宇宙から物流を可視化するビジネスコンペ!NEDO Supply Chain Data Challenge募集開始
2022年3月18日に発表された、衛星データを使った新しいビジネスコンペについて、詳しく掘り下げます!
2022年3月18日、衛星データを使った新しいビジネスコンペが発表されました。テーマは「サプライチェーン」。新型コロナウイルス感染症の影響で、物流は私たちの生活に大きな影響を与えました。
実際、現地でどのような状況になっているのか、衛星データや地上のデータを使って可視化し、事業化のプランを練るというコンペティションです。
本記事ではその概要をご紹介します。
(1)コンペ概要(スケジュール、提供されるもの、評価項目、賞金など)
コンペ部門
コンペの部門は「アイデア部門」と「システム開発部門」に分かれています。
アイデア部門
「アイデア部門」は広くサプライチェーンマネジメントにおける課題を解決するソリューションを募集するものです。これ以上の制約条件は特にないため、参加者側で自由に課題を設定し、それに対しての技術・ソリューションのアイデアが求められています。
システム開発部門
「システム開発部門」はテーマが2つに分かれています。見る対象で分けると、一つは「港湾」で、もう一つが「災害」です。
・テーマ①:港湾におけるコンテナ物流の渋滞に起因するサプライチェーンへのインパクト推定と可視化サービスの提供
テーマ①は港湾の混雑状況を可視化し、適切な代替手段を検討できるようなサービスの開発です。
参加者がスムーズに課題に取り組めるよう、テーマは3つのステップ(問)に分割されています。
【問1:港湾の稼動状況の可視化】
問1ではまず、港湾の稼動状況を可視化します。稼動状況といっても色々とありますが、例えば以下のようなものが可視化できるといいかもしれません。
・コンテナの台数の時系列変化(滞留状況)
・クレーンの稼動状況
・港周辺の船の台数の時系列変化(滞留状況)
・降ろした荷物を陸路で運ぶためのトラックの台数の時系列変化(滞留状況)
【問2:輸送手段の接続性の可視化】
問2では、問1で可視化した稼動状況を元に、輸送手段の接続が円滑に行われているかを可視化します。
船舶によるコンテナの供給が、その後のトラックによる運搬能力を上回ってしまっている場合には、港にコンテナが溜まることになり、船も待たなくては行けなくなり、効率が悪くなります。
逆に、トラックの運搬能力の方が高い場合、今度はトラック側が余るという状況になるかもしれません。
問2ではこのような輸送手段の切り替えに伴う接続性や円滑性を可視化していくということになります。
【問3:適切な代替手段の検討ができるサービスの提案】
いよいよ最後の問3では問2の情報を元に、もっとも効率の良い輸送方法を提案するサービスを開発します。
問2の結果明らかになった港湾の接続性を元に、どのルートでモノを運ぶと効率が良いのか、荷主が判断できるようなものが要求されています。
さらに、このサービスによりどのような場面でビジネス価値を提供できるのか、という説明が求められています。
・テーマ②:大規模風水害などの災害に起因するサプライチェーンへのインパクト推定と可視化サービスの提供
テーマ②は、大規模風水害などの災害に起因するサプライチェーンへのインパクの可視化と、影響を受けたサプライチェーンの維持および組み換えを検討できるサービスを開発するものです。
今回は特に、2019年の台風15号・19号の際のデータが提供されています。
こちらのテーマも3つの問いに分かれています。
【問1:大規模風水害における直接的な被害状況の可視化】
問1ではまずはシンプルに、風水害における直接的な被害を明らかにします。被害の例としては、以下のようなものが考えられます。
・住宅被害
・避難者の発生
・工場の操業停止/稼働率の低下
・商業施設の営業停止
これらの情報を精度よく迅速に把握することが求められています。
【問2:被害が他の企業や地域に波及していく状況の推定・可視化】
問2では、問1で明らかにした被害から波及して、サプライチェーンのどこかに被災地が入る場合や、通勤・通学圏内に被災地が含まれる場合の人々の購買行動がどう変化するのかの推定や可視化の技術が求められています。
【問3:被害を受けたサプライチェーンのの維持・組み換えの検討支援システムの試作開発】
