今世界が注目!小型レーダー衛星とは?~日本の可能性~
小型衛星のなかでも実現が難しいと言われていた小型レーダー衛星が徐々に宇宙へ飛び出しはじめている。小型レーダー衛星市場について調べてみました。
今、宇宙界隈では”小型レーダー衛星”がひそかにブームとなっている。宙畑ではすでに「SAR衛星とは?ASNARO-2で広がる宇宙ビジネスの可能性」でNECのSAR衛星について紹介した。
最近まで技術的に不可能と言われていたSAR衛星だが、さらなる小型化を世界の宇宙ベンチャーが実際にできることを証明し始めている。
本記事では小型レーダー衛星の概要と、小型レーター衛星をリードする世界の宇宙ベンチャー、そしてその可能性に迫る。
小型レーダー衛星とは?~ 特徴、難しさ、用途~
レーダーとは、電波を使って対象物の様子を探るセンサーである。通常の光学センサーは雲が覆っていたり、夜暗い場所は観測することはできないが、電波であれば観測することができる。
つまり、光学センサーでは観測できない場所を観測できる可能性を有しているのだ。その分、レーダーでは対象の色の情報は分からず、撮影される画像は白黒のザラザラした画像となる。仕組みは異なるが、妊婦さんに使うエコー写真のようなものをイメージしていただくと良いかもしれない。
レーダー衛星は今に始まった話ではない。日本では、1992年に打ち上げられたふよう1号に初めてレーダーセンサが搭載された。
では、なぜ今盛り上がっているのか。ポイントは”小型化”である。
レーダー衛星は電波を放射して対象物の様子を探るため、太陽光の反射を利用する光学センサよりも、多くの電力を必要とする。人工衛星の場合、大きな電力を生み出すためには、太陽電池パネルやバッテリの大型化が必要で、小型衛星に搭載するのは困難とされていた。
だが、技術の進歩や用途を限定することで可能になったのである。衛星が小型化すると1機あたりの費用が安く抑えられるため、複数機のレーダー衛星を打上げられるようになる。衛星を多く飛ばすことで、観測頻度を挙げることができるのだ。
衛星の小型化は技術的に簡単な光学センサミッションで先行してきた。しかし、実際に打ち上げて観測してみると、地表は雲で覆われていることも多く、思った以上に観測頻度が上がらないことが分かってきた。雲の多い東南アジア地域ではなおさらである。
小型レーダー衛星を複数機打ち上げて、観測ネットワークが形成されるようになると、これまで光学衛星では確約できなかった、高頻度な観測を行うことができるようになる。災害や流氷など、短い時間に変化していくものの観測に適している。
また、夜間の地表面の観測も行えるようになるだろう。海上の違法船など夜間に活動するものの監視に役立つかもしれない。
世界ではノルウェーの宇宙ベンチャーICEYEがリード
小型レーダー衛星は世界的にみると、ノルウェーの宇宙ベンチャーICEYEが一歩リードしている。2018年1月に初号機を打ち上げ、レーダーセンサでの解像度10mの撮像を成功させた。ICEYEでは30億円以上の資金調達にも成功しており、今後も機数を増やしていく計画だ。
また、その他では、Capella Space やXpressSAR、Umbra Labが小型レーダー衛星群を構築する計画を発表しており、今後、増えていくと予想される。
日本ではQPS研究所、ImPACTプログラムで開発中
実はこの分野、日本も負けてはいない。
九大発ベンチャーQPS研究所は23.5億円の投資調達に成功し、100kg級の衛星でレーダー観測を行う計画だ。ICEYEと同等の質量でありながら、解像度は1/10の1mという高性能なセンサである。この衛星を36機打ち上げ世界中どこでも約10分に1回撮影する”準リアルタイムGoogle Map”を実現しようとしている。(*1)
*1:QSSF向けQPS小型SAR衛星説明資料(2017年3月4日)
http://kyutech-laseine.net/news/img_news/qps.pdf
また、慶應大学の白坂教授も「オンデマンド即時観測が可能な小型合成開口レーダ衛星システム」として、政府主催の革新的研究開発推進プログラムImPACTに採択されている。
衛星のスペックとしては、100kg級で分解能1mとQPS研究所と同等であるが、こちらは衛星群ではなく、有事にすぐに打ち上げられ、すぐに観測できる衛星としての用途を想定している。
レーダーセンサーの開発にはJAXA齋藤 宏文教授が、衛星の開発には日本の小型衛星の第一人者である東京大学中須賀教授が参画しており、万全の布陣が敷かれている。
プログラムの出口として、Synspectiveという会社を立ち上げ、SAR画像の利用を推進していく計画だ。
まとめ~小型レーダー衛星の可能性~
本記事では、最近広がりつつある小型レーダー衛星について紹介した。
本分野は、海外宇宙ベンチャーが先行してはいるものの、日本の宇宙ベンチャーも挑戦しており、日本として勝てる可能性のある有望な領域の一つである。
一方で、今までのレーダー画像の利用用途は、分かりやすい光学画像に比べてまだまだ開拓されておらず、レーダー画像からどのような知見を見出すのか、どのようにユーザーにとって価値のある情報となるのかが焦点となる。
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