Sierra SpaceとVast Space、同日に両社ともに700億円超を調達も両社の資金使途に違い【宇宙ビジネスニュース】
Sierra SpaceとVast Spaceが同日に大型調達を発表。両社の戦略の違いや、日本企業も多数参画するポストISS競争の最新動向をまとめました。
2026年3月5日、米国のSierra SpaceとVast Space(以下、Vastと表記)がそれぞれ大型の資金調達を発表しました。
Sierra SpaceはシリーズCラウンドで5億5000万ドルを調達し、企業評価額は80億ドルとなりました。
Sierra Spaceは、コロラド州に本社を置く防衛宇宙技術企業です。衛星や宇宙船、再利用可能な宇宙往還機「Dream Chaser」などを開発しています。
宙畑メモ:Dream Chaserとは
Sierra Spaceが開発している再利用型宇宙往還機。ISSへの貨物輸送を担う予定で、2026年後半にデモンストレーション飛行が計画されています。滑走路への着陸が可能な点が特徴です。
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Sierra Spaceは30年以上の宇宙飛行実績と、500以上のミッションに関与する実績があり、Blue Originとの共同での商用宇宙ステーション開発プロジェクト「Orbital Reef」のパートナー企業としても知られています。
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同日には、Vastも5億ドルを調達し、2社合計で10億5000万ドル (約1,650億円超) もの資金が集まったこととなります。
Vastは、カリフォルニア州ロングビーチに本社を置き、次世代宇宙ステーションを開発しています。2021年設立ながら、2025年11月には技術実証機「Haven Demo」の打ち上げ・運用・軌道離脱に成功し、急速に存在感を高めています。
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また、昨年の12月には東京に日本法人「Vast Japan」を設立し、元JAXA宇宙飛行士の山崎直子氏が代表に就任しました。
上記の通り、両社はいずれも商用宇宙ステーションの開発に関わっています。
背景には、NASAが2030年のISS退役に向け、後継となる商業宇宙ステーションの開発を民間企業に促していることがあります。米国内で複数のプロジェクトが進行している比較表を作成したものが以下になります。
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比較表の通り、4つの主要プロジェクトが競い合っています。Axiom Station、Starlab、Orbital Reef(Blue OriginとSierra Spaceが共同主導)、そしてVastのHavenです。各社は2020年代後半〜2030年の運用開始を目指し、しのぎを削る状況です。
各プロジェクトには三井物産、三菱商事、三菱重工、兼松、MUFGなど多くの日本企業が出資や技術協力で参画しており、日本にとっても注目すべき動向です。
宙畑メモ:SORAxIO(ソラクシオ)とは
2024年11月に兼松、Space BD、DigitalBlast、JAMSS(有人宇宙システム)の4社が結成したコンソーシアム。名称は「Space Opportunities Revolution And Transfer to Innovative Outcomes」の略で、民間宇宙ステーション時代を見据え、宇宙環境利用の啓蒙活動・利用者支援・政策提言を連携して行っています。JAXAの「2025年度〜2030年度 JEM利用インテグレーション業務」も受託しており、ISS「きぼう」での知見を次世代に繋げる役割を担っています。
では、今回の資金調達の詳細を見ていきます。注目すべきは、両者ともに商用宇宙ステーションに関わる企業で、資金調達の金額は同程度ながら両社が予定する資金使途が異なるということです。
Sierra Spaceの本ラウンドは、グローバル投資運用会社のLuminArx Capital Managementがリードしました。大手投資会社のGeneral AtlanticやCoatue、Moore Strategic Venturesなど既存投資家も参加。同社の累計調達額は20億ドルを突破しました。
同社は今回の資金を国家安全保障宇宙事業の強化に充てます。生産能力の拡大や差別化ソリューションの開発を進めます。
一方、Vastの調達額5億ドルはシリーズAでのエクイティ3億ドルとデット2億ドルで構成されています。
宙畑メモ:エクイティとデットとは
企業が資金を調達する方法は大きく2種類あります。「エクイティ(株式)」は投資家に株式を発行して資金を得る方法で、返済義務はありませんが、会社の所有権の一部を渡すことになります。「デット(負債)」は銀行借入や社債など、返済義務のある資金調達です。
リード投資家は宇宙特化VCのBalerion Space Venturesが務めました。カタール政府系ファンドのQatar Investment Authority、三井物産、MUFG、ニコンなど多様な投資家が参加しています。今回の資金調達により、Vastへの累計投資額は10億ドルを超えました。
同社はこの資金を施設拡張、チーム拡大、ISS後継を目指す「Haven-2」の開発推進に活用するとしています。
Sierra Spaceのファティ・オズメン会長はこう語ります。
「2021年以降、Sierra Spaceは戦略的変革を進め、国家安全保障分野の顧客ニーズにより的確に応える、信頼性が高く即応性のあるソリューションを提供してきました。米国における宇宙・防衛分野のリーダーシップ強化につながるソリューションを推進し、国家安全保障分野の顧客への注力を一段と明確にし、次の成長段階に向けた体制を整えています」
Vastのマックス・ハオットCEOも意気込みを示しました。
「この投資は、当社の戦略とエンジニアリングの両方に対する市場の強い確信を裏付けるものです。低軌道経済は重要な転換点にあり、急速な成長に向けた態勢が整いつつあります。VastのHaven Stationは、微小重力研究や宇宙空間での製造に、安全かつ費用対効果の高い形でアクセスできるよう設計されており、政府機関や民間パートナーがこの新たな宇宙時代の商業的可能性を最大限に引き出せるようにします」
このように、両社の資金用途は大きく異なります。Vastは商業宇宙ステーション「Haven」の開発に充てる一方、Sierra Spaceは防衛・国家安全保障分野の衛星事業に注力する方針です。
Sierra SpaceはOrbital Reefのパートナー企業でもありますが、今回の資金調達では政府需要への対応を優先しているようです。
日本企業も多数参画する商業宇宙ステーション競争の激化と合わせて、宇宙空間を含めた安全保障の重要性も高まっています。今後の宇宙ビジネスを左右する大きな動向が2社の同日リリースから伺える1日でした。
参考資料
Sierra Space Closes $550 Million in Series C Round, with a Valuation of $8 Billion
Vast Secures $500M in Funding to Accelerate Production of Haven Space Stations