問3では、問1および問2を踏まえた直接・間接被害の深刻さや広がりに関する情報可視化と、さらに被害を受けたサプライチェーンの維持または組み換えの検討を支援するシステム・サービスの試作が期待されています。
さらに、作ったシステム・サービスがどのような場面でビジネス価値を提供できるかを示す必要があります。
コンペスケジュール
応募~一次審査
本コンペは本年度長い期間にわたって開催されます。参加希望者は5月17日までに申請書と提案書を提出し応募します。この時点で、提案書には①提案概要②開発技術の妥当性(システム開発部門のみ)③実現可能性④社会発展性および実施スケジュールを記載する必要があり、本内容を元に一次審査が実施されます。
なお、記載内容について、あきらかに事業化の意思がないものや、すでに事業化・製品化されているアイデアは本コンペの対象外となりますので注意してください。
一次審査通過後(コンペ実施期間)
一次審査を通過した参加者には、技術やビジネスの観点でメンタリングを受ける機会が提供されます。サプライチェーンマネジメントのユーザー企業や投資家とのネットワーキングにもなるため、コンペだけでなく、参加者自身が自分のアイデアの事業化を見据えた際の助けにもなると考えられます。
また、システム開発部門の参加者には、システム開発に使う関連データと、開発環境が提供されます。提供されるデータについては後述します。
二次審査(プレゼン)
11月下旬には、それぞれの検討・開発内容を発表するプレゼン形式の二次審査が予定されています。二次審査は一般公開のピッチ形式で行われ、入賞者には賞金が与えられます。
審査項目
審査項目は以下となっています。どんなに良い内容になっていても審査項目を満たしていないものは採択されません。
革新性
これまでにない新しい発想に基づき、宇宙という素材を活用した新たなサービスを創出する内容であること
・新規市場の創出
・既存ビジネスの高付加価値化等への貢献
・事業のロジックモデルとKPIが適切に設計されているか
・成果の創出に向け必要なステークホルダーとの連携体制が組める内容か、など
開発技術の妥当性
(システム部門のみ)
提案のシステムを実現するにあたり、開発の基となる技術が実現可能なレベルにあること
・基となっている技術開発の科学的根拠が明確で、実用化開発に有効であるか
・提案の実用化開発のシーズについて、基礎的な検討が十分に行われているか、など
実現の可能性
開発されたシステムやそれを活用した事業が計画通りに実行できそうか否か、様々な側面から多角的な検討がなされていること
・具体的な事業計画に基づく売上、収益の伸び
・競争優位性の持続力
・関連する法規制への対応
・必要となる経営資源及びそれらの充足度(ヒト・カネ・モノ)
・予想される損失やリスク
・サービス開始までの期間
社会発展性
事業化により、海外や他地域への展開など、社会全体への波及効果が期待できるものであること
・パートナー企業や業界等周囲の関係者の意識・行動変容も視野に入れているか
・海外や他地域、団体においても適応可能なモデルか、など
賞金
コンペ参加にあたって必要な人件費や、提供される以外のデータや開発環境の調達は参加者自身が負担する必要がありますが、二次審査で入賞すれば賞金が授与されます。
アイデア部門
1位:100万円
2位: 50万円
3位: 30万円
システム開発部門
システム開発部門は2テーマそれぞれで入賞者が決定されます。
1位:1,000万円
2位: 500万円
3位: 300万円
(2)「港湾の物流の可視化」を行う意義
システム開発部門の一つ目のテーマ「港湾」についてさらに詳しく見ていきましょう。
増え続けるコンテナ取り扱い個数
私たちの暮らしになくてはならない物流の中でも、海運が占める割合は大きく、世界の港湾におけるコンテナの取り扱い個数の推移は2008年から2018年までの10年間で、1.5倍に増加しており、今後も増加していくことが予想されます。
新型コロナウイルスが海運に与えた影響
このように、港湾におけるコンテナの取り扱いの効率化が求められる状況の中で、今回の新型コロナウイルス感染症の影響により、検疫強化が進められたことから海上輸送の減少や遅延が見られるようになりました。また、サプライチェーン維持の観点から海運を回避し、空輸を活用するケースも見られたようです。
