宙畑 Sorabatake

ニュース

加速する宇宙ベンチャーのSPAC上場。RedwireがSPACを活用して上場へ【週刊宇宙ビジネスニュース 2021/03/22〜03/28】

一週間に起きた国内外の宇宙ビジネスニュースを厳選してお届けする連載「週刊宇宙ビジネスニュース」は毎週月曜日更新!

今週は、宇宙企業の上場に関するニュースが多数飛び込んできました。

RedwireがSPACを活用して上場へ

2020年に宇宙に特化した※PEファンドであるAE Industrial Partnersが立ち上げ、7社の宇宙企業を買収してホールディング戦略をとってきたRedwireが3月25日に、Genesis Park Acquisition Corp.による買収及び経営統合契約を締結したことを発表しました。投資家向け資料はこちらからダウンロード可能です。
(※PEファンドとは、VCと異なり、成長フェーズを過ぎ確実なキャッシュフローを生んでいる企業に投資を実行し、単独で経営権を所有しながら高い内部収益率を獲得する投資ファンドです。)

既にニューヨーク証券取引所に上場しているGenesis Park Acquisition Corp.がRedwireを買収したのち2社は合併し、Redwireは2021年度第二四半期までにニューヨーク証券取引所に上場する予定です。

合併が完了するとRedwireは1億7000万ドル(約186億円)を獲得し、企業価値は約6億1500万ドル(約674億円)と算出されています。

Genesis Park Acquisition Corp.は特別買収目的会社(SPAC)と呼ばれる、自社では事業を持たずに未上場ベンチャーの買収を目的につくられた企業です。近年、SPACを活用した宇宙ベンチャーの上場が相次いでおり、Redwireで8社目です。

宙畑メモ
SPAC(特別買収目的会社)とは、その企業自体は特定の事業を持たずに、一定期間内に未公開会社・事業を買収することのみを目的として株式市場に上場する企業のことです。SPACを活用すると、資金調達を行いながら上場が果たせるほか、従来の新規株式公開(IPO)よりも簡素なプロセスで上場を果たせるため、近年この方式の上場を採用するベンチャー企業が増加しています。

ニューヨーク証券取引所に2019年に上場したVirgin Galactic・2021年中に上場予定のBlackskySpire Globalや、NASDAQに2021年中に上場予定のMomentusAST & Science LLCAstraRocket LabもSPACを活用しました。

Redwireは、2020年6月に市場に登場してから、合計7社を買収しています。
傘下にある企業の一覧が以下の表です。

Redwireの傘下にある宇宙企業一覧 Credit : sorabatake

今年の3月23日にNASAは、商業LEO開発プログラム(Commercial LEO Development:CLD)を発表しました。このプログラムは、民間の低軌道宇宙ステーション開発のためにNASAが資金援助を行うものです。具体的には、2021年第4四半期に最大4億ドル(約440億円)を4社に提供します。

このCLDには20の宇宙企業が応募していますがRedwireも応募しており、低軌道経済圏の活性化に乗り出そうとしている様子が窺えます。

RedwireのCEO兼会長のPeter Cannito氏は、今回のSPAC上場について以下のコメントを出しています。

As we enter this second golden age of space, Redwire is supplying the picks and shovels that enable nearly every space mission, supporting initiatives to help us better understand our planet, transform our space security infrastructure, and move humanity deeper into our solar system. We are thrilled to enter into this business combination with Genesis Park.
(訳:宇宙の第2の黄金時代を迎えるにあたり、Redwireはほぼすべての宇宙ミッションを可能にするコア技術を提供し、地球のより深い理解と宇宙安全保障インフラの増強、深宇宙探査のための戦略を支援していきます。今回、Genesis Park と事業統合できることを大変嬉しく思っています。)

Redwireは、2021年の収益は1億6300万ドル(約180億円)、2021年~2025年のCAGR(年平均成長率) は72%と予測されており、2025年には14億ドル(約1500億円)の収益を目標にしているようです。上場企業となるRedwireの更なる事業戦略に注目です。

カナダの宇宙企業MDAが約4億ドルを獲得し上場へ

カナダの宇宙企業MDA Ltd.は、3月22日に新規株式公開(IPO)のための書類をカナダの証券当局に提出し、上場することを発表しました。MDAは総額3億9700万ドル(約440億円)を獲得し、上場企業となった後の同社の企業価値は22億ドル(約2400億円)以上となる見込みです。

近年、SPAC(特別買収目的会社)を活用した宇宙企業の上場が盛んですが、MDAは一般的な上場プロセスを踏んでいます。

MDAは1969年にカナダで創業したのち、米国の宇宙インフラ大手企業Maxar Technologiesの一部門に参画しました。しかし、Maxarの負債を減らす施策の一環で、2019年にトロントを拠点とする民間PEファンドのNorthern Private Capitalに約7億6500万ドル(約840億円)で売却されました。

MDAは、合成開口レーダー(SAR)衛星の”Radarsat”シリーズや、ISSで使用されているロボットアーム”Canadarm2”などの技術を有しています。同社は今年2月に、新しいSAR衛星である”SARnext”を発表しており、今回獲得した資金の大半をSARnextの開発に充てる予定です。SARnextは15年間で20億ドルの収益を生み出すと予測されています。

その他、MDAはNASAが主導する月面ゲートウェイに搭載予定のロボットアーム”Canadarm3”の開発に関する初期契約を結んでおり、15年間の開発・運用として14億ドルを獲得する見込みです。

カナダの上場企業となるMDAの今後に注目です。

Canadarm2が、日本のHTVをISSから取り外す様子 Credit : NASA Source : https://www.nasa.gov/image-feature/the-canadarm2-and-japans-htv-9-resupply-ship

宇宙企業を買収する新たなSPACが登場

近年増加しているSPAC(特別買収目的会社)の一つであるCEA Space Partners I Corpが、米国証券取引委員会に資料を提出し、未上場の宇宙企業を買収するために2億5000万ドル(約270億円)を公募で調達する計画を発表しました。

CEA Space Partners I Corpは、PEファンドのNavigation Capitalと投資銀行のCEA Groupが資金を投入しています。

Navigation Capitalは、2021年2月にロケットベンチャー企業のAstraを買収したSPACであるHolicity, Inc.にも投資しています。また、CEA Space Partners I CorpのCEO兼会長であるEdward Horowitz氏は、大手衛星通信企業SESの子会社であるSES Americomの元CEOでもあります。

CEA Space Partners I Corpは、買収先の未上場企業として、宇宙産業や隣接する分野で企業価値が10億ドル以上のベンチャー企業に焦点をしぼっているようです。

同社が、どのような宇宙ベンチャー企業を買収するのか楽しみです。

今週の週間宇宙ビジネスニュース

宙畑編集部のおすすめ関連記事

参考記事

Redwire, an Innovative Space Infrastructure Company Serving The Fast-growing Space Industry, to Become Publicly Traded Through Merger with Genesis Park Acquisition Corp.

As the mission partner of choice, Redwire’s space infrastructure and services have enabled nearly every space mission.

NASA wants companies to develop and build new space stations, with up to $400 million up for grabs

MDA LTD. FILES PRELIMINARY PROSPECTUS FOR INITIAL PUBLIC OFFERING OF COMMON SHARES

MDA files to go public

FORM S-1 REGISTRATION STATEMENT UNDER THE SECURITIES ACT OF 1933 CEA Space Partners I Corp.

Satellite veteran Edward Horowitz behind latest space-focused SPAC