宙畑 Sorabatake

特集

防災から街づくりまで!第2回『Tellus Open Discussion』〜行政・自治体篇〜レポート

衛星データのビジネス利用を促進することを目的とした、各業界向けの実践的な衛星データ活用セミナー『Tellus Open Discussion』。その第2回目として開催された行政・自治体篇イベント当日の様子をご紹介します!

AI技術の進歩によりビッグデータの解析能力が向上するに伴って、今後さらに衛星データのビジネス利用は広がりを見せると考えられています。しかし日本国内においては、まだまだ事例が少ないのが現状です。そこで日本国内の衛星データのビジネス利用促進を目的に、各業界向けの実践的な衛星データ活用セミナーとして開催されているのが『Tellus Open Discussion』です。

2019年10月17日の第2回『Tellus Open Discussion』〜行政・自治体篇〜 では、日本初のオープン&フリーな衛星データプラットフォーム「Tellus(テルース)」の開発・運用を行っているさくらインターネットと、衛星データビジネスの創出において数多くの海外実績を持つPwCコンサルティングがその知見を活かし、行政・自治体をテーマに具体的な衛星データの活用法の紹介やディスカッションを行いました。本記事では、その模様をお届けします。

Tellusの概要紹介と衛星データ活用の概要

Tellusの登場によって、今まで扱いの難しかった衛星データを、誰もが手軽に、自由に利用することが可能となりました。そして、その利用の仕方や仕組みなどについて、さくらインターネット株式会社 新規事業部 田中より紹介しました。

▼参考記事

続いて、PwCコンサルティング合同会社の山田さんより衛星データの特徴や活用の概要について説明があり、成長が期待されるリモートセンシング(*1)衛星の特徴や、その活用のあり方、今後期待される役割などが紹介されました。

*1 リモートセンシングとは?
地球観測衛星等のように遠く離れたところから、対象物に直接触れずに対象物の大きさ、形及び性質を観測する技術をリモートセンシングといいます

▼参考記事

行政・自治体における衛星データ活用の事例紹介

このパートでは、自然資源の保護や災害対策、スマートシティなどの都市開発において、海外の行政・自治体では衛星データをどのように活用しているのか、具体的な事例が紹介されました。

事例紹介1:森林伐採活動監視サービス Swedish Forest Agency

Credit : Swedish Forest Agencyf

国土の約70%が森林で覆われているスウェーデンでは、林業が主力産業になっており、120億ユーロ(約1兆44億円)の輸出額を産出しています。しかし、広範囲に及ぶ森林は管理が大変で、政府に許可なく自分の土地の森林を伐採する土地所有者がいるなど、違法伐採への対策もスウェーデン森林局(SFA)にとっての課題でした。

そこで、衛星画像と他の地理データを組み合わせ、森林が伐採された場所を示す地図を作成。森林が適切に管理されているか、違法伐採はないかなどを観測し、オープンデータとして公開しました。

この取り組みが、違法伐採を行う土地所有者に「自分達はSFAから常に監視されている」という認識を与えて抑止力として働き、法令順守が大幅に改善。違法に伐採された森林の面積が年間10%から0.5%へ減少しました。SFAは森林監視のため、衛星画像の購入・活用に年間50万ユーロ(約6,000万円)を費やしていますが、適切に自然資源を管理できるようになったことで、年間1600万ユーロ(約19億円)から2160万ユーロ(約26億円)の経済効果をもたらしています。

この事例を応用することで、使われていない農地を衛星画像で特定して有効活用するといったことや、相続されずに国有化された山林の管理などにも活用が期待できます。

事例紹介2:洪水による浸水地域の復旧対策 Environment Agency of UK

Credit : Environment Agency of UK

イギリスの環境庁と自治体が一体となった、洪水による浸水地域の復旧対策の事例です。

イギリスの環境庁Environment Agency(EA)が2009年に実施した調査では、イングランドの6軒に1軒が河川、海、および地表からの洪水のリスクにさらされていることが明らかになり、実際に毎年10億ポンド(約1,400億円)を超える損害が発生しています。しかし、従来の航空機を使った対応では、洪水のリスク監視や復旧を担当する地方自治体への情報提供に費用と時間がかかっていました。

