衛星データ

新千歳空港閉鎖!? 積雪状況を3種類の衛星データで見比べてみた

飛行場の欠航情報は随時空港や航空会社から提供されますが、空港が今どんな状況なのか気になるところ。今回は、様々な衛星データを使って空港の積雪状況を見ていきます!

2018年12月7日から8日にかけて新千歳空港が雪のため閉鎖され、100便以上が欠航したというニュースがありました。

飛行場の欠航情報は随時空港や航空会社から提供されますが、空港が今どんな状況なのか気になるところ。

テレビのお天気ニュースでは空港に設置された固定カメラの様子も流れますが、奥まで見通しがきかないことも多いです。

今回は、様々な衛星データを使って空港の積雪状況を見ていきます!

※本記事は宙畑メンバーが気になったヒト・モノ・コトを衛星画像から探す不定期連載「宇宙データ使ってみた-Space Data Utilization-」の第13弾です。まだまだ修行中の身のため至らない点があるかと思いますがご容赦・アドバイスいただけますと幸いです!

(1)今回の調査概要

まずは、今回の調査概要をまとめてみました。

今回の解析では、衛星データから「雪の有無、雪の深さ」を探ります。

エリアは「新千歳空港」で、対象期間は報道のあった2018年12月7日から8日周辺とします。

どの衛星データを使うと良いかはまだ分からないため、気象衛星、光学衛星、SAR衛星を候補に挙げておきます(衛星データについて、詳しくはこちら)。

また、実際にどの程度雪が積もっていたか、すなわち正解データ(機械学習では”教師データ”とも呼ばれますね)は、気象庁が地上の観測装置を用いて測定したデータを用いてみようと思います。

(2)お天気といえば、気象衛星「ひまわり」

まず、雪の状況を衛星でと思って思い当たるのは、気象衛星「ひまわり」です。

”気象”と付くくらいですから、雪の状況もきっと見えるはずです。

「ひまわり」の画像はJAXAひまわりモニタやNICTのひまわりリアルタイムWebで確認できます。

ひまわりリアルタイムWebで12月7日のひまわりの映像を確認してみると、こんな感じです。

気象衛星「ひまわり」でみた2018年12月7日10:50の北海道の様子 Credit : 情報通信研究機構(NICT)

雲、、、、そして解像度が粗い、、、、

これでは新千歳空港を見ることは難しそうです。

気象衛星「ひまわり」の良いところは、静止軌道という常に日本域を観測できる軌道上にあるため、数分間隔で観測ができることです。

上記WEBサイトより12月7日から8日にかけてはほぼ雲で覆われていることを確認できました。

一方で、静止軌道は地球から3万6千キロメートル離れたところにあるため解像度が数キロメートルと粗く、細かいところを見るためには不向きです。

さらに、太陽の光で観測を行う光学センサであるため、雲があったり夜であったりすると観測が行えません。

(3)いつもの光学衛星「Sentinel-2」「Landsat-8」

「ひまわり」の画像によって7日から8日にかけては新千歳空港の上空に雲がかかっていることが分かったため、他の光学センサでも地上の様子の確認が難しいことが分かりましたが、せっかくなので、晴れていれば他の光学センサでどのような画像が見られるのか、確認しておきます。

宙畑でもよく登場するのが、欧州の「Sentinel-2(センチネルツー)」と米国の「Landsat-8(ランドサットエイト)」という衛星です。

どちらも政府が整備している衛星であり、無料で衛星データを入手することができます。

「Sentinel-2」で晴れている日の新千歳空港の様子をとらえた画像がこちら。

「Sentinel-2」がとらえた晴れた日の新千歳空港 Credit : Copernicus

滑走路がきちんと除雪されている様子まで見て取れますね。

さきほどの「ひまわり」が上空3万6千キロメートルから撮影しているのに対し、これらの衛星は上空約500キロメートルほどのところから撮影しているため、解像度は数10メートルと「ひまわり」に比べて良いのが特徴です。

ただし、こちらの衛星は常に日本上空にいるわけではなく、くるくると地球の周りをまわっているため、観測の頻度は5日~2週間です。

今回の新千歳空港の2018年12月の場合、「Sentinel-2」と「Landsat-8」で合わせて観測できていたのは全部で12回で、そのうち8回の画像は雲で覆われており、空港の様子を見ることはできませんでした。

