宙畑 Sorabatake

宇宙ビジネス

宇宙ビジネスとは~業界マップ、ビジネスモデル、注目企業・銘柄、市場規模~

宇宙ビジネスって実際何ができるの?儲かっているの? 市場規模から注目企業まで、本記事では宇宙ビジネスについて業界マップを使いながらご紹介します。

イーロン・マスク氏に、ジェブベソス氏とIT業界の大物が続々と参入する宇宙ビジネス。

宇宙ビジネスって実際何ができるの? 儲かっているの?

市場規模から注目企業まで、本記事では宇宙ビジネスについて業界マップを使いながらご紹介します。

※本記事で紹介している宇宙ビジネス業界マップと衛星データユースケースマップはこちらからPDFをダウンロードいただけます

※2024年6月に宇宙ビジネスの市場規模に関する記述や関連記事を更新しました

(1)宇宙ビジネスの市場規模は約100兆円に!? 宇宙産業がもたらす他産業への波及効果とスタートアップ支援の拡充

宇宙ビジネスの世界規模での市場規模は2024年4月に公表された「Space: The $1.8 Trillion Opportunity for Global Economic Growth」によると、2023年時点で6300億ドル(約100兆円)。そして、今後は2030年に1兆1600億ドル(約185兆円)、2035年には1兆7900億ドル(約286兆円)になると予想されています。

「Space: The $1.8 Trillion Opportunity for Global Economic Growth」より引用 Credit : World Economic Forum

本レポートでは、宇宙産業が他産業に波及効果としてもたらす経済効果をReachという言葉で説明しており、波及効果を除いた宇宙産業(Backbornとレポート内では説明)の市場規模は2023年時点で3300億ドル(約52兆円)、2030年に5250億ドル(約84兆円)、2035年に7550億ドル(約120兆円)になると予想されています。

ちなみに、Reachとして期待されているものの例としては以下の3点があげられていました。
・接続性の向上:衛星インターネットの整備による通信設備がないエリアでのeコマースやオンラインサービス(銀行業務や教育など)の提供機会増。
・モビリティの向上:車両の追跡やナビゲーション、個人デバイスの位置情報サービスの需要増。
・情報の充実:災害対応組織や保険会社が自然災害の影響を評価し、早期トレンドの把握を改善するための情報需要増。

波及効果を含む宇宙産業がもたらす市場成長率は年間9%で、今後10年のGDP成長率の約2倍であり、半導体産業と類似する成長率であるそう。

また、レポートでは他産業への波及効果以外のBackbornの市場規模の内訳についても成長推移と合わせてグラフが紹介されていました。

「Space: The $1.8 Trillion Opportunity for Global Economic Growth」より引用
Credit : World Economic Forum

その内訳をみると、商用目的の衛星通信サービスが2035年時点で2180億ドル(約34.8兆円)と最も大きい市場規模となっており、続いて防衛、民間支援、測位衛星の利用関連となっています。

また、同レポートでは、Reachも含む産業別の宇宙産業の市場規模の成長推移予測も紹介されており、最も市場規模のシェアを占めるのはサプライチェーンと輸送、続いて飲料食品、防衛となっていました。

「Space: The $1.8 Trillion Opportunity for Global Economic Growth」より引用 Credit : World Economic Forum

ちなみに、少し古いデータではありますが、宇宙産業と聞くと多くの人が思い浮かべるであろうロケットや人工衛星の製造に関する市場(宇宙インフラ市場)は全体の6%弱。一方で、上述で紹介した通り、衛星通信や測位、衛星データなどの宇宙を利用したビジネスに関する市場(宇宙利用市場)は全体の35%強、それらのサービスを支える地上設備も約35%と衛星サービス関連で宇宙ビジネスの市場規模の約70%を占めています。

宇宙ビジネス市場規模と内訳
Credit : 2019 Global Space Economy at a Glance(2020年10月)と宇宙産業ビジョン2030を元にsorabatakeが作成

