宙畑 Sorabatake

衛星データ

20000人が寄せた衛星データのはてな、衛星データQ&Aまとめ

本記事ではTellusに寄せられるお問い合わせ、「7日でマスター!基礎から学ぶ衛星データ講座」の中で寄せられた質問、また、宙畑編集部が日頃よくいただく衛星データについての質問をまとめています。

2019年2月にTellusがオープンしてもうすぐ2年が経過。おかげさまでTellusの利用登録者数は2020年12月時点で19,000名以上と多くの方に利用いただいています。

また、2020年は8月から開始した「7日でマスター!基礎から学ぶ衛星データ講座」にて、衛星データについて多くのご質問をいただきました。

本記事ではTellusに寄せられるお問い合わせ、「7日でマスター!基礎から学ぶ衛星データ講座」の中で寄せられた質問、また、宙畑編集部が日頃よくいただく衛星データについての質問をまとめています。

ここにない質問がございましたらぜひ宙畑のお問い合わせからご質問ください。

本記事では、Q&Aを以下7つのカテゴリにまとめて紹介しています。

・地球観測衛星の基礎編
・衛星データ(衛星画像)の基礎編
・光学衛星・光学画像解析編
・SAR衛星・SAR画像解析編
・衛星データ解析編
・ビジネス事例編
・Tellus編
・その他

地球観測衛星の基礎編

・人工衛星にはどのような種類がありますか?

人工衛星は役割によって以下の5種類に分けることができます。

・新たな衛星技術の実証を行う「技術試験衛星」
将来必要となる衛星技術を実証するために開発されます。

・地球外の天体の観測や宇宙環境での実験を行う「科学衛星」
宇宙の謎や生命の起源などを調べます。

・衛星放送や衛星通信を可能にしている「通信衛星」
山岳地帯や海上などどこでも通信を可能にすることはかなりの労力がかかりますが、通信衛星を使うことでケーブルを引けない地域にも通信環境を提供することができます。

・GPSに代表される位置情報を調べる「測位衛星」
アメリカのGPSのほか、ロシア、ヨーロッパ、中国、インドも独自の測位衛星システムを持ち、日本では準天頂衛星「みちびき」を独自に開発し、サービスの実証が進んでいます。

・地球の様々な情報を調べる「地球観測衛星」
地上からでは見渡せない広範囲を調べ、天気予報や地形情報など生活に役立つ情報に利用されます。

・人工衛星はどのくらいの高さを飛んでいますか?

目的に応じて様々な高さで飛んで(高度で周回して)います。

高度が低い場合は400 km程度、高い場合は3万6000kmほどを周回しています。

代表的な日本の高度が低い地球観測衛星としては超低高度衛星技術試験機「つばめ (SLATS)」があり、Tellusでそのデータを公開しています。

一方、高度が高い地球観測衛星としては気象衛星「ひまわり」が挙げられます。こちらもTellusでデータを公開しています。

なお
・低い場合は90~100分程度で地球を1周
・3万6000kmの場合は24時間かけて地球を一周(地球から静止して見えるので静止衛星と言います)します。

・衛星が撮影している範囲は決まっていますか? ずっと撮影し続けているのでしょうか?

どの範囲で撮影しているのかは、衛星によって様々です。

また、地球全体を撮影するため、人の活動領域で切り分けれらている訳ではありません。

地球観測衛星の撮影イメージ

観測範囲という意味では、衛星が通過する直下の地表面を撮影しているので、特定の物体(海や河)ごとに撮影ということはもちろんできず、画像の中で途切れて映る場合もあります。

・衛星が進行方向に対して連写したように撮影しているのはなぜですか?

地球観測衛星の撮影イメージ

光学衛星の場合、搭載されているセンサは、私たちが地上で使っているカメラに利用されているエリアセンサとは異なり、スキャナのようにライン状にセンサが構成されているラインセンサというものを使っています。衛星は進行方向に対して垂直にスキャンし続けながら撮影することになるため、連写したような形で画像が出てきます。

・衛星の〝手ブレ‘’も撮像性能に大きく関わってくると思いますがいかがでしょう?

衛星の姿勢のブレは撮像性能に大きく影響を与えます。姿勢が1度変わるだけで撮像箇所が数10kmもずれるような世界のため、高い姿勢精度要求(安定度)が求められます。

安定しやすいように、高分解能な画像を撮影する衛星の場合、大きくなる傾向にあります。

・衛星は軌道がずれていったりすることがあるのでしょうか? 軌道を整えるメンテナンスが入ったりしますか?

