ispaceの月面着陸船、高度5kmまで計画通りの速度で降下していたことが判明。失敗の要因はソフトウェアに【宇宙ビジネスニュース】
【2023年5月29日配信】一週間に起きた国内外の宇宙ビジネスニュースを宙畑編集部員がわかりやすく解説します。
5月26日、月面への物資輸送や月面探査を計画するスタートアップispaceはミッションコントロールセンターで得られた月面ランダーのフライトデータの解析を完了したことを報告しました。
その結果、計画通り秒速1m以下の降下速度かつ垂直状態で月面高度約5kmにまで接近していましたが、ランダーの高度測定で異常が生じており、実際の月面高度約5kmに対して、ランダー自身が自己の推定高度をゼロと判断していたことが判明しました。その後もランダーは降下運用を続け、推進系の燃料が尽きた時点でランダーの姿勢制御を含む動力降下制御が止まり、ランダーは月面に自由落下をしたと考えられるといいます。
ランダーが高度推定を誤った要因としては、ソフトウェアが期待通りに動作しなかったことが挙げられています。ispaceはプレスリリースでこのように説明しています。
「着陸予定地に向けてランダーが航行中、クレーターの縁に当たる高さ約3kmもの大規模な崖の上空をランダーが通過した際、ランダー搭載のセンサーによる測定高度が急激に上昇したことが確認されました。フライトデータの解析によれば、この際、測定高度の数値と事前にランダーに設定された推定高度の数値に想定以上の大きな乖離が発生したことから、ランダーのソフトウェアがこの乖離の原因をセンサー側の異常値と、誤って判断した模様です」
この誤りが生じた背景の1つとして、2021年2月にミッション1のCritical Design Review (CDR)を最終完了した後、着陸地点の変更を行ったことがあるといいます。
今後のミッション2と3に向けては、ソフトウェアの改修や事前の想定シミュレーションを行う範囲を拡大させることでミッションの精度を向上させる考えです。また、ランダーは特段の大きな改修等を必要とせず、ミッション2においてもミッション1と同様のシリーズ1のモデルにて運用可能だといいます。