世界90の港湾を対象とした2020年4月中旬時点の調査によると、約4割の港湾においてコンテナ船とバルク船の運行が平時よりも少ない状況で、影響を大きく受けていることが分かります。
また、コンテナ陸揚げ後のトラック輸送との接続に関しては、トラック輸送が停止した港湾が約1割、6~24時間の遅れが生じた港湾が約1割、6時間以内の遅延が生じた港湾が約2割あったとのことで、実際に多くの貨物で手元に届くまでに、遅延が生じたことが窺えます。
上図のように複雑に事象が絡み合い、物流の遅延や輸送コストの増大、工場の停止など世界各地で大きな影響を与えています。
このような中で、今回のコンペでは、海の物流の渋滞を①いち早く正確に検知し、②その影響が与える影響を推定し、③代替ルートなどユーザーがタイムリーに判断・対応を行うサービスのプロトタイプの開発を行います。
(3)「災害時の物流への影響の可視化」を行う意義
もう一つの「災害」のテーマの方も見ていきます。
詳細には、「大規模風水害などの災害に起因するサプライチェーンへのインパクト推定と可視化サービスの提供」がテーマです。
洪水・土砂災害が発生しやすい国土
日本は全国土の約7割を山地・丘陵地が占めており、世界の主要河川と比べ、標高に対して距離が短く、急こう配で、降った雨は山から海へと一気に流下します。
このような国土条件において、梅雨や台風により大雨が降ることで、洪水や土砂災害がたびたび発生しています。
ますます増える風水害被害
近年では平均気温の上昇に伴い、大雨や短時間強雨の回数が増加しています。
大雨について、日降水量が200mm以上となる年間の日数を「1901年から1930年」と「1990年から2019年」で比較すると、直近の30年間は約1.7倍の日数となっており、長期的に増加していることが分かっています。
また、短時間強雨(注24)について、1時間降水量が50mm以上となる年間の回数を「1976年から1985年」と「2010年から2019年」で比較すると、直近の10年間は約1.4倍の発生回数となっており、同様に長期的に増加しています。
さらに、雨の降り方に関連して、土砂災害の発生回数も近年増加傾向にある。2018年(平成30年)は過去最多の3,459件、2019年も1,996件と非常に多くの土砂災害が発生しています。
災害発生時の物流への影響
2000年に発生した東海豪雨では、東海の自動車メーカーを中心に大きな影響を与えました。
このように、風水害により部品納入が滞ることで、工場の創業を停止せざるを得なくなるケースが見られています。
本テーマでは、上記のように風水害の結果、影響を受けたサプライチェーンマネジメントへの影響を推定し、その解決策を提案するものです。
(4)提供されるデータ(衛星データ、地上データ)
コンペでは一次審査を通過すると、テーマに関連したデータへのアクセスができるようになります。他にも自身で収集・購入したデータを使うことができるため、必ずしも提供されるデータにこだわる必要はありませんが、すでに提供が決まっているデータについてご紹介します。
なお、本章で紹介する衛星データの使い方はあくまで宙畑編集部が考える一例であり、実際に解析できることを保証するものではないことにご注意ください。
衛星データの基礎
まずは、本コンペの特徴でもある衛星データについてご紹介します。
衛星データの種類:光学とSAR
今回提供される衛星データは大きく2種類に分けられます。「光学画像」と「SAR画像」です。
光学画像が、スマホのカメラや私たちの目で見たような画像であるのに対し、SAR画像は白黒のざらざらとした画像になります。
SAR画像は、人工衛星から発射した電波が地表面で跳ね返えったものを観測した画像です。
光ではなく電波で観測しているため、雲がかかっている地域や夜でも観測ができるという利点があります。詳しくは以下の記事をご覧ください。
SAR(合成開口レーダ)のキホン~事例、分かること、センサ、衛星、波長~
また、光学画像の派生として、地表面温度が分かる衛星画像も提供しています。
解像度
今回提供される衛星データはそれぞれ解像度(衛星データでは、分解能と呼ばれることが多いです。)が、0.5mから30mと様々です。