軌道はずれます。様々な要因がありますが、大気や重力など、摂動(せつどう)と呼ばれますが、によりずれることになります。

軌道を元の位置に戻すために、多くの衛星では推進機器を搭載しています。

・どのような人が衛星を作っていますか?

大型の衛星は国の政策によって人工衛星の目的が決まり、人工衛星の仕様を決めるのは、日本だとJAXAが実施していることが多いです。

その後、人工衛星を製造するのは、大手だと電機メーカー(三菱電機、NEC)が、最近ではベンチャー企業も製造しています!

小型衛星衛星は商用で利用されるものが多いので企業の目的によって仕様も決まり、自社で開発するか開発メーカーに発注するという形になっています。

衛星データ(衛星画像)の基礎編

・人工衛星のデータはどこで見ることができますか

近年、各国の政府機関が無料で自国の衛星データを公開しています。
ここでは代表的なものをいくつかご紹介します。

●日本の政府衛星データ Tellus
https://www.tellusxdp.com/
日本では「Tellus(テルース)」が衛星データを始めとする様々なデータを公開しています。サイト登録を行えばだれでも簡単に衛星データを見ることができます。

●JAXAの衛星データ G-Portal
https://gportal.jaxa.jp/gpr/
JAXAの衛星画像を無償で公開。広域の光学センサという意味ではデータ量等欧米にはかないませんが、マイクロ波を用いた観測データが多いのが日本の特徴です。降水や海面水温など画像情報以外の物理量からも選べるようになっています。

●アメリカの政府衛星データ LandsatLook Viewer
https://landsatlook.usgs.gov/
広域撮像を目的とする光学センサ衛星の王道。観測頻度は2週間に1度。公開されている衛星データの中では最も古く、1972年からのデータがあります。最新機がLandsat-8で8機目となります。

●ヨーロッパの政府衛星データ Copernicus
http://www.copernicus.eu/
ヨーロッパの無料の衛星データプラットフォームです。

様々な種類のセンサを搭載した衛星を打上げ、運用しており、衛星データの種類も多彩であることが特徴です。

・衛星データは購入できますか

日本でも複数の民間企業が衛星データを販売しています。

●一般財団法人リモート・センシング技術センター
https://www.restec.or.jp/solution/index.html

●株式会社パスコ
https://www.pasco.co.jp/products/data/

●日本スペースイメージング株式会社
https://www.jsicorp.jp/product.html

●日本地球観測衛星サービス株式会社
https://jeoss.co.jp/

●株式会社衛星ネットワーク
https://www.snet.co.jp/planet/

衛星データの費用については以下の記事で紹介しています。

・衛星データはなぜこんなに高額になるのですか?

衛星画像を販売することで、衛星開発コストや、打ち上げコスト、運用コストなどを回収する必要があります。これらのコストを回収する必要が出てくるため、高額になってしまいます。

地球観測衛星に必要な費用については以下の記事で紹介していますので合わせてご覧ください。

・衛星は地球上のどこを撮影しても良いのでしょうか?

基本的に世界中を撮影していますが、全くルールがないわけではなく、衛星データに関する国際的な決まりや各国の規制(シャッターコントロール)もあり、日本ではリモセン法で公開する場合の条件が制限されている部分もあります。リモセン法については以下の記事で詳しく解説しています。

・おすすめの衛星データの勉強方法を教えてください。

Tellusで公開しているe-learningは無料で学習いただけます。
ぜひご活用ください。

・初心者向け Tellus 学習コース
https://tellusxdp.github.io/start-python-with-tellus/index.html

・Tellus Trainer
https://tellusxdp.github.io/tellus-trainer/index.html

また、宙畑の記事を順番に読んでいただくのも良いかと思います。

・衛星写真の解像度は現状どれくらいでしょうか?

簡単にいうと、今、世界で一般的に入手できるものでは30cmレベルのものが最高クラスで、無料のものですと、10~30mのものになります。

衛星の解像度については以下の記事で詳しく解説していますので、ご覧ください。
https://sorabatake.jp/441/

・どの程度の時間スケールで衛星データの解像度は向上するのでしょうか?

光学データの解像度は、基本的には「軌道高度」と「望遠鏡の口径」で決まります。

「軌道高度」は、近くで見たら細かく遠くから見れば粗く見えるということなので、軌道高度を下げれば解像度は良くなります。一方で、地球に近づけば近づくほど薄い大気によって衛星自体の高度が下がってきてしまうので、軌道を保つための機器が必要になり、衛星自体が大型化・複雑化してしまうと考えられます。

「望遠鏡の口径」も大きければ大きいほど解像度は良くなりますが、同様に衛星自体の大型化・複雑化が必要となり高額になるため、安全保障用途など面積当たりの単価が高い衛星データではこういった対応が考えられます。

いずれにしても、私たちが手にすることができる衛星データの解像度が指数関数的に良くなることは、すぐには考えづらいと思われます。

現状達成できている解像度で「もっと観測頻度が高くなったら」「単価が安くなったら」という観点でビジネスの検討をすることがおすすめです。解像度が必要な部分は、ドローンやIoTセンサなど別のセンサを組み合わせることを考えられると良いと思います。

光学衛星・光学画像解析編

観測波長・バンドについて

・熱赤外の波長などの観測データも30cm級の解像度で見ることができますか?

