宇宙ビジネスとは~業界マップ、ビジネスモデル、注目企業~

 

【目次】

(1)宇宙ビジネスを理解する「宇宙利用」と「宇宙基盤」
(2)宇宙ビジネス業界マップ「宇宙利用」
(3)宇宙ビジネス業界マップ「宇宙基盤」
(4)宇宙ビジネスをもっと学べるおすすめの宇宙ビジネス情報

宇宙ビジネスを理解する「宇宙利用」と「宇宙基盤」

宇宙ビジネスと聞いて、みなさんはどんなイメージを浮かべるだろうか。おそらく宇宙旅行や人工衛星を使った何かといったイメージをすることはたやすいかと思うが、NASAやJAXAなどの政府機関で進めている事業であって、民間レベルでは「まだあまり現実的ではない、いつかやってくる未来」と感じる人が多いかもしれない。

だが、NASAもJAXAも民間企業なしで宇宙開発を行っているわけではない。また、独自にロケットや人工衛星を作り始めたベンチャー企業、既存の人工衛星を自社事業に利用している企業もある。これらすべて宇宙ビジネスである。
そこで今回、どのような企業がどのような分野で宇宙ビジネスに取り組んでいるのか、大きく「宇宙利用」と「宇宙基盤」の2つに分けて現状の宇宙ビジネス業界マップを作成した。

以下にその宇宙ビジネス業界マップを紹介する。

宇宙基盤マップ(PDF)
宇宙利用マップ(PDF)

宇宙ビジネス業界マップ「宇宙利用」

まずは、”宇宙利用編”として宇宙をどのようにビジネスに利用しているかを紹介しよう。宇宙利用について大きく3つのカテゴリーに分けている。「人工衛星を利用」して地球での生活に活かすビジネスと、地球上ではできないことができる「宇宙空間を利用」したビジネス、最後に「宇宙の利用を促進」するためのビジネスである。

さらに「人工衛星を利用」してできること、「宇宙空間を利用」してできることをそれぞれ3つに分けてみた。
これら計7つの分類でそれぞれどんな民間企業がどんな事業を行っているか紹介していく。この中のどこかに参入するか、もしくは新たな事業を開拓していくか参考になれば幸いである。

宇宙利用 業界マップ

人工衛星の利用①「高精度な位置情報を検出する」

人工衛星を使い位置情報を調べるシステムは測位衛星システム(GNSS)として、アメリカのGPSほかに、ロシアのGLONASS、ヨーロッパのGalileo、中国のBeiDou(北斗)、インドのIRNSSなど、各国でインフラとして整備が進んでいる。日本でも現在、準天頂衛星「みちびき」を打ち上げ、2017年度に4機体制、2023年度に7機体制にして、独自の測位衛星システムを構築することが政策として決定している。車の自動走行や測量など多くの分野での応用の可能性を秘めており、国内外で最もビジネス参入が期待されている分野である。

現在位置検索

スマートフォンやカーナビなど位置情報サービスを提供する。車の自動走行などの研究開発が進んでいる。
<代表的な企業>Google、各自動車製造メーカー

位置情報ゲーム

ポケモンGOやイングレスなど、位置情報をゲームに利用する。
<代表的な企業>Niantic、コロプラ

宅配サービス

配達の状況をリアルタイムで把握する。
<代表的な企業>ヤマト運輸、Amazon、ドミノ・ピザ

郵便サービス

住所が指定できない場所でも郵便サービスを提供する。 
<代表的な企業>Ukowapi、OkHi、what3words

効率的な測量

海岸や山間部での測量を効率的に行う。
<代表的な企業>沿岸海洋調査

人工衛星の利用②「地球を広範囲に調べる」

航空機や最近はドローンなどを使って遠隔操作で対象を調べる技術を、人工衛星を使って行うことで、より広範囲に地上だけでなく、海洋や大気など多くの現象を調べることができる。地球環境のメカニズムの解明を主な役割として利用されているが、徐々に人工衛星からわかるデータを多くの分野への利用が広まっている。

天気予報

雲の動きや降水量、地形情報などから天気予報、大雨被害予測などに活かす。
測位衛星からの電波の遅延から大気中の水蒸気量を図る研究もある。
<代表的な企業>Weathermap、Weathernews、GeoOptics、Spire

