衛星データが無料でいじれる!衛星画像解析フリーソフト5選
衛星画像をダウンロードして解析する。お高いんでしょう……?と思われがちですが、そこそこの衛星画像とそこそこの解析であれば無料でいじることができるのです。 大学の先生のような特別な知識を持つ一部の限られた人だけが高価な衛星画像を解析する印象でしたが、近年では無料で利用できる衛星画像があり、また、個人で所有するPCのスペックの向上もあり、だれでも衛星画像が触れる世界ができつつあります。
今、衛星画像に注目が集まっています。
大学の先生のような特別な知識を持つ一部の限られた人だけが高価な衛星画像を解析する印象でしたが、近年では無料で利用できる衛星画像があり、また、個人で所有するPCのスペックの向上もあり、だれでも衛星画像が触れる世界ができつつあります。
本記事では、衛星画像を触る上で欠かせないツール”衛星画像解析ソフト”について、衛星画像解析初心者の筆者が調べてみた結果をご紹介します。
(1)衛星画像解析ソフトとは
衛星画像解析ソフトとは、その名の通り「衛星画像を解析・編集するために必要なソフト」です。
まずは具体的にソフトを触ってみる前に、簡単に衛星画像解析ソフトについてご説明します。
(2)なぜ衛星画像解析ソフトが必要なのか
では、なぜ”衛星”画像解析ソフトが必要なのでしょうか?
衛星から取得するデータも画像であることには違いないので、通常の画像編集ソフト、たとえば”photoshop”などでも良いように思えます。
しかし、主に以下3つの理由により、衛星画像解析ソフトである方が望ましいと考えられます。
(i) 衛星画像には位置情報がついている~GeoTIFF形式~
(ii) 衛星画像にはバンドがある~NVDI/NDWI/false color~
(iii) 衛星画像には処理レベルがある~L0処理、L1処理~
それぞれについて、ひとつずつご説明します。
(i) 衛星画像には位置情報がついている~GeoTIFF形式~
衛星画像は地球のどこかを撮影している画像で、画像には必ずどこを撮ったのかを示す情報が付加されています。
画像形式はよくみるTIFF形式ですが、それに位置情報をつけたGeoTIFF形式であることが多いです。
TIFF形式のため、Photoshopなどで開くことはできますが、その際に位置情報が落ちてしまいます。
たとえば、画像と地図を重ねて解析をしたい場合、これでは不十分です。
(ii) 衛星画像にはバンドがある~NVDI/NDWI/false color~
2つ目の理由は、衛星画像にはバンドがあるということです。
バンドとは色をイメージしていただくのが良いと思います。カラー画像の場合、赤青緑の3色(バンド)からなります。
一般的な地上のカメラの場合、カラー画像は赤の成分と青の成分と緑の成分に分解することはできません。
一方、衛星画像の場合、そもそも色が赤青緑の3色でないケースがほとんどで、画像はそれぞれのバンド毎に分解されています。
これはなぜでしょうか? 理由はバンド毎に解析を行うためです。
たとえば、植物を赤く着色するfalse color、植物の活性度を見るNDVI、水を検出するNDWIなど、通常の赤青緑の画像(これを「True color」と呼びます。)以外の波長を組み合わせることで様々な解析を行うことができるのです。
(iii) 衛星画像には処理レベルがある~L0処理、L1処理~
最後の理由は衛星画像には処理のレベルがあるということです。
衛星画像には以下に示すように、何段階か処理が必要です。
一般に出回るのはL0,L1処理後の画像がほとんどです。逆に、必要な高次処理については自分で行う必要があり、そのためにも衛星画像専用の解析ソフトが必要と言えます。
詳しくは「衛星データの種類と 入手の際の留意点」の35ページ以降をご覧ください。
(3) 無料で使える衛星画像解析フリーソフト5選
実際にいくつかフリーの衛星画像解析ソフトをダウンロードして使ってみたいと思います。
今回は分かりやすさのため、宙畑編集部が触ってみた主観をもとに勝手に以下の8項目を3段階で評価していきます。
・操作性(分かりやすさ):☆☆☆
直感的に動かせるボタンやメニューになっているか
・扱える拡張子:☆☆☆
扱える画像の種類が多いか
・参考資料・サイトの多さ:☆☆☆
ソフトを解説した書籍、Youtubeの動画、SlideShareの資料の多さ
・日本語対応:☆☆☆
日本語対応しているか否か、している場合不自然な部分がないか
