【2026年2月】衛星データ利活用に関する論文とニュースをピックアップ!
2026年2月に公開された衛星データの利活用に関する論文の中でも宙畑編集部が気になったものをピックアップしました。
2026年2月に公開された衛星データの利活用に関する論文の中でも宙畑編集部が気になったものをピックアップしました。
・Remote sensing and GIS-based modelling of land use dynamics and urban flood risk in Lagos megacity for future flood mitigation
(ナイジェリアに関する過去40年間(1984年〜2023年)の衛星データを用いて土地利用の変化を定量化し、2050年までの将来的な土地利用変化と洪水リスクを予測する)・Investigating the impacts of climate and land use/cover changes on the Oueme Delta hydrosystem in Benin, West Africa
(ベナンの経済/生態系の要であるウェメデルタ(Oueme Delta)を対象に、気候変動と土地利用/被覆変化が水資源に与える影響を、物理ベースの統合モデルを用いて定量的に評価する)・Discovery of Antarctic moulting sites in satellite imagery reveals new threat to emperor penguins
(中解像度および高解像度の衛星画像を用いて、南極西部のマリーバードランド沿岸におけるコウテイペンギンの換羽サイトを特定し、2019年から2025年までの7年間にわたる分布と個体群の動態、および近年の激しい海氷減少がペンギンに与える影響を明らかにする)・Wildfires on a changing planet
(21世紀末(2090〜2100年)における世界の野外火災の軌道(焼失面積、火災規模、火災強度)を、高緩和(約1.5℃上昇)および低緩和(3〜4℃上昇)の2つのシナリオで予測・評価する)
宙畑の新連載「#MonthlySatDataNews」では、前月に公開された衛星データの利活用に関する論文やニュースをピックアップして紹介します。
実は、本記事を制作するために、これは!と思った論文やニュースをX(旧Twitter)上で「#MonthlySatDataNews」「#衛星論文」をつけて備忘録として宙畑編集部メンバーが投稿していました。宙畑読者のみなさまも是非ご参加いただけますと幸いです。
2026年2月の「#MonthlySatDataNews」「#衛星論文」を投稿いただいたのはこの方でした!
Contrastive–Transfer-Synergized Dual-Stream Transformer for Hyperspectral Anomaly Detection https://t.co/5rNI4ZS8i0 #mdpiremotesensing #衛星論文
Anomaly Detectionといっても異常を見つけるっていうよりは統計的に周囲と違う部分を見つけるって意味合いになるんだな— たなこう (@octobersky_031) February 28, 2026
それではさっそく2026年2月の論文を紹介します。
Remote sensing and GIS-based modelling of land use dynamics and urban flood risk in Lagos megacity for future flood mitigation
【どういう論文?】
・ナイジェリアのラゴス(Lagos)はアフリカ有数の巨大都市であり、2025年には人口が2,100万人に達すると予測されているが、熱帯特有の激しい降雨、さらに低地という地形的特性が重なり、洪水被害が深刻な社会問題となっている
・本論文では、過去40年間(1984年〜2023年)の衛星データを用いて土地利用の変化を定量化し、それが洪水リスクにどう影響しているかを解析すること、および2050年までの将来的な土地利用変化と洪水リスクを予測する
【技術や方法のポイントはどこ?】
◾️本研究のアプローチ
・ 1984年、2002年、2023年の複数時点のデータを使用し、長期間の土地変化を追跡する
・ 地形データと降雨データを組み合わせ、実際にどこにどれだけの水が溜まるかをシミュレート際に、予測モデル(マルコフ連鎖)を用いて、過去の傾向から2050年の都市形態を予測、その時点での将来の被害を特定する
◾️データセット
①衛星画像データ(LULC分類用)
・Landsat 4 (TM) / 7 (ETM+) / 8 (OLI)
・Sentinel-2
②標高データ(地形解析用)
・SRTM-DEM (30m分解能)
③水文・気象データ(洪水シミュレーション用)
・降雨量データ(NiMet)
・河川流量データ(O-ORBDA)
