【25,000字保存版】PESTで振り返る2020年の宇宙ビジネスニュースまとめ
2021年最初の記事は、毎年恒例となっている宙畑編集部による昨年のニュースの振り返りと2021年のビジネス予想です。
あけましておめでとうございます。
旧年中、宙畑をお読みいただいた全ての皆様に感謝いたします。
本年もより良い情報を皆様にお届けできるよう、宙畑一同精進していきたいと思いますので、どうぞよろしくお願いいたします。
さて、2021年最初の記事は、毎年恒例となっている宙畑編集部による昨年のニュースの振り返りと2021年のビジネス予想です。
休暇中の読み物としてご活用ください。
(1)はじめに
私たちは、2020年がどのような1年になると予想していたか
「2019年、宇宙ビジネス業界で何が起こったか~7つのトピックで振り返り~」のまとめの章にて、1. 民間による有人宇宙飛行、2. 企業の上場、3. 通信コンステレーションがどうなるか、の3つのトピックについて注目していきたい、と私たちは述べていました。
2020年はCOVID-19の影響もあり、計画が後ろ倒しになるプロジェクトが多くありましたが、それぞれについて簡単に振り返ってみましょう。
民間による有人宇宙飛行
まず、民間による有人宇宙飛行については、SpaceXの有人宇宙船Crew Dragonが2回、国際宇宙ステーションへと打ち上げられました。商用打ち上げの初号機には、日本人の野口宇宙飛行士が搭乗したこともあり、このニュースを見た方も多かったのではないでしょうか。同じく2020年に国際宇宙ステーションへの打ち上げを想定されていたBoeing社のStarlinerや、サブオービタルを提供するVirgin Galactic社は残念ながら人を載せて飛行することはありませんでしたが、いずれも2021年には打ち上げを予定しています。有人宇宙分野に関する話題としては、他にトム・クルーズ氏が国際宇宙ステーションで映画撮影を発表したり、ロシアが長編映画撮影を発表したり、といったニュースも話題になりました。
企業の上場
次に、企業の上場については残念ながらありませんでした。しかしながら、Momentus社とAST & Science社はそれぞれ2021年に上場することを発表し、Voyage Space社やRedwire社を始め、様々な企業による複数の企業買収があったりと、2021年にはIPOする企業がいくつか出そうなことを予感する報道がありました。AST & Science社は、楽天が大型出資し、戦略的パートナーを締結したことでも話題になりましたね。他にも、三井物産株式会社が、衛星ライドシェアサービスを提供するSpace flight社を買収したことも大きく話題となりました。
通信コンステレーション
最後に、通信コンステレーションについて。SpaceX社のStarlinkは2020年で14回打ち上げられ、軌道上にある衛星機数は955機になりました。ベータ版の提供もアメリカで開始され、サービスインに向けて順調に進んでいます。2020年3月にChapter11(破産手続き)を申請したOneWeb社は、7月3日に英国政府とBharti Global社により買収、12月には36機の衛星を打ち上げ、見事復帰を果たしました。2021年には英国、アラスカ、北ヨーロッパ、グリーンランド、アイスランド、北極海、カナダに向け、2022年には全世界でサービスの提供を開始する計画です。
2020年のニュースをPESTで振り返る
2020年は100本以上の記事、数百の話題を宙畑でも提供しました。読者の皆さまの印象に残ったのはどの話題でしたか?
2019年は分野別に宇宙ビジネスを主に技術的な観点から振り返りました。しかしながら、宇宙ビジネスを形作るのは技術だけではなく、法律や政治的な側面による影響も大きく受けます。そこで、2020年は複数の観点から振り返るべく、PEST(Politics(政治)、Economy(経済)、Society(社会)、Technology(技術))の観点から振り返っていきます。
(2) Technology(技術)
まずは、宇宙ビジネスにおいてよく注目される「技術」について振り返っていきたいと思います。各分野で様々な技術の進展がありました。
ロケットベンチャーが次々と軌道へ
創業4年の新興ロケットベンチャーAstraが宇宙空間に到達!
2016年創業の新興ロケットベンチャーであるAstraが、2020年12月15日に宇宙空間への到達を達成しました。今回の成功をうけて、民間企業単独で開発した液体ロケットエンジンで宇宙空間に到達した事例としては、世界で5社目となりました。
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Rocket Labがロケット第一段の回収に成功
小型ロケット業界のリーディングプレイヤーであるRocket Labが、2020年11月19日に”Return to Sender”という名称で挑んだ16回目のElectronミッションにおいて、ロケット第1段の回収に挑み無事に成功しました。
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Galactic Energyが中国で2社目の民間で軌道投入に成功した企業に
中国のロケットベンチャー企業であるGalactic Energy(正式名称はBeijing Xinghe Dongli Space Technology Co. Ltd.)が、2020年11月7日にゴビ砂漠付近の酒泉衛星発射センター(Jiuquan Satellite Launch Center)から固体ロケットCeres-1を打ち上げ、無事に軌道投入に成功しました。
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最新技術を搭載する衛星技術
軌道上で3Dプリンターの実験に成功
中国は2020年5月6日新型の有人宇宙船のプロトタイプを打ち上げました。
宇宙船の中に3Dプリンターを搭載し、炭素繊維強化ポリマーを使った3Dプリンターでの製造を世界で初めて成功させました。
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衛星内の配線を無線で実装
2020年11月7日、Shanghai ASES Spaceflight Technology Co. Ltd.(上海埃依斯航天科技有限公司)が開発した50kg級の小型衛星Tianqi-11が打ち上げられました。
この衛星は、無線による搭載機器間のデータ伝送を採用しています。通信ケーブルがないことで、軽量化や小型化できる他、組み立てやすくなるなどのメリットがあります。
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Spireが超小型衛星間の通信を目指す
超小型衛星を打ち上げ、船舶の位置情報(AIS)や気象情報などを提供するSpire Globalは、今後数カ月の間に「衛星間通信機能」を備えた衛星を打ち上げ、すでに90基を超えているコンステレーション衛星群を、最終的に同機能を持った衛星に置き換えていく計画を明らかにしました。
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軌道上での商用衛星間のドッキングに世界で初めて成功!
