宙畑 Sorabatake

宇宙ビジネス

「日本・APACには大きな市場がある」宇宙産業時代、”Japan”に海外からの熱視線が集まる【SPACETIDE 2024閉幕】

APACで最大級の規模の国際宇宙ビジネスカンファレンス「SPACETIDE 2024」が閉幕。カンファレンスの概要とその熱気をまとめました。最後にはCEO石田さんとCOO佐藤さんのコメントも掲載しています。

2024年7月8日から7月10日までの3日間に渡って開催されたAPACで最大級の規模の国際宇宙ビジネスカンファレンス「SPACETIDE 2024」が閉幕しました。

開催前に実施したSPACETIDEの代表理事兼CEOである石田真康さんのインタビューでは「2019年から国際化にも力を入れ始めた」とありましたが、今年の参加者数は1500名を超え、4割は海外からの参加者(35ヵ国)で、さらには登壇者の半数以上が海外からでした。

そして、会場を訪れ、宙畑編集部が肌で感じたのは、SPACETIDEの国際化のみならず、海外から訪れた参加者・登壇者からの日本、そしてAPACへの熱視線でした。

本記事では、SPACETIDE 2024でどのようなセッションがあり、どのような豪華登壇者が話されていたのかというダイジェストを写真を多めに紹介します。各セッションで語られた内容はいくつか宙畑でピックアップして後日紹介予定です。

オープニング

SPACETIDEのオープニングは、代表理事兼CEOの石田さんの言葉から始まりました。

総参加者数の増加と海外からの参加者も増えたことについても言及があったほか、今年のテーマである「APACから世界へ:多様なコミュニティが紡ぐ宇宙ビジネス」の通り、APACにおける宇宙産業の盛り上がりについても、各国の取り組みをまとめたスライドと合わせて説明がありました。

SPACETIDEの第1回から第9回目となる今年にいたるまでの石田さんの思いについてお話を伺った内容を記事にもまとめていますので、ぜひこちらもご覧ください。

石田さんのオープニングの次は、経済安全保障担当大臣、内閣府特命担当大臣(科学技術政策、宇宙政策、知的財産戦略)の高市早苗さんによるKeynoteセッションでした。

ここでは、2024年度からの3年間を国内スタートアップ等が提供する衛星データを関係府省で積極調達・利用する「民間衛星の活用拡大期間」とする方針としたことが例に挙げられながら、非宇宙企業との連携が重要であること。また、国際連携の重要性と日本がこれまで果たしてきた役割について述べられました。

また、7月5日に5つのテーマから公募が始まった「宇宙戦略基金」にも触れられ、宇宙政策の更なる強化に尽力すること、産学官が力を合わせて、より良い宇宙ビジネスの形を作ることが力強く語られました。

(1)宇宙ビジネスの最先端を学べるセッションがずらり

SPACETIDEでは、宇宙ビジネスの最先端を学べるセッションがずらりと並んでいました。その一例を本章では紹介します。

宇宙の持続可能性と軌道上サービス

「宇宙の持続可能性のために、商業宇宙産業はどのような視点と責任をもつべきか?」では、宇宙の持続可能性を考えるサミットを開催するSecure World FoundationのKrystal Azeltonさんがモデレーターを務め、アストロスケールホールディングス・COOのChris BlackerbyさんやUK Space AgencyのPaul Bateさんらが登壇。宇宙開発が今後さらに活発化する一方で問題になる宇宙ゴミの増加といった問題について議論がなされました。

宇宙の持続可能性については、SPACETIDEの後に日本科学未来館で開催された「The 6th Summit for Space Sustainability」でも、国際的な有識者が一堂に集い、多くの議論が交わされました。その内容も後日宙畑で紹介予定です。

また、宇宙の持続可能性を考えるうえで欠かせないサービスと考えられているのが、宇宙ゴミを能動的に軌道離脱させる、もしくは、燃料が切れた衛星の燃料補給をするといった軌道上サービスです。

