宙畑 Sorabatake

ビジネス事例

「世界中のエンジニアを巻き込み、世界規模の課題を解決する」創業から1年、衛星データ解析コンペを行うSolafune社 x East Ventures社 x ANRI社の3社同時インタビュー!

2021年1月22日には独立系ベンチャーキャピタル ANRI、East Venturesを引受先とする資金調達を発表した株式会社Solafune。衛星データ解析コンテスト「Solafune」の魅力とこれからについて、3社同時インタビューで伺いました。

ギークな人たちが熱狂している」「熱量がSolafuneを通して世の中を前進させる、最高だなと思います

これまで数々のベンチャーに投資を行ってきた経験者からこのように語られるのは、株式会社Solafuneが運営する衛星データ解析コンペ「Solafune」。2021年1月22日には独立系VC(ベンチャーキャピタル)ANRIEast Venturesを引受先とする資金調達を発表しています。

そこで、宙畑は2021年4月某日にSolafuneの代表取締役の上地さんに加え、Solafuneへの投資を実施したEast Venturesの金子さん、ANRIの鮫島さんの3名にSolafuneについてのインタビューを実施しました。

衛星データ解析コンペ「Solafune」はどのようにして生まれ、そしてどのように運営されているのか。また、資金調達を決めたベンチャーキャピタルのお二人が語る「Solafune」の魅力と期待値を余すことなくご紹介します。

上地練氏
株式会社Solafune 代表取締役CEO。学生時代は米国カリフォルニア州の大学で数学を専攻。ソフトウェアエンジニアやVCなどの経験を経て、2020年に株式会社Solafuneを創業。
Twiitter:@ren_uechi

金子剛士氏
シード投資に特化したアジアを代表する独立系VC、East Venturesのパートナー。学生時代からベンチャーキャピタルで修行を積み、これまでに150社以上の国内外のスタートアップに投資。
Twiitter:@evkaneko

鮫島昌弘氏
独立系VCのANRIのパートナー。ご自身も理学系の修士号を取得しており、全国の大学や研究機関発の技術をもとにしたディープテック領域のスタートアップ投資が専門。
Twitter:@NestHongo

本編に入る前に、Solafuneのコンペで重要なポイントとなる「衛星データ解析」について、トレンドや活用事例を簡単に紹介します。

本編に入る前に:衛星データ解析とは
現在、約900機の地球観測衛星が地球を周回し、地表面や大気を撮影しています。それらの衛星は国が打ち上げているものもあれば、昨今は海外のPlanet Labs社Spire社や、日本のAxelspace社QPS研究所Synspective社などの民間企業も数多く打ち上げています。

地球観測衛星が撮影したデータの用途は、一例をあげると、「農作物の生育予測と刈り取り時期の推定」「水害における損害保険支払いの迅速化のために浸水高把握」「違法森林伐採の検知」「石油タンクの蓋の状況から推測する原油在庫推定」など産業・業種は広く、様々なシーンで利用されています。

数多くの衛星が打ち上げられ、世界中の様子を撮影した大量の衛星データが生み出されるようになったことで、最近増え始めているのが衛星データ解析企業です。人の眼で1枚ずつデータを確認することが追いつかなくなったため、機械学習をはじめとするAI技術を活用した画像解析が始まったのです。Orbital Insight社Descartes Labs社DATAFLUCT社などが、衛星データを使ったソリューション提供を始めています。

衛星データ利用を加速させる鍵は、世の中を前進させる「課題の設定」と課題解決を実現する「解析技術」の2つが揃っていること。

これを、コンペというオープンイノベーションで創出するのが「Solafune」です。Solafuneが設定した課題に一般の参加者が自由に参加し、データ解析の精度を競う形式で、入賞者には賞金が与えられます。開発されたコードは、実際の課題解決に役立てられる計画です。

すでにSolafuneでは、「衛星画像から空港利用者数を予測」・「夜間光データから土地価格を予測」という2つの衛星データ解析コンペを開催しています。これらのコンペはどのような意図で開催されたのか。ぜひ本編をお楽しみください。

(1)Solafune創業に至った2つの視点

—まずは上地さんから、Solafuneを創業したきっかけについて教えてください。

上地:Solafuneの事業を始める経緯には様々な変数があるのですが、今の事業に行きついたのは大きく2つの視点があります。ひとつは、「世界中のエンジニアをいかに巻き込むか」という視点。もうひとつは、「達成した時に世界規模の課題が解決できるか」という視点です。