これを受け、EAでは調査やデータ解析の専門チームを30人体制で結成し、コペルニクス(*2)や「International Disaster Charter」(国際災害チャータ)などの枠組みから提供される、衛星データを活用。その結果、洪水の範囲と広い地域の損害の概要を従来よりも効率的に把握でき、最適な復旧手段を導き出せるようになりました。

注目すべきは、「回復状況を把握できる」という点です。データを時系列に蓄積できる事例がまだ少ない中、復旧状況の変化を定点観測でとらえ適切な対処を検討できることは、より迅速な災害復旧に繋がります。衛星データと地理データを組み合わせることで危険なエリアを特定し、災害の緩和に役立てたり、回復までの期間や手段を導き出したりすることも可能です。

*1 コペルニクスとは?
全地球の環境監視と安全保障を目的とした欧州連合(EU)の地球観測プログラム。衛星データのほかにも、地上で得られた観測データなどをデータプラットフォームを通してオープン&フリーに提供しています。

事例紹介3:衛星画像による水質の監視 Biological Station Neusiedler See

※画像は、藻の発生状況などから水質を表しており、赤になるにつれ藻が大量にある事がわかります。藻が大量にあると濁りやプランクトンの異常発生等につながっていきます。 Credit : Biological Station Neusiedler See

オーストリアのノイジードル湖における、衛星画像による水質監視の事例です。湖畔は重要な観光資源ですが、気候変動による水位変動と、プランクトン増加などの水質変化が生態系にマイナスの影響を及ぼすことがあるため、水質モニタリングを行い、適切な対応をする必要があります。

そのためBiological Station Neusiedler See という組織では、水の透明度や植物プランクトンに含まれる葉緑素のクロロフィル濃度など、温度に応じて変化する水の特性に関する衛星情報をもとに、環境への影響を「見える化」し、環境ストレスマップとして自治体に公開をしました。

これにより、湖畔の生態系に対する温度変化の影響を監視し、水質汚染のレベルと環境の潜在的なリスク評価が可能となりました。また、実際に湖畔にて実地の観測作業を行う従来の方法より効率的かつ安価により広いエリアを頻繁にサンプリングでき、同じエリアの画像を数日ごとに作成できるため、経時的な変化の監視に役立てられています。

環境への取り組みが重要視されている欧州では、予算のない自治体は安価な衛星データを活用しているようです。

事例紹介4:市民を巻き込んだ都市インフラの点検 ニース市 Libra-Ari社

Credit : eurisy

海と山など豊富な自然資産を持つフランスのニース市では、観光地として人気がある一方で、その立地から洪水、地震、地すべり、インフラの老朽化など多くの都市課題を抱えています。

こうしたリスクに対応するために、同市のインフラ構築・保守を担当するリスク防止部は、リアルタイムの情報把握、潜在的なリスクに対する市民の意識向上を必要としていました。

そこで、Libra-Ari社の支援を受け、都市インフラの損害報告アプリを構築。水漏れや信号機の故障、路面の損傷や地すべりなどを市民がアプリから報告でき、それを行政が衛星データから取得した地図情報と照らし合わせることで、対応の優先順位を付けられる仕組みです。

アプリでは他にも、RSSフィードやTwitterから収集したリスク情報を提供できるほか、危険な災害や事故が起きた際の警告をユーザーに発信することができます。

行政の人手不足を補完するため、こうした市民を巻き込んだ都市インフラの点検は世界でよく見られるようになってきており、市民の意識向上も図れるのがメリットです。

事例紹介5:衛星ナビゲーションを利用した都市サイクリングの推進 ボローニャ市

※画像は、サイクリストが通ったルートを表しています。赤が多くのサイクリストが使ったルートであり、利便性の高い道(走りやすい道)であることが推察できます。 Credit : www.cyclingchallenge.eu

