宙畑 Sorabatake

衛星データ

衛星データを購入する手順や注意するべきポイントと用語解説~衛星データプラットフォーム「Tellus」で商用最高級の衛星データを買ってみた~

Tellusでの衛星データ購入方法を例に、衛星データを購入するに当たっての手順や注意するべきポイントを紹介します。

本記事は、無料の衛星データを解析してみて、初めて実際に有料の衛星データを購入したい!と思った方を対象にした記事です。

Tellusでの衛星データ購入方法を例に、衛星データを購入するに当たっての手順や注意するべきポイントを紹介します。

(1) Tellusで衛星データを購入する3ステップ

Tellusで衛星データを買う時の流れは大きく3ステップです。

① 衛星データを検索して見積もり依頼を出す
② 衛星データ購入の詳細条件を調整する
③ 衛星データが届く

各ステップについてそれぞれ説明していきます。

(2) 衛星データを検索して見積もり依頼を出す

まずはTellus Traveler(以下、Traveler)にアクセスしましょう。
Tellus Traveler

Travelerには「利用する」と「購入する」の2つのページが存在しています。ここでは、「購入する」のページから購入したい衛星データを検索します。

検索しても思うようなデータが見つからない場合には、お問い合わせから問合せをして、Travelerに掲載されていないデータや新規での撮影依頼などをお願いしてみても良いでしょう。

Travelerから見積もり作成を依頼した後に、より良いデータを提案してくれることもあります。この時点では購入が確定するわけではないので、まずは気軽に見積もりを依頼してみてください。

詳細な方法は以下のTellus公式ページをご覧いただければと思います。
商業衛星データの購入|Traveler利用ガイド|Tellus

(3) 注文した後に必要な手続き

Travelerから見積もり依頼を出すと、数日中に担当者の方からメールにて連絡が来て、詳細な条件を詰めて行くことになります。

この時気を付けるべきポイントについては、以下の記事でもまとめていますので、ぜひご覧ください。

このステップでは、自分が注文する衛星データについて細かい条件を決めて行くことが求められます。正直、初めて衛星データを購入する方には何のことやら良く分からないことが多いかと思います。

決めなくてはいけない条件は、衛星によって異なりますが、ここではざっくりしたイメージを掴んでいただくために、デフォルメした内容で、解説していきます。

撮影済み画像の場合

製品パラメータ

すでに撮影済みの画像を購入する場合、撮影条件自体はすでに決定されていますが、データをどう処理した状態のものを購入するか、を指定する必要があります。

例えるなら、ステーキの焼き加減を選ぶようなものでしょうか。
これは「製品パラメータ」などと呼ばれています。

具体的には以下のような項目を決める必要があります(今回の項目はMAXAR画像の例)。

・解像度
文字通り、衛星データの解像度を決めます。

衛星毎に解像度は一意に決まっているのでは?と思われるかもしれません。そうであることが一般的ですが、MAXAR社のデータの場合、敢えて解像度を落とすことでデータの価格を安くすることができます。

自分の利用用途に合わせて、必要な解像度を選択することで、価格を抑えることができます。

どの解像度が良いか分からないという方は、担当の方に相談してサンプル画像を見せてもらうなどして、イメージを掴むと良いでしょう。

・製品種別(プロダクト)
衛星データの処理レベルを選びます。処理レベルについて詳しくは、こちらの記事をご覧ください。

どのような解析を行う予定なのかによって、購入すべき処理レベルは異なります。

光学画像の場合、オルソ補正されているか否かが大きな分かれ道になります。衛星データを地図と重ねて表示した時に、背の高いビルなどが倒れて見えることを避けたい場合にはオルソ補正済みのデータを選ぶと良いでしょう。

海辺など高度が高くない画像であれば、オルソ補正していてもしてなくても大差ないと思われますので、価格が安く納期も短いオルソ補正前のデータで良いと思われます。

SARデータの場合、干渉SAR解析を行うのであれば、位相情報を含んでいるデータである必要があり、L1.1を購入しなければいけません。

どのレベルのものを購入すべきか迷ったら、担当の方に購入後の使い方を説明して相談してみると良いでしょう。

・バンド数
光学画像の場合、赤青緑だけでなくそれ以外の波長でも撮影を行っています。詳しくは、衛星データの波長記事をご覧ください。

自分が行いたい解析に対して、どの波長が含まれているのか、良く確認するようにしてください。

シンプルにGoogle Mapのような画像として使いたい場合には、3バンド(赤青緑)を選択すれば良いでしょう。植生の様子を見たい場合には近赤外の波長を良く使うため、赤青緑に加えて、近赤外の波長まで含んだ条件にしておく方が望ましいです。

さらにマニアックに、短波長赤外などの波長を使いたい場合には、そのバンドを含んでいる条件で購入するようにしましょう。

・ビット数

さらに、マニアックなのはビット数(ビット深度)です。

ビット深度は簡単に言うと、データの各ピクセルが表現する明るさの段階の多さです。ビット数が多いほどより細かく明るさを表現することができるようになります。

パソコンの画面で表示させるだけであれば、8bit以上は表示できないので、8bitにしておけば十分ですが、ピクセル値(DN値)を解析などで用いる場合にはなるべく大きなビット数にしておく方が良いでしょう。

ビット数については宙畑の以下の記事で簡単に紹介しています。

・リサンプリング

こちらも細かいので、あまり気にしなくても良いかもしれません。

画像化する際にどのように値を補間していくか、という意味です(上図)。こだわりが無ければ、三次畳込内挿法(CC:Cubic Composition)か最近隣内挿法(NN:Nearest Neighbor)あたりにしておくのが良いでしょう。