2月25日に、軌道上サービスを計画しているNorthrop Grummanと同社の完全子会社のSpaceLogistics LLCが製造したMission Extension Vehicle-1(MEV-1)が通信衛星であるIntelsat 901と軌道上でドッキングすることに成功しました。
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ロボットアームを搭載した小型宇宙機の共同開発を発表
こちらはまだ計画段階ですが、宇宙空間で使用可能な3Dプリンター開発のパイオニアで、Redwireの子会社であるMade In Space Europeと宇宙輸送サービスを展開するMomentusが、ロボットアームを搭載した宇宙機を共同開発し、2022年に宇宙に打ち上げる計画を発表しました。
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衛星データは高付加価値化へ
世界初のSARデータの動画を公開
フィンランドの小型合成開口レーダ(SAR)衛星事業を展開するベンチャー企業のICEYE社はSARデータの動画を公開しました。動画で様子を捉えられることで、動いている物体の分析などに役立つを考えられています。
さらにICEYE社は解像度25cmという極めて詳細な画像も公開しています。
SARデータのリアルタイム伝送を実現
同じくSAR衛星のコンステレーションを構築・運用するアメリカのCapella Space(カペラ・スペース)は、複数の方法を使って、衛星で撮影したSARデータを如何に早く地上にダウンロードしてこられるか、に挑戦していました。
同社は、Amazonが展開する地上局サービス「AWS Ground Station」を使って数分以内の画像公開が可能となったことを発表しました。
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また、別の試みとしてInmarsat(インマルサット)が提供する衛星間通信によるデータ中継システム(IDRS)を用いて、撮影依頼からデータの取得までをリアルタイムで実現することに成功したことを発表しました。IDRSは、24時間365日利用可能なデータ接続サービスを提供していて、200Kbpsでのデータ転送が可能です。
SARデータは雨や夜間に強いことが利点ですが、リアルタイム性も兼ね備えることで利用用途がさらに広がることが予想されます。
開発が進む月面探査・火星探査
アルテミス計画の月面着陸船のレビューが完了
米国が進める月面計画アルテミス計画における、月面有人着陸システム(Human Landing Systems,通称HLS)に新たな進展がありました。
2020年4月に、Blue Originを主契約者とする、Lockheed Martin、Northrop Grumman、Draperの連合チーム、Dynetics、SpaceXの3社が選定されました。
8~9月にはBlue OriginとDyneticsはそれぞれ月面着陸船のモックアップを公開し、NASAのシステム要件レビューと技術ベースラインレビューを完了しました。
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中国、嫦娥5号で月面サンプルリターンに成功!
12月17日、中国国家宇宙局(China National Space Administration 通称CNSA)は、無人月面探査機「嫦娥5号(Chang’e 5 )」が、月の土壌を採取し、地球へ持ち帰るサンプルリターンに成功したことを発表しました。
この成功によって、中国は世界で3番目に月のサンプルリターンに成功した国となりました。2019年1月にも中国は、嫦娥4号を世界で初めて月の裏側への着陸に成功させ、世界へ宇宙開発技術の高さを誇示しました。
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中国が本格的な火星探査に挑戦
中国航天科技集団(CASC)が、火星探査機”天間1号”を搭載した長征5号の打ち上げに成功しました。天間1号は、火星周回機・着陸機・探査ローバ―の3つから構成されています。
天間1号は2021年2月に火星周回軌道に投入され、その数か月後に火星最大のクレーターにあるユートピア平原に着陸予定です。
天間一号の火星周回機は火星の1年(地球日数687日)稼働する予定で、90日間の探査を予定している探査ローバーにはNASAの火星探査機キュリオシティと同水準の機器が搭載され、本格的な火星探査と言えます。
火星の地面を走行する探査機を打ち上げ、着陸まで成功させた国は米国しかありません。来年以降、深宇宙探査においての中国のプレゼンスが増していくことでしょう。
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民間の有人宇宙飛行が大きな一歩を達成!
SpaceXが有人打上げに成功、サービスを開始
5月30日午後3時23分(日本時間5月31日午前4時23分 )、フロリダのNASAケネディ宇宙センターから、SpaceXが開発した有人宇宙船Crew Dragonが打ち上げられ、国際宇宙ステーションへNASAの宇宙飛行士が2名が輸送され、無事帰還しました。
この打上げは、スペースシャトルの引退から9年振りのアメリカ本土からの有人飛行となりました。
また、2020年11月16日には野口聡一宇宙飛行士が搭乗したCrew Dragon打ち上げられ、本格的な有人輸送サービスが始まりました。
(3) Economy(経済)
続いて振り返るのは、経済的な視点です。ビジネスの視点で2020年どのようなニュースがあったのかを振り返ります。
明暗が分かれるロケット市場
基幹ロケットH3の打ち上げは2021年に
JAXAが、2020年内を予定していた日本の新型ロケットH3の試験機初号機の打ち上げを2021年度に延期することを発表しました。現在運用されている基幹ロケットH-ⅡA及びH-ⅡBの改良版であるH3は、打ち上げの柔軟性を高めな がら既存の価格の半分の約50億円を目標としており、期待されています。
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欧州の小型ロケットVegaの失敗
欧州のロケット打ち上げプロバイダーであるArianespaceが手がける小型ロケットVegaが打ち上げに失敗し、打ち上げ再開はまだ目途が立っていません。2012年の打ち上げ以降Vegaは成功率100%を誇っていたのですが、2019年7月と2020年11月と失敗が続いており、詳細な原因究明が求められています。
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Rocket Labが衛星会社を買収し、衛星バスの供給開始
小型ロケット界をけん引するRocket Labが、3月に衛星ハードウェア企業のSinclair Interplanetaryを買収し、8月30日に実施したRocket Labの14回目の打ち上げミッションで、衛星の通信や電源など基本的な部分(バスシステム)Photonの軌道投入に成功しました。
Rocket Labは今後Photonを活用して、月や金星を目指す深宇宙ミッションにも挑戦する予定です。
