【実証パートナー募集】全国でAIロボット農場を展開するAGRISTが衛星データ解析を融合したデータ駆動型農業の研究を開始
AIロボットによる自動収穫技術と衛星データの統合により、農業の生産性と持続性の向上を目指す新たなデータ駆動型農業システムの研究開発が開始されました。その概要について紹介します。
2025年5月1日、「世界の食糧問題を解決する」をビジョンに掲げ、全国でAIロボット農場を展開するAGRIST(本社:宮崎県新富町)が、AIロボットによる自動収穫技術と衛星データの統合により、農業の生産性と持続性の向上を目指す新たなデータ駆動型農業システムの研究開発を開始すると発表しました。本プロジェクトは、国が掲げる「みどりの食料システム戦略」の実現に資するもので、特に農薬使用量と環境負荷の低減を目的としているとのこと。
AGRISTが衛星データ活用で目指す4つの機能強化とパートナー募集
AGRISTはこれまで、画像解析を活用したAIロボットによって、農作物の自動収穫や労働力不足への対応を進めてきました。今回の取り組みでは、既存の圃場単位の情報に加え、衛星データから得られる広域情報(地表面温度、植生指数、土壌水分、気象パターンなど)を組み合わせることで、以下のような機能強化を目指すと期待されています。
1.精密な生育診断と収量予測
衛星データによる圃場全体の生育状況と、ロボットによる個々の作物の詳細データをAIが統合分析し、より高精度な生育診断と収量予測を行います。
最適なリソース管理
衛星データで把握した土壌水分や栄養状態に基づき、必要な区画や作物に対してAIロボットがピンポイントで水やりや施肥を行います。これにより、水資源や肥料の無駄を削減し、環境負荷を低減します。
3.病害虫・病気リスクの早期発見と予防的防除
衛星データから得られる環境情報と過去の発生データをAIが分析し、病害虫や病気の発生リスクが高いエリアを早期に特定します。リスクに応じたロボットによる選択的な・予防的な薬剤散布や対策が可能となり、農薬使用量の劇的な削減を目指します。
4.気候変動への適応力強化
衛星データによる長期的な気候変動パターンと作物の生育データの分析に基づき、気候変動の影響を受けにくい栽培方法や品種選定に関する示唆を得ることで、農業の持続性と安定性を高めます。
このシステムの社会実装に向けて、「農業分野における新たな価値創造と社会課題の解決に意欲のある企業様からのご連絡をお待ちしております」という言葉とともにAGRISTでは共に実証実験に参加する企業・団体の募集もプレスリリース内で告知されていました。農業に興味関心が高い企業、また、みどりの食糧システム戦略で脱炭素といったキーワードに注目しているといった企業はプレスリリースに記載の問い合わせ先までご連絡してみてはいかがでしょうか。
農業が直面する喫緊の課題をAIロボットで解決し、面的な課題解決にも挑む研究開発への期待
本プレスリリースが興味深いのは、農業の課題解決にAIロボットというサービスを提供していた企業が、農業課題を解決する新しいテクノロジーとして衛星データに着目したということです。
AGRISTはこれまでにピーマンやキュウリなどの収穫ロボット導入を行ってきた実績があり、一つひとつの圃場における農作業の効率化と収量予測の技術をすでに獲得しています。
衛星データを利用する場合、衛星データだけでは地上の状態の確からしさの検証ができないため、地上のデータを参照しながらデータ分析を行うことが非常に重要です。その点、AGRISTはすでに地上の精密なデータを把握する技術を獲得しており、それらのデータと衛星データの分析をかけ合わせることは、衛星データの分析結果の精度を高めるうえでも非常に重要です。
現場レベルの精密観測・収穫・収量予測技術と、人工衛星が観測する広域・長期的なデータとの連携により、農業の運営判断がより科学的かつ先読み可能になる、まさにデータ駆動型農業の新しい形と言えるでしょう。
また、少子高齢化や技術継承という課題が顕在化し始めている農業ですが、近年は気候変動も大きな懸念事項のひとつです。その点、衛星データを活用した長期的な気候変動の観測と気候変動に適応した栽培手法や品種選定にもリリース内で言及されていることはどのような研究結果が生まれるのか非常に楽しみなポイントです。
研究の結果次第で衛星データ活用の新たな実装モデルが生まれる可能性があることにも期待が高まります。
今後、AGRISTの試みにより、衛星データの利活用が農業の現場にどのように浸透し、どのような成果が生まれるのか、注目です。