では、日本はどうかというと、宇宙ビジネス全体の市場規模が約1.2兆円、宇宙インフラ市場についてはその9割が官需で、欧米に大きく差をつけられている状況です。内閣府は、このような状況を鑑み「宇宙産業ビジョン2030」の中で、2030 年代早期の市場規模の倍増を目指していくと述べています。

国内の宇宙ビジネスをさらに盛り上げるため、スタートアップへの支援制度も続々と整備され、2024年度からは内閣府、総務省、文部科学省、経済産業省がJAXAに基金を造成し、JAXAを通じて民間企業や大学の宇宙分野の先端技術開発、技術実証、商業化を支援する宇宙戦略基金がいよいよ動き始めます。

詳細は以下の記事をご覧ください。

出典

2019 Global Space Economy at a Glance(2020年10月)

宇宙産業ビジョン2030

Space: The $1.8 Trillion Opportunity for Global Economic Growth

(2)宇宙ビジネスの種類「製造・インフラ」「宇宙利用」「宇宙探査」

宇宙ビジネスと聞いて、みなさんはどんなイメージを浮かべるでしょうか。

おそらくロケットや宇宙旅行をイメージする方が多いのではないでしょうか。また、NASAやJAXAなどの政府機関で進めている事業であって、民間企業の参入は「まだリスクが大きく、一部のお金持ちがやっているビジネスである」と思われる人が多いかもしれません。

しかしながら、NASAもJAXAも民間企業なしで宇宙開発を行っているわけではなく、独自にロケットや人工衛星を作り始めたベンチャー企業、既存の人工衛星を自社事業に利用している企業もあります。

では、なぜ今、宇宙ビジネスが注目されているのか。宙畑は以下4つの視点が宇宙ビジネスを盛り上げる背景にあると考えています。

1.未開拓領域であること
2.大きな市場に化ける可能性があること
3.民間でできることが広がっていること
4.地上のトレンドと合っていること

そこで、どのような企業がどのような分野で宇宙ビジネスに取り組んでいるのか、大きく「宇宙製造・インフラ」「宇宙利用」「宇宙探査」の3つに分けて現状の宇宙ビジネス業界マップを作成しました。

以下、宇宙ビジネス業界マップと合わせてそれぞれの分野の概要と参入企業、関連記事を紹介します。宇宙ビジネスの盛り上げりを感じていただけますと幸いです。

★宇宙ビジネス業界マップはこちらからPDFをダウンロードいただけます

(3)宇宙ビジネス業界マップ「製造・インフラ」と注目企業

まずは、「製造・インフラ」として、ロケットや人工衛星、地上局など宇宙利用を実現するための機器を製造する企業から、宇宙利用を促進するためのシステムを開発する企業を紹介します。

製造分野はロケット、人工衛星、地上局の3つに分かれています。特に小型ロケットや小型衛星の開発企業が、続々と投資金額を獲得し計画が進んでいます。

また、打ち上げ後、衛星のデータを利用につなげるためのシステムを開発する企業も多くなってきました。

衛星データは、衛星から利用事業者にそのまま提供するには利用事業者自身に解析能力がないといけないため、データを利用しやすいようにプラットフォームを整備したり、画像を解析して利用者に提供する事業者も宇宙業界の中での存在感が強くなってきています。

それぞれを丁寧にみていくと、既存ビジネスの課題とビジネスチャンスが見えてくるかもしれません。

宇宙製造・インフラ業界マップ Credit : sorabatake

人工衛星

人工衛星とは、本記事の冒頭で紹介した宇宙利用(ミッション)を実現するために、宇宙空間に設置される機械であり、宇宙空間への輸送はロケットによって行われます。

衛星開発・製造会社

衛星を設計製造する企業。ミッションを実現することができる衛星を考え、形にします。

<代表的な企業>
・大型衛星
Lockheed Martin(米)、Boeing(米)、Space Systems/Loral (Maxar Technologies)(米) 、Airbus defence and space(欧)、Thales Alenia Space(欧)、三菱電機(日)、NEC(日)