・測地系
衛星データは単なる画像データではなく、地図上にデータを投影できるよう位置情報を付加した状態で納品されるケースが一般的です。

使う予定のソフトウェアや解析のアルゴリズムで使用する測地系があらかじめ決まっている場合には、合うものを選択しましょう。

測地系についてはこちらの記事もご参照ください。

・ファイル形式
先ほど申し上げた通り、衛星データは位置情報付きのデータとして納品されます。GeoTIFF形式で扱うことが一般的ですが、その他のデータ形式を希望する場合には、相談してみましょう。

・納品媒体
購入量が少なければ、インターネット経由で納品されることが多いですが、国の委託事業などで購入する場合など現物が必要な場合には、DVDやHDDなどに格納し物理的な納品をしてもらいましょう。

以上、初心者にはかなりややこしい「製品パラメータ」について紹介しました。なかなかすぐに理解するのは難しいかもしれません。担当者の方と相談しながら決めていくようにしてください。

利用条件およびライセンス

衛星データを購入する時の条件として、もう一つ重要なのは購入したデータをどのように利用して良いか、ということです。

許可されている内容に依って販売価格が異なるケースもありますので、良く理解して購入するようにしてください。必要に応じて、使い方の想定を説明して問題ないか、衛星データプロバイダに確認することも有効です。

使用条件が定められた文書を使用許諾条件書、英語でEnd User License Agreement、略してEULA(ゆーら)と呼びます。内容は衛星データ毎に異なりますが、EULAの中では以下のような内容が規定されていますので、自分が予定している使い方に合っているか確認しましょう。

・データは内部利用か、画像自体を社外に公開するか
・画像自体をインターネット上で掲示したり、印刷物として配付してよいのはどういう場合か(ピクセルサイズの指定、クレジットの明記、無償/有償など)
・画像を元にして作った二次成果物を商用利用してよいか

また、データを複数の法人で用いる場合、”マルチライセンス”と呼ばれる特別なライセンスを購入する必要があるので、注意が必要です。

このあたりは以下の記事でも解説しているので、参考にしてください。

新規での撮影を依頼する場合

すでに撮影された画像ではなく、新たに撮影を依頼する場合、以下の項目を指定する必要があります。

・撮影の開始日と終了日
衛星は地球を周回しているので、任意のタイミングで撮影できるわけではありません。また、光学衛星の場合雲がかかっていては撮影出来ないケースもあります。

また、撮影依頼が同じタイミングで他のお客様と重なった場合や災害など緊急撮影が行われる場合、予定していた撮影が実行されないケースもあり得ます。

したがって、新規撮像を依頼する場合は少し期間に幅を持って、例えば1か月の間で撮影してほしいなど、具体的に期間を提示して撮影を行う必要があります。

・撮影角度(オフナディア角)
衛星は衛星の直下点だけを撮影しているわけではありません。衛星に搭載されているセンサを傾けて、斜めに撮影することも可能です。

光学画像の場合、特段斜めから撮影したい希望がない場合には、20~30°以内などと指定しておくと良いでしょう。

SAR画像などで、過去に撮影したデータとの比較を行いたい場合には、撮影角度が異なると、比較が難しくなるので、揃えることが望ましいです。

・雲量
雲がどれくらい以下であるデータを購入するか、を事前に規定することができます。

標準的な値は衛星ごとに決まっていることが多いですが、どうしても雲がない画像が手に入れたい場合には、割り増し料金を払って、雲量の低い画像を手に入れられるようにしましょう。

ここで注意しなければいけないのは、雲量とは、購入するエリア全体の中で雲が占める割合のことであり、例えば雲の量はほんの少しでも自分がみたい場所にちょうど雲がかかる可能性はゼロではありません。その場合でも、規定された雲量を満たしている場合には購入しなければなりません。

梅雨の時期など雲が多い時期は注意が必要です。

・観測モード
衛星によっては、同じ場所を撮影する時に複数の観測モードを有している場合があります。解像度や撮影範囲が異なることが多く、価格も異なるので、説明を良く読んで適したものを選択しましょう。

(4) 納品されたらデータをチェック

以上の非常に長い道のりを乗り越えて、衛星データの注文が完了したら、あとは納品されるのを待つばかりです。前章で説明したとおり、衛星データには様々な条件があり、オーダーしてから注文内容に応じて、データを生産しているため、納品には数日~1週間程度かかる場合があります(ポリシーの調整などによってはもっとかかる場合も)。

データが届いたら、さっそく衛星データを確認してみましょう。前章で述べた通り、衛星データは一般的な画像データとは異なる側面を持つため、PCにあらかじめインストールされているような画像表示ソフトウェアではうまく表示されないケースがあります。

衛星データを扱うことができるソフトウェアは以下の記事で紹介していますので、参考にしてください。

納品されたら、早めにデータを確認してみることをおススメします。
検査などは各ステップで実施されているはずですが、手作業での生産になるため、注文していたものと違う場合には、すぐに担当者の人に相談するようにしてください。

以上、衛星データの購入方法について、ご紹介しました。
色々とややこしくて想像以上に時間がかかるかもしれませんが、ぜひ頑張っていただけたらと思います。

Tellusではより手軽に衛星データを購入していただけるよう、サポートも実施しております。お気軽にご相談ください!

購入した衛星画像を解析してみた記事の紹介

宙畑では、実際に購入した記事を用いてアノテーションのやり方の解説や、桜や車両の検知、NDVIの解析記事を公開しています。衛星データ解析に興味がある方はぜひあわせてご覧ください。