イタリアのボローニャ市では、自動車による渋滞と大気汚染が深刻な被害をもたらしていました。5キロ以内の移動手段について市民にアンケートを取ったところ、9割以上が自家用車だったという結果を受けて、街中に設置された専用駐輪場であればどこでも自転車を借りたり返したりできるコミュニティサイクルの活用を推進。自転車移動を円滑にするためのサイクルレーンの建設や改善にあたって、信頼できる交通データが必要でした。

そこで、サイクリングチャレンジというオリエンテーリングイベントを開催し、参加者に無料アプリによるナビゲーションサービスを提供。自転車旅程の追跡や他の参加者との比較を視覚的に可能にし、サイクリストのルート情報を収集して、ヒートマップを作成しました。

効果として、自転車で走りにくいルートなどを割り出すことなどにより、サイクリング環境の向上を実現。都市移動の10%が自転車に変化するだけでなく、持続可能なモビリティを強化するために使用できる交通道路の路面状況や混雑状況、整備状況などの情報を収集できています。また、サイクリング目的の観光客も増加しました。

事例紹介6:衛星データと感情データによる都市景観マッピング Good City Life

Credit : Good City Life

ノキアとエストニアのタリン大学の研究者たちは、自治体と協力して衛星データと感情データによる都市景観マッピングの実証研究を進めています。

GPSを活用したナビゲーションシステムで提案されるルートは、時間による効率化を中心としたものであって、研究チームは、それが必ずしも人々に最適で幸福な体験を提供するものではないと考えました。

研究では、衛星データや地上センサーによる都市環境の把握を行い、ジオタグ付きのソーシャルメディア写真などから人の表情を読み取ることで、「この場所は楽しい」「この場所は好きではない」など、環境に対する人々の感情をマッピング。クラウドソーシング、SNS、オープンストリートマップを統合し、「Good City Life」というプラットフォームを構築しました。

Good City Lifeでは、3つのマップが提供されています。その人にとって市内で最も快適な場所を可視化した「Happy map」。いい香りや悪臭のする場所など、都会の香りを可視化した「Smelly one」。騒音など都市の音を可視化した「Chatty map」。これら3つのマップにより、各サービスユーザー個人に合わせて幸福度を最大化するような移動ルートを提案しています。

これらは住環境にも使える情報で、不動産業などの都市開発にも有効です。現在欧米の12都市が参加しており、実験都市は増えています。

パネルディスカッション

左から、永金明日見さん(PwCコンサルティング)、山田洋平さん(PwCコンサルティング)、二村正人さん(PwCコンサルティング)、竹林正豊(さくらインターネット)、田中康平(さくらインターネット)

続いて行われたパネルディスカッションでは、あらかじめ設定されたテーマに沿い、行政・自治体における衛星データ活用について、登壇者それぞれが感じている課題感や、有効な活用法などについて意見が出し合われました。

登壇するのはPwCコンサルティングで宇宙ビジネスを担当する永金さん、同じく宇宙ビジネス担当でデータスマートシティの専門家でもある山田さん、地方創生を担当する二村さん、さくらインターネットでTellusのプロモーションを統括する竹林、Tellusのビジネス開発を担当する田中です。

ここからは、その模様を会話形式でお届けします。

行政・自治体が抱える課題は何か?

永金:モデレーターの永金です。まず行政・自治体の課題について、実際にどういった課題があるのか、二村さんにお伺いします。

二村:今、自治体が直面している課題は災害対策です。河川の監視一つをとっても、人手が足りない中、広大な河川の危険箇所を把握するのは難しい問題でした。スマートシティの実証実験を行っている富山市の事例では、これまで目視で監視していた河川の水位や、風速風力などの情報を自動的にデータ化して、プラットフォーム上での監視実現に取り組んでいます。自治体において、自然災害の監視や災害発生後の対応は、非常に重要なポイントになってきています。

永金:人手不足の原因としては、少子高齢化などの問題もありそうですね。他にも課題はありますか?