・小型衛星
Surrey Satellite Technology(Airbus Group SE)(英)、York Space Systems(米)、Planet(米)、GOMspace(瑞)、キヤノン電子(日)、アクセルスペース(日)

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部品供給会社(人工衛星)

長期間宇宙空間(真空、放射線など)に耐えることができる部品を提供する企業。

<代表的な企業>
Honeywell(米)、Sodern(Ariane Group)(仏)、Raytheon(米)、MDA(Maxar Technologies)(加)、Berlin Space Technologies(独)、ThrustMe(仏)、日本飛行機(日)、IHIエアロスペース(日)、多摩川精機(日)

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ロケット(輸送系)

ロケットとは、衛星を地上から宇宙空間へ輸送するサービスです。荷物を運ぶ運送業のトラックや、乗客を運ぶ飛行機や新幹線をイメージしていただくと良いかもしれません。

輸送業であるロケットに求められるのは、安く・確実に(失敗せずに)・乗り心地良く、目的の場所まで到達できることです。

ロケット開発製造会社

ロケットを設計製造する企業。再利用可能ロケット、小型ロケットなど、より効率的、かつ、低コストで宇宙へモノを運べるロケットを考え、形にします。

<代表的な企業>
・大型ロケット
SpaceX(米)、Blue Origin(米)、Airbus defence and space(Airbus Group SE)(欧)、三菱重工業(日)

・小型ロケット
Rocket Lab(米) 、Astra(米)、Firefly Aerospace(米)、インターステラテクノロジズ(日)、スペースワン(日)

部品供給会社(ロケット)

ロケットの姿勢を制御するための角速度計測器や、高温に耐えられる断熱材など、搭載した衛星などを宇宙まで正確、かつ、無事に運べるロケットを作るための部品を提供する企業。

<代表的な企業>
Aerojet Rocketdyne(米)、RUAG(欧)、L3 Space & Sensors(米)、川崎重工業(日)

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打ち上げサービスプロバイダー(ロケット・ISS・衛星放出など)

ロケット開発製造会社からロケットを購入し、衛星打ち上げサービスを提供する企業。近年では、ロケットからだけではなく、ISSや衛星から衛星が放出されるサービスも提供され始めています。

・ロケット
Spaceflight(米)、Precious Payload(米)、GK Launch Service(露)

・ISS
NanoRacks(米)、Space BD(日)

・衛星
D-Orbit(伊)

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地上システム

衛星は打ち上げて終わりではありません。ミッションを予定通り行うためには、地上から衛星の様子を監視し、適切な指示を送る必要があります。また、衛星から送られてくるデータを受信するシステムも必要です。

地上システム開発・製造会社

衛星からデータを受信、解析することで衛星の状態を確認する地上のシステムを構築する企業。

<代表的な企業>
L3(米)、Kratos Defense and Security Solutions(米)、NEC(日)

部品供給会社(地上システム)

地上システムに用いられる部品を製造する企業。

<代表的な企業>
ZODIAC(仏)、ISIS(米)、富士通(日)

その他製造・インフラビジネスに関わるサービス

保険

地上での輸送時から、ロケット打ち上げの失敗や、軌道上での衛星の故障など、宇宙関連事業におけるリスクに対しての保険を提供する企業。

<代表的な企業>
BritGroupServices(英)、Munichre(独)、三井住友海上(日)、Marsh & McLennan Companies(英)

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利用事業者

宇宙利用ビジネスを行う事業者。利用の観点から区分けしています。技術的に見ると、衛星が提供するサービスの種類は3種類に分けられます。衛星から撮影した画像サービス、通信サービスと位置情報サービスです。

通信サービス利用事業会社

衛星携帯電話に代表されるような、衛星通信を利用したサービスを提供する企業。

<代表的な企業>
Softbank(日)、KDDI(日)、BeepTool(尼)、EchoStar(米)、Globalstar(米)、Intelsat S.A.(盧)、MEASAT(馬)

