衛星データで見るCOVID-19による経済活動への影響【週刊宇宙ビジネスニュース 3/16〜3/22】
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新型コロナウイルス感染症(COVID-19)に対処すべく、東京都の新型コロナウイルス感染症対策サイトや東洋経済オンラインなど、状況を可視化しているサイトが多くあります。
データサイエンス分野では、KaggleやSIGNATEがそれぞれコンペを開催しています。
・COVID19 Global Forecasting (Week 1)
・COVID-19チャレンジ(フェーズ1)
このような中で、衛星データを通して経済活動の状況を可視化している事例もいくつかあるので、まとめてご紹介します。
高分解能光学衛星により経済活動状況の変化を確認
まずは下記の記事から。
Coronavirus slowdown seen from space https://www.bbc.com/news/world-51948578
Phoenix City airportのレンタカーの様子です。3/5には多くの車がレンタルされていたのに対して、3/20には駐車場が埋まっており、ほぼレンタルされていない、つまり利用者がほぼいないことが分かります。
次にこちらの記事から。
‘Before and after’ satellite images show places like Tokyo Disneyland and Mecca deserted thanks to coronavirus—take a look
https://www.cnbc.com/2020/03/10/satellite-photos-sites-around-the-world-deserted-due-to-coronavirus.html
こちらはモスクの中心、カーバ神殿の様子です。図中で黒く見えているのは人影です。
2/14には人が密集しているのに対して、3/3は閑散としているのが分かります。
こちらの記事では東京ディズニーランドの様子も紹介されています。
上記に比べると撮影範囲は狭いのですが、閉園の影響により人影がなくなっているのが分かります。
他の地点の撮影結果なども含めて、Geospatial WorldやSouth China Morning Post
が動画にまとめているのも分かりやすいです。
高分解能写真を通した分析結果から、企業の経済活動状況を確認
衛星データ分析企業であるOrbital Insight社が、解析事例を多くブログに公開しています。
マスクの生産工場の稼働状況や空港の利用状況、エネルギーの利用状況、経済活動が戻ってきている様子などの分析結果を公開しています。
グラフ化されており、分かりやすくまとめられているので、詳しくは同社のサイトでぜひ。
NO2の観測結果から経済活動状況の変化を確認
New York Times始め、様々な企業がNO2の観測結果を元に記事を公開していたため、ニュースを通して、下記のような画像をご覧になった方は多くいるのではないでしょうか。こちらはNASAのサイトで公開されたものです。
この結果は、欧州宇宙機関(ESA)が運用中のSentinel-5衛星から観測された、二酸化窒素(NO2)濃度です。コロナウィルス発生後は工場の稼働も止まり、大気が綺麗になっていることが分かります。
こちらのデータは無料で公開されているので、興味を持たれた方はご自身でもぜひ確認してみてください。
NASAのデータを見るにはWorldViewが便利です。
こちらのリンクから下記のデータを確認できます。
ESAのデータを見るにはEO Browserが便利です。
こちらのリンクから下記のデータを確認できます。
解析を試してみたい方は、Google Earth Engineを用いて大気の状態を比較している例も公開されているので、見てみると良いでしょう。
その他のデータ
大気情報を扱ったものとして、他にはエアロゾルと罹患者数に相関があるのではないか?という論文が紹介されています。エアロゾルは先ほどご紹介したEO Browserからも確認できます。各国の罹患者数は公開されているので、その数とエアロゾルの相関を確認してみる、というのをご自身で試してみるのも良いかもしれません。
https://apps.sentinel-hub.com/eo-browser/?lat=33.10&lng=112.68&zoom=4&time=2020-02-29&preset=AER_AI_340_AND_380_VISUALIZED&datasource=Sentinel-5P%20AER_AI
上記EO Browserでは、河川/海の観測情報も公開されています。Sentinel-3を選択することで表示可能です。
中国上空の2月末から3月頭は被雲率が高く、残念ながら何かしらの相関値を見ることは難しそうですが、他の地域では何かしら確認できるかもしれません。
また、経済活動状況を表すのに良く利用される衛星データとして、夜間光の情報があります。こちらのデータについてもご自身で確認できますので、ご興味あれば先ほど紹介したWorldViewのサイトでぜひご覧ください。
こちらは目視では変化が少し捉えにくいかもしれません。
他にも、航空機や船舶の運行情報も公開されています。
「ヨーロッパからの入国を30日間禁止。アメリカのトランプ大統領が声明」でも話題となりましたが、輸送関連での影響も多く生じていると思われるため、このような情報も合わせて見てみると良いでしょう。
余談ですが、航空機や船舶から直接取得できない洋上での位置情報は、衛星を経由している場合が多くあります。
無料で公開されているデータは他にも多くあります。衛星からの観測情報の場合には、上記で紹介したもの以外には二酸化炭素排出量や、河川のクロロフィルの情報を見るのも良いでしょう。
地上の統計情報と組み合わせて、自分なりの分析にチャレンジしてみるのも良いかもしれません。
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