Tellusにて撮像後最短約70分で利用可能な「しきさい(GCOM-C)」の海面水温やクロロフィルa濃度、懸濁物質濃度のデータを無料公開
JAXAの人工衛星「しきさい(GCOM-C)」によって観測された海面水温、クロロフィルa濃度、懸濁物質濃度のデータが、TellusTravelerから利用できるようになりました。撮像後最短約70分で利用可能な準リアルプロダクトのデータと雲の影響を除去し8日間ごとに平均化処理をした時間統計量データが順次公開されます。それぞれどのようなデータなのか詳しく解説します。
記事作成時から、Tellusからデータを検索・取得するAPIが変更になっております。該当箇所のコードについては、以下のリンクをご参照ください。
https://www.tellusxdp.com/ja/howtouse/access/traveler_api_20220310_
firstpart.html
2022年8月31日以降、Tellus OSでのデータの閲覧方法など使い方が一部変更になっております。新しいTellus OSの基本操作は以下のリンクをご参照ください。
https://www.tellusxdp.com/ja/howtouse/tellus_os/start_tellus_os.html
GCOM-Cの準リアルタイムプロダクトと8日間の時間統計量データの提供開始
2022年6月23日、JAXAの地球観測衛星「しきさい(GCOM-C):気候変動観測衛星」によって観測された以下の3種類のデータが、Tellus Satellite Data Traveler(Tellus Traveler)にて公開されました。
・海面水温(SST)
・クロロフィルa濃度(CHLA)
・懸濁物質濃度(TSM)
さらに、それぞれのデータは2種類のプロダクトとして提供されます。
・準リアルタイムプロダクト(観測後最短70分程度~数時間で利用可能なデータ)
・8日間の時間統計量データ(雲の影響を除去し8日間ごとに平均化処理を行ったデータ)
今回は、これらのデータがどのようなデータなのか詳しく解説していきます。
早速データを見てみたいという方は、TellusTravelerをご確認ください。
※データの閲覧にはTellusへのログインが必要です。
しきさい(GCOM-C)とは
しきさい(GCOM-C)は、JAXAが開発し2017年に打ち上げられた地球観測衛星です。
地球温暖化などの気候変動の影響を長期的に調べるため、大気中のちりや雲の状況、海面水温、雪氷、植生の分布など、さまざまなデータを観測しています。
観測データはJAXAのサイトから提供されています。
これまでTellusでは、Tellus OSにてGCOM-Cの海面水温、クロロフィルa濃度、地表面温度、植生指数の一部の期間データを公開していました。
今回、Tellus Travelerにて公開されるデータは、海洋の状況を把握するためにJAXAが提供しているプロダクトの中から、海面水温、クロロフィルa濃度、懸濁物質濃度の3種類の準リアルタイムプロダクトと8日間の時間統計量データとなっています。
それぞれのデータについて簡単に紹介します。
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海面水温(SST)
海上における水面の温度データです。海面の温度を観測することで暖流や寒流などの境目(潮目)などの状況を把握することができます。
クロロフィルa濃度(CHLA)
海面にある植物性プランクトンなどに含まれる光合成色素であるクロロフィルa濃度の分布データです。濃度が高いほど、海面に魚のエサになる植物性プランクトンが多く存在していることになります。
懸濁物質濃度(TSM)
水中に含まれるプランクトンなどの有機物と土壌などの無機物による微粒子の濃度データです。水中の懸濁具合を濃度として把握することができます。
準リアルタイムプロダクトと8日間の時間統計量データについて
海面水温、クロロフィルa濃度、懸濁物質濃度の3種類のデータが利用可能ですが、さらにそれぞれ2つのプロダクトに分かれています。違いは以下の通りです。
準リアルタイムプロダクト
準リアルタイムプロダクトは、観測後最短約70分程度~数時間で公開される解像度250mのデータです。約2日に一度の頻度で全球の最新のデータを利用可能です。
2022年6月23日時点では、2022年3月29日以降のデータを公開しています。データは順次追加していく予定です
8日間の時間統計量データ
GCOM-Cは光学衛星のため、雲があるとその下に隠れてしまう海面や地上を観測できません。8日間分のデータから、雲などの余分なデータを除去し、残りの観測データを平均化することで、8日間分の統計量データとして利用することが可能です。8日間で観測したデータから全球の解像度4000mのデータとして提供します。
2022年6月23日時点では、2022年3月6日以降のデータを公開しています。こちらのデータも順次追加していく予定です。
Tellus Travelerでの検索の仕方
Tellus Traveler上でGCOM-Cのデータを検索し、ダウンロードするまでの手段は以下の通りです。
・Tellusのサイトにアクセスし、ログインする
※会員登録がお済みでない方は、会員登録をお願いします。
・Tellus Travelerを開く
上部の「サービス」の中から「Tellus Traveler」をクリックしTellus Travelerを開きます。
・「衛星データを見る」をクリックする。
・左上の検索アイコンをクリックし、データの一覧を表示させます。
・データの一覧から検索したいGCOM-Cのデータにチェックをいれます。
観測日やAOI(関心エリア)などを指定して検索も可能です。
・検索条件にあうデータが一覧で表示されます。
観測エリアや観測日などを確認し、見たいデータを選択します。
「移動」をクリックすると該当データに画面が移動します。
「詳細」をクリックするとデータの詳細情報を確認することができます。
・データの詳細画面から、「レイヤー表示」で地図上にデータを投影したり、データをダウンロードすることが可能です。
また、APIも公開しています。
Travelerの衛星データリファレンスからご確認ください。
想定される利用例
ここまでTellus Travelerに搭載されるGCOM-Cのデータについて紹介しましたが、どのような利用方法があるかいくつか紹介します。
季節や気候変動による海洋情報の把握
海面温度やクロロフィルa濃度のデータを定期的に調べることで、季節や気候変動による海洋の変化を把握することができます。
海面温度や植物性プランクトンの分布は、季節によって変化しているのか地球温暖化などの気候変動によって変化しているのか、地球規模での海洋の状況を知ることができます。
また、工業廃棄物など人的な影響による海洋の状況変化を懸濁物質濃度から推測することもできるかもしれません。
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漁業における効率的な操業計画の作成
漁業者にとって、漁場(魚のいる場所)のあたりをつけて効率的に操業計画を作成することができれば、船舶の燃料削減や適切な漁獲量の推測など多くのメリットにつながります。
魚のエサになる植物性プランクトンの分布を確認し、魚が集まりやすい場所を海面温度や懸濁物質濃度などから推測することで効率的な操業計画の作成が可能になります。
また、観測後数時間で利用できるデータ準リアルタイムデータがあれば、操業を開始する前にデータを確認し操業計画を微調整したうえで、より精度の高い漁獲量計画を立てることが可能になるかもしれません。
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最後に
Tellus Travelerには、GCOM-Cのほかにもさまざまな光学衛星、SAR衛星のデータが搭載されています。利用用途に合わせて衛星データを使い分けたり、組み合わせたりすることで新たな利用方法が見つかるかもしれません。
データを見ながらいろいろな仮説を立ててビジネス利用の可能性を考えてみてはいかがでしょうか。
Tellus Travelerで衛星データを見てみる
※データの閲覧にはTellusへのログインが必要です。