宙畑 Sorabatake

トピックス

戦略基金やアルテミス計画など、2024年度宇宙ビジネス総まとめ

大変遅くなりましたが、宙畑恒例、宇宙ビジネスの総まとめ、2024年度版について公開します。

本記事では、少し時間が経ってしまいましたが、2024年度の宇宙ビジネスの主要な動向を、PEST(政治・経済・社会・技術)分析の枠組みでまとめています。

PESTで宇宙ビジネスの動向をまとめることで、宇宙ビジネスのニュースを多面的に理解することができます。
宙畑では2022年から宇宙ビジネスをPESTの観点でまとめて振り返り、紹介しています。過去にはどのような動きがあったのか、2024年度のまとめと合わせてご覧ください。

政治編(Politics)

各国が宇宙開発の体制を強化

日本では、2024年3月に「宇宙技術戦略」の改訂版を発表。宇宙技術戦略は、日本の「勝ち筋」を見据えながら、日本が開発を進めるべき技術を見極め、その開発のタイムラインを示した技術ロードマップとしての役割を持っています。今回の改訂では、国内外の最新の技術開発動向を反映させ、民間投資の拡大にもつながる意義深い取り組みとして位置づけられています。

続いて、内閣府による「宇宙戦略基金」(宇宙ビジネスの促進を目的とした政府の資金)の第一期公募テーマが発表され、衛星データ利用実証や衛星部品開発など、宇宙ビジネスへの新規参入者を求める取り組みが始まりました。この基金は宇宙分野のイノベーションを加速させるための重要な一歩となっています。

また、文部科学省によるSBIR(Small Business Innovation Research)制度の輸送分野のステージゲート審査結果も発表され、インターステラテクノロジズ株式会社、将来宇宙輸送システム株式会社、スペースワン株式会社の3社が採択されました。これにより、ロケット開発や衛星輸送などの技術開発から事業化へのパスが整いつつあります。

宙畑メモ:SBIRとは
SBIR(Small Business Innovation Research)は中小企業の革新的研究開発を支援する制度です。政府機関がテーマを設定し、採択された企業に段階的に研究開発費を支給。宇宙分野では文部科学省が「宇宙輸送技術」のテーマで小型ロケットなどの開発を支援しています。ステージゲート審査とは、各段階での進捗や事業性を評価し、次の支援段階へ進むかを判断する審査のことです。
参考URL:https://www.mext.go.jp/content/20240919-mxt_uchukai02-000038080-1.pdf

参考URL:

韓国が宇宙開発の本格化へ舵を切る

韓国は2024年6月に航空宇宙庁(KASA)を設立し、宇宙開発の全面支援と宇宙関連企業1000社の育成を目指す方針を打ち出しました。

アジア地域での宇宙開発競争が激化する中、韓国政府の本気度が伺える動きです。実際に2024年に開催された世界中から宇宙業界の関係者が集う国際的な宇宙カンファレンスIAC(International Astronautical Congress)では、多くの韓国企業がブースを出展していました。

日本も宇宙活動法の見直しを進めるなど、法整備面での対応を進めています。

参考URL:

欧州の長期計画が具体化

欧州宇宙機関(ESA)は2040年までの計画をまとめた戦略文書「ESA Strategy 2040」を発表し、長期的視点からの宇宙開発計画を具体化しました。この戦略では、①宇宙空間へのアクセス確保(アリアン6後継機の開発など)、②月や火星への持続的な探査、③気候変動観測の強化、④商業宇宙活動の支援、⑤宇宙交通管理システムの構築などが重点施策として盛り込まれています。また、ゼロデブリ憲章に12カ国が署名するなど、宇宙環境の持続可能性に関する取り組みも進展しています。宇宙デブリ問題への対応は、今後の宇宙活動の重要な政策課題となっています。