・Mac対応:☆☆☆
Windowsだけでなく、MacやLinuxに対応しているか。
・バグ対応(バージョンアップ速度):☆☆☆
様々なバクやOSの新しいバージョンに対応して新たなバージョンがでているか。
・機能の多さ:☆☆☆
どのような機能を有しているか
・拡張性(アドイン・自分で書く):☆☆☆
用意された機能だけでなく、ユーザー自身がコードを書けるか。
それでは、実際に解析ソフトの紹介をしていきます。
・世界的にユーザー数が多い 「QGIS」
●ダウンロードサイト:https://www.qgis.org/ja/site/forusers/download.html
QGISは、 フリー・アンド・オープン・ソース・ソフトウェア(FOSS)の上に構築されるプロフェッショナルなGISアプリケーションです。
QGIS は、Open Source Geospatial Foundation (OSGeo) のオフィシャルプロジェクトで、Lunux, Unix, Mac OSX, Windows, Android で動作し、数多くのベクター、ラスター、データベースフォーマットや機能をサポートしています。
Macにも対応していますが、多少バグがあるようです。
世界的にユーザーが多いため、困ったときにGoogle検索で検索すれば答えを探すことができるのが利点です。YoutubeやSlideShareで「QGIS」と検索すれば、多くの動画やスライドをみつけることができるでしょう。書籍も数多く出版されています。
● SlideShareのQGIS関連資料
● YoutubeのQGIS関連動画
● QGIS関連書籍
また、プラグインが充実しておりPythonで自ら書ける機能が備わっています。
日本語版はありますが、研究者も使うため解析のメニューが多く、操作性という意味では最初は戸惑うかもしれません。
・簡単に触れる初心者向け!「EISEI」
●ダウンロードサイト:http://www.yac-j.com/hq/info/eisei_kiyaku171226.pdf
「EISEI」は日本宇宙少年団が教育目的で扱うことを前提にJAXAの研究員と開発した加工ソフトで、商業目的で利用することは禁じられています。
利用する際には使用条件をよく確認し、利用していただきたいです。また、Windows版しかない点は注意が必要です。
日本語で作成されているソフトウェアのため、操作ボタンが日本語であり、操作が圧倒的に簡単であるので、まずはちょっと触ってみたい方向けにおすすめです。
・SAR画像の機能も充実!欧州が誇る解析ソフト「SNAP」
●ダウンロードサイト:
https://step.esa.int/main/download/
欧州が整備を進めるのが「SNAP」というソフトウェアです。
欧州は、衛星画像利用を強力に推しすすめており、画像解析ソフトにも力を入れています。チュートリアルもしっかり整備されていますし、Youtubeなどでの情報も多いです。
●Youtubeのsnap関連動画
●SlideShareでのsnap関連資料
残念ながら日本語版はありませんが、アイコンがわかりやすいので比較的操作はしやすいと思います。
・画像の専門家が薦める「MultiSpec」
●ダウンロードサイト:
https://engineering.purdue.edu/~biehl/MultiSpec/index.html
ダウンロードするのみで、インストールいらないタイプのソフトウェアです。
パデュー大学が中心となって開発した画像解析ソフト。名前の通りマルチ画像の解析に特化しています。日本語版はないです。Mac、Windowsとオンライン版があります。
Youtubeなどの解説資料は少ないですが、公式サイトのチュートリアルが充実しているので、英語に抵抗がなければ使いこなすことができるでしょう。
衛星画像解析を専門にしている方から薦められるソフトです。
・日本語の高レベル解析ソフト「RSP」
●ダウンロードサイト:
http://www.ctie.co.jp/software/rsp/
Mac,Linux,Win8/10に未対応なことが難点ですが、英語ソフトの日本語化ではない、日本語でしっかり作られているソフトです。
先に紹介したGEOTIFF形式のファイルはそのまま開くことはできず、BMP形式などへの変換が必要です(RSPソフトウェア上でできます)。
