宙畑 Sorabatake

ニュース

ロケットベンチャーのVectorが Chapter 11を申請【週刊宇宙ビジネスニュース 12/9〜12/15】

一週間に起きた国内外の宇宙ビジネスニュースを厳選してお届けする連載「週刊宇宙ビジネスニュース」は毎週月曜日更新!

Vectorが破産申請を裁判所に提出

資金が枯渇したと報道されていた小型ロケットベンチャーのVectorは12月13日に、アメリカ合衆国連邦倒産法の第11章に基づき、連邦破産裁判所に破産申請を提出しました。Vectorの完全子会社であるGarvey Spacecraft Corporationも、同時に破産申請を提出しました。

今回の破産申請の内容には、同社が保有する衛星技術資産をロッキード・マーティンに売却することが含まれていました。

現在Vectorは、”DIPファイナンス”と呼ばれる、破産手続き開始後に再生会社(今回ではVector)に対して新たな資金を融資する金融手法を採用しています。このことから、憶測の域を出ませんが、Vectorは資金が枯渇して破産しましたがロッキード・マーティンとしてはVectorの企業再生を支援したい思惑があるように見えます。

またロッキード・マーティンは、11月20日にVectorと交わした契約に基づき、VectorのGalacticSkyと呼ばれる衛星プログラムを250万ドル以下で購入することを提案しています。確認したところGalacticSkyのHPはまだ残っています。

Vectorの関係者の話によると、今年8月のVectorの資金枯渇は、Vectorの機関投資家の1つであるSequoia Capitalが同社の次の資金調達ラウンドから突然撤退したことが引き金となり、他の投資家も一斉に撤退したことが主な原因のようです。

元SpaceXでVector創業者のJim Cantrellのもと、小型ロケット開発で注目されていたVectorですが、最後は資金に泣いた形となりました。
多産多死であるベンチャーの世界で、今回のようなケースは今後増えていくと思われます。

2017年のVectorの試験機Vector-Rの打ち上げの様子 Credit : Vector

モルガンスタンレーが投資家向けのイベントを開催

モルガンスタンレーは12月10日にニューヨークで、投資家向けの第2回宇宙サミットを開催し、昨年開催された第1回の3倍の投資家が参加したと述べました。

テスラに関する発言でよく注目を集めているグローバルアナリストのAdam Jonas氏によって開催された今回の宇宙サミットは、”A New Space Economy on the Edge of Liftoff”というテーマで開催されました。

サミットは、
・Satellite Launch
・Satellite Internet
・Deep Space Exploration
・Lunar Landing
・Earth Observation
・Asteroid Mining
・Space Debris
・Space Tourism
・Space Research
・Manufacturing
という10個のテーマで開催されパネルディスカッションでも様々な議題が繰り広げられました。

Adam Jonas氏によるプレゼンテーションでは、資本獲得・国家安全保障・地球観測衛星・ロケット打ち上げ・衛星通信といったテーマと共に、日本の宇宙スタートアップに関するプレゼンテーションも実施されました。

また、米国商務省の宇宙部門ディレクターのKevin O’Connell氏と、Virgin GalacticのCEOであるGeorge Whitesides氏による基調講演も行われました。
O’Connell氏は、過去10年間に宇宙ベンチャー企業に投資された民間資本は250億ドル近くに達しているが、昨今は投資家の宇宙産業に対する知識が豊富になってきており、宇宙ベンチャーの投資に対してより賢明な意思決定をするだろうと発言しました。

今後、宇宙産業に投資する方々のコミュニティもどんどん広がってくることが期待されています!

Space Summitの様子 Credit : Morgan StanleyのTwitter

ドイツ発ロケットベンチャーが17億円を調達

ドイツ発のロケットベンチャーであるIsar Aerospaceが、12月10日にAirbus VenturesとEarlybird Venture Capitalが主導する資金調達ラウンドで、約17億円を調達したと発表しました。今回の資金調達ラウンドには、他にUnternehmertum Venture Capital PartnersとVito Venturesが参加しています。

ミュンヘンに本拠を置くIsar Aerospaceは2段式液体燃料ロケットSpectrumを開発しています。Spectrumは、低軌道に1,000kgのペイロードを軌道投入することを想定しています。当面は1kgあたり15,000ユーロ以下の打ち上げ価格を目標としており、最終的に1kgあたり10,000ドル以下の価格を目指しているそうです。

小型ロケット界の雄であるRocket LabのElectornロケットのペイロードが150~225kgであることを考慮すると、Isar Aerospaceは小型衛星の中ではやや大きいペイロードを軌道投入することを狙っているように見えます。
したがって、来年打ち上げ予定のFirefly AerospaceのAlphaロケット(低軌道に1000kgのペイロードを打ち上げる能力を有する。)などが競合となりそうです。

ミュンヘン工科大学で航空宇宙工学を専攻したIsar AerospaceのCEOのDaniel Metzler氏は、「このような顧客セグメントの差別化を図っていることが、迅速な資金獲得に繋がりました」と述べています。

Spectrumの第一段は、SpaceXのファルコン9ロケットのように同じエンジンを9機クラスター化した構造となっており、第二段のエンジンも複数回の再点火が可能でペイロードを多様な軌道に投入することが可能となっています。 

Metzler氏によると、今回の資金を用いて開発スピードと会社規模拡大を加速化し、最終的に1年に15機の打ち上げを目指すそうです。

まだ打ち上げ実績のないロケットベンチャーは、世界に150社以上があると言われています。このレッドオーシャンの中でIsar Aerospaceが抜きんでることが出来るか、Isar Aerospaceに注目です!

Isar Aerospaceが開発中のSpectrumロケットのイメージ図 Credit : Isar Aerospace

今週の週刊宇宙ビジネスニュース

関連記事

参考記事

Vector files for Chapter 11 bankruptcy

Space investing became real this year as Morgan Stanley hosts packed NYC investor summit

Morgan Stanley A New Space Economy on the Edge of Liftoff

German launch startup raises $17 million with help from Airbus Ventures and an ex-SpaceX employee