「ビジネス環境と法政策と共に変容が進む衛星インフラ需要に軌道上サービスはどう応えていくべきか?」のセッションでモデレーターを務めたのもSecure World FoundationからIan Christensenさん。登壇者としては宙畑で取材の機会を以前いただいたHEO・Co-Founder and CEOのWill CroweさんやOrbital Lasers・代表取締役の福島忠徳さんら。各社が進めているサービスの紹介と合わせて軌道上サービスの今後の展望について議論が交わされました。

宇宙安全保障の重要性

「宇宙安全保障の拡大は商業宇宙企業にどのような機会と課題をもたらすか?」では、近年宇宙安全保障の重要性が様々な要因から高まっている状況について、紹介があったほか、今後の展望や課題について活発な議論がなされました。

モデレーターを務めるのは欧州の宇宙政策シンクタンクで、2003年に設立されたESPI(European Space Policy Institute)・DirectorのHermann Ludwig Moellerさん。登壇したパネリストには世界有数の地球観測衛星コンステレーションを構築するPlanet・Vice President of Sales, APJ RegionのBen Allardさんやイギリスの大手国防・航空宇宙企業であるBAE Systems・Head of Space Future BusinessのJohn Youngさんら4名でした。

ESPIのHermannさんには、SPACETIDE期間内で宙畑で宇宙政策の必要性と今の注目すべきポイントなどについて独自に取材の時間をいただくことができました。後日記事の航海を予定しています。

輸送市場の今後

「ロケット市場の多様な輸送需要を捉えそれぞれの勝ち筋を見極められるか?」では現状の輸送市場についてのリアルな声をRocket Lab・Vice President, Global Launch ServicesのBrian Rogersさんや三菱重工業・防衛・宇宙セグメント 宇宙事業部事業部長の五十嵐巌さんらが登壇し議論を交わしています。

Rocket Labは先日Synspectiveと10機の打上げ契約を調印しており、日本市場への期待のコメントもCEOのピーター・ベックさんよりいただいておりますのでぜひこちらもご覧ください。

宇宙空間のデータトラフィック増加とそのシステム構築

「爆発する軌道上のデータトラフィックと対峙する新世代の情報通信アーキテクチャとは?」では、今後さらに衛星が宇宙空間に打ち上がりデータのトラフィック量が劇的に増えると予想されているなかで、どのような通信システムを構築するかについて議論がなされました。

登壇したのは日本からは光学の地球観測衛星コンステレーション構築や、ワンストップの衛星開発サービスを手がけるアクセルスペースの中村 友哉さんと光データリレーサービスやスペースエッジコンピューティングサービスの構築を進めるSpace Compass、宇宙DC事業部事業部長の江尻智礼さんでした。

ポストISSと民間宇宙飛行士時代の到来

海外の記者の方とお話した際に「注目しているセッションは何ですか?」との質問でまずこれかな?と教えていただいたのは「商用宇宙ステーション」でした。NASAはISSの運用を2030年で終了し、2031年には大気圏に再突入させ海上に落下させる計画を2022年1月に発表しています。その後の宇宙ステーションについては、民間による商用宇宙ステーション開発が進んでおり、注目が集まっています。

商用宇宙ステーションに関する話題で口火を切ったのはkeynoteの「Mitsui’s new challenge in LEO」でした。7月1日に三井物産の100%子会社として設立された日本低軌道社中、代表取締役の山本雄大さんより同社の事業について説明がなされました。

また、その直後に行われた「低軌道経済圏:ポストISS〜CSS時代に必要となる商業サービスとは?どのような挑戦が待ち構えているか?」のセッションではSierra Space
Corporation、Vice President, Business DevelopmentのJohn Wagnerさんやアクシオム・スペース、アジア太平洋地域担当営業の田口優介さんらが登壇し、各社が進める商用宇宙ステーションや商業の宇宙空間利用について紹介と展望が語られました。