また、宇宙にこだわっているということはないのですが、私自身、相対性理論のような理論物理学といった宇宙はもともと好きでして、自分が好きな領域で、自分が得意なことで、かつ、事業としての勝ち筋の仮説が描けたこともあり今の事業につながっています。

(2)ギークな人が熱狂し、世界を前進させる。投資を決めたVCから見たSolafuneの魅力

— Solafuneに投資を決められた金子さん・鮫島さんから見た、Solafuneの魅力を教えてください

金子:Solafuneを利用するユーザーの熱量の高さです。仕事が終わった後とか、休日ユーザーが熱狂してSolafuneに参加しているんです。

一般的には仕事が終われば趣味や休息に時間を使うと思うのですが、そのような時間を削ってでもSolafuneのコンテストに本気で取り組むユーザーが多数いる。そして、その熱量がSolafuneを通して世の中を前進させる、最高だなと思います。

—まさに「世界中のエンジニアをいかに巻き込むか」「世界規模の課題が解決できるか」という2つの視点がはまっているということですね。鮫島さんはいかがですか?

鮫島:Twitterを見ていると、頻繁に「アップデートしました」「修正しました」と、ユーザーの方とコミュニケーションをとりながらSolafuneが動いているんですね。良い意味でギークな方々が集まっており、数と質という両方の観点で密度が高いというのはとても魅力的です。

唯一無二のプロダクトにギークな方々が集まっていて、それゆえにKaggle(※1)で優秀な成績を残されている方々もSolafuneに参加されている。この状態はとても良いですね。今後、仮にSolafuneがスケールするタイミングが来るとしても、広く浅く展開するのではなくギークな方々が超熱狂的に使い、そこから派生した産業特化型のソフトウェアが世の中に出ていく未来を僕は勝手に考えています。
※1:Kaggleとは、世界中の機械学習・データサイエンスに携わっているエンジニアが集まり、企業や政府が課題を提示するコンペが多数開催されているプラットフォームのこと。

(3)数あるコンペの中から、迷ったときにSolafuneを選んでもらえるように。Solafuneのサービスづくりのポイントと具体策

—上地さんにお伺いします。創業、正式なリリースから1年も経過しない段階ではありますが、これまでの過程で学びになったことを教えてください。

上地ユーザー視点でプロダクトを作る大切さは感じました。この業界は経営者がトップダウンで「このぐらいの予算で、こういうことをやる」と決めることが多いと思うのですが、私たちの場合はひたすらユーザーと向き合っています。どういう課題を解くのか、どういうサービスにしていくかということを、宇宙業界の中では1番ユーザーと話しているし、理解していると思っています。

例えば第2回のコンペでは、ユーザーの方からご指摘を受けて、「リーダーボード」と「最終評価を行うファイルの提出方法」に改良を加えました。他にも細かい機能改善はあるのですが、本当にこの分野にどっぷりつかっている方々でないと分からない機能改善も行うことができていると思います。

Solafuneに参加するユーザーの方々はとてもスキルの高い方ばかりなので、すぐにバグを見つけて報告してくださったり、要望を教えてくださったりします。その中で、「これは致命的だ」「クリティカルだ」と思ったご指摘に関しては、その日のうちにデバッグするスピード感でユーザーさんとコミュニケーションしており、要望を伝えやすい距離感と解決するまでのスピード感はとても大事にしています。

—その結果、金子さんや鮫島さんのお話に合ったような、熱狂的なユーザーの方々も現れているということですね。

上地:そうですね、スタートアップの領域ではよく「スケールしないことをしろ」と言われますが、今の弊社のフェーズは、衛星データ以外にも乱立している現在のコンペ市場で、迷ったときにSolafuneを選んでもらえるような、企業のグロースよりも本当に愛されるプロダクトを創りあげるフェーズです。

そのためにも、Solafuneのコンペに参加してくれている方が、他の人から見ると「かっこいい」「面白そう」「この人たちめっちゃすごいな」と思われるようなサービスに仕上げていくことは意識しています。その結果、そこに共感してくださる方や楽しんでくださる方が増えてきたというのは見え始めています。

もちろん、会社を経営する上で、どこで売上を立てどのようにグロースして……といった話も重要なのですが、それを軸にサービスを作るのは本当にユーザーと向き合っているのか?という話になるとそれは違うと思っています。

例えば、優秀な人が多く集まるプラットフォームになると「人材紹介のビジネスとかいいんじゃない?」といった話をいただくこともあるのですが、それをやると現時点ではサービスが濁ってしまうと思うのでやりませんし、「コンペに集中したいのに今は求めていないスカウトメールが大量にくる」みたいな、ユーザーが違和感を感じることはやらないようにしています。

(4)ビジネス観点でのSolafune評価、投資を決めたポイントは?