農作物の生育予測

農作物の作育状況を把握し、営農計画を効率的に行う。
<代表的な企業>Planet、FarmShots、日立ソリューションズ、ビジョンテック、Dacom Farm Intelligence、Satellogic、Astro Digital

物流

船舶などの様子を監視し、物流サービスの効率的な運用を行う
<代表的な企業>Spire、exactEarth、フォーキャスト・オーシャン・プラス

インフラ監視

土木建築の劣化や漏水検知など、インフラの状態を監視する。
<代表的な企業>Black Sky、UTILIS、Building Radar

防災・防衛

観測データから地上の様子を把握し、防災や防衛に役立てる。
<代表的な企業>DigitalGlobe、パスコ

株価予測

人工衛星で観測できる光量などの情報から企業の売り上げ状況の予測に活かす。
<代表的な企業>ゴールドマンサックス、Orbital Insight

気候変動の監視

森林の違法伐採の監視や気候変動の影響をモニタリングし、今後の対策に活かす。
<代表的な企業>RESTEC、EUROSENSE、BlackBridge

保険

気候を予測し、影響の受けやすい農地などに対し条件に応じた保険額を支払うサービスを提供する。
<代表的な企業>SOMPOホールディングス

地形把握

地形を把握し、正確な地図の作成や植生の分布のモニタリングなどをする。
<代表的な企業>UrtheCast、ゼンリン、日立ソリューションズ

魚群探査

海面温度などの衛星データから魚群の居場所を予測する。
<代表的な企業>Raymarine、漁業情報サービスセンター

人工衛星の利用③「時と場所を選ばずに通信を行う」

移動体(車や航空機、船舶など)や、災害現場など、地上の通信インフラが利用できない場合には、人工衛星を通じて通信を行うことができる。

衛星通信の整備

通信衛星を整備し、全世界で高速衛星通信サービスを可能にする。
<代表的な企業>SpaceX、OneWeb、KDDI

衛星放送

通信ケーブルの整備が難しい場所でもテレビ放送サービスを提供する。
<代表的な企業>スカパーJSAT、DirecTV、DishNetwork

災害時の通信サービス

災害により地上の通信環境が使えなくなっても通信サービスを可能にする。
<代表的な企業>スカパーJSAT、

移動通信サービス

走行中の車や航空機など、移動中でも大容量の通信サービスを提供する。
<代表的な企業>JAL、Kymeta

宇宙空間の利用①「地球とは異なる環境下でモノを作る」

天候や昼夜に左右されない、重力の影響を受けないなど、宇宙空間の環境を利用する。

宇宙太陽光発電

雲に邪魔されることない宇宙空間で太陽の光を受け、発電したエネルギーを地球に伝送する。
<代表的な企業>清水建設

製薬の開発

無重力状態で実験を行い、地球上では開発できない新たな薬を開発する。
<代表的な企業>ペプチドリーム

宇宙空間の利用②「地球にない資源を獲得する」

資源探査

化石燃料などの地球上では限りがある資源を、月や小惑星などの外部天体から獲得する。
<代表的な企業>ispace(HAKUTO)、Planetary Resources

宇宙空間の利用③「地球でできない体験をする」

エンターテイメントや旅行など地球上では体験できないことを宇宙空間で可能にする。

宇宙旅行

厳しい訓練を積まなくても宇宙まで人を運べる宇宙機を開発し、宇宙旅行の実現を目指す。
<代表的な企業>PDエアロスペース、HIS、ANAホールディングス、Virgin Galactic、Blue Origin

宇宙ホテル

将来、人が宇宙で暮らすことを想定し、長期滞在可能な居住空間の開発を目指す。
<代表的な企業>Bigelow Aerospace、United Launch Alliance

宇宙葬

故人の遺灰の一部をロケットで打ち上げ、宇宙空間や月面に送る。
<代表的な企業>Elysium Space

人工流れ星

特殊な粒を大気圏に突入させ人工的に流れ星を再現する。
<代表的な企業>ALE

宇宙の利用環境を整える

人工衛星の故障などの損害保険サービスや破損によって発生する宇宙ゴミの除去など、宇宙の環境を守り、宇宙利用を促進する。

宇宙空間通信ネットワーク

衛星の電波が受信できない場所にいても、ほかの衛星を経由して通信できる環境を整える。
<代表的な企業>Sci_zone

宇宙環境保護

人工衛星の破片などの宇宙ゴミを破棄し、運用中の人工衛星や探査機を守る。
<代表的な企業>ASTROSCALE

人工衛星キット

簡易に人工衛星を制作し、宇宙の利活用ができる機会を提供する。
<代表的な企業>PUMPKIN SPACE SYSTEMS、GOM SPACE

拡大が進む宇宙利用(宇宙利用編まとめ)

