AstraがApollo Fusionを買収。加速するロケット企業の垂直統合戦略【週刊宇宙ビジネスニュース 2021/6/7〜6/13】
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AstraがApollo Fusionを買収。加速するロケット企業の垂直統合戦略
小型ロケット企業のAstraが、電気推進エンジンの開発に取り組んでいるApollo Fusion, Inc.の買収を発表しました。買収額は5000万ドル(約55億円)で、今後技術的及び収益面でのマイルストーンに達した場合、追加で最大9500万ドル(約104億円)がApollo Fusionに支払われる契約となっています。
Astraは2016年に設立された小型ロケット企業で、2020年12月に宇宙空間への到達を果たし、2021年2月にはSPAC(特別買収目的会社)を活用した上場を発表しています。(詳細はこちら:ロケットベンチャーのAstraがSPACを活用して2021年中にNASDAQ市場に上場 【週刊宇宙ビジネスニュース 2021/02/01〜02/07】)
Apollo Fusionは、Googleの社内プロジェクトであった「Project Loon」を率いていたMike Cassidyが2016年に立ち上げたベンチャー企業です。同社はキセノンやクリプトンを燃料とするホールスラスタの開発に取り組んでおり、これまでに、電気推進システムの試験を2,000時間以上実施しています。
Today we announced our planned acquisition of Apollo Fusion to provide launch and space services beyond low Earth orbit. @benjaminblyon shares more details here: https://t.co/20uXIuItFl#AdAstra pic.twitter.com/qT3H53dtY9
— Astra (@Astra) June 7, 2021
Astraは、2021年2月に、今後打ち上げ事業に含めて「Modular Spacecraft Platform」と呼ばれる、ロケットの上段部と搭載する衛星のバスシステムを一部統合させる、いわゆる垂直統合の事業戦略を発表していました。
今回のApollo Fusionの買収も、垂直統合戦略の一環とみられます。
宇宙ビジネスにおける垂直統合型ビジネスモデル
垂直統合とは一般的に、ある企業が自社製品のバリューチェーンに沿って、付加価値の源泉となる工程を取り込むことを指します。宇宙ビジネスにおける垂直統合とは、ロケット開発企業が⾃社のロケットを活⽤して⾃社の⼈⼯衛星を打上げたり人工衛星に関するサービスを展開することを指します。
世界を見渡しても、ロケット企業であるSpaceXが小型通信衛星事業のStarlinkを手掛けたり、小型ロケット界のリーディングカンパニーであるRocket Labが衛星バスのPhotonを開発したり、インターステラテクノロジズが完全⼦会社のOur stars株式会社を設立したり、ロケット×⼈⼯衛星のサービス展開は増えてきています。詳しくはこちらから。(Rocket Lab独自の衛星バスシステムPhoton。更に高まる競合優位性とその狙い【週刊宇宙ビジネスニュース 8/31〜9/6】)(インターステラテクノロジズが人工衛星事業に参入【週刊宇宙ビジネスニュース 2020/12/21〜12/27】)
Astraの創業者兼CEOのChris Kemp氏は、今回の発表にあたり以下のコメントを出しています。
In addition to increasing Astra’s total addressable market for launch services, the acquisition of Apollo Fusion accelerates Astra’s ability to efficiently deliver and operate spacecraft beyond low Earth orbit,
(訳:Apollo Fusionの買収は、市場における我々の打ち上げサービスの価値を向上させるだけでなく、Astraに地球低軌道を超える宇宙機の効率的な提供と運用能力を高めることを加速させます。)
2021年中に商業打上げを予定しているAstra。今後の事業戦略に注目です。