宙畑メモ:ゼロデブリ憲章とは
ゼロデブリ憲章は欧州宇宙機関(ESA)が2023年に提唱した「新たな宇宙ゴミを生み出さない」国際的取り組みです。宇宙機の設計段階からデブリ削減を考慮し、ミッション終了後は安全軌道への移動を促進。2024年6月までに日本を含む12カ国が署名しました。法的拘束力はありませんが、宇宙環境保全の国際規範として機能しています。
参考URL:https://www.esa.int/Space_Safety/Clean_Space/ESA_s_Zero_Debris_Charter

ゼロデブリ憲章については2024年6月5日に上場したアストロスケールの創業者兼CEOの岡田さんも上場記者会見で言及しており、ルール作りが加速した背景には「アストロスケールが国際的にみても世界的な標準となり得る技術を証明したこともある」「技術とルール作りは両輪のところがあり、どこまで技術があるからどこまでの規制やルールを作るという側面があり、私達が技術をどんどん前に進めていくことによって世界のルール作りというものも前進していく」と話されていました。

参考URL:

宇宙人材育成に向けた基盤整備

日本では2025年2月に内閣府が「宇宙スキル標準」を策定し、宇宙産業における人材育成の指針を示しました。宇宙ビジネスの拡大には、専門人材の育成が不可欠です。

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経済編(Economy)

衛星データビジネスが多様化

2024年度は衛星データを活用した実用的なビジネスが広がりを見せました。フィンランドのICEYEは洪水の災害状況をリアルタイムに把握できる「Flood Insights」を発表し、防災分野での衛星データ活用を実証しています。アメリカのSpireは気象予報で金融会社と数百万ドルの契約を締結するなど、産業応用が進展しました。

参考URL:

AIと衛星データの融合が進む

AIと衛星データの組み合わせが、新たな価値を生み出し始めています。
SpireはNVIDIAと共同で45日先までの気象予測が可能なAIアルゴリズムを開発しました。AIを使うことで、従来の予測モデルよりも精度が高く、より長期間の予測が可能になります。
また、日本ではTellusが世界初となる気象情報と連動した生成AI衛星自動タスキングシステム(天気予報に基づいて自動的に衛星の撮影計画を立てるシステム)の実証実験に成功しています。

参考URL:

観測衛星の商用サービス拡大

アメリカの大手衛星データプロバイダMaxarは次世代地球観測衛星群であるLegion衛星のファーストライト(打ち上げ後最初の画像)公開と販売を開始しました。Maxarはこれまでも商用では世界最高レベルの30cm解像度のデータを提供してきましたが、Legion衛星群により、観測頻度や観測可能な時間帯を広げています。
アメリカの情報機関である国家地球空間情報局(NGA)は10の企業と2億9000万ドル(約435億円、1ドル=150円で換算)の商用データ契約「Luno A」を締結しました。AIRBUSやMaxar、Booz Allen Hamiltonなど伝統的な宇宙企業に加え、Blacksky Geospatial SolutionsやUras Space Systemsなど新しい企業も選定されています。アメリカではこのように政府機関が民間企業から衛星データを購入する流れが定着しつつあります。

参考URL:

軌道上サービスへの投資拡大

宇宙ビジネスは衛星運用だけでなく、宇宙での新たなサービス提供へと広がりを見せています。
軌道間輸送機を開発する米国のImpulse Spaceはシリーズ B ラウンドで約1億5000万ドル(約224億円、1ドル=149円で換算)の大型な資金調達を実施しました。
また、SpaceXがISSの軌道離脱(国際宇宙ステーションの寿命が終わった際に、安全に地球大気圏に再突入させる任務)に選定されるなど、宇宙インフラの維持・管理ビジネスも本格化しています。

日本では2025年度に公募され第二期の宇宙戦略基金において、軌道上サービス関連の技術開発に465億円程度の予算が割り当てられており、今後の進展が期待されます。

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社会編(Social)