基本的に観測波長が長くなると(赤外線の方の領域にいくと)解像度は悪くなります。

熱赤外線の場合、例えばLandsat-8での熱赤外の解像度は100mです。

・衛星で紫外線も撮影できますか

天文の分野では紫外線観測がよく行われています。

地球観測でも一部行われていますが、あまり一般的ではないと思われます。
※オゾン層の破壊の様子などの観測に使われているようですね。

・バンドとは何ですか?

センサが感知する電磁波(波長)の幅のことをバンド、という単位で呼んでいます。
植物や建物など物質ごとにどのバンドで良く見えるかが異なります。

・バンドの数が衛星ごとに異なる理由は何でしょうか?

衛星により「何を観測したいか」というミッションが異なります。目的に応じて必要なセンサを搭載しているため、バンド数が衛星により異なります。

バンド数が多ければ多いほど、コストが高くなってしまうため、必要なものに絞ったセンサを搭載するのが通常です。

小型衛星の場合は、可視光+近赤外のバンドを観測しているものが多く、大型衛星の場合は可視光から近赤外・熱赤外まで観測しているものが多いです。

・バンドの数は多い方が良い印象ですが、どのようにして数は決められるのですか?

バンドの数が多い方が、多く情報量を取得できますが、
・センサのサイズが大きくなる
・地上にダウンロードするデータ量が多くなる
などの課題も発生します。

衛星として何を観測したいのか、というミッションに沿って、必要十分なバンド数を観測できるセンサが搭載されることが多いです。

波長の幅を細かく、多くのバンドで観測できるセンサを特にハイパースペクトルセンサというように呼称します。ハイパースペクトルセンサについては詳しくはこちらをご覧ください:https://ssl.jspacesystems.or.jp/project_hisui/

・バンドの数字はどうやって決まっていますか?

衛星のバンドの番号と周波数

波長とバンドの番号は一対一で対応するものではなく、衛星ごとに独自にバンドと波長の対応が決まっています。

例えば、Landsat-8という衛星では、上記のようになっていて、バンドの6、7、9付近は前後していることが分かります。

・バンドによって、解像度が違うのはなぜですか

光学画像は、反射とふく射という二つの現象が合わさって観測されています。

反射とは、私たちの目で見るように、太陽や電灯の光を反射して見えることです。

ふく射とは、例えば、熱く熱した石炭や鉄が赤く光って見えるような、物体自身が持っているエネルギーを放射している現象になります。

可視光では反射が支配的ですが、赤外線の領域ではふく射が支配的になり、すこしぼやっとした画像になります。

空港で帰国者の発熱をチェックするために使われるサーモグラフィーは、通常のカメラと比べて解像度が粗いと思いますが、あのイメージです!

・よく使われる波長はなんですか?

植物の状態を見る際によく利用されるのは近赤外域です。
https://sorabatake.jp/3699/

通常は私たちが見えている可視光(RGB)の波長帯域がよく利用されています。
有償な衛星の場合には通常上記2種類の観測をしている衛星が中心です。

・波長と見たいものの関係はどのように覚えたらよいのでしょうか。

基本的には下記のようなイメージで覚えるのが良いかと思いますが、それでも覚えるのはとても大変なので、波長を変えながら、あ、この組み合わせにすると、これはこう見えるのね、ということを体感しながら覚えていくのがオススメです。

・宇宙から見える色と、地上から私たちが見ている色は同じですか?

私たちの目で見るのと、デジカメで写った絵の色が微妙に違うように、衛星からみえる色は異なります。また、私たちが普段見ている地上の様子は宇宙からみると大気を通してみることになるので、その分見え方は異なります。

最近だと、キヤノン電子の地球観測衛星が、ネオワイズ彗星の様子を撮影していましたが、こちらも地上から撮った写真と、宇宙からとった写真が異なるようですね。
大気がない分きれいに見えます。とのこと
https://www.canon-elec.co.jp/news/post-4996/

海の専門家は青に寄せがち……などリモセンの中でもブレンド方法にそれぞれこだわりがあるというのも聞きます。

・衛星ごとに見ている色は同じなのでしょうか?