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Relativity Spaceが大型資金調達に成功
3Dプリンターを活用したロケット製造に取り組んでいるRelativity Spaceが、シリーズDラウンドの資金調達で5億ドルを調達しました。
同社の累計調達額は7億ドルに達し、評価額は宇宙ベンチャーの中ではSpaceXに次ぐ23億ドルとなりました。
同社が開発中のロケットTerran1の初打ち上げは2021年2月を予定しており、2021年内には商用打ち上げを開始する予定です。
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Capella Space 衛星間通信を用いて画像のリアルタイム取得に成功【週刊宇宙ビジネスニュース 2020/11/23〜11/29】
NanoracksがVoyager Space Holdingsの傘下へ
ISSからの衛星放出など低軌道利用の商業利用のパイオニア存在のNanoracksが、2019年以降、宇宙企業の買収を多数実施しているVoyager Space Holdingsの傘下に入りました。Nanoracksは12月にISSに初の民間商用エアロックの設置も実施しており、低軌道利用の商用化を進めています。
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三井物産が衛星ライドシェアサービスを展開する米国のSpaceflightを買収
2020年2月、ロケットの相乗り斡旋を行う 米国のSpaceflightを、三井物産が買収したという発表がありました。三井物産は宇宙領域を新たな成長分野の一つと位置付けており、宇宙へのアクセス需要の成長を見込んで買収を行ったようです。
衛星ライドシェアサービスを展開する米国のSpaceflightを買収
企業の統合や新プレイヤーの参入が目立った衛星製造分野
Lockheed MartinがAerojet Rocketdyneを買収
軍用機メーカー大手のLockheed MartinがAerojet Rocketdyneを44億ドルで買収することを発表しました。Aerojet Rocketdyneは、宇宙分野ではNASAの次世代大型ロケットSLS(Space Launch System)のRS-25エンジンの製造や衛星・探査機の推進器の製造を行っている、推進機メーカーであり、防衛分野ではミサイルの推進器の製造を行っています。
今回の買収で、Lockheed Martinは米国および同盟諸国の安全保障の支援を強化するとしており、防衛分野での統合が中心のようですが、宇宙分野でも統合による技術力の強化が期待されます。
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小型衛星製造業のビジネス化
今年は、小型衛星製造に取り組む企業のビジネストピックも多かった一年でした。
超小型衛星を開発するAAC Clyde Spaceは、姿勢制御機器など超小型衛星関連技術を有するHyperion Technologiesを約260万ドルで買収しました。その他、小型衛星を開発するSpaceQuestも840万ドルで買収しています。
小型衛星を開発するYork Space Systemsは、2021年には週20機の衛星が開発できる新しい工場をオープンさせました。同社は、小型SAR衛星で有名なICEYEの機体開発や、オーストラリアの地球観測系のベンチャーLatConnect 60の小型衛星の製造と運用も受注しています。
また、今年6月に年間100機の衛星製造能力を有する新工場のオープンを発表した小型衛星を製造するBlue Canyon Technologiesは、Raytheon Technologiesに買収されました。
来年以降も、衛星製造に強みのある企業のビジネスニュースが増えそうです。
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ITジャイアントも参入する衛星地上システム分野
Microsoftが宇宙ビジネスに参入
ITジャイアントであるMicrosoft CorporationがAzure Spaceという衛星通信サービス事業の展開を発表しました。Azure Spaceでは、Microsoftが展開するAzureのクラウドを、SpaceXが提供するStarlinkや通信衛星大手のSESが提供するO3bに接続させることも可能になる想定です。
※Azureとは、Microsoftが提供するクラウドプラットフォームの名称です。
Microsoftの狙いは、多くの衛星がAzureに接続されることを活用して、様々なシナリオでクラウドコンピューティングを活用できるようにし、顧客が衛星データからより多くの知見を得ることでしょう。
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Amazonが宇宙ビジネスに本格参入
同じくIT界の巨人であるAmazonが、Aerospace and Satellite Solutionsという名称の宇宙事業専門部署を新設し、本格的に宇宙ビジネスに本格参入しました。同社は2018年に、世界各地に所有するAWSのデータセンターとその近くに設置した衛星通信アンテナを活用して衛星とのデータの送受信を容易にする、AWS Ground Stationを発表しています。今回の新部署では、AWS Ground Stationを基盤にサービスを展開していくようです。
地上システム市場に、MicrosoftやAmazonといったITプレイヤーが参入したことで、衛星データ利用のダウンストリーム側の利用者の増大が見込まれ、宇宙ビジネス全体の活性化が期待されます。
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衛星データは利用用途を拡大
アメリカの地球観測ベンチャーは政府機関の契約が相次ぐ
地球観測衛星を打上げ、コンステレーションを構築しつつあるアメリカの小型衛星ベンチャーは2020年、アメリカの政府機関の契約が相次ぎました。
・NASAはPlanet Labsの地球観測画像に7億円(2020年4月17日)
・BlackSkyはコロナウイルスの影響監視で米空軍と契約を締結(2020年7月21日)
・BlackSkyは米陸軍と契約を締結、2022年に高解像度の衛星を追加へ(2020年9月24日)
・米国国家地理空間情報局(National Geospatial‑Intelligence Agency 以下NGA)は、Planet LabsとBlackSkyの衛星画像を国防省やインテリジェンス・コミュニティなどが利用する地理空間情報システムに追加することを発表(2020年11月5日)
・GeoOpticsとSpire Globalはアメリカ海洋大気庁(NOAA)と気象データの契約を締結(2020年11月23日)
実際にデータが提供されるフェーズに入り、政府機関が実用に足ると判断しているということは、NEW SPACEとして良い流れと言えるでしょう。
一方で、ある調査によると、アメリカの政府系の投資額が横ばいであり、世界の遅れをとっているという指摘や、アメリカの地球観測データ(特にSARデータ)の規制が厳しい点がアメリカでのSARコンステレーションの発展を遅らせているという指摘も出ており、2021年アメリカ政府がさらなる支援に乗り出すか、注目です。