宇宙ごみ問題への取り組みが加速

宇宙空間には1cm~10cmのサイズのデブリ(宇宙ごみ:使用済みロケットや故障した衛星などの残骸)が約100万個、1mm~1cmのサイズでは1億3000万個以上あると言われており、宇宙産業の拡大とともに急速に増え続けています。これらは秒速7km以上で軌道上を周回しており、衝突すると大きな被害を与えます。
2024年度は宇宙環境の持続可能性を高める取り組みが活発化しました。7月には日本で第6回「宇宙の持続可能性」サミットが開催され、国際的な関心が高まっています。
日本政府も低軌道の政府衛星については、国際的なガイドラインが求める運用終了後25年を待たず、できるだけ早く大気圏に突入させる方針を決めました。民間や研究機関においても、木製衛星の開発や軌道上での衛星修理サービスなど、デブリを出さない宇宙活動の実現に向けた取り組みが広がっています。

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アストロスケールが宇宙デブリ除去に前進

日本企業のアストロスケールは、JAXAと協力して商業デブリ除去実証プログラムを進め、「ADRAS-J」(アドラスジェイ:デブリ除去実証衛星)を使った周回観測に成功しました。宇宙空間でデブリから約15mの距離まで接近するという技術的成果を挙げています。宇宙ごみを実際に除去する技術は世界初の試みです。また、アストロスケール英国(アストロスケールホールディングスの英国子会社)は英国デブリ除去ミッションの次フェーズの契約を獲得するなど、国際的にも事業を拡大しています。

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宇宙環境問題の教育活動も活発化

アストロスケールと日本旅行は、宇宙の環境問題についてのSTEAM教育プログラムを共同開発し、2024年9月から提供を開始しました。子どもたちが宇宙デブリなどの環境問題について学び、考えるための取り組みが広がっています。宙畑によると、宇宙ビジネス参入の狙いとして「社会貢献」を挙げる企業が最も多く、SDGsへの貢献意識が高まっています。

宙畑メモ:STEAM教育とは
STEAM教育は、Science(科学)、Technology(技術)、Engineering(工学)、Arts(芸術)、Mathematics(数学)を融合した教育です。創造性や批判的思考力も育成します。宇宙分野では複雑な課題に多角的にアプローチする能力を養い、子どもたちの宇宙への興味を引き出します。アストロスケールのプログラムでは宇宙ごみ問題を理解し、解決策を考えるワークショップなどが行われています。
参考URL:https://orbitarium-astroscale.com/2024/08/steam-education-program/

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衛星で測定した温室効果ガス濃度の3DビジュアルをCOP29で展示

株式会社バスキュールは、衛星データプラットフォームTellusを通じて取得した温室効果ガス(CO2、メタンガス)濃度のデータを用いて、3Dデータに加工・可視化した「GOSAT 3D Visualizer Prjoject」を実施。
この地球全球の3D映像は、2024年11月11日からアゼルバイジャン共和国で開催された「COP29(国連気候変動枠組条約第29回締約国会議)」のジャパン・パビリオンでも展示が行われました。
衛星を使い、地球全体の様子を俯瞰してみることで、世界全体での気候変動対策への理解が進むことが期待されます。

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技術編(Technology)

民間ロケット開発の進展と課題

2024年度のロケット開発は、小型ロケット開発は厳しい1年だったようです。
ドイツのIsar Aerospaceは2025年3月に初打ち上げを実施しましたが、打ち上げ後十数秒でロケットは姿勢を崩し、海に墜落しました。。
日本のスペースワンは2025年3月にカイロスロケットの初号機の打ち上げを実施、12月には2号機の打ち上げも実施しましたが、どちらも衛星の軌道投入には失敗しています。
ドイツのRFA社(Rocket Factory Augsburg:ロケットファクトリー・アウグスブルク)では試験中に射場が燃える事故も発生しました。
日本でも「イプシロンS」の燃焼試験で爆発が起き、予定されていたベトナムの地球観測衛星の打ち上げが延期となっています。
小型衛星の打ち上げ需要の高まりに合わせて、小型ロケットも世界中で開発が進められていますが、技術的な壁はまだまだ高いようです。現在数多くの打ち上げを成功させているSpaceXも当初は失敗の連続でした。2024年度はうまくいかなかった企業も失敗から学びエンジニアが育つことで、技術力が高まっていくことが期待されます。