ここまで宇宙を利用したビジネスの例を紹介してきたが、宇宙利用のすべてを網羅できているわけではない。また、宇宙分野への民間参入は始まったばかりであり、宇宙を使うからこそできることはまだまだ可能性に満ちているはずである。今後、宇宙をビジネスの手段として利用することが当たり前になる社会になることで、地球で生きる私たちの生活も豊かになっていくに違いないのである。

次項では、これらの宇宙利用を実現するためのビジネスを宇宙基盤編として紹介する。莫大な費用を必要とする宇宙開発だからこその課題があり、ビジネスとして参入するチャンスがあるはずである。

宇宙ビジネス業界マップ「宇宙基盤」

ここからは上記で説明した宇宙利用を支える基盤(インフラ)となるビジネスについて紹介する。おそらく宇宙開発という言葉から連想されるような、ロケットや衛星の打ち上げや製造に関わる業界だ。
今回は、プレイヤーを大きく4つ(ロケット、人工衛星、地上局、その他)に分けて見ていく。既存の企業が高い技術力と資金力を持って実施しているイメージが強く、新規参入は難しいと思われがちな分野だが、既存の宇宙ビジネスの課題を解決するベンチャーも出始めている。
それぞれを丁寧にみていくと、既存ビジネスの課題とビジネスチャンスが見えてくるかもしれない。

宇宙基盤 業界マップ

人工衛星

人工衛星とは、本記事の冒頭で紹介した宇宙利用(ミッション)を実現するために、宇宙空間に設置される機械であり、宇宙空間への輸送はロケットによって行われる。

衛星開発・製造会社

衛星を設計製造する企業。ミッションを実現することができる衛星を考え、形にする。
<代表的な企業>Lockeed Martin(米)、Airbus defence and space(欧)、三菱電機(日)

部品供給会社(人工衛星)

長期間宇宙空間(真空、放射線など)に耐えることができる部品を提供する企業。
<代表的な企業>Honeywell(米)、Sodern(仏)、日本飛行機(日)

ロケット(輸送系)

ロケットとは、衛星を地上から宇宙空間へ輸送するサービスである。荷物を運ぶ運送業のトラックや、乗客を運ぶ飛行機や新幹線をイメージしていただくと良いかもしれない。輸送業であるロケットに求められるのは、安く・確実に(失敗せずに)・乗り心地良く、目的の場所まで到達できることである。

打ち上げサービスプロバイダ

ロケットメーカーからロケットを購入し、衛星打ち上げサービスを提供する企業。飛行機業界でいうところのANA、JALなど(彼らが飛行機そのものを製造しているわけではなく、飛行機を用いたサービスを提供している)。
<代表的な企業>Arianespace(欧)、SpaceX(米)、ISC Kosmotras(露)

ロケット開発・製造会社

ロケットを設計製造する企業。再利用可能ロケット、小型ロケットなど、より効率的、かつ、低コストで宇宙へモノを運べるロケットを考え、形にする。
<代表的な企業>Space X(米)、ULA(米)、Airbus defence and space(欧)、三菱重工業(日)、インターステラテクノロジズ(日)

部品供給会社(ロケット)

ロケットの姿勢を制御するための角速度計測器や、高温に耐えられる断熱材など、搭載した衛星などを宇宙まで正確、かつ、無事に運べるロケットを作るための部品を提供する企業。
<代表的な企業>RUAG(欧)、L-3 CE(米)、川崎重工業(日)

地上システム

衛星は打ち上げて終わりではない。ミッションを予定通り行うためには、地上から衛星の様子を監視し、適切な指示を送る必要がある。また、衛星から送られてくるデータを受信するシステムも必要である。

衛星運用会社

衛星から得られたデータよりその状態を確認し、継続的なミッション運用を行う企業。地上局設備の監視も行う。
<代表的な企業>SES(ルクセンブルグ)