◾️技術的特徴
①教師あり分類(Maximum Likelihood Classifier)
・ラゴスの全面積357,700.1haを6つのクラスに分類
・クラスはBuilt-up(市街地)、Forest(森林)、Light Vegetation(低植生)、Bareland(裸地)、Waterbody(水域)、Wetland(湿地)の6つ
・ 各ピクセルのスペクトル特性(色情報など)が、指定したどのクラスに属する確率が最も高いかを統計的に計算する最尤法(Maximum Likelihood)を適用
②HEC-HMSによる降雨流出モデル
・降った雨が地面の性質(浸透しやすさ=Curve Number)に応じて、どう流れるかを計算
・都市化で森林が減ると本CN値が上がり、流出量が増える関係をモデル化
③マルコフ連鎖モデル(Markov Chain Model)
・1984年から2023年の間に、森林の何%が市街地に変わったかという変化の遷移確率行列(Transition Probability Matrix)を作成
・上記確率行列を2023年の現状に掛け合わせ、2050年時点の土地利用構成を計算する
【議論の内容・結果は?】
◾️土地利用の激変
・市街地(Built-up)は1984年の15.49%から2023年には53.17%へ爆発的に拡大(年間3369.95haの増加)
・森林(Forest)は同期間に46.55%から13.74%へ激減(−31.55%)
・上記を踏まえると、森林や湿地という天然のスポンジが失われ、雨水が直接市街地へ流れ込む構造に変化していることがわかる
◾️洪水シナリオ
・高リスクシナリオとして、最大で211,230.22 haが深刻な影響を受け、浸水が最大30日間続く可能性が示された
・さらに、2050年の衝撃的な予測として、市街地は全域の66.20%(236,810.7 ha)を占め、全エリアの約78.5%(280,578.01 ha)が洪水脆弱性にさらされると予測された
#LULC #HEC-HMS #マルコフ連鎖 #CN値 #不浸透面 #洪水 #最尤法 #ナイジェリア #ラゴス
Investigating the impacts of climate and land use/cover changes on the Oueme Delta hydrosystem in Benin, West Africa
【どういう論文?】
・ベナンの経済拠点であるウェメデルタは、頻繁な洪水で地上観測が不可能なため、「どれだけ雨が降り、それが地下に溜まっているのか、川へ流れているのか」という基本的な実態がブラックボックスになっている
・本論文は、ベナンの経済/生態系の要であるウェメデルタ(Oueme Delta)を対象に、気候変動と土地利用/被覆変化が水資源に与える影響を、物理ベースの統合モデルを用いて定量的に評価する
【技術や方法のポイントはどこ?】
◾️先行研究の課題
①要因分離の不十分さ
・西アフリカではサーヘル・パラドックスとして知られる現象(降水量が減っているのに流出量が増える)が報告されており、森林伐採などの土地利用の変化(LULC)による土壌浸透能の低下が気候変動による降水量減少の影響を上書きしてしまうために起こる
・従来の多くは気候か土地利用のどちらか片方のみを分析しており、上記のような両者が打ち消し合ったり増幅し合ったりする複雑な関係を捉えきれていなかった
②土壌水分(SWC)への着目不足
・従来の広域モデルは河川の出口で何トン流れたか(流量)という水平方向の動きを重視していたが、デルタ地帯の農業には「土壌にどれだけ水があるか(SWC)」や「地下水がどれだけ浅いか(WTD)」という垂直方向の状況把握が問題になっていた
◾️本研究のアプローチ(ParFlow-CLMによる3次元水理シミュレーション)
・地下の水移動を記述するリチャーズ方程式と、地表の流れを記述するマニング方程式を結合
・上記により、地表の洪水リスク(SRO)と地下の貯留(WTD)の関係を物理法則に基づいて計算でき、データが不足しているデルタ地帯の挙動を理論的に補完する
◾️データセット
①LULC (USGS)
・1975, 2000, 2013年の3断面マップ(解像度2km)
②WFDE5 / ERA5
・1979-2019年の降水量、気温、風速、湿度等を1時間単位で入力
・物理モデルを動かす際の変数
③LAI (ERA5)
・植生パラメーター、葉面積指数
・蒸散(植物からの水分放出)計算の精度を高めるために使用
【議論の内容・結果は?】
◾️LULCの影響
・過去(1975年〜2013年)のデータを分析したところ、森林面積は20%減少(77.7% → 57.1%)した
・気候条件を固定してシミュレーションしたところ、年間平均の地表流出(SRO)や地下水位(WTD)に有意な差は見られなかった
◾️気候変動の影響
・降水パターンが変わるだけで、流出量や地下水位が劇的に変動することがわかった