商用衛星データのオープンイノベーションの流れ
もう一つの流れとして、商用の衛星データを用いたオープンイノベーションがあります。
SpaceNetという衛星画像コンペでは、商用の衛星データを用いて参加者が機械学習の精度を競っています。2020年はSpaceNet6とSpaceNet7の2回のコンペが開催され、 Capella Space、MAXAR、Planetの商用画像が提供されました。
こういった機会を通して、衛星データがデータサイエンティストの目に触れることによって、新しい衛星データの利用用途が広がっていくことが望まれます。
また、ノルウェー政府が支援しているNorway´s International Climate and Forest Initiative(NICFI)が、Airbus・Planet Labs・KSATの3社と合計4400万ドルの契約を結び、違法伐採に悩む64ヶ国の熱帯林画像が無料公開されることになりました。
SDGsにますます注目が集まると思われる2021年、衛星データはさらに広い範囲で活躍することでしょう。
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破産や上場など、ダイナミックな動きの多かった通信衛星市場
OneWebが破産を経て新しい株主のもとで復活
低軌道通信衛星コンステレーションに挑むOneWebにとっては、2020年は激動の一年でした。
OneWebは2020年3月に、米国ニューヨーク南部地区連邦破産裁判所に米国破産法第11章(Chapter11)に基づく救済を申請し、従業員約500人を全員解雇しました。
その後2020年7月に、インドの大手通信企業Bharti Globalと英国政府がそれぞれ5億ドルを出して買収しました。2020年11月には買収の手続きが完了し、破産保護状態を脱しました。そして2020年12月には新しい通信衛星36機の打ち上げに成功しました。
OneWebの破産報道は衝撃でしたが、新たな株主のもとで通信衛星コンステレーション構築にむけて再び歩み出しています。
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SpaceXのStarlinkがβ版提供開始
SpaceXが、並行して進めている衛星通信サービス事業Starlinkのβ版の提供を米国とカナダで開始させましたサービスを使用するには、初期費用のハードウェア代499ドルのほか月額99ドルを支払う必要があります。
2019年の初打ち上げ以降Starlinkを約900機を打ち上げており、SpaceXは2020年に米国、2021年には世界中でサービス提供を開始すると発表しています。
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Starlinkアプリ ベータ版をローンチ。年内に北米でのサービス提供開始【週刊宇宙ビジネスニュース 2020/10/26〜11/1】
衛星通信サービス大手Intelsatが破産申請
衛星通信サービス大手のIntelsatが、米国破産法第11章に基づく会社更生手続きの適用を申請し、150億ドルまで膨れ上がっていた債務の半分を解消しました。同社は1965年に商用通信衛星の打ち上げに世界で初めて成功した老舗企業ですが、同社の株価は2019年末から下落しており、業績不振が各所から囁かれていました。
2020年8月末には、Intelsatは破産保護状態から脱却する再生計画の一環として、機内wifiに取り組むGogoを4億ドルで買収しました。今後、まずは破産保護状態を脱することが同社にとっての目標となっています。
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低空飛行が続いていたIntelsatがチャプター11を申請【週刊宇宙ビジネスニュース 5/12〜5/17】
AST&ScienceがSPACを利用して上場へ
携帯電話から直接アクセス可能なブロードバンドネットワークの構築に取り組むAST & Science LLCが、SPAC(特別買収目的会社)であるNew Providence Acquisition Corp. による買収と経営統合を経て、2021年第一四半期にNASDAQへ上場する予定です。今回の買収でAST&Scienceは2億3200万ドルの資金を獲得し、上場と当時に社名をAST SpaceMobileと変更することを発表しました。
AST&Scienceには楽天がシリーズBラウンドで投資をしており、楽天モバイルとの共創も期待されています。
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創業4年の新興ロケットベンチャーAstraが宇宙空間に到達!【週刊宇宙ビジネスニュース 2020/12/14〜12/20】
大きな資本が投下され、来年以降も加速が期待される軌道上サービス
MomentusがSPACを利用して上場へ
小型小型衛星向けの推進機器を開発し、ロケットから放出された後に小型衛星を特定の軌道まで輸送する”軌道投入のラストワンマイル”に挑んでいるMomentusが、SPAC(特別買収目的会社)であるStable Road Acquisition Corp.による買収と経営統合を経て、2021年第一四半期にNASDAQへ上場する予定です。今回の買収で、Momentusは約3億1,000万ドルを獲得しました。
上述のAST&Scienceも活用したSPACを利用した上場は、近年ベンチャー界隈で注目されている上場手法です。他の業界で注目されているビジネス手法が宇宙ビジネスでも活用されていることは、民間宇宙産業への注目のあらわれといえるでしょう。
Momentusは今年、超小型衛星のフォーメーションフライト管理サービスを提供する英国企業のOrbAstroとのサービス提携を発表するほか、SpaceXが提供する相乗りサービス”SmallSat Rideshare Program”の購入を発表するなど、企業としての飛躍を感じる一年でした。
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RedwireがMade In Spaceを買収
宇宙空間で使用可能な3Dプリンター開発のパイオニアであるMade In Spaceが、軌道上サービスに関するコア技術を有するベンチャー企業の買収を進めるRedwireに買収されました。Made In SpaceのCEOは、RedwireのCOOに就任することが発表されており、Made In Spaceの事業はそのまま継続される見込みです。
Redwireは、航空宇宙や防衛に特化したPEファンドであるAE Industrial Partners,LPが 6月初旬にAdcole SpaceとDeep Space Systemsをそれぞれ買収した後に統合して設立された企業です。
Redwireは本件と合わせて2020年内に5社の買収を実施しています。
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サービスイン目前の有人宇宙ビジネス
Virgin Galactic 新CEOに元ディズニー幹部が就任