コンテナの数を数えるなど高解像度な画像が必要な場合には0.5mの高解像度画像を、広範囲の被災状況をマクロに捉えたい場合には低解像度の広域画像を選ぶと良いでしょう。
撮影時刻
衛星データで注意が必要なのは「撮影時刻」です。
人工衛星は地球のまわりを周回しながら撮影を行うため、好きな時間に撮影できるわけではありません。
衛星ごとに撮影できる時間が決まっており、光学画像の場合には太陽の光が良く当たる撮影地点の正午前後、SAR画像の場合には、朝6時と夕方18時であることが多いです。
テーマに照らして、何時ごろの画像が必要なのか考えながら画像を選ぶことが必要です。
より詳細に知りたい場合には、以下の記事を参照して下さい。
人工衛星から人は見える?~衛星別、地上分解能・地方時まとめ~
ここからはテーマ毎に提供されているデータを紹介していきます。
テーマ①:港湾におけるコンテナ物流
高解像度光学衛星画像:ASNARO-1
ASNARO-1は白黒画像で0.5m、カラー画像で2.0mの衛星データです。Google Mapなどで見る航空写真よりもやや解像度の粗いデータと思っていただくのが良いでしょう。
今回のテーマでもある港湾コンテナの短い辺は1辺2.4m程度であるため、コンテナ一つ一つがかろうじて識別できる程度の解像度といえるでしょう。
高解像度光学衛星画像:Pleiades
Pleiades(プレイアデス)はASNARO-1と同じく高分解能光学衛星です。
今回はASNARO-1では撮影していない2021年6月以前のデータについて、補完的に提供されています。
中解像度光学衛星画像:GRUS
GRUSは光学センサで撮影した、解像度2.5 mの白黒画像と5mのカラー画像です。株式会社アクセルスペース社が開発した超小型衛星GRUS-1Aのデータです。
解像度はASNARO-1、Pleiadesと比べて劣るものの、撮影頻度が高く、最大で月6回撮影できる可能性があるので、より細かく港湾の様子を把握するのに役立ちます。
高解像度SAR衛星画像:ASNARO-2
ASNARO-2は同じくSAR衛星で、ALOS-2に比べて高解像度である点が特徴です。特に今回のコンペでは、雲が多いシンガポールを中心にデータを提供しています。
港湾のコンテナの有無などが確認できる解像度の画像になっています。
また、時系列で何枚か画像が用意されているので、複数の画像を重ね合わせることで差分を取ることができます。
詳しくは以下の記事などを参照ください。
TellusのCOG形式のAPIを使って、ASNARO-2の画像を重ね合わせて前後の変化抽出を実施してみた
AIS(船舶自動識別装置)データ
海上を航行する船は、衝突防止などの観点から、常に決められた電波を発信し、周囲に自身の位置情報や速度情報を知らせることが義務付けられています。この情報を使って、航行する船の情報を可視化できるという訳です。
宙畑では以下の記事で、AISのデータを使った可視化を行っています。
国際貿易海上航路上の環境インパクト評価 ~スエズ運河座礁事故が鳴らす警鐘と今後の展望~
貿易統計データ
また、マクロなデータとして、政府が発表している貿易統計データがあります。こちらは月ごと・港ごとの輸入額や輸出額が分かるので、衛星データからみたコンテナの数やAISでみた船の数、GPSを使った人の数と、貿易統計の相関モデルを作ることができれば、物流が停滞した時の影響を予測できるかもしれません。
https://www.customs.go.jp/toukei/info/
テーマ②:風水害におけるサプライチェーンへの影響可視化
中解像度光学衛星画像:SPOT
SPOTはAIRBUS社が保有する光学衛星で、解像度は1.5mです。
今回のコンペでは災害時の前後画像を用意しているので、風水害の影響を2枚の画像の変化抽出から明らかにできるかもしれません。
低解像度光学衛星画像:Landsat-8
Landsat-8はアメリカ政府が運用する光学衛星です。解像度はカラー30mと粗いですが、広範囲を撮影しているため、広域な風水害の被害状況の把握に役立つと考えられます。
低解像度SAR衛星画像:ALOS-2
Tellusではすでに、JAXAのSAR衛星ALOS-2の画像を提供しています。今回のテーマのエリア・時期も含まれるので、コンペで利用することが可能です。
