光の波長って何? なぜ人工衛星は人間の目に見えないものが見えるのか

宙畑では、これまで様々な人工衛星を紹介し、人の目に見えるものと同様の可視光画像や、植生を強調した画像、温度分布を示した画像など、いくつもの画像を取り上げてきました。

可視光の画像はまだしも、なぜ人工衛星の画像は植生を強調したり、人の目では見えない温度分布を見えるようにしたりすることができるのでしょうか。

以前の記事で衛星が捉えているのは光であると紹介したことがありますが、今回の記事では、さらに「光」を深掘りして、衛星が見せてくれる画像の違いについて紹介します。

【目次】
1.そもそも人の目が捉えている光とは?
2.波長とは~人の目が捉える光はほんの一部~
3.波長を知れば、見えるものがわかる
4.波長によってどう違う?衛星画像比較
4-1 青の光の波長帯(0.4~0.5μm前後)
4-2 緑の光の波長帯(0.5~0.6μm前後)
4-3 赤の光の波長帯(0.6~0.7μm前後)
4-4 可視光画像
4-5 近赤外線(NIR:Near InfraRed)の波長(0.7~1μm前後)
4-6 中間赤外の波長(1~6μm前後)
4-7 熱赤外(TIR:Thermal InfraRed)の波長(6~13μm前後)
4-8 波長の組み合わせから地球を見る
5.まとめ

1.そもそも人の目が捉えている光とは?

人はモノを見る時、色を識別することができます。リンゴやトマトは赤、晴れた日中の空は青、葉っぱは緑。

では、なぜそう見えるのでしょうか。

それは物体が太陽や蛍光灯などの光を受けた時に、特定の光だけが反射されて目に届き色を判断してるから。

目には、青、緑、赤の光を判別するセンサーのような役割を持つ細胞(視細胞)があり、それぞれの色の光を感じ取る割合で色が決まります。

たとえば、目に入ってくる光から青だけを視細胞が感知すると青と判別し、緑と赤の両方が感知すると黄色。青緑赤すべて感知すると白。青緑赤どれも感知しないと黒と判断します。

人の目は以下図のように青、緑、赤の光で色を判断するため、青、緑、赤が光の三原色とされています。

”波長まとめ”
人の目は青、緑、赤の光の組み合わせで色を判断している
Image Credit:sorabatake

きっと理科の授業で学んだことを覚えている読者の方も多いでしょう。第2章では、人間の目の限界と衛星が判別できる光について深掘りしていきます。

2.波長とは~人の目が捉える光はほんの一部~

青、緑、赤の光を目で感知して人は世界を見ていますが、光は青、緑、赤の光だけで構成されているわけではありません。

光とは、広い意味で電磁波の一種です。通信に使う電波やリモコンなどに使われる赤外線、日焼けなどの原因になる紫外線などすべて電磁波であり、それぞれ「波長」といわれる波の間隔の違いによって性質が異なります。

人の目はこの電磁波の中で可視線といわれる限られた範囲の波長帯しか見ることができません。この可視線の波長帯を青、緑、赤の色の組み合わせで捉えています。

では人工衛星ではどうかと言うと、紫外線や赤外線、電波をとらえることができるセンサーを搭載しているので、人の目ではわからない地球の姿を見ることができます。

”波長まとめ”Image Credit:sorabatake

本記事では「衛星データのキホン~分かること、種類、頻度、解像度、活用事例~」でご紹介した上図の光学センサ(と一部熱赤外センサ)の深掘りと考えていただければと思います。

3.波長を知れば、見えるものがわかる

”波長まとめ”
光の波長と波長による観測しやすい観測対象を表すグラフ
Image Credit:JAXA

上の図は、波長のどこを見るかによって見えてくるものが変わるということを表したもの。

人間の目に見えているものは可視線といわれる範囲のみで、他の波長で観測したデータを可視化できれば、人の目には見ることができない地球の姿を知ることができるのです。

では、なぜ光の波長によって、見えるものが違うのでしょうか。それは、物質によって光(電磁波)の反射や放射の仕方が違うから。

特定の波長の光(電磁波)を反射する物質の特徴さえ理解できていれば、特定の波長で観測した衛星画像から特定の物質の分布を知ることができます。

たとえば、上の図で、可視線に近い方の赤外線の波長で植物が反射の強さが強いことがわかります。これは赤外線センサーで観測できる衛星は、植物の分布を調べることができるということになります。