衛星ごとにセンサの特徴が若干異なるので、必ずしも同じ色ではありません。

衛星の使い分けについて

・Landsat(ランドサット)、Sentinel(センチネル)、ひまわりでおすすめの衛星はどれでしょうか

目的に応じて適した衛星は異なるので、どれがおすすめというのは難しいですが、それぞれ
・分解能が良いのはSentinel-2
・長い時系列変化を見たい場合には、シリーズとして運用期間が長いLandsat(ランドサット)シリーズ
・大気の状態や、黄砂など大規模に変化する自然現象を見たい場合、日本域の広い範囲を高頻度で観測しているのはひまわり
といった特徴があります。

目的に応じては、他の衛星を利用するのも良いでしょう。

・SARデータと光学データのバンドの関係はどうなっているのですか?

どちらも電磁波の一種になります。波長の短い方がいわゆる「光」で、波長が長くなっていくと、「マイクロ波」や「電波」とよばれる領域になります。SAR観測はこの「マイクロ波」「電波」を使って観測を行っています。

このあたりは文科省が出している光マップがとても面白いのでぜひ見てみてください。
※波長によってどんなことに使われているのかがまとめられています!
https://stw.mext.go.jp/series.html

・有料の衛星画像ほど波長の数が多いのでしょうか。無料と有料でなにが違いますか

有料だからと言って、たくさん波長が見えるわけではありません。有料の画像では、波長が多い、というよりは、分解能が良い、という場合が多いです。

政府が打ち上げている大型衛星は、様々な波長を観測しているものの、無料で公開されています。

近年多く打ち上げられ始めている衛星で、ハイパースペクトルセンサを搭載しているものがあります。このような衛星データは、需要もあるので高額で売られる可能性があります。

解像度について

・白黒の画像とカラー画像はなぜ解像度が違うのですか

カラー画像生成イメージ Source : https://www.tellusxdp.com/ja/howtouse/remote-sensing_base/remote_sensing_2.html

白黒画像と、カラー画像はセンサの構成が異なるために解像度が異なります。

カラー画像の場合はRGB等、3つ以上の素子が1セットとして構成されており、そのため、カラー画像として合成すると、解像度が1/4になってしまうのです。

白黒画像は白か黒か、1素子が基本単位として構成されているので、解像度が良くなります。

・衛星の分解能はどうやって決まるのですか?

衛星の地上分解能は「カメラの性能」と「軌道高度」により決まります。

・分解能が高いと、価格も高くなる傾向でしたが、それは需要と供給のバランスや撮影技術の難易度といった理由で高くなっているのでしょうか。

衛星の地上分解能は、1.カメラの性能、2.軌道高度、により決まります。

カメラの性能を良くすると、カメラ自体の費用も高くなりますし、大型化するため衛星自体も大きくなり、ロケットで打ち上げるコストも高くなります。

・地上分解能が高い、かつ、観測幅が広い観測装置ができない技術的な理由はなんですか?

地上分解能は撮像素子(とレンズ)の性能に、観測幅は主にレンズの性能に依り決定されます。地上分解能が広く、観測幅が広いカメラを作ろうとすると、とても良い素子を用意すると共に、口径の広いカメラレンズを用意する必要が出てきます。(広角レンズのように、端っこが歪んでしまうような画像を取得できたとしても、衛星データ解析には活かしにくいですよね?そのため、歪みが少なくなるようなレンズを搭載するようにされています)
口径が広いレンズということはつまり大きい衛星になるということ。つまりはコストが高くなる、ということに繋がります。そのため、コスパを考えるとなかなか実現しないものになっています。

このような中で、JAXAが開発中のALOS-3は地上分解能(0.8m)が高く、観測幅が広い(70km)のカメラを開発しました。この衛星データは2021年度中に打ち上げられる予定です。
http://www.satnavi.jaxa.jp/project/alos3/

衛星データの見え方・データが持つ意味

・同じ時刻でも夏至と冬至では日光の当たる角度に違いが出ると思いますが、この違いも衛星画像の見やすさに影響するでしょうか?

影響はあります。太陽からの光が差し込む角度が変わってくるので、同じ場所を同じ時間に撮影していても季節によって見え方が異なります。例えば、大きな建物の影の長さにも差が出ます。

・NDVIで植物の活性度を捉えるとは、どういう意味でしょうか

NDVIは植生の茂り具合を示す指標です。IR(赤外線)を強く反射し、R(赤色)は葉緑素によって吸収されるという植生(緑葉)の反射特性を利用しています。

SAR衛星・SAR画像解析編

SAR画像で見えるもの

・SARは触覚のイメージに近いと宙畑の記事でありましたが、地上の触覚(つるつる、ざらざら)というのは、どのくらいの大きさのレベルのものが見えるでしょうか?