位置情報付きのデータは扱えないものの、Landsat-8のデータから反射率や輝度温度などよく使う機能(解析)がアクセスしやすいようになっているのは利点です。
少し古いですが、書籍も出ています。
●フリーソフトを用いた衛星画像解析入門―世界の自然と災害事例で学ぶ
http://amzn.asia/d/hmC8QCc
(4)衛星画像解析フリーソフトまとめ
ここまで5本の衛星画像解析のフリーソフトをご紹介してきました。
まとめると以下のようになります。
パッと触ってみた感じ、初心者向けに作られているものと上級者向けにつくられているものがありました。
ひとまず触ってみるのであればEISEI、今後バリバリ使っていくならばSNAPかQGISあたりがおすすめかなあと思います。
また、衛星画像を解析することに特化して機能やボタンを強化しているものの、地図など衛星以外の組み合わせに向いていそうなものもありました。
今回紹介した例でいくと、RSPやMultiSpecは衛星画像解析に特化している印象で、QGISは衛星以外の位置情報のついた情報も数多く取り込みやすい印象です。
本記事を手掛かりに、お気に入りの解析ソフトを見つけていただければ幸いです。
(5)おまけ:有償ダントツシェア「ArcGIS」
おまけにもう一つ、フリーではないのですが有料であればダントツシェアを誇るEsri社の商品についてもご紹介しておきます。
ArcGIS
Esriという会社が販売しているGIS(地理空間情報ソフト)。画像処理だけでなく、すぐにサービスに活用できるツールを有しています。
ArcGIS には、すぐに利用可能な豊富な地図データや、簡単な設定のみで業務に活用できる各種アプリが提供されており、いつでも、どこでも、あらゆる端末からアプリを利用して、共有された地図や情報にアクセスすることができます
●ArcGISに関してはこちら
https://www.esrij.com/products/arcgis/
ENVI
同じくEsriが販売する画像処理ソフト。
プロフェッショナルのためのリモートセンシング画像解析アプリケーション。
●ENVIに関してはこちら
https://www.esrij.com/products/envi/
ソフトを買わずとも、Esri社のサイトは衛星画像に関する知識が色々と紹介されているので、一度覗いてみるといいかもしれません。
(6)衛星画像解析の未来(解析ソフトからクラウドへ)
本記事では、衛星画像解析ソフトについてご紹介してきましたが今後の衛星画像解析ソフトの動向は大きく変わっていくことが想定されます。
実際に衛星画像を触ったことのある方であればお分かりかもしれませんが、衛星画像は1枚数GBレベルと大変重く、画像を1枚おろしてくるだけで時間がかかります。
そこで、今注目されているのが”クラウド”です。衛星画像も解析ソフトもクラウド上で動かせば、ユーザーがわざわざ画像をダウンロードせず、サクサクと解析が行えるというものです。
宇宙以外の業界でも、企業の固有設備(オンプレ)からクラウドに移行する動きがみられていますが、それと全く一緒です。
クラウドの筆頭AWSやgoogleでも衛星データを扱っています。
●Google Earth Engine
URL:https://earthengine.google.com/platform/
衛星画像解析が変わる!? 「Google Earth Engine」の何がすごいのか
●Earth on AWS
URL:https://aws.amazon.com/jp/earth/
AWS Ground Stationが変える衛星データビジネス
世界のこのような潮流を受けて、日本でもクラウド上の衛星データプラットフォーム「Tellus」の構築が始まっています。
●Tellus
URL:https://www.tellusxdp.com/
Tellusについては宙畑でもなぜ日本初衛星データPF「Tellus」のデータビジネスに期待が集まるのかにてご紹介しています。
20年前、インターネットでみんなが当たり前のように買い物をする世界を誰も想像できませんでした。
同じように、今はまだイメージできないかもしれませんが、10年後にはだれもが当たり前に衛星データをインターネット上で使い、ビジネスや趣味をしている世界になっているかもしれません。
2019年2月リリース! 衛星データプラットフォーム「Tellus」でできること
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