宙畑メモ:RFAとは
RFA(Rocket Factory Augsburg)は2018年設立のドイツの民間ロケット企業です。小型衛星向けの「RFA ONE」ロケットを開発中で、高さ約30m、低軌道に1,300kgの打ち上げ能力を持ちます。液体酸素とケロシンを燃料とする再使用可能なエンジン「Helix」が特徴です。2024年8月の試験中に射場で事故が発生しましたが、開発は継続しています。
参考URL:https://www.rfa.space/

参考URL:

SpaceXが打ち上げ実績で業界をリード

米国のSpaceXは2024年度中に年間打ち上げ回数が100回を超え、宇宙輸送能力において圧倒的な存在感を示しています。また、次世代の大型宇宙船「Starship(スターシップ)」の7回目の試験飛行も実施し、大型ロケットの開発も着実に進めています。さらに、ISSの軌道離脱(国際宇宙ステーションの寿命が終わった際に、安全に地球大気圏に再突入させる重要な任務)にもSpaceXが選定されるなど、重要ミッションも任されるようになりました。

参考URL:

月面探査競争が加熱

NASA(米国航空宇宙局)主導のアルテミス計画(人類を再び月面に送る国際プロジェクト)は有人月面着陸のスケジュールを2027年半ば以降に再延期しましたが、民間企業による月面探査は着実に進展しています。

Firefly Aerospace(ファイアフライ・エアロスペース)は2025年2月に月面着陸に成功し、民間企業として2社目となりました。また、Intuitive Machines(インテュイティブ・マシーンズ)はNASAから1億1690万ドル(約175億円、1ドル=150円で換算)の4度目の月面輸送を受注するとともに、有人月面探査車(月面を移動するための乗り物)の開発も進めています。月は将来的な資源開発や科学研究の拠点として注目を集めています。

日本では、JAXAの探査機「SLIM」が2024年1月に月面への精密着陸に挑戦しました。当初の目標であった100m以内のピンポイント着陸を実現しましたが、エンジンの一つが動かないトラブルが発生、機体は傾いた状態で着地しました。

参考URL:

軌道上サービス技術が実用段階へ

軌道上での衛星サービス(すでに宇宙にある衛星に対して、別の衛星が接近して点検や修理、燃料補給などを行うこと)は実用化に向けて進展しています。アストロスケールの米国子会社は2026年夏に米国宇宙軍の衛星に推進剤(衛星の位置を調整するための燃料)補給を行うミッションを予定しています。

また、中国もShijian-25(寿命延長衛星)を打ち上げ、各国が軌道上サービス技術の獲得に動いています。通信衛星大手のIntelsatは衛星の寿命を延長させるサービス「Mission Extension Pod(ミッション延長ポッド)」の導入を決めました。

参考URL:

衛星コンステレーションの拡大

小型衛星の打ち上げが相次ぎ、衛星コンステレーション(複数の人工衛星を協調して運用するシステム)の構築が進んでいます。

日本のSynspective(シンスペクティブ)は5機目のStrix(ストリクス)衛星を打ち上げ、QPS研究所もTSUKUYOMI-II衛星を打ち上げました。どちらもSAR(合成開口レーダー:雲や夜間でも地表を観測できる技術)を搭載した観測衛星です。

中国の「千帆」コンステレーションは2025年末までに648基の衛星打ち上げを計画しており、低軌道(地球の比較的近い軌道)における衛星数の増加が続いています。

参考URL:

宇宙太陽光発電の実証や木製衛星など、新しい挑戦進む

日本宇宙システムは小型の宇宙太陽光発電実証衛星(宇宙空間で太陽光エネルギーを電力に変換し、地上にマイクロ波やレーザーで送電する技術)の打ち上げ計画を発表しました。これは低軌道から地球に無線でエネルギーを送電する画期的な技術実証で、将来のエネルギー問題解決に向けた重要な一歩となります。

また、京都大学と住友林業は世界初の木製衛星「LignoSat」(リグノサット)を打ち上げ、環境に優しい宇宙開発の可能性を示しました。従来の人工衛星とは異なり、木材を使うことで大気圏再突入時に完全に燃え尽き、新たな宇宙ごみを生まない設計になっています。

