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NTTとスカパーJSATがジョイントベンチャーを設立へ。年内に衛星を発注予定【宇宙ビジネスニュース】

【2022年5月2日配信】一週間に起きた国内外の宇宙ビジネスニュースを宙畑編集部員がわかりやすく解説します。

4月26日、日本電信電話(以下、NTT)とスカパーJSATは、合弁会社「Space Compass(スペースコンパス)」を2022年7月に設立する予定であることを発表しました。

NTTとスカパーJSATは、2021年5月に、新たな宇宙事業創出をめざすビジネス協業を目的とした業務提携契約を締結していました。

Space Compassは、2021年5月に構想が発表されていた宇宙データセンタ事業と宇宙RAN事業に取り組むとのことです。

記者発表会にて撮影

Space Compassの事業概要

ここからはSpace Compassが取り組む事業を紹介します。

宇宙データセンタ事業

Credit : NTT/スカパーJSAT

衛星事業者向けに、膨大な衛星データを、静止軌道(GEO)衛星を経由することで、準リアルタイムに地上へ高速伝送する光データリレーサービスです。サービス提供は2024年度に開始します。スカパーJSATの代表取締役執行役員社長 米倉英一氏は、4月26日に開催された記者発表会で「理論上は、(データを)10分から20分の範囲で地上に伝送できる」と説明しました。

宇宙RAN事業

Credit : NTT/スカパーJSAT

高高度プラットフォーム(HAPS)を用いた、低遅延の通信サービスです。2025年度に国内でサービス提供開始を目指しているとのことです。

宙畑メモ HAPS
通信装置を搭載した高高度無人機HAPS(High Altitude Platform Station)を上空20kmに飛ばすことで、広いエリアに通信サービスを提供する取り組みが進められています。スカパーJSATは、NTTドコモと実証実験を行っています。

NTTの代表取締役社長 澤田純氏によると、当面はHAPSを40機上げる見込み。最大の特徴は、普段使いのスマートフォン端末で利用が可能なことです。HAPSに大型のアンテナを設置することで、衛星による通信サービスのような専用のアンテナがなくとも、利用することができます。

また、HAPSに割り当てられる周波数は未定で、調整を進めていく必要があります。

宇宙RAN事業は、HAPSを用いた通信サービスの立ち上げからとなりますが、将来的にはGEO衛星やLEO衛星を順次追加・統合して、最適化したサービスを展開する方針です。実現すると、HAPSだけではカバーしきれない国内の離島などにもサービスが提供可能になります。

スカパーJSATの米倉氏は、宇宙空間に打ち上げると回収できない衛星とは異なり、HAPSは状況に合わせて上げ下げできることがメリットだと説明した上で、

「衛星とHAPSを組み合わせて、地政学的な変化や様々なリスクに手を打っていくことになると思います」

と話しました。

1000億円規模の事業創出を目指す

Space Compassには、NTTとスカパーJSATの両社が90億円ずつ出資し、合計180億円の資本金から事業を開始します。スカパーJSATの米倉氏は

「早期に100億円規模、将来的には1000億円規模の事業創出を目指して参ります」

「現在40兆円程度と言われている宇宙産業の市場が、2030年代に向かって3倍、4倍に伸びると言われています。(目標額は)現実的な我々のターゲット数字ではないかと思います」

と語りました。

Space Compass は2022年内に衛星をはじめとするインフラを発注し、2025年に開催される2025年日本国際博覧会(通称、大阪・関西万博)では、NTTの大容量光通信技術の宇宙での実証を披露する予定です。

記者発表会にて撮影

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参考

NTTとスカパーJSAT、株式会社 Space Compassの設立で合意~持続可能な社会の実現に向けた新たな宇宙統合コンピューティング・ネットワーク事業をめざして~