・月の地表流出量(SRO)を比較すると、1975年は43.2 mm/dであったのに対し、2013年には90.6 mm/dと2倍以上に跳ね上がっている
・つまり、現時点では、森林減少よりも雨の降り方の変化の方がデルタの水循環を支配しているということである
◾️未来予測
・標準的な予測(SSP1-2.6)に基づくと、気温上昇によって蒸散が加速し、2085年には、降った雨の81.3%が蒸発または植物から空へ逃げてしまい、人間が利用できる水資源(D)の割合が減少する
・一方で、雨の降り方はより激しくなり、地表を流れる水(SRO)は2000年比で15%増加(338mm → 389mm)する見込みとなっている
#ウェメデルタ #気候変動 #土地利用変化 #ParFlow-CLM #物理ベースモデル #地表流出 #蒸散 #地下水位 #土壌水分 #CMIP6 #ベナン
Discovery of Antarctic moulting sites in satellite imagery reveals new threat to emperor penguins
【どういう論文?】
・コウテイペンギンは生活のほぼすべてを海氷に依存しており、特に換羽(Moult)という、約30〜40日間で全身の羽毛が生え変わる極めて重要な時期においては、ペンギンたちは防水性を失うため海に入れず、断食状態で氷上に留まらならない
・本論文は、中解像度および高解像度の衛星画像を用いて、南極西部のマリーバードランド沿岸におけるコウテイペンギンの換羽サイトを特定し、2019年から2025年までの7年間にわたる分布と個体群の動態、および近年の激しい海氷減少がペンギンに与える影響を明らかにする
【技術や方法のポイントはどこ?】
◾️先行研究の課題
・換羽サイト(特定の場所や地点)に関する知見は、これまでに行われたごく少数のトラッキング調査や偶発的な目撃情報に限定されている
・また、従来の個体数調査は、4月〜12月の繁殖コロニーに集中しており、1月〜3月の換羽期の動態は空白地帯となっていた
◾️本研究のアプローチ
・ 物理的なアクセスが困難な南極において、広域をカバーするSentinel-2と、個体を識別可能なWorldView-2を組み合わせることで、換羽サイトを特定する
・ペンギンの排泄物(グアノ)や汚れた氷が示す特有の反射特性(茶色のピクセル)を指標に、広大な氷原から換羽グループを抽出する
◾️データセット
①Sentinel-2 (ESA/Copernicus)
・2019年〜2025年の7年間にわたる広域(ソンダース海岸、約200km)のモニタリング
②WorldView-2 (VHR/超高解像度衛星)
・Sentinel-2で見つかった茶色のパッチが、実際にペンギンの集団であるかの検証(グラウンドトゥルースの代替)にて利用
line indicates the area of synchronous overlapping imagery. The background image is from the Worldview2 image.
※Fretwell, P.T. Discovery of Antarctic moulting sites in satellite imagery reveals new threat to emperor penguins. Commun Earth Environ 7, 192 (2026). Source : https://doi.org/10.1038/s43247-026-03231-6
③NSIDC海氷データ:
・1978年〜2025年の長期的な海氷範囲の推移と比較し、2023年の記録的低値などの環境要因を分析
【議論の内容・結果は?】
◾️海氷の記録的減少
・2023年2月の南極海氷面積は179万km²と衛星観測史上最低を記録
・研究エリアのマリーバードランドでも、平均約50万km²あった海氷が、2023年には約10万km²まで激減していることがわかった
※Fretwell, P.T. Discovery of Antarctic moulting sites in satellite imagery reveals new threat to emperor penguins. Commun Earth Environ 7, 192 (2026). Source : https://doi.org/10.1038/s43247-026-03231-6
◾️定着氷への依存と崩壊の脅威
・ペンギンは主に定着氷(Fast ice:大陸に固定された動かない海氷)で換羽する
・しかし、2023年は1月30日〜2月2日、2024年は2月9日頃に定着氷が早期崩壊
・換羽が終わっていないペンギンが冷たい海に投げ出される、あるいは断片化した流氷上で漂流するリスクが示された
◾️個体群の激減
・確認された換羽グループ数は、2023年の247件から、2025年にはわずか25件(すべて小規模)へと激減している
・つまり、2年連続の早期氷崩壊を経て、多くの個体がこのエリアから消失、あるいは別の場所へ移動した可能性が示唆される