また、立見席がでるほどの満席だったセッションが「新章突入。民間宇宙飛行士の時代は本当に来るか?」です。山崎直子さんと若田光一さんという日本人であれば知らない人はいないだろう宇宙飛行士のおふたり。当日は山崎さんがモデレーターとしてAxiom Spaceに転職された若田さんご自身の変化や民間宇宙飛行の時代について様々なお話を聞かれていました。

シスルナ経済圏の構築

シスルナ(cislunar)という言葉を聞いたことはありますか?

cislunar のcisはラテン語を起源としており「on this side of」の意味で、直訳すると「月から地球までの空間」となりますが、一般的には地球から静止軌道までは含まず、静止軌道より遠いところから月までの空間のことを表すことが多いです。

日本でもispaceが月着陸船のミッションを2023年4月に行い話題になりましたが、月探査だけではなく、シスルナ空間における経済圏がどのように構築されるのかについて注目が集まっています。

SPACETIDEでは「加速するシスルナ開発:産業界が直面する法的課題とは何か?どう乗り越えるべきか?」「シスルナ経済圏:多様で複雑な月の産業アーキテクチャをどう設計するべきか?」「月の水をどうゲットする?資源ビジネスの経済合理性をどう確立する?」という3つのセッションでシスルナ経済圏の構築を前進するための議論が行われました。

多様な産業からの宇宙ビジネス参入

「”New-to-Space”企業の戦略:なぜ多様な業種の日本企業が宇宙に投資をするのか?」では、ソニーグループ、ソフトバンク、三菱UFJ銀行、本田技術研究所という4社のいわゆる純粋な宇宙企業ではない企業による宇宙ビジネスへの参入について紹介と議論が行われたセッションもありました。

本セッションでは、3つの質問が各社の代表者に対してなされる形で進行。冒頭のKeynoteで高市さんが話された非宇宙企業の参入について多くのヒントが話されたセッションだったように思います。

宇宙スタートアップとIPO

「日韓で相次ぐ宇宙スタートアップIPOは何をもたらすのか?」では、宇宙分野に特化したベンチャーファンドを運営するSeraphim・CEOのMark Boggettさんがモデレーターを務め、2023年4月に上場した衛星データを活用したAI解析ソリューションの提供などを手掛けるRidge-i・CEOの柳原尚史さんとCONTEC・CEOのSunghee Leeさんが登壇しました。

2024年6月にも日本ではアストロスケールが上場し話題になりましたが、現在日韓での宇宙スタートアップのIPOが話題になっており、その是非や今後の展望について議論がなされていました。

(2)日本の宇宙政策に海外からの注目が集まる

宇宙ビジネスの最先端を一挙に把握できるセッションが多く並ぶ中で、宙畑として注目したのは日本の宇宙政策に関する海外からの関心の高さです。

「宇宙の真の産業化に向け、商業宇宙政策はどのような挑戦に取り組むべきか?」のセッションでは、石田真康さんがモデレーターを務め、内閣府、宇宙開発戦略推進事務局長の風木淳さん、GISTDA、Deputy Executive DirectorのDamrongrit Niammuadさんら、各国の政策に深くかかわる要人が登壇し、各国の宇宙政策とその後について議論がなされました。

日本の宇宙基本計画や宇宙戦略基金についての説明も風木さんよりなされ、席もほぼ満席。海外からの日本の宇宙政策への注目の高さが伺えました。

また、日本の政策への高まりが分かったもう一つのセッションが「最新の宇宙政策は日本の商業宇宙活動をどのように加速させるか?」です。

2日前の早朝から行われ、登壇者は全員日本人のセッションでしたが、多くの海外記者が本セッションを聞きに来ていたほか、同時通訳機を耳にして真剣に議論の内容を聞いている参加者も多くいらっしゃいました。

