宙畑 Sorabatake

特集

SDGs達成に向けて宇宙空間情報の活用を推進! IS4Dセミナーイベントレポート

最近何かと目にするSDGs。宇宙データとも密接な関わりがあります。イベントに参加してきました!

2019年3月15日(金)、市ヶ谷にあるJICA地球ひろばにて「SDGs達成に向けた宇宙・空間情報活用『「宇宙4SDGs』」IS4Dセミナー」が開催されました。この分野で様々な取り組みをされている専門家の方々が登壇され、プロジェクト紹介やパネルディスカッションが行われました。

第一部 プロジェクト紹介
「社会サービスデザインに基づく持続的な宇宙利用連携研究教育拠点(IS4D)」
柴崎亮介(東京大学教授)
「宇宙分野海外展開の報告」
福代孝良(東京大学特任准教授・内閣府)

第二部 パネルディスカッション
「SDGs達成に向けた宇宙・空間情報活用への期待」
モデレータ:
・福代孝良 (東京大学特任准教授・内閣府)
パネリスト:
・K. E. シータラム (アジア開発銀行研究所シニア専門家)
・中須賀真一 (東京大学教授)
・柴崎亮介 (東京大学教授)
・神武直彦 (慶應義塾大学教授)
・宍戸 健一 (国際協力機構農村開発部長)

最近ニュースなどで耳にする機会の増えてきた“SDGs”ですが、それと宇宙空間情報とにどのような関係があるのでしょうか?

宙畑編集部がレポートします!

(1)“SDGs”とは?何の略?17の項目を紹介何をするもの?

SDGsとは、「Sustainable Development Goals」の略で、日本語では「持続可能な開発目標」と呼ばれます。

簡単に言えば、国連が定めた地球規模で解決するべき課題のことで、17個のテーマが設定されています。

SDGsの前にはミレニアム開発目標「MDGs(Millennium Development Goals)」というものが設定されていました。

MDGsが開発途上国のための目標であったのに対し、SDGsは貧困格差の問題、持続可能な消費や生産、気候変動対策など、先進国が自らの国内で取り組まなければならない課題を含む、全ての国に適用される普遍的(ユニバーサル)な目標です。

また、その達成のために、先進国も途上国も含む各国政府や市民社会、民間セクターを含む様々なアクター(主体)が連携し、ODAや民間の資金も含む様々なリソースを活用していく「グローバル・パートナーシップ」を築いていくこととされています。

持続可能な開発のための 2030アジェンダと日本の取組/外務省 https://www.mofa.go.jp/mofaj/gaiko/oda/sdgs/pdf/000270587.pdf

これまで国連主導で進められてきたのに対し、民間セクターや資金を積極的に活用していくということが述べられており、日本でも多くの企業が注目しています。

(2) “SDGs”と宇宙空間情報の意外な関係

今回のセミナーでは”SDGs”の達成のために宇宙・空間情報の活用を推進する「IS4D( Institute of Space for Development)」という取り組みの一環として開催されました。

http://is4d.org/

SDGsに宇宙・空間情報が活用できるのでしょうか?

たとえば、本セミナーの中で、東京大学柴崎教授は衛星データを使う利点について2つあげられていました。

①インフラとして横展開しやすい

地上に設置する設備ではある国で動かしてうまく行っても、同じことを別の国でやろうとするとまた新たに設備を導入する必要があり、その分また費用が掛かることになります。

一方で、宇宙システムでは、ある国で動かし始めればそのまま他の国でも使うことができます。もちろん地上側の設備も必要になりますが、ゼロから作ることに比べればコストが安くすることができるのです。

そうすることによって、コストの制約が小さくなるので、今まであまり注力して来なかったユーザーの視点から考えられるようになります。つまり、ユーザーのニーズに対してちゃんと対応できるようになります。

②客観的な整理がしやすい

もう一つ、衛星データの利点として挙げられていたのが「衛星データ」の客観性です。

SDGsなどの世界規模の課題を解決する際、それぞれの国の現状を正確に把握するためには、それぞれの国に直接行って調査を行う必要があり、横並びで評価するのは難しい状況でした。

衛星データでは現状がどうなっているかを、世界中を同じセンサ・同じ基準で客観的にみることができます。さらに最近では、携帯電話の位置情報が加わることで、個々のレベルの細かさまで見えるようになっています。

見えることで、問題が発見され、何をすればよいかが明確になると考えられています。

また、セミナーの司会進行役も務められていた内閣府宇宙政策委員会専門委員福代さんのお話によると、今まで宇宙などのハイテク技術は、途上国ではハイレベル過ぎて釣り合わないという意見を言う方人もいらっしゃったとのこと。

その一方でしかし、むしろ途上国には既存のものが何もないからこそ、先進国が経験してきた一般的な発展や産業の段階を一気に飛び越えて、開発課題を解決するという事例も出てきているとおっしゃられていました。

(3) セミナーで紹介された3つの「SDGs ×宇宙空間情報」取り組み事例

宇宙データがこれまでSDGsに活用されている事例がセミナーでいくつか紹介されていました。

■ JICA-JAXA熱帯林早期警戒システム(JJ-FAST)

独立行政法人国際協力機構(JICA)の農村開発部で、農業・水産を担当している宍戸様から紹介いただいたのはJJ-FASTというプログラムです。

JAXAの衛星であるALOS-2という衛星のレーダー画像を使って、ブラジルの違法伐採を監視しようと始まった取り組みです。45日置きの観測で、世界中を解像度50mで観測し、伐採があるとWEB上の地図にマッピングをする仕組みになっています。

