世界初、3Dプリンター製の部品が月面へ。月面着陸船の開発を行うAstroboticとAON3Dが提携【週刊宇宙ビジネスニュース 2021/8/30〜9/5】
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ニューヨークとモントリオールに拠点を置く、工業用3DプリンターメーカーのAON3Dは、月面着陸船の開発を行うAstroboticとパートナーシップを締結したことを発表しました。
2022年に打ち上げ予定の月面着陸船「Peregrine Moon Lander」には、AON3Dの3Dプリンターで製造された数百の部品が搭載されているということです。これらは、月面に到達する初の3Dプリンター製の部品になることが期待されています。
AON3Dは、モントリオールのマギル大学で材料工学を専攻していた学生らが2015年に創業したスタートアップ企業です。大手化学メーカーのソルベイやSABIC、宇宙業界ではNASAとBlue Originにも3Dプリンターを提供している実績があります。
3Dプリンターは複雑な形状のものも製造できる一方で、使用できる材料が限定的であるというデメリットがありました。AON3Dの3Dプリンターは温度管理に優れているため、耐熱性や強度が高いスーパーエンジニアリングプラスチックをはじめとする様々な材料を使用して造形できるのが特徴です。使用できる材料の数は、一般的な3Dプリンターのおよそ50倍にあたる数千種類に及ぶといいます。
また、Astroboticとのパートナーシップ締結と同じタイミングで、AON3DはシリーズAラウンドで1,150万ドル(約13億円)を調達したと発表しています。これにより累計調達額は、1,420万ドル(約16億円)となりました。資金は、研究開発への投資や人材の採用に充てられます。
Astroboticの機械エンジニアClay Inman氏は、
「(AON3Dの3Dプリンターを使うことによって、)ミッションに対応した独自の部品をすぐに製造できるようになりました」
とコメントしています。3Dプリンターの導入が進むことによって、宇宙機の製造開発が加速していくのではないかと期待されます。
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参考
AON3D Secures $11.5M & Manufactures First 3D Printed Parts for the Moon