Tellus初の利用ユーザー限定イベント「Tellus Satellite Cafe」開催レポート!
2019年6月21日(金)に開催された初のTellus利用ユーザー限定コミュニティイベントTellus Satellite Cafeのイベントレポート記事です。様々なゲストを招いて、衛星データの基礎から応用編までを学び、クロストークでは会場に来場されたイベント参加者の皆様を巻き込んだアイディアソンを行いました。本記事ではその様子を少しだけご紹介いたします!
Tellusでは、これまで公式メディアの「宙畑」やラーニングイベント「Tellus Satellite Bootcamp」、アルゴリズムのコンテスト「Tellus Satellite Challenge」など、宇宙ビジネス業界を活性化させるさまざまな取り組みを実施してきました。
2019年6月より、これらに加えて新たなTellus利用ユーザー向けのイベントである「Tellus Satellite Cafe」をスタートさせます!
記念すべき第1回目は、「衛星データのはじめの一歩」と題して、衛星データの基礎知識とTellusの使い方を学ぶためのコンテンツを用意! 6月21日(金)都内DMM.make AKIBAにて、約50名もの利用ユーザーが集まり開催されました。
本記事ではそんな「Tellus Satellite Cafe」当日の様子をレポートいたします!イベントで行われたコンテンツは以下の4セッションです。それではさっそく時系列に沿ってご紹介いたします!
- ● 衛星データの基礎
- ● 衛星データを使ったアプリを作ってみた
- ● クロストーク
- ● 懇親会(ライトニングトーク + タッチ&トライ)
いよいよ始まるユーザー向けイベント「Tellus Satellite Cafe」
Tellusは2019年2月21日にバージョン1.0をリリースし、先日6月28日にはバージョン1.1をリリースしましたが、まだまだ完成したプロジェクトではありません。皆さまからご意見をいただきながら、どんどん改良していく、ユーザーと一緒に作っていきたいというプロジェクトです。
Tellus Satellite CafeではTellusのPRメンバーだけではなく、開発のメンバーもイベントに参加し、「ここが使いにくい」「こういうデータがあったらいいのに」「衛星データこんな場面で使えないの?」など、参加者からの生の声を受け、実際にTellusをアップデートしていきたいと考えています。
みなさまにもぜひ、この機会にご参加いただき、一緒に宇宙ビジネスを加速させることができればと思います!
衛星データの基礎を知る!(RESTEC 奥村さん)
Tellusに搭載されるデータのことを知っていただくため、一般財団法人リモート・センシング技術センター(以後、RESTEC)研究開発部/利用技術グループきっての自称イケメンであるグループリーダーの奥村さんに、衛星データの基礎についてお話していただきました。本レポートでは、少しだけお話の中身をご紹介します!
衛星データは様々な波長で観測している!
「昼間の空がなぜ青いのか」「夕焼けはなぜ赤いのか」ということをご存知でしょうか?太陽から出ている光は、波長で色の特性を分けることができます。
地球の空では、青色光の波長と同じような大きさの分子が多い(水など)ので、青色光が散乱しやすいです。なので、昼間は青色の光がバッと散乱して、空が非常に青く見えます。
夕方は、私たちの目に届くのは波長の長い赤色の光です。大気中の分子の大きさが波長に比べて非常に小さいので、そこをすり抜けて赤い光だけが自分の目に届きます。
このような仕組みで、対象物の分子の大きさによって太陽の光を反射する特性が違うので、水の特徴・植物の特徴・土の特徴などを見分けることによって、実際に触らずに遠くから観測するのがリモートセンシングの基本です。
観測方法は大きく分けて3種類
衛星の観測の方法には大きく分けて3種類があります。
1つ目は、太陽からの光の反射を観測する光学系の方法です。皆さんが普段目にする写真と同じような見え方をします。
2つ目は、太陽の光とは関係なく、物体そのものから放射される熱などの電磁波を観測するような方法です。
3つ目は、衛星自体が自分で電波を発してその反射を観測する方法です。この方法では、天候の影響を受けずに地上を観測することができます。SAR(サー)と呼ばれる観測方法はここに分類されます。
上記のほかにも衛星データについて色々とお話いただきました!