通信サービス事業者

通信衛星を所有し、通信サービスを提供する企業。
従来までは高~静止軌道に配置された衛星で通信サービスを提供する企業が中心でしたが、近年は、小型衛星の性能向上により低~中軌道に多くの衛星を配置(コンステレーション)してサービス提供を試みている企業が増えています。

計画中の11の通信コンステレーション Credit : sorabatake

<代表的な企業>
Eutelsat(欧)、Intelsat(米)、スカパーJSAT(日)、OneWeb(英・印)、SpaceX(米)、O3b(米)、Orbcomm(米)、Amazon(米)、SpaceX(米)

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位置情報サービス利用事業者

位置情報を利用したサービスを提供する企業。

<代表的な企業>
Niantic(米)、カーナビ会社、ドローン会社

位置情報提供機関(事業者)

各国の政府機関は測位衛星を所有し、位置情報に用いる電波を無償で提供しています。アメリカのGPSがその代表例ですが、ロシアやヨーロッパ、中国も独自のGPSのようなシステムを有しています。また、位置情報を利用してビジネスを行っている企業。

<代表的な企業>
米軍、内閣府など各国政府機関

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画像サービス利用事業者

衛星から送られた画像データから情報を取り出し、サービスを提供する企業。

<代表的な企業>
Orbital Insight(米)、DescartesLabs(米)、SpaceKnow(米)、Ursa Space Systems(米)、日立ソリューションズ(日)

画像サービス事業者

地球観測衛星を所有し、衛星画像を販売する企業。※必ずしも所有している訳ではありません。

<代表的な企業>
Digital Globe(米)、e-GEOS(欧)、JSI(日)、Geocento(英)

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データプラットフォーム事業者

データの横断的な連携や、解析を可能にする場所を提供します。

<代表的な企業>
Amazon(AWS)(米)、Google(Google Earth Engine)(米)、さくらインターネット(Tellus)(日)

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宇宙からのサポート

軌道上ガソリンスタンド

軌道上で運用に必要な燃料を供給できるサービス。衛星が地上に戻ることなく、運用し続けることができます。供給するために、ロボットアーム技術が用いられます。

<代表的な企業>
Space Systems/Loral(Maxar Technologies)(米)、Orbit Fab(米)

保険

運用中の衛星に放射線などによりトラブルが生じたとき向けの保険サービスです。

<代表的な企業>
Brit Group Services(英)、Munichre(独)、三井住友海上(日)、Marsh & McLennan Companies(英)

軌道変更サービス

衛星の軌道を変更するための衛星。寿命を終えた衛星や、故障した衛星の運用立て直しを行います。

<代表的な企業>
D-Orbit(伊)、SpaceLogistics LLC(英)、Momentus(米)

軌道上製造

軌道上で3Dプリンターなどで製造を行うサービスです。

<代表的な企業>
Made In Space(米)、Space Tango(米)

宇宙環境保護

人工衛星の破片などの宇宙ゴミを破棄し、運用中の人工衛星や探査機を守ります。

<代表的な企業>
ASTROSCALE(日)、LEOLABS(米)

宇宙空間通信ネットワーク

衛星の電波が受信できない場所にいても、ほかの衛星を経由して通信できる環境を整えます。

<代表的な企業>
Audacy(米)、Sci_zone(蘭)

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地上からのサポート

地上局ネットワーク

衛星を運用するためのアンテナを提供します。近年はユーザー同士のアンテナをシェアリングするサービスも現れています。利用することで、衛星との通信時間を安価に伸ばすことが期待されています。

<代表的な企業>
Amazon(米)、Infostellar(日)、KSAT(諾)

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衛星運用会社

衛星から得られたデータよりその状態を確認し、継続的なミッション運用を行う企業。地上局設備の監視も行います。

<代表的な企業>
SES(盧)

