みかん農家に聞いた「美味しいみかん畑の4つの条件」を衛星データで検証してみた
みかん農家の方に美味しいみかんが育つ条件を教えていただき、実際にみかんの名産地ではその条件を満たしているのか検証してみました。
2022年8月31日以降、Tellus OSでのデータの閲覧方法など使い方が一部変更になっております。新しいTellus OSの基本操作は以下のリンクをご参照ください。
https://www.tellusxdp.com/ja/howtouse/tellus_os/start_tellus_os.html
気温が温かくなり、みかんの季節がいつの間にか終わってしまいました。みかんが大好きな筆者は、毎年いまかいまかと、美味しいみかんを楽しみに1年を過ごしています。
みかん畑ってどのような場所にあるか、ご存知でしょうか。実は、美味しいみかん畑には共通項があるのです。
その共通項と言われている条件は果たして本当なのか? みかんの名産地である熊本のみかん畑を例に、確認してみました。
(1)美味しいみかんが育つ畑の条件
まず、みかんが育つのに条件について。
みかん農家の方々にヒアリングしたところ、みかんが育つ上で、4つの因子があると言われていることが分かりました。
それは、日射量と気温、降雨量に土質です。
・日射量
年間を通しての日射量が重要だそうです。愛媛を例にとれば、太陽からの光、海面からの反射光、石垣からの反射光があることがみかんの生育を手助けしていると言います。
・気温
日本土壌協会の資料によると年平均気温が15℃~17℃、最低気温が-8℃以下にならないことがみかんが育つための条件と言われています。
・降雨量
愛媛大学の論文によるとクエン酸、糖分含有量は同産地で相対的に降雨量が少ない年の方が高い数値を示したため、美味しいみかんには適度な乾燥ストレスが必要だと推察できます。
・土質
日本土壌協会によると土質は水はけが良く、 乾燥期は保水性が高い土壌で小石と粘土を適度に含む土壌がいいと言います。
そして、当然育てたみかんは出荷しないといけないので、交通の便が良い立地にみかん畑を設けることが重要とも言われています。
(2)みかん畑を選定、みかんの作付けスケジュール確認
まず、対象とするみかんがいつ収穫時期なのかを調べます。
今回は早生みかんを対象とします。なので、9月-11月に収穫時期が来るそうです。
次に、調べる範囲を明確にするために、見たいみかん畑のGeoJSONファイルを作成してTellus上に表示します。
GeoJSONの作成方法は「【ゼロからのTellusの使い方】GeoJSONのオープンデータをTellusに表示する」をご覧ください。
「取り込みマップ」から、作成したGeoJSONファイルを読み込むと上のようになります。
※航空写真からおそらくみかん畑だろうというところを囲んでいます
次に、データを比較しやすいように、二画面に分割します。
左側にオープンストリートマップにGeoJSONを重ねたものを、右側に衛星データを並べてみました。
さて、さっそく冒頭で紹介した条件と熊本のみかん畑が合致しているのか検証していきましょう。
確認することは、
1.日射量はどうか?また、海面からの反射がありそうか?
2.気温はどうか?年平均気温が15℃~17℃、最低気温が-8℃以下にならないか?
3.降水量はどうか?降雨量は少ないか?
4.土質はどうか?水はけが良いか?
の4項目です。
それでは順を追って確認していきます。
(3)データからみかん畑を調べる
(3-1)日射量はどうか?
まず、晴天率を調べます。過去の降水量等はTellusでも確認できますし、地道に雲の有無を確認しても良いのですが、今回は「福岡管区気象台」に、過去データ含めた晴天率がまとめられているので、そちらで確認します。晴天率、通年だと54%ほどと全国12位のようです。晴天率は十分そうですね。
次に、日射量を上げる要因となる斜面であるか?海からの反射は望めそうか?ということを見てみます。
図で見てみると、海際にあり、斜面であることから、日照量を見込めそうだということが分かります。
(3-2)気温はどうか?
年平均気温が15℃~17℃、最低気温が-8℃以下にならないか、ということを調べます。
Tellus上でも温度情報は確認できます。
気象庁のページにアクセスすると、以下のように「地点」「項目」「期間」を選択することができます。
ここ10年の熊本の平均気温を図示すると次のようになります。
年平均気温が15℃~17℃、最低気温が-8℃という条件を満たしていることが分かりますね。
(3-3)降水量はどうか?
次に、降水量を調べます。
こちらもTellus上で確認できますが、温度同様、定量的に知りたいため、気象庁のページから確認していくことにします。
気温と同様の手順でデータをダウンロードすると、このような具合になります。
全国平均に比べると22位と、やや降水量が少ない、という具合のようです。参考として、その他のみかん名産地である愛媛県、和歌山県はより降水量が少ないようでした。
(3-4)土質はどうか?
最後に、土質を調べます。
残念ながら2019年2月28日現在、Tellusでは土質を確認することはできません。
そこで、産業技術総合研究所(AIST)のホームページにアクセスし、土質を調べることにします。
今回調べている地域は「粘土集積赤黄色土」というようです。
調べてみると、
”””「粘土集積層」をもつ赤黄色土。本土壌群は主に、本州の中位段丘から高位段丘上および南西諸島一帯の平坦で安定した地形面に分布する。畑、果樹園などに利用されている。”””
- 農研機構より
とのことで、みかん畑として利用するのに申し分のない土地であることが分かりました。
(4)まとめ、考察
今回は美味しいみかんが育つのに必要と言われている各種条件が、本当かどうか、熊本県のみかん畑を例に各種データから確認してみました。
結果的に、今回調べたみかん畑は各条件に該当しているということが分かりました。
日照時間や平均気温、合計降雨量で同じくみかんの名産地である和歌山県や愛媛県と比べてみても、日照時間と気温については同様な環境条件であり、確からしそうだ、ということがわかります。
降雨量については各地でも若干の差もあり、降雨量はもしかすると他の要因に比べると影響度合いが小さいのか?と感じられました。適度な乾燥ストレスという項目を定量化することができれば、より詰めて考えることができるかもしれません。
他の地域も調べてみないと必要十分な条件かは分かりませんが、必要と言われている条件は、どうやら本当に必要なようです。
今回は、みかん畑な場所を対象にどのようになっているか、調べてみました。しかし、逆にこのような条件に合致し、かつ今のところみかん畑となっていない場所を調べることで、新たな耕作地を見つけることができるかもしれません。
地球温暖化の影響により、適した耕作地や漁場が変わってきている、というニュースがちらほらと入ってくるようになってきました。
今回の記事をきっかけに、みかん畑のみならず、他の農作物等についても、実はこちらの方が良いのではないか……?ということを探してみるのも良いかもしれません。
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