参考URL:

衛星通信技術の革新

2024年度は、従来の地上携帯電話が衛星と直接通信できる革新的技術の実用化が進んだ一年でした。
AST SpaceMobileは衛星直接通信サービス(特別な端末を必要とせず、普通のスマートフォンでそのまま衛星と通信する技術)のテストに成功し、AT&TやVerizonといった大手通信会社とのパートナーシップを強化しています。
また、中国は衛星-地上通信で100Gbpsという高速通信記録を達成し、SpaceXのStarlink衛星インターネットを超える速度を実現しました。

参考URL:

2025年度宇宙ビジネスで何が起きるか

2025年度の宇宙ビジネスは、政策面での整備が進み、技術的な成熟と商業的な発展が一層加速することが予想されます。ここでは、PEST(政治・経済・社会・技術)の枠組みで今後1年間に起こる主要な動きを予測します。

政治編(Politics)

日本は宇宙政策の拡充加速へ

日本では「宇宙戦略基金」の第2期公募が始まり、宇宙ビジネスの支援がさらに拡大することが予想されます。
2024年度に検討が進められてきた宇宙活動法の見直しは、2025年度に改正法として成立する見込みです。
さらに、防衛省では令和8年2月頃に衛星コンステレーションの整備・運営等の事業契約が締結される予定で、安全保障分野での宇宙利用が本格化します。

参考URL:
宇宙政策 – 内閣府
宇宙戦略基金

米国はアルテミス計画が本格始動

2025年度は米国の宇宙政策は見通しにくい状況になっています。

アルテミス計画の最初の有人ミッションであるアルテミスⅡが2026年始めに予定されており、NASAの月探査計画が本格的に始動します。

一方で、トランプ政権下での宇宙開発予算の見直しが提案されており、特に火星探査と商業宇宙活動への支援が強化されると予測されます。

参考URL:
Artemis II – NASA
NASA Accelerates Artemis 2 by Two Months – AmericaSpace

欧州は宇宙機関設立50周年を契機に新たな展開

2025年は欧州宇宙機関(ESA)設立50周年の節目の年です。これを記念して戦略的な政策発表や新規プログラムの立ち上げが予定されています。また、ESAの宇宙飛行士がISSへの2回目の商業ミッションを行うなど、有人宇宙飛行の分野でも活動が活発化します。後半には宇宙閣僚級会合が開催され、欧州の宇宙予算や優先プロジェクトを決定する重要な場となるでしょう。

参考URL:
ESA’s highlights in 2025
ESA Vision

経済編(Economy)

宇宙輸送ビジネスに新興企業が参入

輸送分野では、2025年に新たな民間企業の参入が相次ぐでしょう。
Sierra Space社の「Dream Chaser(ドリームチェイサー)」というスペースプレーンが初の商業補給ミッションを行い、ISS(国際宇宙ステーション)への物資輸送に新たな選択肢が加わります。Dream Chaserは当初2024年の打ち上げ予定でしたが、技術的課題により延期されていたもので、早ければ2025年以降に初飛行する見込みです。
また、RocketLabの新型ロケット「ニュートロン」の打ち上げやVast Spaceの商業宇宙ステーションの試験モジュールの打ち上げ開始など、宇宙輸送・宇宙ステーション市場に新たなプレイヤーが登場します。

参考URL:
Dream Chaser Spaceplane Fleet | Sierra Space
Dream Chaser completes more pre-flight milestones – NASASpaceFlight.com

衛星データ市場の拡大と高度化

地球観測データの商業利用がさらに拡大し、特に防災、農業、都市計画などの分野での応用が進みます。
日本では、JAXAの「ALOS-4(だいち4号)」データ配布が始まり、高解像度の観測データが産業界で幅広く活用されるようになるでしょう。また、「GOSAT-GW(温室効果ガス観測技術衛星)」の2025年6月の打ち上げにより、気候変動対策に向けた精密なデータ取得が可能になります。欧州ではSentinelシリーズの新衛星(Sentinel-1D、Sentinel-4、Sentinel-5、Sentinel-6B)が次々と打ち上げられ、多種多様な地球観測データの供給が増えると予想されます。