Tellus Satellite Cafeでは今後もRESTECさんにご協力いただきながら、分かりやすく衛星データについてお伝えしていければと思っておりますので、興味を持たれた方はぜひご参加いただければと思います!もちろん「こういうお話が聞きたい!」といったリクエストもお待ちしておりますので、ぜひお気軽にご連絡ください!
衛星データを使ったアプリの実例(PrAha 松原さん)
続いて登壇したのは、スタートアップに特化したWebサービスの受託開発をされている、株式会社PrAhaの代表取締役である松原さんです。
実は松原さんには今年の2月のTellus ver1.0ローンチの際に、Tellusを使ったアプリの実例として、2つのアプリを作っていただきました。
- ● Tellus搭載データを使ったパズルアプリ
- ● Jupyter NotebookでTellusを使ってみた〜雪質解析(1)解析準備編~
今回はこの2つのアプリケーションを作ったときのお話をしていただきました。
アプリ開発の上で松原さんが感じた課題
アプリの作成を通して松原さんが感じられたのは以下の3点とのこと。
必要なデータ種類が想定以上に多い
雪質判定など一見簡単そうな解析でも、いろんな種類のデータが必要になることが衛星データ初心者には難しかった。
画像解析の知識が必要
通常の画像解析の知識に加えて、衛星データ独特の扱い方を理解する必要があり、その部分について画像解析を扱える人材が不足しているかと思われる。
用途を見つけるのが難しい
衛星データでミクロな事象が見えるわけではないので、気象予測や流通効率化など、マクロな用途で衛星データが活用できそう。そういった用途を考えられるようになれればと思う。
「1人のエンジニアが画像を見たときに、自分のものとしてどういった課題を見つけ解決できるのか。これからTellusを使い続ける中で見つけていきたい。」という想いを教えていただきました。
衛星データ活用アイディアを探るクロストーク
イベントの後半は、先ほど講演いただいた奥村さんと松原さんに再度ご登壇いただき、会場の参加者を巻き込んだクロストークを行いました。
衛星データのプロフェッショナルである奥村さんと、アプリケーション開発のプロである松原さんのお力をお借りして、会場のみなさまからいただいたキーワードから、その場で衛星データ利用アイディアを生み出そうという試みです!
テーマ1:〇〇分野 × 衛星データ でビジネスを考えよう!
1つ目のテーマは様々な分野と衛星データの掛け算から新しいビジネスアイディアを考えよう!というもの。例えば株 × 自動車では出荷される車の台数を衛星画像で調べて、自動車会社の株価動向を予測する、といったことが既に行われています。
漁業 × プランクトン=漁場推定
会場のみなさまからキーワードを選んでいただいた、1つ目は、漁業 × プランクトン。この謎かけには、RESTECの奥村さんが「整いました!」と挙手をしてくださいました。
奥村:赤潮をみなさんご存知でしょうか?
赤潮が発生すると水中の酸素濃度が低下によって魚が窒息死してしまい、場合によっては何十億もの損害になります。定置網漁や養殖をしている人は、赤潮に対する関心が高いです。
衛星データで赤潮の位置がわかると、被害を受ける前に対策を取ることができるので役に立ちますね。人間が目で見えるような赤潮は衛星画像でもはっきり見ることができます。
ただし、衛星では海の中の様子は分からないので、海中の様子はIoTなどを活用して組み合わせると良いですね。
広範囲かつ精度の高い海洋観測で赤潮の早期発見へ | JAXA 地球観測衛星特設サイト
ドラッグストア × 夜間光 = 飲み過ぎに効く胃腸薬の売れ行き
できるだけ衛星データと関係がなさそうな分野にチャレンジしてみましょう、という城戸の問いかけで選ばれたのが「ドラッグストア × 夜間光」という組み合わせ。
このチャレンジには、登壇したお二人よりも早く、会場の方からアイディアが上がりました。
会場:夜間光の強いところは歓楽街だと思うので、胃腸薬などの販売に繋げることができるのでは?
一同:おぉ~!!
奥村:それは非常に面白いですね!歓楽街のネオンなのか、会社の明かりなのかを見分けるために、夜間光の色にも注目して解析すると良さそうですね。日本の歓楽街は衛星画像で見るまでもないかもしれませんが、日本だけでなく外国の様子もわかるので海外進出を狙うには良さそうですね!