実際に、宙畑編集部が挨拶をできた海外からの参加者の方に「日本の宇宙産業戦略についてどのように捉えているのか」と聞いた際にもほぼすべての方がポジティブな反応をされており、日本の宇宙政策への関心の高まりが強くなっていることが印象的でした。

(3)宇宙の持続可能性は、地球の豊かな生活の維持を考えること:人工衛星が地球に住む私たちの何に役立つのか

宇宙開発、宇宙ビジネスという言葉は、地球の暮らしとは関係ないものと思われ、その意義が問われることは少なくありません。例えば、以前宙畑が1000名にアンケートを実施した際、日本政府が宇宙ビジネスに多くの予算(税金)を投資するということについての賛否を確認した結果が以下になります。
※宙畑のアカウントなどを通して聞いたものではありません

結果としては賛成が多数でしたが、反対と回答した方の中には以下のようなコメントもありました。

・人生において必要のない人もいるビジネスなので、そこにお金を大量に投資すべきではない
・自分の生活に益を感じることが無さそうなので
・宇宙産業に投資するより国民に対してもっとお金に余裕を持って生活できるようにする環境の方に注力して欲しい

これらのコメントについて、現在政策により投下される予算の適正か否かを現時点で判断はできませんが、宙畑として宇宙開発と暮らしとの関わりについての認知をより高めたいと思う大きなきっかけになりました。

そして、SPACETIDE 2024では、宇宙開発と暮らしとの関わりを知ることができるセッションが多くあったように思います。その一例を以下に紹介します。

防災/災害時の衛星利用

「より速く、沢山の人を救うため。衛星ネットワークは何を実現すべきか?:能登半島地震のケース」では、2024年1月1日に発生した能登半島地震を振り返り、地球観測衛星が撮影したデータがどのように活用されたのか、また、活用できなかったのかについて議論がなされました。

能登半島地震が起きた際、1月1日の夜中にはALOS-2の緊急撮像ができ、その情報が必要な各所へ提供されていたというお話もありました。詳細はこちらのサイトで時系列にまとめられているので興味がある方はぜひご覧ください。

健全な海上の物流を実現する衛星利用

「次世代の衛星ソリューションは海洋関連技術と市場をどのように革新するか?」では、次世代のAIS(Automatic Identification System:船舶自動識別装置)として期待されているVDES(VHF Data Exchange System)やそれらの技術と地球観測衛星コンステレーションの構築により、どのように海洋の宇宙監視に役立たれるか、また、市場が拡大するのかについて議論がなされました。

島国である日本では、ほとんどの輸出入貨物は船で運ばれています。そのため、海洋での問題は日本の物流における大きな問題になります。その点、海洋の状況を把握して、安全な運航ができることはとても重要ですが、広い海でどのように安全な運航を支援するのか。そこで活躍が期待されているのが宇宙から地球の状況を把握できる衛星技術というわけです。

世界的な食料安全保障が叫ばれ、日本では少子高齢化時代の農業を支える衛星利用

「衛星技術は、スマート農業実現のための重要なイネーブラーになり得るか?」では、農業における衛星利用について、サグリ・ 代表取締役CEOの坪井俊輔さんやListenField・CEOのRassarin Chinnachodteeranunさん、Geospatial World・Regional Director – AmericasのVaishali Dixitさんが登壇して自社の事業紹介と今後の展望について議論が交わされました。

日本では少子高齢化が加速し、今後の農地管理や農作物の生育の最適化の需要が徐々に高まっています。そのような背景もあり、広範囲に農地をモニタリングできる地球観測衛星データの活用は期待が高まっており、今後の活躍が期待されています。

2024年4月に公表された「Space: The $1.8 Trillion Opportunity for Global Economic Growth」によると、宇宙ビジネスにおける農業分野の市場規模は2023年の50億ドルから2035年には330億ドルにまで成長すると予測されています。