参考URL:
ALOSシリーズ@EORCホームページ
ESA – Copernicus

宇宙ビジネスへの投資拡大

ESAが発表する「Space Economy Report 2025」によれば、特に低軌道ビジネスと地球観測データサービスが注目されています。民間投資も活発化し、特に軌道上サービス、宇宙探査、宇宙資源開発などの分野への投資が拡大するでしょう。
アメリカのAmazonは通信衛星である「Kuiper」衛星の打ち上げも進め、衛星インターネット市場での競争が激化すると予想されます。

参考URL:
ESA Report on the Space Economy 2025

技術編(Technology)

月面探査ミッションが本格化

民間企業による月面探査が活発化し、特にispaceの月面着陸ミッションやBlue Originの「Blue Moon Pathfinder Mission」などが注目されています。

ispaceの月面着陸ミッションは2025年6月に月面着陸にチャレンジしましたが、途中で通信が途絶え、ミッションが終了しました。
また、ESAの「Juice」探査機が金星フライバイを実施し、木星への接近に向けて順調に進みます。

中国は国際月面研究ステーション(ILRS)の建設準備を開始し、月面での長期的な活動に向けた準備を進める予定です。

参考URL:
https://ispace-inc.com/jpn/
https://www.esa.int/Science_Exploration/Space_Science/Juice

ロケット開発の多様化と競争激化

ロケット開発では、JAXAのイプシロンロケットの復活や、HTV-X初号機の打ち上げが予定されています。
米国ではアルテミスⅡミッションのほか、ULAの「Vulcan Centaur」ロケットの本格的な商業運用が始まります。
欧州では「Ariane 64」の初打ち上げ(ペイロードはAmazon社の通信コンステレーション衛星Kuiper)が予定されており、大型ロケット市場での競争が激化するでしょう。
また、オーストラリアのGilmour Space社がオーストラリア初の国産ロケット「Eris」を5月に打ち上げ予定でしたが、機体トラブルにより延期しており、近々打ち上げが行われるものと思われます。小型ロケット市場にも新規参入が続きます。
中国も再使用可能な大型ロケットの打ち上げや、新型大型ロケット「長征10号」の2027年打ち上げに向けた試験を進めると予想されます。

参考URL:
JAXA | イプシロンロケット
Artemis II – NASA
Arianespace

軌道上サービス技術の実用化

軌道上サービス技術の実用化も進みます。アストロスケールは「ELSA-M」を2026年に打ち上げる準備を進め、2025年6月に詳細設計審査の完了を発表しています。「ELSA-M」の打ち上げは、軌道上作業の技術開発をさらに加速させるでしょう。
今後は、多くの通信衛星運用企業が、衛星の寿命延長や軌道調整サービスに関心を示し、軌道上サービス市場が徐々に形成されていくと予想されます。
また、各国の宇宙機関や軍事組織による軌道上サービス技術の開発も活発化し、宇宙活動の自由度と持続可能性の両立が模索されるでしょう。

参考URL:
ELSA-M | アストロスケール
Space Force to test satellite refueling technologies in orbit – SpaceNews

まとめ

2025年度の宇宙ビジネスは、政策面では宇宙活動の持続可能性を高める国際的な枠組みの強化、経済面では輸送サービスと衛星データビジネスの多様化と拡大、技術面では月面探査の本格化とロケット開発の競争激化が特徴となるでしょう。これらの動きは相互に連携しながら、宇宙ビジネスのエコシステムをさらに発展させていくことが予想されます。

2025年度は特に、アルテミス計画の進展とDream Chaserの初飛行、そして各国の商業宇宙ステーション計画の具体化が、宇宙ビジネスの新たな時代の始まりを象徴する年となるでしょう。また、地球観測データの高度利用や宇宙環境保全の取り組みは、地球上の持続可能性にも貢献し、宇宙活動と地球の課題解決の連携がさらに強まる年になると予想されます。