有人宇宙旅行に挑むVirgin Galacticが二代目のCEOとして、Disney Park Internationalで社長兼ディレクターを務めていたMichael Colglazier氏を迎えたことを発表しました。
2019年にSPAC(特別買収目的会社)を活用してニューヨーク証券取引所への上場も果たしたVirgin Galacticは、有人宇宙飛行目前とみられています。有人宇宙旅行という体験を顧客に届けるVirgin Galacticにとって、技術開発だけでなく、顧客に感動を届けるサービス設計も重要視されていることを、今回の人事戦略から感じとることができます。
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Virgin Galactic 新CEOにディズニー幹部のコルグラジア氏が就任【週刊宇宙ビジネスニュース 7/13〜7/19】
Bigelow Aerospaceが社員全員を解雇
独自の宇宙ステーションを活用して宇宙ホテル事業に取り組んでいるBigelow Aerospaceが、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)のパンデミックを受けて約80名の全従業員を解雇しました。
ラスベガスのホテル王であるRobert Bigelow氏が1998年に設立したBigelow Aerospaceは、2013年にISSの拡張可能なモジュールの製造開発および実証実験を行う契約を締結したことで注目を集めましたが、NASAによる次世代宇宙探査技術パートナーシップ(NextSTEP)の一環であるISSの商用の居住モジュール構築プログラムは辞退しています。同社は今後、月軌道ゲートウェーの居住モジュール構築に携わっていく姿勢を見せています。
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成層圏気球を用いた模擬宇宙旅行ベンチャーが誕生
有人宇宙ビジネスに、また新たなベンチャー企業が加わりました。
無人気球の開発に取り組んでいたWorld Viewの創業メンバーが、成層圏気球を用いた模擬宇宙旅行事業に取り組むべくSpace Perspectiveを創業しました。同社が開発するSpaceship Neptuneと呼ばれる成層圏気球で、8名の乗客に6時間の成層圏から地球を見る体験を提供します。搭乗費用は、1人12万5000ドルを予定しています。
また同社は、2020年12月にシードラウンドの資金調達で700万ドルを獲得したことを発表しています。
Space Perspectiveは2021年第一四半期に最初の試験気球を打ち上げ、2024年に商業飛行を実現させる予定です。
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Space Perspectiveが成層圏気球による旅行事業を発表【週刊宇宙ビジネスニュース 6/15〜6/21】
(4)Politics(政治)
ビジネスが世界規模で行われる宇宙産業では、政治の動きにも注目して見ていく必要があります。
宇宙ビジネス・宇宙開発加速を推し進める各国施策
商業打ち上げの規制緩和をFAAが発表
米国の連邦航空局(FAA)は、10月に「商業ロケットの打ち上げと再突入に関する規則」を改訂したことを発表しました。
改訂版では、官民を問わず、あらゆる仕様のロケット運用において、共通のライセンスと安全規約が適用されることになります。商業打ち上げが大幅に効率化されるのではないかと考えられます。
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FAAが商業打ち上げに関する規則を改訂。規制緩和で市場拡大を後押し【週刊宇宙ビジネスニュース 2020/10/12〜10/18】
中東初 火星探査機「HOPE」が種子島宇宙センターから打ち上げ
7月、UAE(アラブ首長国連邦)の火星探査機「HOPE」がH-ⅡAロケットで種子島宇宙センターより打ち上げられました。HOPEは、UAE建国50周年を迎える2021年に火星に到着し、周回して気象や大気の観測を行う計画です。また、UAEは、9月にハザ・アル・マンスリー氏がISSに滞在し、同国初の宇宙飛行士が誕生しました。さらにUAEは、2024年までに月面探査車の打ち上げる計画も発表していて、宇宙開発に対する積極的な姿勢が伺えます。
米宇宙軍、日本との協力体制構築に意欲
米国の宇宙軍(Space Force)は、トランプ大統領の大統領令により、2019年12月に創設されました。米宇宙軍初の任務は、2020年1月に実施されたSpaceXのStarlink衛星の打ち上げの監督でした。
8月には、宇宙軍作戦部長のジョン・レイモンド氏が訪日し、安倍前総理と会談を行いました。さらに12月には、宇宙開発戦略推進室と米宇宙軍が覚書を交わし、2023年と2024年に打ち上げる準天頂衛星システムに光学センサが付いたペイロードを搭載するとのことです。
https://jp.usembassy.gov/ja/space-force-2020/
日本では宇宙作戦隊が発足
日本においても宇宙作戦隊が5月に発足しました。宇宙作戦隊は、宇宙空間に打ち上げられた衛星の安全を目的とした、常時監視を2023年に開始する計画です。12月には、衛星同士の衝突を避けるために接近情報を解析する訓練の様子が報道陣向けに公開されました。
ルクセンブルク政府が宇宙に特化したファンドに出資
かねてから、宇宙スタートアップの誘致に積極的なルクセンブルクは、1月に官民パートナーシップを目的として設立されたOrbital Venturesに出資しました。具体的な出資額は明らかになっていません。
ルクセンブルクは米国に次いで、宇宙資源に関する法律を制定したほか、起業支援プログラムなども提供しています。今回の出資により、宇宙スタートアップの成長を後押しする環境における大きな課題であった“資金”という穴が埋められたのではないでしょうか。
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国際連携を強めてより大きなミッションに挑む
アポロに続く月面探査プログラム「アルテミス計画」
有人月面着陸を目指すアルテミス計画は、各国と具体的なパートナーシップ締結が進んだ1年でした。7月に、文部科学省の萩生田光一大臣とNASAのジム・ブライデンスタイン氏が「月探査協力に関する文部科学省と米航空宇宙局の共同宣言(Joint Exploration Declaration of Intent ,略称JEDI)」に署名しました。日本はアルテミス計画への参画を2019年10年に表明していましたが、月軌道プラットフォームゲートウェイの居住モジュールの建設や物資補給、月面のデータの共有、JAXAとトヨタ自動車が共同で月面探査用の与圧ローバーの研究開発を実施することなど、日本の協力内容が具体的に示されました。
さらに、9月には、「アルテミス協定(Artemis Accords)」に米国、日本、カナダ、英国、イタリア、ルクセンブルク、オーストラリア、UAE、11月には追加でウクライナが署名しました。同協定には、平和的利用の原則や宇宙飛行士の救助や宇宙物体登録条約への署名、宇宙条約に準拠して行動することや有害な干渉を防ぐことが定められています。