—では、Solafuneのサービスの話から事業可能性について話を移します。ずばり、金子さん・鮫島さんがSolafuneへの投資を決めたポイントを教えてください。

金子:最初に上地さんから連絡をもらったのはTwitterのDMなのですが、DMを見たときに、直感的にビビッと来ておそらく投資することになると思いました。実際に話をして10分ぐらいで自分の中では投資オファーを出すことを決めました。

ミーティングの中では、事業の話以上に過去の実績やアクションについてお聞きしました。その際に、複数のスタートアップ企業へのインターンに至った経緯やその時に持っていた仮説が非常に腹落ちした記憶があります。上地さんは適切なタイミングで適切な場所を選ぶという意味でセンスが良いですよね。過去に上地さんがインターンしていた会社も我々の投資先でした。

鮫島:Solafuneさんに投資を決めた理由は大きく2つです。ひとつは経営者としての資質が高かった点です。経営者の中には「いい研究開発だけしておけば自分達は会社として成立するんだ」と思っておられる方もいるのですが、上地さんはしっかりとプロダクトを世の中に出し、売上を立て、会社を経営していこうというマインドを持っていると思いました。

もうひとつは、市場参入のタイミングですね。2010年代前半からPlanet Labs社やSpire社といった地球を観測する小型衛星関連のスタートアップ企業が多数登場し、次はそのデータをどう扱うのかとなるのは必然です。そのなかで、データ利活用のポジショニングを見ておられるのはすごく良いなと思って今回の投資に至りました。

(5)レバレッジをかけて挑戦できるようなポジション取り。上地さんのキャリアの選び方

—金子さんから選ぶ会社のセンスがいい、鮫島さんからは経営者としての資質があると上地さんについて話がありましたが、上地さんご自身で大事にしている行動や考え方はありますか?

上地ポジション取りはとても意識しています。いかに自分や所属している組織の挑戦にレバレッジがかかるかという観点も大事ですし、働く企業の選定でも、自分が参加することでどんな価値を提供できるかという観点も大事にしてきました。

人生を通して常に大きな目標に挑戦し続けたいので、新たな挑戦に向けて、うまく福利を働くポジション取りをしながら、わらしべ長者的な観点で目の前のことに取り組んでいくイメージを持っています。

自分がいることで、自分自身や所属している組織がレバレッジをかけて挑戦し続けることができるのはどんなポジションなのだろうかと常に考えています。

(6)テーマ選定の基準とSolafuneの展望

—今のポジション取りのお話をお伺いして、Solafuneのコンペテーマの選定にも何かこだわりがあるのでは?と思ったのですが、いかがでしょうか。

上地:まず、テーマ選定については、「こういうのをやりたい」ではなく、「今こういうソフトウェアがあったら、どの領域のどういった企業に必要とされるか」という仮説からテーマのアイデアを出します。

また、今後は、世界中で様々な企業が衛星データ関連のプレスリリースを打ち始めているので、そのリバースエンジニアリング的な観点でのテーマ設定も面白そうだなと思っています。

アイデアが出たら、技術的に可能かどうかを調査し、問題がないようであれば、「開発に必要な予算がどれくらいで、もし本当に実現したらどれほどの効果が見込めて、どういった企業が導入してくれそうだ」といった話を経てコンペテーマの決定に至るという流れです。

—上地さんご自身のキャリアに対する考え方と重なる点が多いですね。第1回、第2回に開催されたコンペはどのような会話を経て決定に至ったのか、教えていただけますか?