SARで分かることのイメージ

バンドによって、見えるレベルが異なります。

また、対象物(物質)によって見え方が異なるため、一概には答えにくいのですが、
例えば、
・稲の場合、その育成具合に応じて見え方が変わると言われています。
・石油が洋上に油膜が広まった場合、その差分は捉えやすいです。

・SARセンサに人は映ることはできますか?

基本的にSARデータでは、人そのものを直接的に捉えることは難しいと思われます。
ただし、アルミの金属を担いだ状態など、SARの電波を強く反射する物体を所有した状態であれば、映ることはできるかもしれません。

人を映すというわけではありませんが、SARの電波を強く反射させるためにコーナーリフレクターというのを利用する方法などは紹介されていたりします。
https://www.jstage.jst.go.jp/article/rssj/36/4/36_360/_pdf

・SAR衛星のデータは、雲により遮断されるなど、天候に影響を受けるでしょうか?

SAR衛星は雲に比較的強い観測方法です。

しかし、どちらもゲリラ豪雨のような分厚い雲や大雨では、電波が減衰することが知られています。

また、観測波長によって、天候の影響の受け方も多少違ってきます。

SARの観測周波数について

・SARのXバンド、Cバンド、Lバンドのアルファベットはどのような意味でしょうか?

Xバンドは、第二次世界大戦中に用いられたため視準のための十字線(crosshair)のcrossになぞらえて、Xという文字が使われているようです。

Lバンドは長い波長(Long Wave)のL、Sバンドは短い波長(Short Wave)のS、CバンドはSバンドとXバンドの間(Compromise)という意味のようです。

・JAXAのSARセンサはなぜLバンドなのですか。

地震後の地表の様子や土砂崩れの様子をみるには、地表面まで透過するLバンドの波長がxバンドやCバンドより優れています。

災害が多い日本では、地表面まで見ることができるLバンドの波長を利用するJAXA衛星が、ふよう1号、だいち、だいち2号と代を追いながら運用を続けて災害後の状況把握などに利用されています。

SARで実施する解析について

・干渉SARの仕組みがいまいち分かりません。また、どのような方が使っているのですか?

SARデータでは、衛星から地表面までの距離を測っています。そのため、複数回観測することで、衛星から地表面までの距離の”差”を見ることができます。この差を見ているのが、干渉SARになります。

地震の前後でどのくらい地表にずれが生じたのか、地盤沈下の把握などに利用されます。

ご自身で解析されたい方はこちら:https://sorabatake.jp/12465/

参考記事:https://www.gsi.go.jp/uchusokuchi/sar_mechanism.html

干渉SARを用いた事例などについてはこちらのオープンディスカッションで紹介しています。
https://sorabatake.jp/7751/

・SARで差分をとる利点について教えてください

光学写真の場合、日照条件が異なると、同じ場所であったとしても、画像の映り方が微妙に違います。また、季節に応じて影の長さが異なったりと、差分を取る上での誤差要因が様々にあります。

これに対して、SAR画像の場合は衛星が能動的に電波を放射して、その反射を観測しているため、観測条件が同じであれば、同じように映ります。そのため、何かしら差分が生じた場合に、分かりやすいのです。

・SARの差分(葉や枝を透過するLバンド)で、同じ地点で、数年前の画像と現在の画像を見る(たとえば数年前を青、現在を赤、みたいにして重ねて見る)と、地盤沈下や隆起がわかったりするでしょうか?

単純な色の指定で沈下や隆起を見ることは難しいですが、干渉SARという手法で解析することで沈下や隆起の様子を解析することができます。

干渉SARについて:https://sorabatake.jp/12465/

・葉で反射するXバンドの画像で差分を見ると、植生の経年変化みたいなのもわかるでしょうか?

Xバンドで植生の経年の変化まで調べるということは難しいように思います。森林が草地に変化したり、植物そのものが変わるなど土壌が変わるくらいの変化であれば見えそうです。

衛星データ解析編

・衛星データはなぜ前処理が必要になるのですか?

衛星が観測した直後の生データの状態では、可視化したり、比較するのに雑音になってしまうデータが含まれているので、データを処理する必要があります。

以下の記事にもあるように、料理でいうところの下ごしらえみたいなもので、差分を調べたいときに余分な情報を取り除いたり、処理しやすいように調整しておくなど、下ごしらえをしておくことでよりわかりやすく解析できるようになります。

【図解】衛星データの前処理とは~概要、レベル別の処理内容と解説~
https://sorabatake.jp/9192/

・海底の地形を見ることができるものはありますでしょうか?

