Virgin Orbitが2021年度内に上場。過熱する小型ロケット界の競争【週刊宇宙ビジネスニュース 2021/8/23〜8/29】
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Virgin Orbitが2021年度内に上場。事業拡大により更に小型ロケット界の競争が過熱へ
空中発射小型ロケット開発に取り組んでいるVirgin Orbitが8月23日に、親会社であるVieco USA, Inc.を通じてNextGen Acquisition Corp. IIとの買収及び経営統合契約を締結したことを発表しました。投資家向け資料はこちらからダウンロード可能です。
既にNASDAQ市場に上場しているNextGen Acquisition Corp. IIがVirgin Orbitを買収したのち2社は合併し、Virgin Orbitは2021年度第4四半期までにティッカーシンボル”VORB”としてNASDAQ市場に上場する予定です。
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今回の買収及び経営統合契約と併せて、BoeingとAE Industrial Partnersの2社が合計1億ドルの投資を行います。合併が完了するとVirgin Orbitは総額4億8300万ドル(約530億円)を獲得し、企業価値は約32億ドル(約3500億円)と算出されています。
NextGen Acquisition Corp. IIはSPAC(特別買収目的会社)と呼ばれる、自社では事業を持たずに未上場ベンチャーの買収を目的につくられた企業です。近年、SPACを活用した宇宙ベンチャーの上場が相次いでおり、Virgin Orbitと同じくVirgin Groupの子会社であるVirgin Galacticの上場を皮切りに、直近の2年で12社が上場を発表しています。
宙畑メモ:SPAC
SPAC(特別買収目的会社)とは、その企業自体は特定の事業を持たずに、一定期間内に未公開会社・事業を買収することのみを目的として株式市場に上場する企業のことです。SPACを活用すると、資金調達を行いながら上場が果たせるほか、従来の新規株式公開(IPO)よりも簡素なプロセスで上場を果たせるため、近年この方式の上場を採用するベンチャー企業が増加しています。
ニューヨーク証券取引所に2019年に上場したVirgin Galactic・Spire Global・2021年中に上場予定のBlacksky・Redwire・Planetや、NASDAQに上場したAST & Science LLC・Momentus・Astra・Rocket Lab・2021年中に上場予定のArqit・SatellogicもSPACを活用しました。
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Virgin OrbitのCEOであるDan Hart氏は今回の契約について以下のコメントを出しています。
We’ve built Virgin Orbit in order to change the business of satellite launch and to open space for everyone, globally. We are driving innovation with world-class design and advanced manufacturing capabilities, our unrivaled mobility of launch, and our exciting space solutions services.
(訳:私たちは、衛星打ち上げビジネスを変え、世界中のすべての人が宇宙を利活用できるためにVirgin Orbitを設立しました。私たちは、世界水準の設計力・高度な製造能力・打ち上げの柔軟性・最高の宇宙ソリューションサービスでイノベーションを起こしていきます。)
Virgin Orbitは通常の小型ロケットの打ち上げと異なり、自社保有するボーイング747を改良した小型ロケット運搬機(Cosmic Girl)の翼から小型ロケット(LauncherOne)を発射する「エア・ローンチ」と呼ばれるシステムを採用しています。こちらの打ち上げ手法では一般的なロケットの射場は必要なく、小型ロケット運搬機が飛び立つことができる滑走路と専用の燃料補給設備を備えた空港から打ち上げることが可能であり、様々な国に打ち上げ能力をもたらすと期待されています。
Virgin Orbitは今年の1月に超小型衛星の軌道投入に成功した後、今年の6月に超小型衛星7機の商業打ち上げに成功しており、今年の10月にも商業打ち上げを予定しています。また、2020年4月には大分県と打ち上げパートナーシップを締結し、最速で2022年の小型衛星打ち上げを目指しています。
同じく小型ロケット企業の競合であるRocket LabやAstraは既に上場が完了しています。小型ロケット界をけん引する3社が上場企業となり、今後の競争にも注目です。
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