる。2014年に打ち上げられ、現在も運用が続けられている。

石川 それから意外だったのは、降水量や温度・湿度など気象関連のデータに興味を示される方が多かったことです。お客様自身も活用できることに気付いていなかったようで、お互いに発見があり、良かったと思っています。

──お客様を交えて、衛星データの利活用を検討するワークショップを開催されたと聞きました。いかがでしたか。

松永 もともとつながりがある企業の方にお声掛けしたところ、当初想定していたよりも多くの方々にご参加いただきました。お題は、「自社のデータとどの衛星データを組み合わせて使用したいか」です。

まずは、ワークシートを使って、業務で使用するデータを書き出してもらい、どんな衛星データと組み合わせると良さそうかを考えてもらいました。次に、こちらで用意しておいた、衛星データの観測波長と使われ方をまとめた資料を見ながら、自社のデータとどの衛星データが組み合わせられそうかをグループで議論してもらいました。その後、アイデアを発表してもらう流れです。

自動運転や災害対策に関するものなど、いろいろなアイデアが出ました。今は、アイデアをどのように実現していくか提案するフェーズに入っています。

石川 ワークショップでご検討いただいたアイデアを社内でも検討していただければ、別のアイデアも出てくるかもしれません。参加いただいた方とは、引き続きコミュニケーションを取っていきたいと思っています。また、参加者のアンケートでは「異業種の方と話せて刺激になった」という声もありましたね。

松永 個別相談ではなく、複数の企業のお客様が合同で参加するワークショップ形式は、好意的に受け止められていたのではないかと思います。今回の開催で要領は掴めたので、今後も第2回、第3回と、ワークショップを開催していきたいです。

お客様を巻き込みながら、データドリブンな社会へ

──衛星データに関する一連の取り組みについて、社内ではどのような反響がありましたか。

松永 在宅勤務になり、他部署の社員と話す機会が減ってしまっているのですが、親しい人からは「そういう取り組みが始まっているんだね」と声をかけてもらいました。

石川 まだ新しい取り組みなので、実績は今から出していかないといけないのですが、役員は「大変面白い」と評価してくれています。

──今後取り組んでいきたいことを聞かせてください。

石川 当社のデータ分析の教育サービスで、衛星データを題材として取り入れることを提案し、提供がスタートしました。お客様の反応も好感触ですし、これまでにない新しい取り組みができたという点で、かなり満足度が高くなっています。実業務でもご利用いただけるよう、アイデア出しを促すなどの活動を行っていきたいと思っています。

松永 2020年6月に参画させていただいた、xData Allianceについては、コネクションをまだ充分には活かしきれておらず、具体的なアプローチを考えているところです。

宙畑メモ xData Alliance
Tellusの開発と利用促進を目的に組成されたパートナーシップ。宇宙関連企業に留まらず、さまざまな業種の企業が参画している。

石川 宇宙ビジネスにおいては、我々は新参者です。これまで活躍されてきたアライアンス参画企業の皆様から、いろいろと学ばせていただきたいと思っています。

豆蔵にできることと言えば、やはり衛星データの活用を全く検討してこなかったお客様も上手く巻き込んでいくことです。アライアンス参画企業の皆様のお力を借りながらできることもあるのではないかと期待しています。

松永 基盤側、つまり、衛星データ分析の環境づくりでも、ご支援させていただけることがあるのではないかと思っています。アライアンス企業の強みを活かしてできそうなことのアイデア出しなどもできると良いですね。

石川 宇宙空間の利用は、これから必ず伸びる分野です。まだ手探りではありますが、私たち自身も衛星データを触るなかで、どういうことはできて、どういうことは技術的に難しいのか感覚が掴めてきています。ご興味をお持ちであれば、知識が全くないというお客様でも、お気軽にお声がけください。

──ありがとうございました。

まとめ

もともとデータドリブンでのコンサルティング事業を行っている株式会社豆蔵にとって、衛星データという新たなデータを取り入れることで、今までアプローチできなかった顧客にも提案できるようになるなど、衛星データの利活用による手ごたえを感じ始めているようです。

一方で、まだまだ衛星データにできることと顧客が衛星データでできると期待されていることに大きなギャップがあり、しっかりとできないことも顧客に説明しつつニーズに応えていくことには課題があります。

衛星データですべてが解決できるわけではありませんが、多くのデータが補完し合うことで解決できることが増えていきます。もしデータの活用に困っている方がいれば、活用方法や、必要なデータなど豆蔵さんにご相談してみてはいかがでしょうか。

Tellusでは、衛星データのほか企業がお持ちのデータの購入、販売が可能です。Tellusに搭載されているデータもぜひ参考にしてみてください。

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