人工衛星キット

簡易に人工衛星を制作し、宇宙の利活用ができる機会を提供します。

<代表的な企業>
GOMspace(瑞)、ISIS(米)、Pumpkin(米)

拡がる宇宙利用を支える製造・インフラ(製造・インフラ編まとめ)

宇宙ビジネスを支える製造・インフラを担う事業について紹介しました。宇宙利用を促進するには、それを支える製造・インフラの事業が整備されていることが前提であり、逆に言うと、この事業がしっかりを整備されていれば利用がその分拡大できる可能性があります。

政府を顧客とする大企業ばかりが製造を担うのではなく、宇宙利用の拡大を受けて民間をターゲットにした製造・インフラビジネスを起こすベンチャーの参入が増えています。

衛星を軌道に導入する手段もロケットだけではなく、ISSや衛星自体から別の小型衛星を放出するなど、利用を促進するための技術もさまざまなものが計画されるようになってきました。

また、アメリカではNASAが宇宙ステーション往還機の開発を民間に任せる方向性を明確にしています。気象衛星を担当していたアメリカ海洋大気局(NOAA)も、民間の気象衛星情報を積極的に採用していく方針です。

同じ政府系のビジネスでも、今後民間が果たす役割が大きくなっていくものと思われます。このようなビジネスでは成功すれば政府が顧客になる、すなわちお金を払うことが明らかであるため、ベンチャー企業が比較的投資を集めやすい傾向にあります。

(4)宇宙ビジネス業界マップ「宇宙利用」と注目企業

続いて”宇宙利用編”として宇宙をどのようにビジネスに利用しているかを紹介します。宇宙利用について大きく2つのカテゴリーに分けました。

「人工衛星を利用」して地球での生活に活かすビジネスと、地球上ではできないことができる「宇宙空間を利用」したビジネスです。

前回作成した利用マップに比べて、かなり多くの業種を追加しました。宇宙を利用したサービスは多岐に渡り、これ以外にもまだ開拓されていない事業への利用の可能性があります。

宇宙利用 業界マップ Credit : sorabatake

人工衛星の利用①「高精度な位置情報を検出する」

Credit : sorabatake

人工衛星を使い位置情報を調べるシステムは測位衛星システム(GNSS)として、アメリカのGPSほかに、ロシアのGLONASS、ヨーロッパのGalileo、中国のBeiDou(北斗)、インドのIRNSSなど、各国でインフラとして整備が進んでいます。日本でも現在、準天頂衛星「みちびき」を4機まで打ち上げ、独自の衛星測位サービスが始まっており、2023年度に7機体制になる予定です。
車の自動走行や測量など多くの分野での応用の可能性を秘めており、国内外でビジネス参入が期待されている分野です。

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自動走行

機械の位置を監視し、農機、建機などの自動走行を支援します。

<代表的な企業>
Caterpillar、小松製作所、クボタ、ヤンマー、日立造船、マゼランシステムズ

航海支援

船舶などの様子を監視し、効率的な航行を支援します。

<代表的な企業>
Spire、ExactEarth、Forecast Ocean Plus

ナビゲーション

スマートフォンアプリやカーナビなど、位置情報を元にしたサービスを提供します。

<代表的な企業>
Google、各自動車製造メーカー、ヤマップ

郵便

住所がなくても、位置情報を把握することで荷物を届けることができるサービスを提供します。

<代表的な企業>
Ukowapi、OkHi、what3words

宅配

配達の状況をリアルタイムで把握したり、希望の位置に荷物を運ぶサービスを提供します。

<代表的な企業>
Uber、ヤマト運輸、Amazon、ドミノ・ピザ

マーケティング

実店舗の近くを通る際にクーポンや通知を配信するサービスを提供します。

<代表的な企業>
Snap(Snapchat)、Evernote(Anchornote)、Express Checkout(CardStar)、日本航空(JALカードアプリ)、青山トレーディング(洋服の青山)、リクルートライフスタイル(じゃらん)