Landsatのデータなどで、浅瀬(10m程度までの水深)の地形は分かると言われています。
Bathymetry Mapping Using Landsat 8 Satellite Imagery

Retrieval of nearshore bathymetry from Sentinel-2A and 2B satellites in South Florida coastal waters
下記はLandsatではありませんが、(高解像度な)衛星画像を使って海底地形を求めている論文は多数あります

https://www.jstage.jst.go.jp/article/proce1989/47/0/47_0_1351/_pdf

→(参加者で、地球科学(電磁気学)の専門家です)水深が深くなると電磁波が減衰してしまうため、電磁波が届かず深い地形を捉えることができません。深い水深の地形は一般的に船に取り付けたソナーなどの反射波を利用して測定を行います。

→ありがとうございます!

・筑波山をバンドで見てみようと思ったら、変な所で画像が切れてて、筑波山にならないんだけど、どうすればいいの

衛星で撮影する際にちょうど、筑波山のところで切れてしまっているのかもしれません。

少し場所を変えて検索をしていただけると切れた側の画像も見つかるかと思いますので、探してみてください!

実際に解析を行う際は複数の画像を繋ぎ合わせるような処理を行うことになります。

こちらの記事もぜひご参照ください。

https://sorabatake.jp/7325/

・近赤外、レッドエッジ等を使って木の種類を判別とか出来るのでしょうか?

高分解能な衛星画像を用いることで、樹種判別されている事例はあります。ただし、樹種を詳しく判別しようとすると、ハイパースペクトルセンサのように、細かく様々な波長で観測できるセンサのデータを使う必要が出てきます。

・山の登山道などをSAR画像を用いて判別させることはできますか?

登山道の性質にもよりますが、衛星からの観測方向に面した登山道であれば、判別できる可能性はあります。

Xバンドだと樹木に覆われた登山道検出が難しいかと思いますが、樹木に覆われた”それなりに道幅のある”登山道の場合には、Lバンドで判別できるかもしれません。

・熱赤外線で地表面の温度を推測する際、どんなアルゴリズムが利用されていますか?

様々な補正をすることで、温度を求めることができます。例えばこちらのような論文をご覧頂けると良いかと思います。

https://www.jstage.jst.go.jp/article/sicejl1962/21/11/21_11_1020/_pdf/-char/ja

どうやって求めるの?という方はこちらをご覧ください:

・熱を把握できるということは、火山、海底火山の予兆活動もわかりますか?

また、水中(海底・川底)の様子は把握できるのでしょうか?

火山の活動を実際に観測している例があります。火山活動が活発になれば、放出される熱量が増えるという点からすれば、噴火の予兆を捉えるための一つの要素になるとは考えられます。

また衛星を用いる利点としては、広い範囲の火山活動を俯瞰できるという点があります。

参考記事:https://www.frontiersin.org/articles/10.3389/feart.2019.00362/full

https://sentinel.esa.int/web/sentinel/thematic-areas/emergency-management-content/-/article/kalamos-fires

熱の把握とは異なりますが、上の参考記事のように光学を使った例もあり、Sentinelを使って大規模な山火事の検出に利用されています。実際に宙畑でも山火事の画像を取得しています。こちらも併せてご参照下さい。https://sorabatake.jp/10961/

水中の様子を把握するという意味では衛星には限界があります。浅瀬の状態(深さ)を捉えたり、浅瀬の藻の様子を把握することは可能です。海底の様子を捉えるという意味では異なるかもしれませんが、衛星から海底地図を作成することは可能です。こちらは、海水面の高さが海底の深さと関係があるところから推定し作成されたものです。

参考記事:https://www.researchgate.net/publication/324912051_Current_State_of_Deep_Ocean_Bathymetric_Exploration

・野生の動物なども衛星画像から見えるのでしょうか?

単体の動物を見るのは難しいと思います。人間を見るにも最高峰の解像度30㎝でやっと何とか見えるくらいなので、人間より大きな動物なら見えるかもしれませんが、動いている動物を見るのは難しいのではないかと思います。

群れている動物などなら見えるかもしれないですね。

高分解能な光学衛星画像から、くじらや羊を捉える、ということはされている例があります。野生の動物の場合、保護色になっている場合が多いため、基本的に映らないのですが、羊(や牛)の場合は、牧草に白い個体なので、映る場合があります。

・今年はサンマがあまり釣れていないそうです。釣れなさそうだ、ということを予測することもできるのですか?