ちなみに、晴れていれば光学画像の中の「緑色の成分」と「短波長赤外線の成分」を以下の式で計算することによって、雪を検出することができます。

この式のことをNDSI(Normalized Difference of Snow Index)といい、値が0.42以上のものを赤く塗りつぶした画像がこちら。

雪を識別し、赤く塗りつぶした様子 Credit : Copernicus

滑走路が除雪されている様子がよく分かりますね。

(4)雲や夜に強いSAR衛星「Sentinel-1」

地上の様子を調べるにあたり、雲でよく見えない時などに適しているのが、SAR画像です。

SARについてはこちらの記事(合成開口レーダ(SAR)のキホン~事例、分かること、センサ、衛星、波長~)で解説しています。

欧州のSAR衛星である「Sentinel-1」の画像を確認してみます。

まずは雪の降る前のSAR画像がこちら

SAR衛星「Sentinel-1」でとらえた新千歳空港(積雪無し) Credit : Copernicus

この画像では画像の色を以下のように割り当てています。

[RGB] = [VV, 2 VH, VV / VH / 100.0]

このVVやVHは「偏波(へんぱ)」と呼ばれるSAR画像の成分に相当するもので、電波の進行面の向きを表します。

雪が降っていた12月11日、午前6時頃の画像を見てみます。

SAR衛星「Sentinel-1」でとらえた新千歳空港(12月11日) Credit : Copernicus

こちらでは滑走路の脇のエリアがかすかに青く見えています。

さらに別の画像を見てみます。こちらは2019年1月28日の午前6時ごろ画像です。

SAR衛星「Sentinel-1」でとらえた新千歳空港(1月28日) Credit : Copernicus

滑走路の脇がかすかにピンク色に見えます。

積雪・除雪の状態によってSAR画像でどう見えるかに違いがあるようです。

この時点では、何によって見え方が異なってくるのか良くわからないので、実際の積雪・除雪の様子を探ってみることにしましょう。

(5)地上の正解データを確認してみる

前章で確認したSAR画像の見え方の違いは一体なんなのでしょうか。

実際の積雪状況を確認するために、まずは気象庁のアーカイブデータを探ってみます。

まずは、全体に青っぽく見えていた12月11日の午前6時前後から。

Credit : 気象庁

積雪は6センチで、雪は降ってはいないことが分かります。前日の夜も雪は降っていないことから、滑走路の路面は見えており、芝生だけが雪で覆われ、衛星から発射した電波がほとんど返ってきていない状態ではないかと想像できます。

次に、端の部分だけかすかにピンク色に見えた1月28日の午前6時頃の気象データです。

Credit : 気象庁

同様に雪は降っていないようですが、積雪が23センチと先ほどと比べて厚くなっています。

そもそも、ピンク色はVVと呼ばれる成分が強いという意味です。

VVは電波の進行面の向きが変わらずに反射してくるという意味で、ガラスや金属などツルツルした人工物の場合によく反射します。

ここからは推測ですが、滑走路脇に除雪され、少し氷状になった雪が積まれていたのではないかと考えられます。

新千歳空港の除雪作業の様子

SAR画像と気象庁の測定データをまとめて、考えられる推定は以下の通りです。

(6)まとめ

今回は空港の滑走路の積雪状況をテーマに、衛星データでどのように見えるかを探りました。

まとめると以下の通りです。

そして、積雪・除雪の状態によって見え方が異なってみえたSAR画像と、実際にどれほど積雪があったのかを記録した地上での測定データを比較することによって、SAR画像からなぜそう見えたのかを推定しました。

実はこの「地上の測定データと比較する」というのがとても大切なテーマになります。

衛星データは遠く離れたところから撮影しているため、地上が実際どのようになっているのかはよく分からないことも多いです。

地上の測定データと組み合わせることで初めて、衛星データに意味を持たせることができるのです。

そして、衛星データに意味を持たせることができれば、地上の測定データのない地域の様子も推測することができるようになります。

今回は触れませんが、空港に取り付けられたお天気カメラや航空会社の欠航情報、SNSでのつぶやきなども手掛かりになるかもしれません。

このように衛星データと地上データを組み合わせることで、測定できるものの可能性が広がっていくんですね!

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