衛星データでキャベツの出荷量を予測。広告や売り場と連動してフードロス削減へ【宇宙ビジネスニュース】
JAXAと電通、JA嬬恋村は、衛星データなどからキャベツの出荷量や卸売価格を予測し、広告や店頭での販売促進につなげる市場実証を始めました。
JAXAと電通、嬬恋村農業協同組合(JA嬬恋村)は、衛星データなどからキャベツの出荷量や卸売価格を予測し、広告や店頭での販売促進につなげる市場実証を始めました。
キャベツの供給量が増えると予想される時期(一般的にはキャベツの価格が下がる時期)には、広告や売り場での料理提案を強化します。反対に供給量が減る時期には、広告を出す時期や規模などを調整します。天候に左右される農作物の供給に需要を近づけることで、価格の安定や販売機会の損失、フードロスの削減につなげる狙いです。
2026年8月24日から、東急ストアなど首都圏と関西の量販店5社、約50店舗で順次実施します。
2022年に始まった構想、SAR衛星も活用へ
この取り組みは、JAXAの宇宙イノベーションパートナーシップ「J-SPARC」の枠組みを活用して進められています。
J-SPARCは、宇宙を利用した新しい事業に取り組む民間企業とJAXAが、事業構想や技術開発などを共同で進める制度です。今回の構想は2022年に始まり、2024年からJA嬬恋村も加わって、キャベツの生育状況や収穫時期、出荷量などの予測精度を高めてきました。
JA嬬恋村の管内では、約3000ヘクタールにわたってキャベツが栽培されています。JA嬬恋村によると、夏場には全国で流通するキャベツの70%超を嬬恋村産が占めるということです。他の産地と比べても出荷量が多く、嬬恋村の生育・出荷状況は、市場に出回るキャベツの量や価格にも大きな影響を与えます。
衛星データの解析と予測モデルの構築は、リモート・センシング技術センター(RESTEC)が担当しています。両毛システムズが現地調査や生育状況の把握、生産者へのフィードバックを行い、電通デジタルが出荷量などをもとに卸売価格の動きを予測します。
現在は、米国のPlanetが運用する光学衛星の画像を利用しています。植物は健康に育つと、細胞構造によって近赤外線を強く反射します。この性質を利用して、キャベツの生育状況を、キャベツの葉が重なり、丸くなる結球の前後から収穫に適した段階まで分類し、現地調査のデータなどと組み合わせて収穫時期を予測します。
キャベツは種をまいてから出荷するまでに約3カ月かかります。生育状況を確認することで、約8週間先の出荷を高い精度で予測できるということです。さらに、予測した出荷量から市場への入荷量を推定し、過去の卸売価格のデータを機械学習で分析することで、価格が上がるか、下がるかという傾向を予測します。
一方、光学衛星は、雲に覆われると地表を観測できません。2026年6月の嬬恋村では、曇りが続き、分析に利用できる光学画像を1枚も取得できなかったということです。そこで今後は、JAXAの陸域観測技術衛星「だいち2号」(ALOS-2)や先進レーダ衛星「だいち4号」(ALOS-4)のデータも利用します。SARは衛星から電波を照射し、地表から返ってきた電波を捉えるため、雲に覆われているときや夜間でも観測できます。
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RESTECの担当者によると、2025年の段階で、キャベツが小さい時期にはSARで捉える電波の反射が弱く、結球して大きくなるにつれて強くなる傾向が確認されたということです。
だいち4号の分解能は約3メートルです。キャベツ一株ずつを識別するのではなく、畑ごとの生育状況を面として捉えます。嬬恋村では畑の面積が広く、作付けや収穫の時期をずらして栽培しているため、3〜10メートル程度の分解能でも生育状況を把握できるということです。
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8週間前の予測を売り場へ
予測したキャベツの出荷量や価格を、実際の需要につなげる役割を担うのが量販店と味の素(株)です。
東急ストアでは現在、全農群馬県本部やJA嬬恋村と毎週のように相談しながら、キャベツを売り込む時期や仕入れ量を決めています。キャベツの売れ残りはシーズン平均で約3%。1玉だけでなく、2分の1や4分の1、ざく切りにして販売するほか、朝から店頭に並べた商品を夕方に加工し直すなどして、廃棄を減らしています。
今回の取り組みでは、8週間先の出荷量と価格の傾向を参考に、広告や売り場づくりを前もって計画します。供給量が多いと見込まれる場合には1玉で価格を訴求し、価格が高い場合には2分の1の商品と料理を提案するなど、状況に応じて売り方を変えます。
味の素は、キャベツ売り場に合わせ調味料「Cook Do」の回鍋肉用を並べ、キャベツの食べ方を提案します。回鍋肉用は3〜4人前の調理でキャベツを約4分の1玉使うことができ、Cook Doシリーズの中で売り上げが最も多い商品です。
味の素によると、キャベツと回鍋肉用を一緒に展開した場合、回鍋肉用の売り上げは通常の約1.5倍になります。東急ストアでも、キャベツの近くに調味料を置いて料理を提案すると、キャベツの売り上げが約1.2倍に伸びるということです。いずれも今回の実証結果ではなく、これまでの店頭販売における実績です。
8週間前に出荷量や価格の動きが分かることは、売り場に予測を反映させるうえでも意味があります。味の素が通常取引する、調味料などを扱うグロサリー部門では、商談から店頭展開まで約3カ月かかるため、8週間前の予測では販売計画に間に合いません。今回はリードタイムが約1カ月の青果部門と直接連携することで、予測を店頭での販促に反映できるようになりました。
「8週間前に分かるのは非常にありがたいです。今回は青果部門とやり取りをしていて、リードタイムが1カ月ほどなので、価格予測を迅速に反映できます」(味の素 担当者)
味の素は今後、キャベツだけでなく、ピーマンやナス、白菜などに対象が広がった場合にも、Cook Doや鍋キューブなど関連商品を使った料理提案に対応したいとしています。JAXAや電通、JA嬬恋村などは今回の結果を検証し、他の農作物や地域への展開を目指します。

