宙畑 Sorabatake

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今後の衛星ーユーザ間をつなぐ主流サービスは何?【週刊宇宙ビジネスニュース 5/20~5/26】

一週間に起きた国内外の宇宙ビジネスニュースを厳選してお届けする連載「週刊宇宙ビジネスニュース」は毎週月曜日更新!

先週は、Amazon Web Services(AWS)が展開する「AWS Ground Station」が2か所でサービスインした、という話題と、SpaceXの通信衛星網「Starlink計画」最初の60機の通信衛星が打ち上げられた、という話題が重なりました。

まずはAWS Ground Station(地上システム)から。

Credit : Amazon Web Services

2018年に構想を発表してから約半年。
ついにAWSが発表していた、地上システムがサービスインしました。
計画されている12箇所の地上システムのうち、まずはUS-West-2(オレゴン州)とUS-East-2(オハイオ州)の2箇所から。

地上システムを利用するためには、事前に予約もしくはスケジューリングする必要はありますが、このシステムを通して、サービス利用者は、独自に地上システムを有していなくても、衛星へのコマンドの送受信の他、データの処理や保管が可能になります。

受信したデータの保存はAmazon S3、その他にAmazon Kinesis Data StreamsやAmazon Sage Makerなどの各種解析ツールも、このシステムを通して一括で利用できるようになるため、ユーザ的にはデータを受信したあとの手間が大幅に減らし、他の仕事に集中できるようになります。

サービス利用の詳細については、下記YoutubeやAWSのブログに記載されているので、興味のある方はぜひ。

地上システムを利用することで、例えば以下のメリットが得られます。
 ・独自に地上システムを構築する必要がなくなる
 ・世界各国に地上局を持てるようになる
 ・自身で地上局のメンテナンスをする必要性がなくなる
 ・地上局が故障したとしても、他の地上局を利用して通信継続可能となる
 ・データ保存・処理まで一括で行える
 ・データ処理に利用するツールが充実している
 ・総じて運用コストが安くなる
 ・AWSを通してデータを販売することも可能となる

1つのアンテナで同時に通信可能な衛星は1つなので、このサービスを利用する衛星が増えれば増えるほど、AWSとしてはアンテナを増やすなどの対応が必要ですが、利用者的にはメリットだらけのサービスのように思われます。

衛星から受信するデータ量に応じて、得するかどうかの分岐点はありそうですが、受信するデータ量が増えてきている昨今、基本的には得することが多いでしょう。

デメリットをあえて挙げるとすれば、AWSのサービス利用が大前提になってしまう、ということぐらいでしょうか。

つぎに、SpaceXのStarlink計画について。

展開された衛星群の様子は圧巻だったので、まだご覧になっていない方はぜひ。1機ずつ放出されると思いきや、60機の塊で放出されました。
放出された衛星群は、その後搭載されているスラスターで軌道を変えながら、配置されていくようです。
※余談ですが、今回の衛星群は条件が合えば、目視でもよく見えるそうです

同社は年間2000機程度ずつ打ち上げ、2020年にはサービスインを予定しています。最終的には1.2万機の衛星を介して、世界中を結ぶ予定です。

地上の基地局を介して通信するのではなく、衛星を介して通信することで得られるメリットもたくさんあります。

例えば
 ・国内外を移動する際に、わざわざSIM(や接続するキャリア)を変える必要がなくなる。
 ・地上で発災があったとしても、ネットワークに接続できる
 ・山奥であってもネットワークに接続できる
 ・携帯電話のみならず、センサを接続することもできる
 ・宇宙に人が出た際にも同じインフラを用いて通信できる
などが挙げられます。

地震の多い日本では、インフラを軌道上に持っていくのも一つの有効な手段かもしれません。
 
Starlink計画に関するホームページも公開されていますので、興味のある方はぜひご覧ください。

サービスインしたときに衛星がどのように配置されることになるのか、シミュレーションした結果も非公式のようですが公開されています。

先週もう1つSpaceXで話題になったこと。それは今回のStarlink計画を推進するため、1000億円ほどの投資を受けた、というニュース。

Starlinkの衛星のコストを、OneWebの小型通信衛星と同等コストと見積もって1機当たり1-2億円とすると、60機を打ち上げる場合には、60倍の100億円ほど。
ロケット打ち上げの実費は15億円程度と言われており*、そうすると60機打ち上げに要する額は115億円程度。
1000億円の投資により打ち上げられる衛星数は、8回×60機/回で480機ほど。
年間に2000機打ち上げようとすると、年間に4000億円、1.2万機打ち上げるには3.2兆円かかることになります。
これに運用費や設備維持費、人件費などがいくらかかかってくるのが支出側*
*なお、イーロンマスク氏はこのプロジェクトを遂行するのに10兆円ほどかかりそうだ、と答えているようです。

正式にサービスインすると月間3000億円、つまり年間で3.6兆円の収入を見込んでいるSpaceX*

初期投資額が大きすぎて気が遠くなりますが、黒字化を目指して今後どのようになっていくのかは注目です。

今回打ち上げられたStarlinkは衛星間の通信はせず、地上と地上を繋ぐ中継点になるだけではありますが、将来的には衛星間も通信できるようになる予定です。

ユーザ視点で考えた場合、
 ・AWSのように、地上ネットワークを介して世界中でつながっている
 ・Starlink(の場合主軸事業ではありませんが)のように、衛星間通信(ネットワーク)を介して世界中でつながっている
というのは、経路は違えど同じ結果になる、ということが分かるかと思います。

現在は地上ネットワークの方が安く速い、と言われているため、地上ネットワークを介するAWSのサービスの方が主流になりそうにも思えます。
しかし、衛星の製造費やロケット打ち上げ費が下がってきている今、衛星ネットワークの方が安く(速く*)主流となる日も近々来るかもしれません。
*自宅のネットワークよりは早くなっても、職場のネットワークよりも早くなることはなさそうですが…

今後、私たちユーザと情報をつなぐ経路は、地上経由と衛星経由、どちらが主流になっていくのでしょうか。
早ければ数年内に答えは出ているかもしれません。

今週の週刊宇宙ビジネスニュース

参考記事

参考

Announcing General Availability of AWS Ground Station

AWS Ground Station – Ready to Ingest & Process Satellite Data

SpaceX Fundraising Exactly Covers 800 Satellites for an Operational Starlink Service

First satellites for Musk's Starlink internet venture launched into orbit

New satellites could save $ 30 billion in monthly bills for the internet, the report said

With Block 5, SpaceX to increase launch cadence and lower prices

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