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宇宙空間での大型構造物の組み立てが可能に? Space Quartersが3種の小型ロボットで宇宙構造物を組み立てる「DAIQ」の地上実証に成功 【宇宙ビジネスニュース】

Space Quartersが、3種の小型ロボットで宇宙構造物を組み立てる「DAIQ」の地上実証に成功しました。その仕組みと、実証が示したものを解説します。

2026年6月5日、宇宙建築スタートアップのSpace Quartersは、軌道上組立ロボットシステム「DAIQ」の地上モデルを用いて、建材の組立・溶接動作の実証に成功したと発表しました。

複数の小型ロボットが協調して大型構造物を宇宙空間で建てるという、DAIQの技術コンセプトの成立性を示すものだとしています。

DAIQの運用コンセプト(建材の打ち上げから軌道上での組立・接合まで) Credit : Space Quarters

また、リリースにあわせて、一連の動作を収めた実証動画も公開されていますので、ぜひご覧ください。

「人類の可能性を広げ続ける」をミッションに掲げるSpace Quartersのコア技術は宇宙空間での金属接合を可能にする小型・省エネルギーの電子ビーム溶接(真空中で金属を接合する手法)です。

創業初期にフランス国立宇宙センター(CNES)から研究を受託したほか、「S-Booster 2022」でスカパーJSAT賞を受賞。2025年10月には、シード期として7.5億円を調達しました。

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今回の実証は、こうした宇宙建築の実現に向けた一歩となりました。

では、宇宙空間での組み立て技術は今後の宇宙開発の発展にどのように寄与するのでしょうか。

現在、社会の基盤となりうる大型の宇宙インフラの構想が、各国、各企業によって着々と前に進められています。スマートフォンと静止軌道衛星を直接つなぐ大型アンテナ、人類の活動拠点となる宇宙ステーション、宇宙太陽光発電などが挙げられます。

一方で、それらの大型構造物を一度に打上げることは、従来の打ち上げ方式では実現が難しいものも少なくありません。

従来、宇宙構造物は地上でほぼ完成させてからロケットに搭載するのが一般的でした。そのため、宇宙構造物の大型化・高機能化を考えると、そのサイズはロケットのフェアリング(衛星などを格納する先端部)の直径に制約されます(先日、打上げ試験を行ったStarship V3で直径9m)。

その制約に対して、Space Quartersは、完成品ではなく「建材」を打ち上げて軌道上で組み立てることで、宇宙構造物の大型化・高機能化を実現しようとしています。こうした宇宙空間での組立・製造は、NASAがISAM(宇宙空間での整備・組立・製造)と整理する世界的な潮流でもあります。

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本記事では、DAIQがどのようなシステムで、今回の地上実証が何を示したのかを、施工の全体像とあわせて解説します。

(1)3種の小型ロボットが分担する、軌道上の「施工」

ひとくちに宇宙建築といっても、その工程は多岐にわたります。設計、部材の製造、打ち上げ、軌道上での組み立て(施工)、検査、運用・保守までが含まれると考えられます。

今回のリリースで地上での実証に成功したのは、軌道上で構造体を組み立てる「施工」です。その概略フローと今回の地上実証が着目した範囲を整理したのが下図です。

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軌道上での施工は、大きく「施工準備 → 建材の収納・取り出し → 運搬・設置 → 位置合わせ・接合 → 検査・完成」に分けられます。DAIQが担うのは、このうち構造体の組立・接合に関わる中核工程で、役割の異なる3種類の小型ロボットが分担します。

Tree(ツリー):建材の「取り出し」を担う六角柱型ロボット。パネル状の建材をフェアリング内に高密度で収納し、棚の下部から順番に取り出します。

Ant(アント):建材の「運搬・設置」を担う自走式ロボット。建材のへりに設けたレールを足場に移動し、複数台が協調して建材を運び、設置します。

Spider(スパイダー):建材の「接合」を担うロボット。建材にまたがって複数のレールを把持し、隣り合う建材の位置をμm(マイクロメートル)単位で精密に合わせたうえで、溶接で固定します。

興味深いのは、AntやSpiderが構造物そのものを足場(レール)にして移動する点です。地上の建築では、重力に逆らって部材を支える足場やクレーンが欠かせません。建てる対象が大きくなるほど、それらの設備も大型化していきます。

一方、軌道上は微小重力で、部材は落下しにくくなります。「支える」必要性が下がる代わりに、足場となる地面もありません。

DAIQはこの制約を逆手に取り、すでに組み上がった構造物自体をレールとして使います。設置したパネルを伝うことで、移動できる範囲を広げていく仕組みです。この発想により、構造物が大きくなってもロボットは大型化せずに済みます。

小型のまま大型構造物を施工できると考えられます。 ただし、微小重力でも部材の質量(慣性)がなくなるわけではありません。動かし、止め、部材をμm単位で合わせる制御は、依然として必要です。

Spiderが治具機能(部材を正しい位置に保持する仕組み)で相対位置を安定させ、精密に位置決めするのも、この「地面のない場所での精密施工」に応えるためと言えそうです。

(2)宇宙空間での建築に必要な要素技術を取りまとめて施工システムの構築を実現

今回のニュースの要点は、溶接技術そのものではありません。Space Quartersは2026年3月、宇宙環境を模擬した実証を行なっていました。小型電子ビーム溶接機による「接合」の成立性を確かめる試験です。

今回の実証は宇宙空間での建築を行うための一連の施工システムを組み上げ、地上モデルで動作確認を実施した点が注目すべきポイントと言えます。

複数の小型ロボットが連携して建材を組み立てるという「建て方」そのものが成り立つことを、地上で確かめてみせた成果でした。

なお、今回公開された動画では大気圧下のためMIG溶接(一般的なアーク溶接の一種)が使われていますが、宇宙空間で想定されているのは電子ビーム溶接です。これを組み込んだ実環境での統合実証は、これからの段階になります。

Space Quartersは2031年の商用化を目指し、現在は2028年の宇宙空間での溶接実証、2029年の軌道上建築実証に向けて開発を進めています。

ただし、宇宙建築の完成にはまだ距離があり、今回はあくまで中間地点です。

宇宙太陽光発電や静止軌道への大型宇宙構造物の展開といった大型インフラが実現すれば、変化は私たちの生活もより豊かなものになることが想定されます。 たとえば、山あいや被災地でも途切れない通信や、天候に左右されない発電も可能となるでしょう。

宇宙から暮らしの土台を支える選択肢が、Space Quartersの取り組みによってこれから少しずつ広がっていくことが期待されます。

参考

軌道上組立ロボットシステム「DAIQ」地上モデル組立・溶接動作実証に成功

宇宙建築実現にむけ、無重力・月面重力環境における宇宙溶接技術実証に成功

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