会場:オフィスビルや歓楽街など、夜間光の種類を見分けることはできますか?
奥村:夜間光は太陽光の明るさに比べて暗いので、現時点では解像度・分解能の問題がありますが、今後技術の発展により可能になってくるかもしれません。
松原:夜にずっと明かりが灯っている会社はブラック企業認定する、とかも面白そうですね~(笑)。
城戸:困る会社さんがたくさんでてしまうかもしれませんが(笑)。
テーマ2:衛星データ × 地上データでビジネスを考えよう!
2つ目のテーマは「衛星データ × 地上データ」
Tellusでは、衛星データと地上で得られるデータの組み合わせから新たなビジネスが生まれると考えており、地上データを重要視しています。
ということで、今度は衛星データと地上データの組み合わせで何ができるのか、を考えていくことにします。
例えば、以前宙畑では、「高度 × 地域統計・購買情報」を使って電動アシスト自転車がよく売れるエリアのマーケティングを行ってみました。
QGISで電動アシスト付自転車が売れる町の仮説を立てて実際にその町に行ってみた
地表温度 × 公衆トイレの場所=悪臭のするトイレ
最初に選ばれたのは、衛星データは地表面温度、地上データは公衆トイレの場所。
一見、関係なさそうな組み合わせに、奥村さん・松原さんも思わず「う~ん」の表情です。
すると、会場からスッと手が上がりました。
会場:悪臭や虫のある(いない)トイレを探すことができるのでは?
奥村:おお~、良いですね、たしかにできると思います。このアイディアいただきます(笑)!日本でも近年、気温が上がり来年の東京五輪などでも役に経ちそうですし、アジア・アフリカなどでは蚊を媒介とする病気が水たまりを介して広がるとも言われています。そういった事例に役立ちそうなアイディアですね!
建物 × Instagram=若い世代の入居者数
続いて、会場から衛星データのリクエストがあったのは建物。関係なさそうな地上データとして、Instagramがセレクトされました。
これも、考え込む登壇者のお二人、またもやしばらく悩み考える時間が流れます。すると、会場から救いの手が。
会場:Instagramの位置情報を使って投稿数が多いマンションなどを調べてみたら、若い年齢層の入居数を調べられるのでは?
一同:おぉ~!!!
城戸:SNSの位置情報を使ってユーザーの属性がわかると、マーケティングとして使えるかもしれませんね!
時間の関係でクロストークは以上となりましたが、登壇していただいたお二人だけでなく、会場のみなさんからもアイディアが出る、良い雰囲気のトークセッションとなりました。
このように、衛星データを分野やそのほかのデータと組み合わせてみると沢山のアイディアが生まれます。
思いついたアイディアは、ぜひTellusで実際に解析を試してみてください!
ハンズオン!ライトニングトーク!懇親会!
会の最後は、懇親会を行いました。乾杯のご発声は、宙畑でもたびたびお世話になってる向井田さんです。
登壇していただいた奥村さん・松原さんへの質問や、参加者同士の交流、Tellusメンバーとのお話など、会場のいたるところで活発に議論が行われていました。
また、懇親会中に行われたライトニングトーク(以下、LT)では、宙畑から編集長の中村がLTをさせていただきました!
宙畑のLTでは、向井田さんにインタビューのご協力をいただいた「衛星データ×機械学習について」の記事のタイトルを、会場にいる参加者と一緒に選挙で決めるという試みを行いました。会場からの投票で決まった記事タイトルで、実際にその場で決まったタイトルで向井田さんに公開ボタンを押してもらいました。
加速する「オープン化」と「実用化」の波、衛星データ×機械学習でできること
これからのTellus Satellite Cafeもお楽しみに!
盛況のうちに幕を閉じたTellus Satellite Cafe。Tellusユーザー通信でのみの告知にも関わらず、50名を超える方々にご参加いただき、活発な議論を行うことができました。
Tellusに関する貴重なご意見もたくさんいただきましたので、今後のTellusの開発に活かしていきたいと思います。
次回開催は8月1日(木)を予定。ご都合がつく方はぜひご参加くださいませ、みなさまのご参加を心よりお待ちしております!
※本イベントはTellusユーザー限定のイベントになります。参加ご希望の方はTellusに登録いただき、メルマガ登録をお願いいたします。