植物=緑のようなイメージがあるかと思いますが、可視線の緑色の波長で見るより、赤外線の波長で見るほうが植物の分布(植生)をはっきり映しだすことができるのです。

【第3章までのまとめ】
・人の目は赤、緑、青の光の波長を捉えることができる(赤、緑、青しか判断できない)
・物体はそれぞれ特定の波長を反射する特性を持っている
・特定の物質量を調べるためには、その物質の反射・放射の特性を知る必要がある

4.波長によってどう違う? 衛星画像比較

では、波長の違いによってどのような違いがあるのか、実際に衛星画像を見比べてみましょう。

今回は、無料でダウンロードできる衛星データの中から、Landsat-8、Sentinel-2、ひまわり8号の画像で見ることができるものを紹介します。

以下の図にそれぞれの衛星が見ることができる波長帯をまとめてみました。衛星データをダウンロードするときのバンド番号が、波長の幅(波長帯)を表す図の数字に対応しています。

”波長まとめ”
”波長まとめ”
それぞれの衛星が観測している波長と中心波長帯の対応表(単位はμm) ※sentinel2A/2Bの8aはバンド9として以下ナンバリングをずらしている
Image Credit:sorabatake

これからご紹介する画像は2018年4月8日の関東地方(ひまわり8号は日本周辺域)の画像をダウンロードしています。

衛星は回帰日数によって観測するタイミングが異なりますが、3つの衛星とも近接エリアをこの日に観測していたので、この日のデータにしました。

※宙畑編集部で個別にデータをダウンロードし処理しているため、処理の仕方によっては紹介した画像とは違った見え方になります。色の濃さやサイズなど必ずこの通りに見えるというわけでありません。

4-1 青い光の波長帯(0.4~0.5μm前後)

”波長まとめ”Image Credit:sorabatake

光の3原色の青の光の波長帯(0.4~0.5μm前後)がこの範囲です。上の画像では雲が目立ってしまって地表面があまり見えてないように見えますが、土壌分布や、落葉樹と針葉樹の分別などに適している波長帯です。

空気中のちり(エアロゾル)を見るのにも適しています。青い光の波長より短い波長帯を紫外線、さらに短い波長帯のX線もありますが、人工衛星の波長では青の光の波長帯からが良く使われています。

4-2 緑の光の波長帯(0.5~0.6μm前後)

”波長まとめ”Image Credit:sorabatake

光の3原色の緑の光の波長帯(0.5~0.6μm前後)がこの範囲です。青の波長と画像で違いは分かりにくいですが、植物の活性度を見るのに比較的適しています。

4-3 赤い光の波長帯(0.6~0.7μm前後)

”波長まとめ”Image Credit:sorabatake

光の3原色の赤の光の波長帯(0.6~0.7μm前後)がこの範囲です。これも上の画像では判断しにくいですが、水域と陸域の区別が青や緑の波長と比べてよりはっきりとわかるようになっています。植生もよりはっきりと見える波長となります。

4-4 可視光画像

”波長まとめ”Image Credit:sorabatake

以上の青緑赤の光の波長帯に含まれる画像を合成することで、人の目で見るのと同じような可視光画像を作ることができます。

実際に衛星画像を作ってみたくなった方は「1時間で完成! 0から始める衛星画像の作り方」をご覧ください。

”波長まとめ”
Landsat-8:0.59μm(バンド8)

また、Landsat-8のバンド8では、可視線の0.5~0.68μmまでの波長をほかのバンド(30m分解能)より高解像度(15m分解能)で捉えています。

カラー合成した画像をこのバンド8の画像とも合成することで、カラーの高解像度画像を作るパンシャープン処理を可能にするためです。

”波長まとめ”Image Credit:sorabatake

4-5 近赤外線(NIR:Near InfraRed)の波長(0.7~1μm前後)