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関連して、日本の2021年度の宇宙関連予算の概算要求は、過去最大の5,400億円になったことが公表されました。
そのうち810億円は、アルテミス計画関連が占めていて、日本としてもアルテミス計画を通じて、月面開発や有人着陸を進めていきたい考えが読み取れます。
結果的に予算案は、補正予算案と合わせて4,496億円となったことが発表されました。概算要求から額は下がったものの、予算案が4,000億円を超えたのは初めてのことです。
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ロシア・中国は共同で月面開発を進める方針
10月に開催された国際宇宙会議(IAC)のセッションで、ロスコスモスの総裁であるドミートリ・ロゴジン氏は、ロスコスモスはアルテミス計画への“大規模”な参画は控える方針を明かしました。ロスコスモスは、2017年に月軌道プラットフォーム「Gateway」の構築構想にNASAと協力する声明に署名していて、多目的モジュールの構築を担当する予定です。
一方、ロシアは2019年9月に、中国と共同の月面探査協定を締結しています。ロシアが月面開発とアルテミス計画に対して、どのようなスタンスを取っていくのか注目していく必要がありそうです。
(5) Society(社会)
Societyでは、2020年に起きた出来事の中でも社会的にインパクトのあった話題をまとめます。
はやぶさ2がこれ以上ない完璧なサンプルリターン
まずはなんといってもはやぶさ2の小惑星リュウグウの微粒子が入ったカプセルの改修成功でしょう。はやぶさ初号機は様々なトラブルに見舞われながらのサンプルリターンで感動を日本人に届けた一方ではやぶさ2はこれ以上ない完璧なミッションで、目標を大きく上回る量のサンプル回収に成功しました。
宙畑でも「はやぶさ2予算はアポロ計画の1/300!? 各国の宇宙探査まとめ」ではやぶさ2やその他、世界の宇宙探査についてまとめています。
宇宙港の新設で宇宙がより身近に、13年ぶり宇宙飛行士募集の発表も
2020年4月、大分県と米Virgin Orbit社が大分空港でのスペースポートを開港し、小型衛星の空中発射に向けた環境整備を進めるため、提携を結んだと発表がありました。これまで宇宙へのアクセスといえば種子島、内之浦と限定的でしたが、今後新しい場所に宇宙港が続々と生まれ、多くの人が宇宙を身近な場所と意識するようになるでしょう。
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また、2021年の秋に13年ぶりに宇宙飛行士の募集を行うと発表がありました。新しい宇宙飛行士はISSの滞在だけでなく、今後の月面到達や火星探査といった宇宙の中でも新しいチャレンジに挑むこととなるでしょう。漫画『宇宙兄弟』では2026年に主人公の弟南波日々人が月面を飛び跳ねていました。果たして日本人宇宙飛行士の月面着陸はいつ、誰になるのか。今からとても楽しみですね。
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13年ぶりに日本人宇宙飛行士募集へ、各国の動向は【週刊宇宙ビジネスニュース 2020/10/19〜10/25】
メディア・エンタメ業界の舞台が宇宙へ
2020年5月、NASA長官のジム・ブライデンスタイン氏がTwitterで、トム・クルーズ氏のISSでの映画撮影にNASAが協力していることを明かしました。これまでも数多くの宇宙を舞台にしたSF映画は世の中に生まれていますが、実際にISSに俳優が訪れ撮影を行うというのは史上初。
ISSではどのような映像が撮れるのか。さらに、月面基地構想も進む中で月面での映画撮影が行われるのも時間の問題でしょう。
ISSでの撮影と言えばもう1つ。バスキュール社は、スカパーJSAT社・JAXAと協力することで、ISSを舞台とした、宇宙と地球をつなぐ世界初の双方向ライブ配信「KIBO宇宙放送局」を開局しました。2020年12月31日23:45からは、ISS船外に設置されたカメラで、宇宙からの初日の出を野口宇宙飛行士と共に見る番組が放送されました。今後どのような放送が配信されるのか楽しみですね。
また、「宇宙感動体験事業」の創出に向けて、ソニー社がJAXAと共同開発を開始すると2020年は発表がありました。
今年はメディア・エンタメ業界の舞台が宇宙にも拡がった1年と言えるでしょう。
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トム・クルーズ氏がNASAと協力し宇宙での映画撮影へ
ソニー・東大・JAXA 技術実証実験を目的に衛星を共同開発
月面のインフラ整備も着々と
宇宙を舞台にした映画撮影ができるようになることはつまり、宇宙で人類が生活できる環境が整いつつあるということ。
その一例として、2020年は通信インフラベンダーNokiaのアメリカ支社であるNokia of Americaが、NASAから約15億円を獲得し月面4Gネットワーク開発に着手すると発表がありました。月面探査機の制御や月面でのリアルタイム地理ナビゲーション、映像ストリーミングなどのデータ転送アプリの開発に着手するともあり、地球の生活と遜色ない月面生活を楽しめる未来が近づいています。
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Nokiaが月面における4Gネットワーク開発に着手
新型コロナウイルスの蔓延により衛星データの報道利用が活性化
2020年の社会における最も大きなニュースは新型コロナウイルスでしょう。人の移動が制限されたことで、遠く離れた場所の実態を国外であっても知ることができる衛星データの利用が活性化した1年だったように思います。例えば、ベイルート港の爆発事故や海外の山火事の報道で衛星データを見たという方も多いのではないでしょうか?
また、人の経済活動が制限されたことで大気汚染の状態も例年に比べて改善したという報道にも衛星データが使われていました。
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衛星データが捉えた10の真実、衛星データと振り返る2020年のニュース
衛星データのSDGs観点での利活用も活発化の兆し
海外に目を向けると、国際連合食糧農業機関(FAO)とグーグルが気候変動や自然環境データを可視化する「Earth Map」を共同リリースしたこと、また、GHGSatが温室効果ガスの状況が一目でわかる「PULSE GHGSat」をリリースしたことなど、地球規模の問題に衛星データを利用する事例も増えています。他に、ユニリーバは、同社のサプライチェーン全体でのCO2排出量を2039年までに実質ゼロにすることを目指すべく、CO2排出量を把握するために請求書にCO2排出量記載を求めていくことを発表しました。
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(6) 2021年宇宙ビジネスに何が起こるか
さて、2021年の宇宙ビジネスではどんなことが起こるでしょうか。こちらもPESTに分けて予測をしていきたいと思います。
Technology(技術)
衛星間通信を使ったデータのダウンリンクが実用化?