魚には、好む温度があると言われています。

そのため、魚がどこらへんにいそうか、ということに衛星データは利用され始めています。

https://sorabatake.jp/5178/
https://sorabatake.jp/5304/

ただし、あくまで環境情報からの推測になるので、直接的に魚を観測できているわけではありません。。そのため、今年はここらへんでサンマ釣るのは難しそうだね、ということは分かるのですが、サンマはまったく釣れないだろうな、という予測をするのはまだ難しいかもしれません。

ビジネス編

・商用の地球観測データって誰(どういう業種の企業)が購入してるんですか?

Credit : EuroConsult Source : http://www.euroconsult-ec.com/research/satellite-value-chain-2018-extract.pdf

こちらEuroConsultというコンサル企業がまとめた資料になります。

・パンクロ単独での衛星データ利用用途ってあるのでしょうか?パンクロのみの利用事例があればご紹介下さい。

パンクロ単独で画像としての用途はあまりないかもしれません。衛星データは元データから画像になっているのではなく数値で取得したデータを画像化しているので、パンクロの画像で利用するより、数値情報を色を付けて可視化した画像データになっていることが多いです。

例えば、地表面温度は赤いところが熱く、青いところが冷たいことがわかるように表現されていたりしますが、白黒の画像にしてしまうとよくわかりにくいですが、色付けすると熱い冷たいがわかりやすくなります。

Tellus編

搭載データ

・Tellusにはどんなデータが載っていますか

Tellusで使えるデータの一覧はTellusマーケットから確認できます。

https://www.tellusxdp.com/market/ja/

JAXAを始めとする政府機関の衛星データの他、衛星データとの組み合わせが様々考えられる地上のデータもご用意しています。

・Tellusのデータは無料で使えますか

商品タイトルに【Tellus公式】と入っているTellusが公開している公式データは無料でご利用いただけます。その他、プロバイダ(データ提供者)が無料で提供しているデータもあります。無料の商品の一覧はこちらをご覧ください。

また、2020年12月より有料のデータの取扱いも開始しています。より多彩なデータをご利用いただけますので、こちらもぜひご覧ください。

・場所や時間毎のデータの有無はどこから確認できますか

Tellusでは2つのデータへのアクセス方法をご用意しています。

Tellus OSではマウスの操作で、任意の場所に移動して、データを検索することで、その地点にいつの時期の衛星データがあるかを確認できます。

統合開発環境では、各データのデータ検索APIからデータの有無を確認できます。

・現在Tellusで提供されている、それぞれの衛星画像について、本日ご紹介頂いた分解能、回帰日数、地方時や、撮影範囲などを一覧で閲覧できるページはありますでしょうか?

現状ございません・・・。あると便利ですよね。

改善要望としてご意見承ります。

・海外領域の衛星画像はありますか

Tellusでは日本周辺の衛星画像から順次整備を進めていますが、日本以外の衛星画像もご用意しています。

Landsat-8など、広域撮像を得意とするデータは世界全域を撮影していますのでご利用ください。

・最新のデータはありますか

最新のデータも順次搭載しています。

詳細はTellus OSまたはデータ検索APIでご確認ください。

・Tellusの衛星データでやってよいこととだめなことを教えてください

Tellusでは原則、データそのものをTellus外へ持ち出すことができません。

なんらかの形でデータを処理・加工して「二次成果物」の形にしていただく必要があります。

「二次成果物」については、適切なクレジットを付与していただいた上で自由にご利用いただけます。「二次成果物」を商用利用される場合には事前にTellusへご相談ください。

詳しくは以下の資料をご覧下さい。

https://www.tellusxdp.com/docs/secondary-product.pdf

・離島や地方のASNARO-1画像が入る予定はありますか

撮影範囲は増やしていきたいと考えておりますが、ASNARO-1のような高解像度の衛星画像は1枚あたりの撮影範囲が狭く、日本だけでも全域をカバーするのは困難であるのが現状です。

一方、Tellusでは広域撮像を得意とするPALSAR-2AVNIR-2Landsat-8などの衛星画像もご用意していますので、合わせてご利用をご検討ください。

・ASNARO-1の撮影頻度、費用を教えてください

ASNARO-1はリクエストベースで撮影を行っているため、撮影頻度はまちまちです。

Tellusで公開されていないデータの購入を希望される場合には、Tellusのお問い合わせ窓口よりご連絡ください。

・衛星画像と地図がずれているものがある

衛星の特性により、地図と重ね合わせた際に位置がズレて表示されるものもあります。

・Tellus OSのマイライブラリで見ることができる衛星画像は、複数のデータを重ねて(混ぜて?)合成したもの、ということでしょうか?

