衛星データを活用し、バーチャル空間に「世界」を自動生成するAIが誕生【週刊宇宙ビジネスニュース 2021/5/31〜6/6】
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「宇宙 × データ」をテーマに研究開発を行うスタートアップ企業のスペースデータは、衛星データと3DCG技術を活用してバーチャル空間にもう1つの世界を自動生成するAIを実験的に開発したと発表しました。
衛星から取得した静止画像と標高データをもとに機械学習させ、地上の構造物を自動で検出・分類・構造化した上で、AIに地上の3Dモデルを自動生成させ、3DCG技術によって石・鉄・植物・ガラスなどの細かな材質も自動的に判別することで、リアリティのある街並みを再現しています。
Google Earthをはじめとする3D地球儀は、衛星写真や航空写真を3Dモデルに貼り付けた形で提供されることが一般的でした。これに対して、スペースデータの担当者は課題を感じていたと言います。
「一般消費者の視点からすると必要十分なサービスですが、ゲームや映像のクリエイターからすると、近寄ると写真の解像度が足りず景観が崩壊してしまい、ビジネスで使うことは難しいという課題があると認識していました」
従来の3D地球儀は、俯瞰的な視点での地上を再現するには向く一方で、人間が歩く一人称視点では写真の解像度が足りず劣化してしまいます。そのため、高度なビジュアルが求められる領域では活用が進んでいない状況にありました。
今回発表されたAIアルゴリズムは、衛星データに機械学習をかけて、構造物を判別しているため、物体に近づいても景観を劣化させずに表現することが可能です。
さらに、スペースデータは、様々な地域の3Dモデルを公開し、将来的には無償で提供する計画を明らかにしています。担当者は、既存のサービスとの棲み分けが重要だと説明します。
「今後の5GとVRの普及を考えると一人称視点でも通用する景観の3Dモデルの需要が高いと考え、ゲーム・VR・映像・自動運転など一人称視点が必要な業界に特化して提供していきたいと考えています。逆に空からの俯瞰的な視点に関してはGoogle Earthで十分だと私も考えているので、良い棲み分けができればといいなと思っています」
また、今後の意気込みと展望を尋ねると、このような回答がありました。
「(一般的に)宇宙とは未知の物理的な空間だと考えられていますが、私は宇宙とはテクノロジーを活用して『作り出す対象』であると捉えていて、衛星などでこの宇宙のあらゆる情報を取得して解析できるようになれば人類がコンピュータ上に宇宙を再現することも夢じゃないと思い、この企業を作りました。今回はデジタルツインという文脈に沿って地上の再現を行っていますが、今後は昼夜・四季・交通量・人通りなどのデータも反映させていき、世界を作るアルゴリズムに進化させていきたいと思っています」
デジタルツインは、現実の世界をデジタル空間上に再現し、気象災害や環境問題などの対応策を検討するためのシミュレーションに利用できるのではないかと期待されています。
デジタルツイン構築にかかる技術は、ニーズが高まっていくと考えられます。スペースデータ社のAIアルゴリズムは、その中でどのような役割を果たしていくことになるのか、さらには世界を再現するアルゴリズムを開発した先にある可能性に注目していきたいです。
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参考
スペースデータ、衛星データからバーチャル空間に世界を自動生成するAIを開発。誰でも使える地球のデジタルツインとして無償公開も予定