2020年はCapella Spaceが通信衛星Inmrsatを経由したリアルタイム伝送、Spireも衛星間通信機器を搭載した衛星を打ち上げました。
また、SAR衛星コンステレーションを構築するICEYE社も通信コンステ企業Audacy(倒産し、今はEOSが買収)と衛星間通信を通じて撮像依頼やミッションデータのダウンロードを計画しています。
今後、衛星で取得したデータがビッグデータの一つになっていくためにはデータの「リアルタイム性」が重要なキーワードです。地上局の上に衛星が回ってこないとデータがダウンロードできない現状に対し、衛星間通信が実用に耐えうるレベルで実現するのか、がポイントになりそうです。
光学・SAR以外の観測センサ利用が広がる
これまで、PlanetやBlackSkyなどの光学衛星コンステレーションが構築・運用され、続いて、光学では撮影できない曇天や夜間でも撮影可能ということで、ICEYEやCapella Spaceなどに代表されるSAR衛星ベンチャーが出現、衛星の打上げを進めています。
並行して、船舶や航空機から発する位置情報を集めて可視化するSpireや、地上の物体が発する電波そのものを観測するHawkEyeなどもコンステレーションの構築を行っています。
このような流れの中で、来年度以降打上げを予定している新たな種類のセンサとしては、「ハイパースペクトルセンサ」や「超高感度カメラ」があります。
「ハイパースペクトルセンサ」は、従来の赤・青・緑など、地球を観測する周波数を非常に細かく分割して、より詳しく対象を観測しようというセンサです(波長分解能が高い、などという言い方をします)。
このセンサの打上げを予定しているのが、ブエノスアイレスに本社があるSatellogic社です。中国の巨大企業テンセントとブラジルのVCの出資が入っている点も注目です。
「超高感度カメラ」は、名前の通り、超高感度でこれまで光学センサでは撮影の難しかった夜間の撮像などが可能になるカメラです。
最近では、2020年10月29日に打ち上げられた日本のキヤノン電子の衛星「CE-SAT-ⅡB」や、BlackSkyの次世代の衛星でも搭載が予定されています。
これらの衛星から撮影される画像が果たして、「夜間は撮れない」光学センサの補完になるのか、利用用途がどれほど広げ得るのか、実画像の公開が待たれます。
有人飛行は複数社ができる体制になり、官から民への移行体制が整う
2020年はSpaceXが有人宇宙飛行を成功させましたが、他にもISSへの宇宙飛行士の輸送ではボーイングが契約を結んでいます。
ボーイングは2019年12月に軌道飛行実験に失敗しており、2020年は失敗のレビューと第二回の試験に向けた準備に費やされたようですが、2021年には有人飛行を行う可能性があるとのことで、成功すればSpaceXと並んでISSへの往還サービスが開始できることになります。
また、宇宙旅行サービスの提供を計画しているVirgin Galacticは2021年第一四半期に有人飛行試験を予定しています。
成功すれば、本格的に有人宇宙飛行が官から民へ移行していくことになるでしょう。
デブリ対策に向けた実証フェーズへ
宇宙ビジネスが加速する中で、問題になってくるのがデブリの問題です。
日本では2021年に2件のデブリ関連の実証を予定しています。
一つは、JAXAが日本のベンチャー企業、 アストロスケールとともに行う実証「Commercial Removal of Debris Demonstration(CRD2)プロジェクト(デブリの商業的除去のデモンストレーション)」です。以前打ち上げたロケット上段をターゲットとして、デブリへの接近・近傍での姿勢制御の実証を行い、デブリの運動状態や損傷・劣化状況がわかるデータの取得を行います。
もう一つが株式会社ALEで行う導電性テザー(Electric Dynamic Tether:EDT)の実験です。衛星がミッション終了後に、軌道から速やかに退避するための技術実証です。
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Economy(経済)
小型ロケットおよび新型の大型ロケットのサービスのサービス競争
2021年には、Rocket Lab以外の小型ロケットベンチャー(Virgin Orbit, Astra, Relativity Space, Fireflyなど)のサービス開始と、遅れている新しい大型ロケット(Ariane6, H3)のサービス開始が予定されてます。
大型ロケットは、近年の小型衛星の増加を踏まえ、複数機を一度に打ち上げるクラスター打上げサービスを用意しており、小型衛星打上げ市場のパイを小型ロケットベンチャーを取り合う形になります。
小型ロケットと大型ロケットは双方にメリット・デメリットがあり、どちらか一方に需要が大きく偏るとは考えづらいですが、両者がどのようにパイを取り合うのか、その兆しが来年見えてくるのではないかと思います。
垂直統合の進む衛星運用。ITジャイアントの動き。
AWSやMicrosoft Azure、中国ではテンセントなどのITジャイアントが衛星運用~衛星データサービスに参入しています。
すでに宇宙ベンチャー各社が彼らのサービスの利用を表明していますが、彼らが思い描くビジネスが実現されるのか、思うような売上が立てられるのか、実ビジネスはこれからと言えるでしょう。
PlanetやMAXARなど衛星データ事業者からすれば、もはやクラウドを提供する彼ら無しで今後のビジネスは成立しないと考えられるため、業界全体としてきちんと収益を上げられるのか、2021年が正念場とも言えるかもしれません。
Exitの進む宇宙ベンチャー。ホールディングス戦略と上場の動きが加速。
今年は、宇宙ベンチャーの買収のニュースが目立った一年でした。宇宙産業は、他の企業と比べて収益を安定的にあげることが難しい産業です。名の知れた宇宙ベンチャーでも、売り上げが立っていても利益を計上出来ていることは稀です。そんな中でベンチャー企業のExit戦略を考えるために新たな手法が登場しています。