ありがとうございます!はい、そうなります。

マイライブラリで画像を選んでいただくと、一般的なカラー画像がご覧いただけるかと思います。

これは、赤と青と緑の3つのデータをあらかじめ重ねて表示したものになっています。

これに対し、Tellus OS上でもブレンドできるようになっておりますので、ぜひ試して見てください!

[詳細]ボタンから、バンドを選択できるようになっておりますので、適当にいじってどうみえるのかを試していただければと思います。

プリセットもあります。

編集長の中村が、センチネルを使って桜が見えるかためてしてみた記事はこちらです。

衛星から桜は見える! 衛星画像を使った桜の探し方

・オリジナルデータへのアクセス方法

2021年1月現在、Tellusでは3種類の衛星データについて、衛星データプロバイダが配布しているオリジナルデータをAPIで公開しています。

・PALSAR-2
https://www.tellusxdp.com/docs/api-reference/palsar2-files-v1.html

・AVNIR-2
https://www.tellusxdp.com/docs/api-reference/avnir2-files-v1.html

・ALOS-3相当データ
https://www.tellusxdp.com/market/tool_detail/de3c41ac-a8ca-4170-9028-c9e1a39841e1/42eaa038-2c42-4c3e-9f15-c107a2e78206

各データの詳細ページに掲載されているAPIリファレンスからご確認ください。

・TellusのAPIが使えません

TellusのAPIは、衛星データ利用のポリシーに基づき、Tellusの開発環境からのみご利用いただけます。まずは、Tellusの開発環境をお申し込みください。

・開発環境を導入する|Tellus How to Use

https://www.tellusxdp.com/ja/howtouse/dev/install_development_environment.html

また、API使用時のトークンはTellusのダッシュボード上で自分で生成していただく必要があります。

・Tellusを使うためのサンプルコードはありますか

Tellusで公開しているデータのサンプルコードは、Tellus のHow to useで公開しています。

・データアクセス方法|Tellus How to use

https://www.tellusxdp.com/ja/howtouse/access/

また、宙畑でも【ゼロからのTellus】というシリーズで、Tellusデータの基本的なコードについて紹介していますので、ご覧ください。

・Tellusの使い方|宙畑

https://sorabatake.jp/tellus/how-to-use/

・開発環境にインストールされているライブラリについて

代表的なライブラリはインストール済みですが、追加でインストールすることも可能です。

Jupyter Notebook画面の `New` > `Terminal` からターミナルを開き、`conda` や `pip` コマンドでインストールを行ってください。

インストール済みのライブラリについては、examplesフォルダ直下にあるREADME.mdをご確認ください。

・Tellusの外から、自分のデータを持ち込んだり、外部のAPIを使ったりすることはできますか

ご利用いただけます。ただし、利用可能なストレージ容量が決まっていますので、その範囲でご利用ください。

・自分で開発したアプリ(API等)を公開する方法を説明しているページはありますか。

プロバイダとしてTellusマーケットで公開していただくことができます(無料/有料)

現時点では個人の方については、個人事業主の方に限定させていただいておりますが、今後拡大してく予定です。

https://www.tellusxdp.com/ja/market-service/provider/guide/provider-guide/

その他

・ASNARO-1や2で見てみて面白い場所はどのような場所ですか?

高解像度の衛星データで面白いのは、スカイツリーや大仏など大きな建造物を探してみるとおもしろいかもしれないですね。あとは建造中の建物のできていく様子を時系列を追ってみていくのも面白そうです

中村編集長のnote カラー衛星画像百景~47都道府県各2枚+おまけ6枚~

https://note.com/kumacosmon/n/n133889ceeb8e

是非ご覧ください。

・一般的に入手できるものは30cmレベルのものが最高クラスとのことですが、自分で人工衛星を打ち上げるとさらに高解像度の画像を入手することができるのでしょうか?

→技術的には可能ではあるものの、法律面や技術面でいくつか乗り越えなければならない観点があります。法律については、リモセン法、という法律に準拠する必要があります。

リモセン法についてはこちらの記事で紹介しています:https://sorabatake.jp/152/

また技術的には、解像度はレンズの直径と軌道高度により決まってきます。直径の大きなレンズを作るのは技術的なハードルがあるのと、軌道高度を下げるには高効率な推進機器を開発する必要はありますが、これらの技術的な課題を乗り越えれば可能になります。

つばめ記事はこちら
https://sorabatake.jp/5592/

まとめ

本記事では、宙畑やTellusのイベントなどで良く質問いただく75の項目について、お答えしました。

衛星データに関する皆さんの疑問は解消されましたでしょうか。

これからも本記事は、皆様からご質問をいただき次第、アップデートしていきたいと思いますので、どしどし質問をお寄せください!