特に、ALOS-2は木の葉などを透過するL-bandと呼ばれる波長の電波を使っているため、木々の成長などを相殺した2時期の影響比較などにすぐれており、風水害時の影響を推定する時などに役立つかもしれません。
低解像度SAR衛星画像:Sentinel-1
Sentinel-1は、欧州政府が運用するSAR衛星です。観測している周波数はC-Bandと異なりますが、ALOS-2と同じように、広域に風水害の被害状況の把握に役立つほか、5日周期で観測しているため時系列での状況の把握に役立てることができます。
地表面温度:MODIS
MODISも同じくアメリカ政府が運用するTerra/Aqua衛星に搭載されているセンサで、地表面温度を捉えることができます。
被災した地域やそのサプライチェーンに関係する工場の稼動状況を把握する目的で、煙突など熱源がある工場を見てみると、有益な情報を得られるかもしれません。
携帯電話位置情報データ
同じく位置情報として挙げられるのは携帯電話の位置情報データです。
個人が特定されてない形(メッシュなど)で、ある時刻・場所にどれほど人がいるかが分かるデータとなります。
今回提供されるデータと同様の形式ではありませんが、宙畑では人の動きを可視化し、イベント時の増減の可視化などを行った記事を公開しています。
イベント、夜の街、新施設オープン、天候……モバイル空間統計で人の動きを可視化してみた
企業間取引情報データベース
企業間取引情報とは、企業間で取引をする際に実施する信用調査の情報を元にしたデータベースで、例えば、個別企業ごとに業態、業績、規模・資本、取引関係等の項目が整理されています。
この情報を利用すると企業同士の取引関係が見えてくるので、被災した工場の操業停止がどこの企業に波及していくのかを見ていくことができるようになります。
▼企業間取引情報を活用した分析例
企業間取引情報を用いた道路のストック効果分析について
自然災害時の被害情報関するSNSデータ
自然災害時の被害情報に関するSNSデータでは、Twitter上でつぶやかれた被害情報に関する情報を「大雨」や「浸水・冠水」という状況別に、都道府県や市区町村レベルの位置情報および投稿された時刻付きで提供されています。
写真付きのものもあるので、現地の詳細な被害状況が確認でき、これらの情報と衛星データから確認できるマクロな情報を重ね合わせることで、衛星データでは浸水していると判定された場所が本当に浸水していたのか?などの検証に使うことができると考えられます。
(5)参考になるコンペ・論文
テーマ①:港湾におけるコンテナ物流
問1:衛星画像からのコンテナの抽出
・Change detection in SAR-images from the TerraSAR-X satellite with main focus towards harbors and container terminals
https://ffi-publikasjoner.archive.knowledgearc.net/handle/20.500.12242/984
本コンペでも提供されるX-BandのSAR画像を使った、港やコンテナターミナルの変化検出例を紹介しています。
様々に積まれるコンテナに対して、SARでどのように見えるかの考察がされており、ただ真上からコンテナの有無を確認するだけでなく、高さ方向の積まれ方の参考になるかもしれません。
・新型コロナウイルス感染症(COVID-19)流行前後の港湾(貨物埠頭など)の変化について
https://earth.jaxa.jp/covid19/industry/index.html
JAXAでも、JAXAのSAR衛星ALOS-2を中心に、港湾の時系列変化について可視化例を公開しています。
・安田広大・柴崎隆一,衛星画像とAISデータに基づくコンテナターミナルにおける混雑度の推計と分析,日本船舶海洋工学会講演会論文集,2022.5
論文の公開は2022年5月ですが、衛星画像とAISデータを使ってコンテナターミナルの混雑度を推計した研究が発表されます。
(公開され次第、ペーパーを公開します。)
本論文の中では、コンテナの影の影響を考慮した、衛星画像からのコンテナの抽出などが行われています。
問2:港湾における輸送手段の接続性の評価
・安田広大・柴崎隆一,衛星画像とAISデータに基づくコンテナターミナルにおける混雑度の推計と分析,日本船舶海洋工学会講演会論文集,2022.5
