野口、星出両宇宙飛行士のISS同時滞在が実現。軌道上会見で語られたそれぞれの想いは【週刊宇宙ビジネスニュース 2021/4/26〜5/2】
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5月2日、半年におよぶISS滞在を終えた野口聡一さんら4名の宇宙飛行士が搭乗するクルードラゴン宇宙船のカプセルがメキシコ湾に着水しました。カプセルは無事に回収され、4名は医療検査に向かいました。
今週は、いつにも増して、日本人宇宙飛行士に注目が集まった1週間でした。
日本人宇宙飛行士2名のISS同時滞在が11年ぶりに実現
4月24日には、星出彰彦さんら4名の宇宙飛行士が搭乗していたクルードラゴン宇宙船がISSに到着し、野口宇宙飛行士らに盛大に出迎えられた様子が話題になりました。
ISSに日本人宇宙飛行士2名の同時滞在が実現したのは、11年ぶり。26日に開催された軌道上記者会見で、日本人の同時滞在については、両宇宙飛行士は
「日本語で、きぼうの中で引き継ぎができるのは嬉しいですね。JAXAをはじめとする日本の実績があってこその運用です」(野口宇宙飛行士)
「細かな引き継ぎが母国語でできるのは、ありがたいです」(星出宇宙飛行士)
と話しました。ISSの公用語は英語。宇宙飛行士はコミュニケーションに長けているとはいえ、その場で、さらに母国語で引き継ぎができるのは、大きなメリットとなっているようです。
「宇宙に親しみを感じてほしい」野口宇宙飛行士によるSNS発信
野口宇宙飛行士は、2020年11月から約半年間ISSに滞在しました。その間、話題になったのは、TwitterやYoutubeを活用した、野口宇宙飛行士自らの情報発信です。会見でその理由について聞かれると
「科学技術の成果に発言の重点を置きがちなんですが、ISSで日本人が暮らしていることの意味は生活があることです。人間が暮らしている空間なので、当然喜怒哀楽があり、感動があります。その様子をできるだけストレートに、そしてビビットにお伝えする中で、より多くの方に宇宙に親しみを感じていただきたいです」(野口宇宙飛行士)
と説明しました。野口宇宙飛行士の発信がきっかけで、宇宙に関心を持った人も多いのではないでしょうか。
星出宇宙飛行士がISS船長に就任
一方、野口宇宙飛行士と入れ替わりでISS滞在を始めた星出宇宙飛行士。4月24日にISSに到着し、約6ヶ月間滞在する予定です。28日に同氏は、同期間に滞在する宇宙飛行士を統括するISS船長(コマンダー)に就任しました。
船長の役割は、ISSに滞在する宇宙飛行士を統括すること。緊急時には、搭乗員全員の安全とISSの機能維持するために、迅速かつ的確な対応の指揮を執ることが求められる重要な役割です。日本人のISS船長就任は、若田宇宙飛行士に続き2人目です。会見では星出宇宙飛行士は、
「みんな経験が豊富なので、彼らの良さを引き出せるよう、チームワーク良くやっていきたいです」(星出宇宙飛行士)
と意気込みを語りました。
宇宙飛行士に求められる"チームワーク”の良さ
日本では、今秋13年ぶりに新たな宇宙飛行士の募集選抜が行われます。理工学や医学など自然科学系の学歴や職歴が必須でしたが、文系出身者も応募できるよう募集要項の緩和が検討されています。さらに、これまでは不定期に行っていた宇宙飛行士選抜は、5年に1回をめどに実施される計画です。
どういう宇宙飛行士を目指してもらいたいか、星出宇宙飛行士に聞くと、このような回答がありました。
「宇宙飛行士みんなに共通しているのは、お互いをリスペクトし合って、チームワークを良くする意識です。やはり宇宙飛行士は、一人では何もできません。お互いに補完し合う……長所を持ち合って、短所を補える素晴らしい仕事だと思っています。宇宙飛行士を目指す方には、ぜひそういう意識を持って頑張ってもらいたいです」(星出宇宙飛行士)
月軌道ゲートウェイや月面での本格的な作業は、ISSよりも遠方にあるために、一層通信時間がかかります。だからこそチームワークの良さは、より一層重要になってくると言えるでしょう。