地上システム開発・製造会社

衛星からデータを受信、解析することで衛星の状態を確認する地上のシステムを構築する企業。
<代表的な企業>L3(米)、NEC(日)

部品供給会社(地上システム)

地上システムに用いられる部品を製造する会社
<代表的な企業>ZODIAC(仏)、富士通(日)

その他宇宙基盤ビジネスに関わるサービス

保険

ロケット打ち上げの失敗や、軌道上での衛星の故障など、宇宙関連事業におけるリスクに対しての保険を提供する企業。   
<代表的な企業>MARSH & MAcLENNAN Company(英)、三井住友海上(日)

利用事業者

冒頭で説明した宇宙利用ビジネスを行う事業者。冒頭では利用の観点から区分けを行った。技術的に見ると、衛星が提供するサービスの種類は3種類に分けられる。衛星から撮影した画像サービス、通信サービスと位置情報サービスである。

画像サービス事業者・画像サービス利用事業者

衛星画像を販売している、または衛星画像から情報(例:雨雲情報など)を取り出し、サービスを提供する会社
<代表的な企業>
衛星画像を販売している会社:Digital Globe(米)、e-GEOS(欧)、JSI(日)
衛星画像から得られる情報を販売している会社:ESRI(米)、Orbital Insight(米)、日立ソリューションズ(日)

通信サービス事業者・通信サービス利用事業者

通信衛星を使った通信サービスを提供する会社。
<代表的な企業>Eutelsat(欧)、Intelsat(米)、スカパーJSAT(日)

位置情報サービス事業者・位置情報サービス利用事業者

各国の政府機関は測位衛星を所有し、位置情報に用いる電波を無償で提供している。アメリカのGPSがその代表例であるが、ロシアやヨーロッパ、中国も独自のGPSのようなシステムを有している。
また、位置情報を利用してビジネスを行っている会社。
<代表的な企業>Niantic,Inc(米)、カーナビ会社、ドローン会社

拡がる宇宙利用を支える基盤ビジネス(宇宙基盤編まとめ)

宇宙ビジネスを支える宇宙基盤ビジネスについて紹介した。本記事前半部分で触れたとおり、宇宙利用ビジネスはどんどん拡大しており、それを支える基盤ビジネスの様相も大きく変わりつつある。

今までは、政府を顧客とする大企業ばかりであったが、宇宙利用の拡大を受けて民間をターゲットにした基盤ビジネスを起こすベンチャーの参入が増えてきている。
例えば、利用ビジネスを行うための超小型衛星が増加しており、こうした小さな衛星の打ち上げ需要の増大を受けて、小型衛星専用のロケットを開発するベンチャーや、既存のロケット打ち上げ機会と打ち上げ機会を探す超小型衛星のマッチングを行うベンチャーなどが誕生している。

また、アメリカではNASAが宇宙ステーション往還機の開発を民間に任せる方向性を明確にしている。気象衛星を担当していたアメリカ海洋大気局(NOAA)も、民間の気象衛星情報を積極的に採用していく方針だ。同じ政府系のビジネスでも、今後民間が果たす役割が大きくなっていくものと思われる。このようなビジネスでは成功すれば政府が顧客になる、すなわちお金を払うことが明らかであるため、ベンチャー企業が比較的投資を集めやすい傾向にある。  

今後どのような宇宙ビジネスが生まれるのか目が離せない。

宇宙ビジネスをもっと学べるおすすめの宇宙ビジネス情報

今回の記事では、大きく「宇宙利用」と「宇宙基盤」ビジネスを紹介した。
一見難しいと思われがちな宇宙ビジネスだが、どちらの分野でもまだまだ可能性がある。

特に、「宇宙利用」は、近年さかんに言われる「ビックデータ」や「IoT」などグローバル規模でのトレンドに合致した分野であり、市場規模はますます広がっていくものと考えられる。「宇宙利用」が盛んになれば、もちろんそれを支える「宇宙基盤」も大きく変わっていくはずだ。
もっと宇宙ビジネスを学びたいという方は、こちらの記事で紹介しているので、参考にしてほしい。
また、世界の宇宙ベンチャーについてはこちらで、日本の宇宙ベンチャーについてはこちらで紹介している。