問1でも上げた論文ですが、衛星画像とAISデータを使って、ターミナルと船舶の接続性について考察しています。
・コンテナ・ターミナルにおけるトレーラーの交通特性とゲートの効果的な運用に関する研究、元野一生、2016
https://catalog.lib.kyushu-u.ac.jp/opac_download_md/1785457/eng1599.pdf
ターミナルとトラックの接続性について研究されています。
問3:代替ルート検討
・Vulnerability analysis of global container shipping liner network based on main channel disruption
https://www.tandfonline.com/doi/pdf/10.1080/03088839.2019.1571643
海上輸送の中でのルート代替を研究している論文です。
・Ryuichi SHIBASAKI, Tomihiro WATANABE, Risk Assessment of Blockade of the Malacca Strait using International Cargo Simulation Model, Annual Conference of International Association of Maritime Economists (IAME 2010), 7-9 July 2010, Lisbon, Portugal
http://webpark1967.sakura.ne.jp/wp-content/uploads/hpb-media/img/file5.pdf
マラッカ海峡を対象に、陸路と海路の競合を考えた例になっています。
テーマ②:風水害におけるサプライチェーンへの影響可視化
問1:浸水域の推定
・合成開口レーダーを用いた浸水域および浸水深の推定法に関する研究
https://www.jstage.jst.go.jp/article/jscejhe/75/2/75_I_1471/_pdf
平成30年7月西日本豪雨において、ALOS-2のSAR画像を使って、浸水域を抽出しています。
SAR画像では水面で鏡面反射し暗く表示され、草地や構造物では明るく表示されます。災害前後の衛星画像を赤とシアンに着色し、加算処理を行うことで、被災前後で変化のない地域はグレースケールで表示され、浸水域は赤く表示されます(加色混合法)。
問2:風水害がサプライチェーンに与える影響(他の企業や地域に波及していく状況)の推定
・柴崎隆一,東日本大震災による港湾都市における産業・物流の被害・復旧状況,国土技術政策総合研究所資料,No.677,106p.,2012.3
http://www.nilim.go.jp/lab/bcg/siryou/tnn/tnn0677pdf/ks0677.pdf
東日本大震災の時に浸水深と復旧日数の関係などを新聞記事からピックアップし、その関係を可視化した結果が入っています。
サプライチェーンにおける震災の間接被害に関する研究
精密機器企業の東日本大震災における間接被害実態と対応策の分析
https://www.jstage.jst.go.jp/article/trafst/7/2/7_116/_article/-char/ja/
問3:サプライチェーン・輸送経路の代替手段の検討
災害に限らず動的なサプライチェーン・輸送経路の最適化については、ネットワーク問題として多くの研究が実施されていますので、読者の皆様で探してみてください。
(6)まとめ
以上、現在募集しているサプライチェーンに関するコンペの概要とその意義、提供されるデータと参考になりそうな論文について紹介しました。
なかなか複雑なテーマ設定になっていますが、実施期間が2022年11月までと比較的長く、課題がいくつかのステップに分けられていますので、興味を持たれた方はぜひ応募いただければと思います。
テーマに関する参考資料
・通商白書2020
第2部 コロナショックとグローバリゼーション
第1章 コロナショックが明らかにした世界の構造
https://www.meti.go.jp/report/tsuhaku2020/2020honbun/index.html