健全に脱炭素社会を実現するための衛星利用

「カーボンクレジット市場は衛星データの次なるフロンティアとなるか?」では、三菱UFJ銀行・サステナブルビジネス部企画開発グループ コーポレート・エンゲージメント・ディレクター(GX・サステナビリティ担当)の志村幸美さん、Open Cosmos・Business Development ManagerのAbou Bakr MOURCHEDさんらが登壇し、カーボンクレジット市場における衛星データ活用の可能性について議論が交わされました。

現在、地球温暖化の加速による異常気象が世界的な問題となっており、地球の持続可能性という点で脱炭素社会の実現は日本に限らず世界的な目標となっています。

地球温暖化と異常気象の関係については以前宙畑でさんにインタビューで伺いましたので気になる方はぜひこちらもご覧ください。

地域ごとの課題を解決し、新たな価値を生み出す宇宙利用

宇宙空間の活用は産業やテーマという文脈の他、地域という文脈でも議論がなされていました。

例えば、日本の事例については「ローカルの宇宙ビジネス・エコシステムが地域産業を世界へと導く:北海道のケース」というテーマで北海道における宇宙ビジネスについて事例紹介と議論が交わされていました。

また、「APAC地域の市場を読み解く:ローカルの特筆すべき衛星データ利用の需要とユーザーとは?」では、シンガポール、台湾、タイ、オーストラリアという各国政府の有識者が登壇し、各国における衛星データ利用の需要と今後の展望について紹介がありました。

本章では衛星技術がどのように私たちの生活に関連しているのかをSPACETIDEのセッションで語られた内容を抜粋して紹介しました。

自然災害の多い日本にとって衛星技術は私たちの命を守り、自然災害発生時にもできる限り多くの命を救うために活用がなされています。そして健全な海上の物流は日本にとってもとても重要である他、食料自給率が50%未満、かつ、少子高齢化という課題先進国である日本にとって、農業における生産性の向上と生産における技術継承や効率化は目下の課題となっています。

また、衛星データの利活用という観点では2024年4月にさくらインターネットから分社化した衛星データプラットフォームTellusを運営するTellus・代表取締役社長の山崎秀人さんが東京大学の中須賀真一さんがモデレーターとなり「Tellus創業と目指す未来」というテーマでTellusの今後の展望について話がなされました。これから衛星データがより使いやすい世界になることが期待されています。

他にも、天気予報や地図アプリで利用する位置情報、また、飛行機で利用できるWi-Fiなど、私たちの生活と衛星技術は切っても切り離せない関係になっています。宇宙の持続可能性についても興味を持っていただける方が増えることを願っています。

(4)現地で新しい価値が生まれるサイドミーティング

以上、SPACETIDE 2024のカンファレンスプログラムについて、3つの観点で宙畑が注目したポイントを紹介しました。

ここで紹介したセッション以外にも「多様な変化を伴う世界でユニークで強固な宇宙スタートアップの経営とは?」「多様性と持続性に富む宇宙コミュニティ実現に向け次世代教育に必要なこととは?」「DEI(多様性・公平性・包括性)はどのようにして宇宙ビジネスの世界を紡いでいくのか?」など、これからの宇宙ビジネスを考えるうえで欠かせない議論も多く行われたほか、豪華な登壇者によるKeynoteもあり、とても濃密な3日間でした。

また、SPACETIDE 2024で宙畑が注目したのはカンファレンスルームの外で行われていたサイドミーティングの活発さです。海外からのキーマンが多く日本に訪れる中で、スポンサー各社が商談ルームで多くの商談を行っているのはもちろんのこと、商談ルームの外でも様々なコミュニケーションが発生しており、ここから宇宙ビジネスの新しい価値創造が行われる種が多く生まれていることを肌で感じました。

例えば、今回のSPACETIDEは多くのスポンサーとパートナーが連携しています。

AWSと三井住友海上はSPACETIDEとして初のダイヤモンドスポンサーであり、両社とも宇宙ビジネス市場の中では、宇宙ビジネスを推進する企業を下支えし、より良い宇宙ビジネスを推進するためのパートナーとして事業を行っている企業です。