上地:Solafuneのコンペ設計アプローチとしては大きく3つあります。「課題解決」「問題提起」「検証」です。具体的には、

  1. ・衛星データの活用に関する技術的な課題の解決を目的としたコンペ
  2. ・すぐに事業化は難しいが社会的に必要とされる課題に向き合うコンペ
  3. ・R&Dやニーズ検証を目的としたコンペ

などです。Solafune上で過去に開催された2つのコンペは「検証」が大きな目的となっています。検証といっても、衛星データに関する技術検証や、Solafuneというプラットフォーム開発に関する検証、ユーザーの利用動向の検証など、複数の検証を同時に行っています。今後は「問題解決」や「問題提起」を主な目的とするコンペを増やしていくことを予定しており、次回コンぺに関しては既に準備を進めています。

—上地さんに最後の質問です。今後、コンペを通して生まれたアルゴリズムの活用について展望があれば教えてください。

上地:今後はアルゴリズムのライセンスを企業様に提供していく、アルゴリズム及びソフトウェアライセンス事業を進めていくというのがSolafuneの描いている大きな絵になります。

弊社はコンペを開催・運営する会社ではありません。また、衛星データの活用を目的とした会社でもありません。地球上のあらゆる事象をソフトウェア化するために衛星データの活用を試みており、その手段としてSolafuneというコンペのプラットフォームを開発しています。今後も弊社のミッションである「Hack The Planet.」に沿って、地球上のあらゆる事象をソフトウェア化していくという大きな方向に向かって事業を展開していきます。

(7)最後の質問:Solafune含む日本の宇宙ベンチャーがIPOをするために必要なこととは?

—金子さん、鮫島さんに最後の質問です。近年、アメリカを中心にSPACを活用した宇宙ベンチャーの上場が話題になっています。日本の宇宙ベンチャーが、上場やM&AなどのEXITを果たすために重要なポイントとは?

宙畑メモ:SPAC(特別買収目的会社)
SPAC(特別買収目的会社)とは、その企業自体は特定の事業を持たずに、一定期間内に未公開会社・事業を買収することのみを目的として株式市場に上場する企業のことです。SPACを活用すると、資金調達を行いながら上場が果たせるほか、従来の新規株式公開(IPO)よりも簡素なプロセスで上場を果たせるため、近年この方式の上場を採用するベンチャー企業が増加しています。

ニューヨーク証券取引所に2019年に上場したVirgin Galactic社、2021年中に上場予定のBlacksky社・Spire社・Redwire社や、NASDAQに上場したAST & Science LLC社、2021年中に上場予定のMomentus社・Astra社・Rocket Lab社もSPACを活用しています。

金子:自分としては、EXITの手段はそこまで重要ではないと思っています。重要なのは、その企業が中長期に渡って力強く成長する確かな根拠と、コツコツ足元のKPIを積み上げることです。宇宙関連のスタートアップは成功した時に得られる果実が大きいケースが多く、投資家が好む要素を持っているので、実行と積み上げこそが重要だと思います。

また、宇宙産業がバブルという話も一定程度あると思いますが、ITバブルからAmazonが生まれたように、その中から本物の宇宙スタートアップ企業が生まれる可能性も高いと思っています。

鮫島:現在、世界の宇宙ベンチャーを見ていていると、バブルのような熱狂さがあるのは事実ですよね。

例えば、Spire社が船舶通信のAISに注力して他企業との差別化を測る路線に切り替えたのですが、それ本当に実需あるのかな?と思っていたところSPACで上場したり、Virgin Galactic社も、売り上げが数千万円規模なのに上場して一時期時価総額が1兆円規模になっていたり。

このような宇宙ビジネスに世間が熱狂的になっている中でIPOするために重要なキーとは?ということは一口に語れないのですが、日本の宇宙ベンチャーが勝ちを取りに行くのであれば、NASAを含めたアメリカの宇宙産業を取りに行くというのが挑戦すべきところだと思います。というのも、日本の宇宙ベンチャーが日本で閉じて、ちょっとしたIPOで満足しているとすぐに天井がきてしまいますよね。一方の海外の宇宙ベンチャーはSPACを活用して産業自体を巨大化させている状況ですので、海外のお金を取りに行くことは本当に重要なポイントだと思います。

その点、Solafuneのコンペには海外の方が参加されていますし、上地さんにもどこかのタイミングでアメリカの本丸の宇宙産業を取りに行ってほしいなと思います。

—上地さん、金子さん、鮫島さん、ありがとうございました!

編集部後記

サービスリリースから半年で2回のコンペを開催し資金調達を発表したSolafuneの上地さんと、投資家の金子さん、鮫島さんのお三方を交えてお話をお伺いしました。

取材の中では、第三回目のコンペについても話があり、次のテーマもとても楽しみです。今後もユーザーの声を大事にしながらプロダクト改善がますます加速するだろうSolafuneの衛星データ解析コンペ。

今後、Solafuneから発表されるだろう新たなアルゴリズムや事業展開に引き続き注目していきたいと思います。

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