【宇宙の民主化に向けて着々と】スペースデータが三井住友海上火災保険との協業、Redwireとの協業に向けた覚書締結を発表
2025年7月9日、スペースデータは、三井住友海上火災保険との協業開始、Redwire Corporationとの協業を推進するための覚書締結を続けて発表。それぞれの協業についてその内容と展望を簡潔に紹介します。
2025年7月9日、地球および宇宙環境を再現するデジタルツイン技術や、宇宙ロボット及び宇宙ステーションのオペレーティングシステム開発を行うスペースデータは、三井住友海上火災保険(以下、三井住友海上)との協業開始、航空宇宙および防衛技術のグローバルリーダーであるRedwire Corporation(以下、Redwire)との協業を推進するための覚書締結を続けて発表しました。
本記事では、各社との協業内容について、それぞれ紹介します。
※本記事をご覧いただく前に、スペースデータ代表取締役の佐藤航陽さんと、「宇宙エバンジェリスト」の青木英剛さんとの3本対談をご覧になられていない方は、ぜひ合わせて以下の記事をご覧ください。
佐藤航陽さんと青木英剛さんの3本対談
【デジタル敗戦はなぜ起きたのか】日本産業が強くなるために繰り返してはいけない教訓と意識すべきこと
「実は勝ち筋の手前まで来ている?」佐藤さんと青木さんが考える日本の宇宙産業の勝ち筋
佐藤さんが「私の役目」と考える宇宙プラットフォーム事業の裏側にある想い
宇宙リスクを“見える化”──三井住友海上と進める保険×デジタルツイン
宇宙では、衛星通信、旅行、宇宙ステーション運用など多様な事業活動が進んでいますが、それに伴うリスクは地上とは異なり複雑な要素を含みます。
例えば、宇宙特有の環境や、スペースデブリとの衝突リスク、通信遅延による対応の難しさなどが挙げられます。こうしたリスクに対応するため、スペースデータは三井住友海上と包括連携協定を締結し、宇宙保険の高度化に向けた協業を開始しました。
スペースデータが開発する「デジタルツイン」技術は、宇宙環境や機器の挙動を仮想空間上で再現し、リスクの予測や評価を可能にするもの。これにより、保険商品の設計や補償サービスの精度向上、業務効率化が期待されています。
協業の内容は以下の3点です:
⒈ 保険商品、保険の補償前後のサービス、保険業務効率化などに資する仮想化技術の利活用に関すること。
⒉ 宇宙事業に伴う各種リスクのアセスメントとマネージメントに関すること。
⒊ 宇宙事業のリスクを移転する各種保険に関すること。
この協業により、宇宙で起こりうる事故や故障などのリスクを、企業が負担しやすい形に保険を設計し、分散・管理できるようになります。
三井住友海上は、これまでにも月保険や宇宙旅行保険といった、宇宙ビジネスで新しいチャレンジを行う事業者と新しい保険開発を行っています。
三井住友海上火災保険の新しい保険商品
「宇宙旅行保険」の商品開発に向け、JAXAと三井住友海上が共創開始。関連企業と連携し市場拡大支援も【宇宙ビジネスニュース】
世界初!三井住友海上とispaceが「月保険」を開発。月面ビジネスのリスクを補償【宇宙ビジネスニュース】

スペースデータと三井住友海上の協業によって、さらに宇宙ビジネスへの参入障壁が下がり、より多くの企業が安心して宇宙事業に取り組める環境が整っていくと期待されます。
宇宙を“居住ができる空間”へ──Redwireと進めるAI・デジタルエンジニアリング
三井住友海上との協業に関するプレスリリースと同日に、スペースデータはアメリカの航空宇宙・防衛技術企業であるRedwireと、AIおよびデジタルエンジニアリング分野での協業に向けた覚書(MOU)を締結しました。
この提携では、スペースデータのデジタルツイン技術をRedwireのデジタルエコシステムに統合し、国際宇宙ステーション(ISS)やNASAの商業LEO(低軌道)利用に関連するミッションへの貢献を目指します。また、月周辺空間(Cislunar)や深宇宙探査における共同ミッションも視野に入れているそう。
さらに、スペースデータが有する宇宙向けAIやロボティクス技術を活用した共同研究も進められる予定です。
Redwireの商用宇宙及び国際連携部門上級バイスプレジデントのShawn Buckley氏は以下のようにコメントしています。
「Redwireは、SpaceDataとの協力により、国際宇宙ステーション(ISS)をはじめとした低軌道空間の可能性を最大限に引き出し、将来の商業ステーションや月面・深宇宙ミッションに向けて、当社の高度なデジタルエンジニアリングツールをさらに強化できることを嬉しく思います。」

宇宙の民主化に着々と前進
また、スペースデータの執行役員である高田敦氏はRedwireとの協業について以下のようにコメントしています。
「今回の提携は、単なる協業ではなく、人類の未来にとっての宇宙を“人々が居住できる空間”へと拡張していくための一歩です。Redwire社の先進的な宇宙技術と、当社のAI・デジタルツイン技術を融合させることで、低軌道から月面、さらには深宇宙に至る持続可能な宇宙インフラの構築を加速させていきます。」
スペースデータのミッションは「宇宙の民主化」です。宇宙をインターネットのように身近で、誰もが利用できるインフラに変えてゆくことを目的として活動しています。
今回、宇宙ビジネスへの参入障壁を下げる保険会社との協業、海外の航空宇宙および防衛技術のグローバルリーダーがスペースデータの取り組みに期待を寄せていることが明確になった2つのプレスリリースが同日に発表されたことは、「宇宙の民主化」が着々と近づいていることを感じさせる、大きな前進といえる出来事でした。