ダイヤモンドスポンサーとなった企業はカンファレンス内でも約1時間の枠で登壇の機会があり、両社ともパートナーである宇宙ビジネス企業の紹介をしていたことが印象的でした。

AWS Aerospace and Satellite・DirectorのMaj. Gen. (Ret.) Clint Crosierさん。Degas Ltd.、パスコ、有人宇宙システム株式会社の3社がAWSのパートナー企業として登壇し、AWSがどのように宇宙事業で活用されているか話されました。
三井住友海上保険と宇宙事業で関わりがあるispace、ElevationSpace、将来宇宙輸送システムの3社が登壇。宇宙ビジネスの推進における保険の重要性などについて対談形式で話されました。

これから宇宙ビジネスを始めたいという企業にとって、AWSや三井住友海上保険のような事業を下支えする企業がより認知を広め、事業が理解されること、そしてSPACETIDEから実際に会話を重ね、事業を前に進めることは、宇宙ビジネス市場自体の拡大を考えるうえでとても重要な要素と言えるでしょう。

ちなみに、サイドミーティングの恩恵をいただいたのは企業だけではありません。宙畑としてはSPACETIDEの3日間を通して10本の新しい記事企画が生まれました。

(5)3日間を終えて:CEO石田さんとCOO佐藤さんのコメント

最後に、3日間のSPACETIDEを終えて、SPACETIDEのCEO石田真康さんとCOOの佐藤将史さんよりコメントをいただいたのでご紹介します。

・SPACETIDE CEO 石田真康さん
「今年はSPACETIDEとして9回目のカンファレンス開催となりましたが、カンファレンスとして新たな時代に突入したたしかな手ごたえがあります。規模、質、多様性のあらゆる面で、昨年から非連続な成長を遂げることができ、真に国際カンファレンスになったと感じました。

また、セッションだけではなく、会場内外の様々なところでミーティングが行われ、参加者や関係者の活動が加速するきっかけをつくることができたことも大変うれしく思います。

加えて、私たちのカンファレンスのバックグラウンドにもある日本およびAPACの宇宙産業に対する高い期待、強い潮流も改めて感じました。来年はSPACETIDEの10周年イベントとなります。宇宙産業の新時代を象徴するカンファレンスとなるよう準備を進めてまいりたいと思います。」

・SPACETIDE COO 佐藤将史さん
「グローバル化をSPACETIDEで進めてきた中で、第9回目のカンファレンスでは登録ベースで海外参加者が4割超となり、過去最多となるなど、その手ごたえを確かに感じたことと合わせて、日本の宇宙ビジネスの業種の広さと企業数が増えていることにも産業がきちんと大きくなっているということを実感しています。

また、Secure World Foundationのコラボについても、サミットを日本で開催すると選んでくれたことにも象徴されますが、日本への関心の高まりは大きくなっていると実感しています。SBIRや宇宙戦略基金のような政府が日本の宇宙産業をしっかりと盛り上げようとしている流れは海外からも評価されています。このような政府の取り組みがあることで、海外の関係者と会話するときの話のきっかけにもなっています。

SPACETIDEで登壇したいと言っていただける海外企業が増えていることも実感していますので、今後もさらに良いカンファレンスとなるよう努力したいと思います。」

以上、SPACETIDE 2024の3日間のダイジェストを紹介しました。あらためて濃密な3日間だったなと記事をまとめながら実感しました。ここまで日本の中で国際的な宇宙ビジネスカンファレンスは現時点ではSPACETIDEだけ。

今年は参加できなかった、という方は10周年を向かえる来年にぜひ参加してみてはいかがでしょうか。カンファレンスで多くの刺激を得られることはもちろんのこと、リアル参加でのサイドミーティングは想像以上の価値を得られると思います。