”波長まとめ”Image Credit:sorabatake

赤外線は可視線の波長に近い方から、近赤外、中間赤外、熱赤外などと分類があります。資料によって、近赤外と中間赤外の間に短波赤外がある、中間赤外の次が遠赤外となっているなど、分類が多少異なっています。

赤外線の波長から人間の目では捉えることができない波長になります。これまでの画像に比べるとさらに陸と水がはっきりと区別できるようになり、上の画像でも陸地がわかりやすくなっていると思います。
植物が強く反射するという特徴も持ち、植生を調べる際に良く用いられる帯域です。高層建築物の集まっている市街地は植生に比べ暗く見えます.

Sentinel2ではこの近赤外の波長帯をバンドで細かく分けているため、細かい波長の違いで植生を調べることが得意といえます。

4-6 中間赤外の波長(1~6μm前後)

”波長まとめ”Image Credit:sorabatake

1~1.7μmの範囲の波長は短波長赤外(SWIR:Shortwave Infrared)と言われることもあります。
この波長では水は良く反射し、氷はあまり反射しません。水が多く含まれる低い雲は明るく映り、上空にあり雪や氷の粒が多い雲、雪や流氷などが暗く映ります。また、火など高温な物体の放射も見えます。

地表面では、草地や裸地が比較的白っぽく見え、都心部は暗く見えるため、土壌分布の違いを見ることに利用される波長帯です。

水域と陸域の違いもかなりはっきりと区別できるため河川を見るのにも適しています。

”波長まとめ”
ひまわり:3.9μm(バンド7)

ひまわりの3.9μm(バンド7)の波長は、太陽の反射と、物質自体から発する電磁波の両方を観測できる波長帯です。昼と夜とで雲の高さによって白黒の濃淡が違って見ることができます。

後でご紹介するひまわりのバンド13の波長で観測できる雲の高さの違いと比べることで、雲の性質や構造をより詳しく調べることができます。

4-7 熱赤外(TIR:Thermal InfraRed)の波長(6~13μm前後)

”波長まとめ”Image Credit:sorabatake

6~13μmほどの波長になると太陽光が地面に反射した光ではなく、物質自身が発する電磁波を捉えることになります。雲や植物も電磁波を発しているため、特定の波長を観測することで見えているものが違ってきます。

熱赤外の波長で比較的波長が短い、ひまわり8号の6.2μm(バンド8)、6.9μm(バンド9)、7.3μm(バンド10)では、水蒸気量を観測することができます。3つの画像の見え方の違いは、大気の高度による水蒸気分布です。バンド8の画像のほうが上空の対流圏上層の水蒸気を捉えており、バンド10のほうが比較的低い対流圏中層の水蒸気を捉えています。

”波長まとめ”Image Credit:sorabatake

続けて、ひまわり8号の8.6μm(バンド11)の画像では、二酸化硫黄の影響を観測できるため、火山噴火後の噴煙の様子などを観測するのに利用されます。

また、9.6μm(バンド12)の画像では、オゾンの分布を調べることに利用されています。
このように、大気中の成分を調べるのに熱赤外の波長が利用されています。

”波長まとめ”Image Credit:sorabatake

上の図を見ると、Landsat-8とひまわり8号で近しい波長を捉えていますが、見え方がかなり違って見えます。

この波長で、ひまわり画像は白いほど温度が低く、landsat-8の画像は、黒いほど温度が低く表示されています。

上空にある雲のほうが地上近くの雲より温度が低いため雲の高さを調べたり、雲のない地域であれば、地表面温度や、海面温度を調べたりすることにも使われます。

波長の長いlandsat-8の12μm(バンド11)、ひまわり8号の13.3μm(バンド16)は、波長が短いバンドより大気中の氷晶の影響を受けるため、波長が長い方から波長が短い方の差分を出すことで、雲の高度の差を調べることができます。可視線では判断しにくい雲の高度を明確に見分けることで雲の構造や大気の動きを把握することができます。