二村:限られた人員で広い地域をカバーしなければいけませんので、民間事業者と協業しながら、これまで人手に頼っていた作業をいかに効率化できるかという仕組み作りを進めているケースは見られます。また、獣害に苦慮している自治体も多いです。富山市は獣害に関しての実証も行っていますが、獣害に関しての対応をスマート化して取り組んでいる事例はまだ少ないのが現状です。

災害や獣害対策における衛星データ活用

永金:人手不足で対応が追いつかないという点は、衛星活用においては重要な部分だと思います。山田さん、今の課題を受けてどういう衛星データの活用が考えられますか?

山田:災害発生時は、各部局をまたいで対応に当たる必要があります。その際、地理空間にすべての情報が集まる仕組みがあれば、意思決定がしやすくなります。位置関係や距離、時系列といった空間情報をとらえることで、道路の変異や地すべりがあった箇所の特定にも、衛星データは有効に使えると思います。獣害の原因として考えられる森林開発や気候変動の問題が視覚化されれば、獣害対策にも役立ちますね。

永金:さて、2019年2月にはTellusがオープンしました。これまで自治体からは、どのような要望や問い合わせがありましたか?

竹林:やはり「災害対応に使えないか」「農作物に使えないか」といった問い合わせが多いです。どれもまだ実現の可能性を探っている段階ですが、獣害対策ではsakura.io というIoTプラットフォームを使い、イノシシ罠と組み合わせたシステムを実証している取り組みがあります。

都市開発や観光分野での可能性

永金:海外では、SAR衛星で変位を観測して、河川の堤防の強度や氾濫リスクを判断している事例もあります。そういった使い方も、今後需要が伸びてくると思います。都市開発の領域ではどうでしょうか?

二村:先ほどの事例紹介で、その街を訪れた人が自分の嗜好に合った観光をすることに衛星データが絡められるのを初めて知り、とても面白みがあるなと思いました。

永金:観光分野に注力している自治体は多いのですか?

二村:もちろんです。少ない人口で自治体を継続させていくため、地域内の活性化だけでなく、交流人口(観光者のこと)や関係人口(地域や地域の人々と多様に関わる人のこと)をいかに作っていくか、相当腐心されています。

永金:そういった意味で、今日本の観光業において考えられる衛星データ活用の可能性はありますか?

山田:人工衛星の画像だけでは、回帰日数(観測頻度)や解像度の問題で、人の動態まではリアルタイムに把握できません。とはいえ、Twitterなど位置情報のデータも合わせることで、動きのあるデータが取れ、そこから新たなソリューションが生まれると思っています。

永金:やはり空間の情報をとらえることで、いろいろな活用ができそうだということですね。Tellusについてお聞きします。Tellusでは都市開発においてどのような利用法が考えられるか教えてください。

竹林:過去の観光客のデータと、天気のデータを掛け合わせることで、どれぐらいの観光客が来るのか、ある程度事前に推察することができます。すると、飲食店が用意する料理の量や、仕入れる食材の量なども決まり、余計なコストを減らす最適化ができる。それにより料理自体の単価も下げられます。データプラットフォームとしては、衛星データだけでなく、その他のデータも入れた上で都市自体が最適化できたらいいのかなと思っています。

GPSや人流データと組み合わせた活用法

永金:測位衛星との連携という点ではどうですか?