#換羽 #定着氷 #Sentinel-2 #WorldView-2 #分光シグネチャー #グアノ #鳥類 #排泄物
Wildfires on a changing planet
【どういう論文?】
・本論文は、21世紀末(2090〜2100年)における世界の野外火災の軌道(焼失面積、火災規模、火災強度)を、高緩和(約1.5℃上昇)および低緩和(3〜4℃上昇)の2つのシナリオで予測・評価する
【技術や方法のポイントはどこ?】
◾️先行研究の課題
① 火災気象指数への依存限界
・火災気象指数とは、気温、湿度、風速、降水量などから計算される「火災の起きやすさ(天気ベースの危険度)」を示す指標である
・本指標は天気しか見ていないものの、現実の火災には「燃えるもの(燃料=植物)」と「人間の介入」が大きく影響する
・例えば、CO2濃度が上がると植物の成長が促進され、燃えるための草木(燃料)が増えたり、人間が農地や道路を作れば、それが防火帯の役割を果たして火の延焼を防ぐこともある
・従来の指標は、上記のような「気候変動が植物をどう変えるか」「人間活動がどう火災を邪魔するか」という重要な要素を完全に無視していた
② プロセスベースモデルの精度の限界
・プロセスベースモデルとは、火災のメカニズムを物理法則(葉っぱが何度で発火し、風でどう燃え広がるか等)に基づいてコンピューター上でシミュレーションする手法である
・自然界はあまりにも複雑なため、地球全体の物理現象をすべて計算式で再現しようとすると、小さな誤差が積み重なってしまい、結果として、過去の衛星観測データ(実際の焼失面積の増減トレンドや、火災が起きる季節のパターン)と突き合わせた際に、「現実の過去の動きすら正確に再現できない」という精度の問題を抱えていた
③ 面積や極端な火災への偏り
・ 過去の多くの研究は「どれくらいの広さが燃えるか(焼失面積)」や「オーストラリアやカリフォルニアのような超巨大火災」ばかりに注目していた
・しかし、火災の被害を考える上では、「狭い範囲だけど火力が強烈で生態系を焼き尽くす火災」と「広範囲に燃え広がるが火力が弱くすぐに回復する火災」は全く別物であり、面積だけを見ていては、真のダメージ(激しさなど)を見誤るという問題があった
◾️本研究のアプローチ
① 経験的モデル(一般化線形モデル: GLM)の採用
・経験的モデルとは、物理的メカニズムから計算するのではなく、過去のデータからパターンを見つけ出す統計的な手法である
・「気温が◯度で、道路の密度が◯%で、草の量が◯トンの時、過去の衛星データではこれくらいの火災が起きていた」という膨大な実績データから、数学的な法則性(統計的関係性)を導き出す
② 3つの火災パラメーターの独立モデル化
・火災をひとくくりにせず、以下の3つを別々の数としてモデル化
– 焼失面積(BA): どのくらいの確率で広範囲が燃えるか
– 火災規模(FS): 1回あたりの火災のサイズ
– 火災強度(FI): 火災の激しさ(火力)
◾️データセット
①気候データ
・気温、湿度、風速、乾燥日数など(約1.5℃上昇する「高緩和シナリオ」と、3〜4℃上昇する「低緩和シナリオ」の2パターンを用意)
②植生データ(燃料の量)
・植物の光合成量(GPP)や、森・草・低木の割合
③人間活動データ
・人口密度、農地の割合、道路の密度
【議論の内容・結果は?】
◾️高緩和シナリオ / high mitigation(約1.5℃上昇に抑えた場合)
・焼失面積(BA)に関して、世界全体の焼失面積は減少する
・これは主に、アフリカ、インド、東南アジアなどの熱帯地域(世界の面積の80%以上を占める)で、人間が道路や農地を拡大したためである(人間活動が防火帯になり、火災を減らす)
・ただし、スカンジナビアやシベリアなど、これまで火災が少なかった北半球の寒冷地域(ツンドラや北方林)では、乾燥化とCO2増加によって植物(燃料)が増え、火災規模が23〜36%、強度が2〜5%増加するという結果が出た
◾️低緩和シナリオ / low mitigation(3〜4℃上昇してしまった場合)
・高緩和シナリオとは打って変わり、世界全体で面積が18〜60%も増加する
・熱帯での人間活動による防火効果を、気候変動(熱波と乾燥)が完全に上回る
・規模は最大化、強度は下がり逆転する見込み(温帯草原などで燃えるものが乾燥しすぎて、広範囲に燃え広がるものの火力(強度)自体は弱まるためだと考えられる)
※Haas, O., Prentice, I.C. & Harrison, S.P. Wildfires on a changing planet. Nat Commun 17, 1599 (2026). Source : https://doi.org/10.1038/s41467-025-68176-4
#野外火災 #焼失面積 #火災規模 #火災強度 #気候変動 #GLM #経験的モデル #熱帯地域 #ツンドラ
来月も「#MonthlySatDataNews」「#衛星論文」をお楽しみに!