今年は、RedwireやVoyager Space Holdingsのように、複数のベンチャー企業を買収し買収した企業同士でシナジーを発生させて事業の多角化を図る、ホールディングス戦略を実施する企業が登場しました。この2社は、ベンチャーキャピタルが実施する投資とは異なり、既にある程度の売り上げをたてている企業を複数買収しているのが特徴です。Voyager Space Holdingsに関しては、2021年度中に自身の上場を考えているとの発言もあります。宇宙ベンチャー1社では困難な株式市場への上場を、複数の企業で連合軍のようにして達成しようとしています。
また今年は、MomentusとAST&Scienceの2社が、SPAC(特別買収目的会社)の買収と統合を活用して2021年初頭の上場を発表しました。SPACの活用は他業界のベンチャー企業の上場手法としても注目されています。来年はSPACを活用した宇宙ベンチャーの上場も増加するとみられています。
Politics(政治)
バイデン政権の誕生。アルテミス計画 有人月面着陸の後ろ倒しの懸念
2020年に、世間の注目を集めたトピックに米国の大統領選があげられます。米国では、大統領の方針が宇宙開発に大きく影響するため、バイデン次期政権の意向を気にかけている人も多いのではないでしょうか。
バイデン氏は、宇宙開発に関する施策を明らかにしていませんが、懸念されているのは、アルテミス計画の後ろ倒しです。アルテミス計画は、当初有人月面着陸は2028年を目標としていましたが、2024年に目標を早めた経緯があります。この理由は明らかになっていませんが、トランプ氏が再選した際に任期中に月面着陸を行えるようにする目的があったのではないかと、複数のメディアが報じています。
Covid-19の影響もあり、開発スケジュールは切迫されていると考えられ、バイデン政権では、有人月面着陸は2028年になるのではないかという見方も出てきています。また、バイデン政権では地球観測に注力する意向が示されていて、温室効果ガスをはじめとする地球観測プログラムが拡大される可能性があります。
また、日本においても菅首相が「2050年までに脱炭素社会を実現」を目標として掲げていて、地球観測プログラムの拡大の後押しとなるのではないかと期待されます。
NASA・ESA、新長官が着任か
氏は、退任の意向を示しています。ブライデンスタイン氏は、トランプ大統領に直々に指名され、2018年にNASA長官に就任。宇宙関連の実務経験はなかったものの、民間企業との連携を促進し、スピード感のある宇宙開発を実現させてきました。
また、ヨーロッパ宇宙機関(ESA)の長官を務めるジョン・ヴァーナー氏は、2021年7月に任期満了で退任する予定です。NASAとESAがどのようなリーダーを迎えるのかに注目が集まるのではないでしょうか。
日本の法整備:宇宙資源、日本サイバーセキュリティの指針
宇宙システムへの不正アクセスやジャミングの頻発を受けて、米国・ホワイトハウスは、2020年9月にセキュリティ強化を求める大統領令を発表しました。日本においても、宇宙開発の方向性を示す「宇宙基本計画工程表」が改訂され、衛星や関連のシステムへのサイバー攻撃への対策指針をまとめるガイドライン策定が盛り込まれました。セキュリティ強化に関するサービスの需要が高まるのではないかと考えられます。
また、月面開発を目指すispaceは、月面で採取したサンプルをNASAが買い取るプログラムに選定されていて、2022年には初の打ち上げが実施される予定。宇宙資源に関する法整備も急がれます。
Society(社会)
宇宙飛行士選抜試験始まる、SNS活用による地球一身近な宇宙飛行士誕生あるか
2021年の秋には日本人宇宙飛行士の募集が正式に開始される予定です。これは13年ぶりとのことで、13年前といえばYouTubeやTwitterといったSNSが生まれて間もない時期。
2020年に募集すると発表があってからはTwitterで宇宙飛行士を目指してトレーニングを開始したというつぶやきも複数見られました。実際に選抜試験が始まった際はSNSで情報発信を行いながら宇宙飛行士を目指す人が出てくることが考えられます。
現役の宇宙飛行士の方もSNSで情報発信する現代、SNSで多くの人に応援されながら選抜試験を突破して宇宙飛行士となる、地球一身近な日本人宇宙飛行士誕生が期待されます。
宇宙の衣食住の充実と宇宙旅行・宇宙移住の意欲高まる
2020年は株式会社ローソンのスペースからあげクンや亀田製菓の柿の種など、誰もが知っている身近な食品が宇宙食化され、宇宙食のイメージが変わったという方も多いのではないでしょうか。今後、ますます地球の暮らしと宇宙の暮らしのギャップは埋まっていくことが予想されます。
2021年はサブオービタルの宇宙旅行も打ち上げ予定となっており、宇宙旅行・宇宙移住への現実味が増すことで宇宙に行きたいと思う方がより増える年となるのではないでしょうか。
衛星データによるファクトフルネスな報道が活発化
2021年も新型コロナウイルスの影響により人の移動の制限は続くことが予想されます。また、SDGsへの関心もより高まるでしょう。さらには、報道各社もいかに独自の切り口で報道を行い、いかに他社と差別化を行うかという機運が高まっています。
これらのニーズにぴったりはまるのが衛星データです。宇宙から国境関係なく、知りたい土地の情報を収集でき、そのデータは地球全球で均質に取得することができます。また、2020年は日本経済新聞社が独自に衛星データを活用して事件の原因究明を行ったことで話題になりました。
今後も衛星データの利活用は報道で活躍することでしょう。
(7)まとめ
本記事では、2020年に宙畑編集部が注目した100本を超えるニュース記事をPEST(Politics(政治)、Economy(経済)、Society(社会)、Technology(技術))の視点でご紹介し、さらにそれぞれの視点で2021年にどうなるかを予測しました。
PESTのカテゴリと宇宙ビジネス分野のマトリクスで2020年のニュースを書き込んでいくと、技術分野のトピックではロケットや衛星分野の話が多く、経済分野ではよりダウンストリーム側の話題が目立つことが分かります。また、社会へのインパクトという意味では探査や有人宇宙飛行の話題が多いなという印象です。
逆にいうと、経済分野でのインパクトが広く一般に知れ渡るような社会的なインパクトまでは波及しきれておらず、まだギャップがあるとも言えるでしょう。
宇宙ビジネスが私たちの生活にインパクトを与える、当たり前に役に立つ世界を目指して2021年も宙畑では、様々なトピックをお届けしてまいりたいと思います。
本年もどうぞよろしくお願いいたします。