竹林:Tellusでは、衛星で取得した画像だけでなく、測位衛星のデータも併せてやっていきたいと思っています。経済産業省と実証実験などを行っているところで、今後その事例も出てくると思っています。

永金:そういった空間情報などがTellus内でも見られるようになると、リアルタイム性も求められると思います。今後はコンステレーション化(複数の衛星を連携)されることで実現していくと思いますが、衛星はタイムリーな人の動きは捉えにくいというのが現状。それを補完する意味で、GPSを使った移動の情報はリアルタイムで取れるということですよね。

竹林そうですね。2つの人流データを時間で区切ったトライアルとして入れていますが、今後要望があれば増やしていきたい考えです。

永金:都市開発において、商業施設やインフラ設備などを構築する上で、人の流れは重要になります。静的データと動的データが組み合わさると、ますます使い方が広がると思います。

生態系の保護に衛星データはどう活用できるか?

永金:課題に話を戻して、二村さんに聞きます。観光地では、生態系の保護も重要になってくると思います。自治体の取り組みや課題感があれば教えてください。

二村:沖縄の自然環境保護の事例として、サンゴの育つ海を活かした事業化のケースがあります。衛星を使い、サンゴに被害が出ていないことを“見える化”できると、地域に経済活性をもたらすなどの経済面でもインパクトがあるのではないかと思いますね。

永金:サンゴは海の中にありますが、どのように観測するのでしょうか?

山田:サンゴは藻類と共生しています。つまり衛星画像の藻を見る波長に注目して解析をかけると、サンゴが見えるというわけです。共生する藻類を失うとサンゴの白化現象が起きるので、波長の変化により観測できます。そこに海水温データをかけ合わせると、サンゴにとって良い状況かどうかの判断も可視化できます。アメリカではそういった観測結果によるマップも公表されています。

永金:データの組み合わせや推察のロジックは必要ですが、オープンソースの衛星データでも、そういったことが見えてくるということですか?

山田:そうですね。アメリカ、日本、そして欧州の衛星を組み合わせていくと、かなり精度が高い形で海の状況を提供することができると思っています。

永金:生態系の保護の面で、行政・自治体などからTellusに問い合わせはありますか?または今後の展望があれば教えてください。

田中:プラットフォーマーとして、データの整備を進めていこうと思っています。例えば、今はまだ搭載されていない海洋関係のデータもTellusに載せられるように調整を進めています。まず最初にJAXAで運用している衛星データの搭載を検討しています。そのデータを用いることで、水温やクロロフィルの値などが把握できます。値の変化を見ることで、環境状態も分かりますので、生態系保護にも繋がる可能性もあります。

スマートシティの可能性

永金:人や環境、災害など、何を中心に考えるかによって衛星データは様々な使われ方があることがわかりました。ではスマートシティの可能性について、今後どういうことが起きてくるのか。未来に向けた話を、データスマートシティに詳しい山田さんから聞きたいと思います。

山田:都市の温度分布と人流データと組み合わせれば、商業面でもいろいろなサービスを提供できるようになると思います。高低差のデータを掛け合わせると物流にも応用でき、単に最短ルートだけでなく、CO2換算した場合に一番効率的なルートを導出するなど、様々な活用方法が生まれてくると思うんですよね。

永金:二村さんにお聞きします。地方自治体や行政で、実際にスマートシティに取り組みたいという機運は高まってきていますか?

二村:PwCではつい先日、京都府と包括連携協定を締結しました。スマートシティのあり方をゼロベースで検討するということで、京都府でもそういった気運は高まっています。京都スマートシティエキスポに参加したメンバーからは、いろいろな自治体がスマートシティについて考えていたという話を聞いているので、かなり関心度は高いと感じています。

永金:その流れの中で、衛星データを安価に取得できる技術は、今後さらに魅力的になってきますね。

二村:GPSと掛け合わせることが安価にできるようになると、人の移動を検知してモビリティのあるべき姿を浮き彫りにできます。データに基づいて効率性を担保でき、それにより人々の移動が変わっていくことは、スマートシティのあるべき姿として出てくるのではないかと思います。それは衛星活用の可能性として感じました。

永金:スマートシティにTellusが組み込まれていく可能性はありますか?