熱帯地方では雲が多く、光学画像では撮影できないことが多いですが、レーダー画像であれば雲がかかっていても撮影できることが利点です。

途上国の地方政府では、違法伐採の監視まではとても手が回っていない状況ですが、こういった情報をWEB上でだれでもアクセスできるようにしておくことで、NGO団体や中央政府が状況を知ることができるようになるとのこと。

当初ブラジルから始まったこの取り組みですが、77カ国に広がっており、まさに横展開ができている事例です。

JICA-JAXA熱帯林早期警戒システム(JJ-FAST)の公開について
http://www.jaxa.jp/press/2016/11/20161114_jjfast_j.html

■ モザンビークの人の流れデータ

東京大学の柴崎先生からご紹介があったのが、携帯電話の基地局への接続履歴を使った人の流れの解析事例です。

解析にはCDR (Call Detail Record) と呼ばれる携帯電話と基地局との間で行われた通話及びデータ通信の記録を使っています。CDRは、通信インフラの障害検出や通信料金算出の基礎データとして用いられています。

世界のSIMカードの発行数はすでに世界人口とほぼ同じになっているそうで、モザンビークなど所得が決して高いとは言えない国であっても十分に人の流れをみることができるそうです。

モザンビークではこのデータをリアルタイムに毎日ウォッチするシステムが可能になりつつあるそうで、人の流れを可視化することで、例えば、マラリア感染の広がりの予測や公共インフラの調査などに役立てることができます。

携帯電話の基地局通信履歴を用いた人々の活動分析
http://sekilab.iis.u-tokyo.ac.jp/wp-content/uploads/kanno_B1_001.pdf

■ マレーシアのプランテーション業者の事例

宙畑でもインタビューさせていただいた慶應義塾大学の神武先生がご紹介されたのはマレーシアのプランテーションの事例。

現地ではロープを使って植林の間隔を測定しており、効率が悪かったとのこと。これをGPSの情報を使って、正確かつ簡単に測定を行えるようにしたことで、適切な植林を行うことができます。

(4)成功の鍵は”人材育成”

登壇された先生方が共通して言及されていたのが”人材育成”。

データがあってもどのように使ったらよいかが分からない、そこにギャップがあるとアジア開発銀行のシニア専門家K. E. シータラムさんは指摘します。

日本人だけでなく、現地の人材をどのように育てていくのか、が課題になっているとのことでした。

最近では途上国もデータに対する価値を理解してきているので、日本に現地のデータを持ってきて解析するのではなく、日本の解析ソフトウェアを現地に持って行って、現地の人に解析してもらうことが大事とのことでした。

■世界銀行のGOST

世界銀行では、GOST:Geospatial operation Support teamというチームがあるとのこと。地理空間情報に対して、どれが一番良さそうか(こんな精度いらないよね、とか言えるような)を判断できるチームがあるそうです。

詳細が決まる前の段階で、簡単なデータ処理もやってくれ、GOSTがデータ提供者の窓口になると、プロジェクトが違くてもデータの使用の条件の交渉ができるようになるのも強みになります。

プロジェクトを深堀する縦割りの専門家は数多くいますが、知識やスキルを共有できるような横断的な働きをする仕組みがあると良いのではないかということでした。

■アジア銀行のSPADE

アジア開発銀行でもSPADE(Spatial data analyse explorer)という取り組みが行われています。

これまではプロジェクトごとにコンサルタントにお金を払って様々なデータを集めていたものの共有が行われておらず、違うプロジェクトで似たようなデータを集めて解析するような状況でした。SPADEはこのような状況を改善するためのシステムです。

しかし、運用には苦心されているそうで本来のアジア開発銀行としての仕事ではないため、なかなかその部分を担当する人がいないとのお話でした。

シータラムさんは、クラウドソーシングにこの課題解決のヒントがあるのではと考えています。たとえば扱っている対象は違う(かつ違法な)ものの、日本のアニメは世界中で人気なので日本で放映されると数時間後には翻訳されたものが世界中に展開されているとのこと。

SDGsでも作業をするインセンティブ・モチベーションが作ることができ、個々の力の集約ができれば、自然とシステムが回るようになっていくはず、とおっしゃっていました。

(5)イベントを終えて

セミナーの最後に神武先生がおっしゃっていたのが「柔らかいインセンティブ」というキーワード。

最近の中学校では、クラウド上で課題が出され、その課題を紙で提出せず、スマホで調べて、スマホでレポートを書いて、提出するようなところもあるそうです。そういうことが日常になっているような中学生や高校生は、正にデジタルネイティブの世代で、彼らに少しGoogle Earth Engineを教えてあげたら、衛星データを使って都市ごとの明るさの分析ができるようになり、それを他の子どもが見て、かっこいいから、私もやりたいという連鎖がつながっていくようなこともあった、とのこと。

そういうきっかけを作って、コミュニティが勝手に新しいことを作り出してしまうという流れが理想的で、宇宙空間情報活用の事例集を作ってかっちりとした書籍やウェブサイトにするよりも、もっと柔らかい場所に柔らかいインセンティブを作り出す方が自発的な取り組みが増えるのではないかと思うとおっしゃっていました。

衛星データがより身近に当たり前になる未来に向け、宙畑も精進してまいります。