また、ひまわり8号のバンド14では、他のバンドより砂地に影響を、12.4μm(バンド15)は火山灰や黄砂に含まれるケイ素の影響を、13.3μm(バンド16)では二酸化炭素の影響を受けやすく、大気中の成分を調べるのにもこのバンドが利用されています。

”波長まとめ”
赤外バンド波長(波数)帯における大気中の気体分子による吸収特性。縦軸は透過率、横軸は波数、赤線と最上段の赤字はひまわり 8 号の観測バンドを示す
Image Credit:気象庁

4-8 波長の組み合わせから地球を見る

ここまで、3つの衛星が観測できる波長帯を紹介してきましたが、1つ1つのバンドで調べるだけではなく、バンドの組み合わせることで、新たな視点で地球を見るという方法もあります。

”波長まとめ”
上空の雲が水色、植生が赤くあらわされている
Image Credit:sorabatake

例えば、衛星ごとにそれぞれ3つの波長を
Landsat-8の0.65μm(バンド4)、0.86μm(バンド5)、1.62μm(バンド6)、
Sentinel2の0.66μm(バンド4)、0.86μm(バンド9)、1.61μm(バンド12)、
ひまわり8号の0.64μm(バンド3)、0.86μm(バンド4)、1.6μm(バンド5)
というように組み合わせると、上層の雲(氷や雪を含む雲)か下層の雲(雨や水蒸気を含む雲)か、また、植生分布を判別しやすくなります。

”波長まとめ”Image Credit:sorabatake

2つの波長から植生指数や、水分量を求めることもできます。

具体例をあげると、光合成が活発に行われている植生の分布を調べるのにNDVI(Normalized Difference Vegetation Index)という植生指数があり、近赤外の波長と赤の波長を使って以下の式で、求めることができます。

”波長まとめ”Image Credit:sorabatake

NDVI=(近赤外ー赤)/(近赤外+赤)

今回ご紹介した衛星のバンドだと、以下のようになります。
Landsat-8の赤0.65μm(バンド4)、近赤外0.86μm(バンド5)
sentinel2の赤0.66μm(バンド4)、近赤外0.86μm(バンド8a)
ひまわり8号の赤0.64μm(バンド3)、近赤外0.86μm(バンド4)

これによって活発な植生の分布を明確に表すことができるのです。

衛星から見える植物かそうでないかの判断ができることを利用して、テニスコートの素材が人工芝か天然芝かが見えるか試してみた「衛星データだけでグランドスラムのテニスコート素材を当てる!」もぜひご覧ください。

5.まとめ

このように、多くの波長帯で地球を調べることは、人間の目では見ることができない地球のいろいろな姿を捉えることができます。

今回紹介した3つの衛星は比較的多くのバンドで観測ができる衛星ですが、これらの衛星だけで地球のすべてを把握できる波長が揃えられているわけではありません。
以下の図のように、衛星によって観測できる波長も違えば、解像度も異なります。

”波長まとめ”Image Credit:sorabatake

今まではひとつの衛星の複数のバンドからデータを掛け合わせて地球を見ることが一般的に利用されていました。

しかし、今後、多くの衛星を使って違った視点で地球を観測し、違う観測データを掛け合わせることで、新たに見えるものが出てくるかもしれません。それは、衛星のデータだけはなく、地上にあるデータも含みます。

今、経産省が「Tellus」という事業で、衛星や地上のデータを同じプラットフォームで解析できる環境づくりを推進しています。

数あるデータを有効活用して地球の姿を捉えることで、気候変動の影響の解明や、データを利用した新たなビジネスが生まれるかもしれません。

人間の目ではわからないことが衛星から広範囲に理解することができる波長の世界、ぜひ読者の皆様も気軽に遊んでみてください。

【参考資料】
センサーを利用した観測方法
衛星データの種類と入手の際の留意点
センチネル2号(Sentinel-2A/2B)の概要・諸元
ランドサット(Landsat)衛星・センサの概要・諸元
気象衛星センターHP
Copernicus: Sentinel-2 — The Optical Imaging Mission for Land Services
気象衛星観測の基礎とひまわり8号の多バンド観測の活用

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