竹林:スマートシティというと、ビッグデータの解析やクラウドと一緒に考えられることが多いと思います。しかし、ただデータを溜めるだけでは何も生まれず、データを掛け合わせて解析することが大事です。今まで掛け合わせることがなかったデータを掛け合わせたら、新しい因果関係が見えてくる可能性もあります。そのためには、簡単に使えるデータプラットフォームや、様々なデータが集まっている場所が必要です。それがTellusというプラットフォームであれば嬉しいですね。

永金:様々なデータと組み合わせる、というのは重要なキーポイントですね。それにより新しいものが見えてくるということですが、新しいものを見つけるにはトライアンドエラーの繰り返しが必要です。それが気軽にできる場として、Tellusは非常に有用だと思います。トライアンドエラーをすることで新しい使い方が生まれ、それが災害対策や自然環境の保護、都市開発やスマートシティなど、行政・自治体の運営にも活かされると考えています。ありがとうございました。

オープンディスカッション

続いて行われたオープンディスカッションでは、会場から「衛星活用の推進に自治体ごとの差があるのはなぜか」「災害リスクの公開により不動産価値に影響が出る懸念について、自治体ではどのような議論が行われているか」といった質問が上がり、議論が交わされました。

「台風19号を受けて、どういうデータが見られるのか」という質問には、欧州委員会が運営する地球観測プログラム「コペルニクス」の衛星画像を用いて解説がありました。

Credit : Copernicus Sentilnel-1 VV decibel gamma0 – オルソ補正  国土地理院
Credit : Copernicus Sentilnel-1 VV decibel gamma0 – オルソ補正  国土地理院

台風上陸前の10月7日と台風通過後の10月13日の茨城県那珂川周辺を観測したデータを比較すると、浸水被害域の広がりが黒く示され、国土地理院公表の航空写真による被害データと照合してもほぼ一致していることが読み取れます。解説で使われたイメージの衛星画像はSAR衛星で撮影されたものです。SAR衛星は雲があっても地表を観測できるため、悪天候で航空機を飛ばせない状況でも被害の把握に役立ちます。

Credit : Copernicus Sentilnel-3 OTCI OLCI Terrestrial Chlorophyll Index Based on combination of bands (B12-B11)/ (B11-B10)

また、河川の増水により土砂やクロロフィル等が海洋に流出している様子も衛星画像で示され、解析方法を変えればその他の情報も抽出できることが紹介されました。

最後に、PwCが考えるデータスマートシティのあり方が紹介され、シンガポールの「Virtual Singapore」を例に、都市開発計画シミュレーションや災害シミュレーションなど、都市デジタルツインの実現の可能性についても意見交換が行われました。

Credit : Virtual Singapore

行政・自治体が抱える課題に対して、衛星データがどのように活用できるのか、より具体的なイメージが広がるオープンディスカッションとなりました。

まとめ

衛星データは、災害対策や自然環境の保護といった行政・自治体が現在抱えている課題の解決に役立つだけでなく、スマートシティや都市開発など、未来に向けた先進的な取り組みとしても大いに活用できそうです。また、行政の人手不足を補い、市民の意識向上を促してより良い街づくりに貢献できることも見えてきました。

次回、第3回『Tellus Open Discussion』〜通信・エネルギー 篇〜 は11/14(木)に開催。電力・ガス会社、放送・通信事業社およびその従事者の方を対象に、通信・エネルギー分野における衛星データの利活用についてオープンディスカッションが開催されます。

当日は、広範囲に渡るエネルギー供給のインフラ管理や、クリーンエネルギーにおける衛星データ活用を中心にパネルディスカッションを実施。労働人口の減少にともない、さらなる効率化が求められるこれからの時代、新しいエネルギーマネジメントはどうあるべきか、海外事例を交えながら解説します。みなさまのご参加を心よりお待ちしております。

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