物流・運行効率化

乗り物の位置を把握して、利用者への配車・運行・物流の効率化を図ります。

<代表的な企業>
Uber、Grab、Cotral、LINE、日交サービス(日本交通)

ゲーム

ポケモンGOやイングレスなど、位置情報をゲームに利用します。

<代表的な企業>
Niantic、コロプラ、Garmin

圏外での位置情報

山岳地帯など電波が届かない場所でも自分の位置を把握するサービスを提供します。

<代表的な企業>
Garmin

人工衛星の利用②「地球を広範囲に調べる」

Credit : sorabatake

リモートセンシング(リモセン)

航空機や最近はドローンなどを使って遠隔操作で対象を調べる技術を、人工衛星を使って行うことで、より広範囲に地上だけでなく、海洋や大気など多くの現象を調べることができます。地球環境のメカニズムの解明を主な役割として利用されていますが、徐々に衛星データの解析からわかるデータが多くの分野へ活用され始めています。

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解析結果提供

取得したデータを解析して、様々なドメインの企業に提供します。

<代表的な企業>
Orbital Insight、CapeAnalytics、Descartes Labs、SpaceKnow、TellusLabs、Ursa Space Systems、Rezatec、RS Metrics、Bird.i、ESRI、RESTEC、PASCO、天地人

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森林監視・管理

森林の温度や地形を把握することで、火災の監視や違法伐採の監視、植林地選定、病害検知に活かします。

<代表的な企業>
Rezatec、住友林業

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農作物の生育予測・耕作放棄地の発見

農作物の生育状況を把握し、営農計画を効率的に行います。また、耕作放棄地の発見にも衛星データが用いられています。

<代表的な企業>
Planet、FarmShots、Dacom、Satellogic、Astro Digital、Monsanto、eLEAF、珈和科技 (JiaHe Info、ジアホー・インフォ)、日立ソリューションズ、ビジョンテック、ファームシップ、アットビジョン、青森産業技術センター、サグリ

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魚群探査・養殖監視

海水温やプランクトンの発生を監視し、魚群の位置や養殖の様子を予測・把握します。

<代表的な企業>
Raymarine、Digital Globe 、漁業情報サービスセンター、ウミトロン

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インフラ監視

土木建築の劣化や漏水検知など、インフラの状態を監視します。

<代表的な企業>
BlackSky Global、UTILIS、Building Radar、伊藤忠テクノソリューションズ

保険

気候予測から影響の大きい農地に対し条件に応じて保険額を決定、災害の被害状況を衛星データから把握して保険金支払いを迅速化するなど、保険額の支払いに活かすサービスを提供します。

<代表的な企業>
SOMPOホールディングス、三菱総合研究所、東京海上日動火災保険

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株価予測

人工衛星で観測できる光量などの情報から企業の売上状況の予測に活かします。

<代表的な企業>
The Goldman Sachs Group、Orbital Insight

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建設・不動産

建設予定地や空き家の状況をいち早く把握して見立てに活かします。

<代表的な企業>
Bird.i、Orbital Insight、Building Radar

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紫外線・大気汚染情報

紫外線の強さ・大気汚染情報を伝えるサービスを提供します。

<代表的な企業>
Plumelabs、Pola

資産調査

土地の肥沃度や石油残量を予測することで、ファイナンスの審査用のデータとして利用します。

<代表的な企業>
AGRIBUDDY、URSA

地形把握

地形を把握し、正確な地図の作成や植生の分布のモニタリングなどを行います。

<代表的な企業>
UrtheCast、ゼンリン、arbonaut、AABSyS、日立ソリューションズ、宇部興産コンサルタント、アドイン研究所、パスコ

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疫病監視

地上データと組み合わせて、蚊の発生箇所を予測して疫病の感染を監視します。

<代表的な企業>
Dipteron

天気予報

雲の動きや降水量、地形情報などから天気予報、大雨被害予測などに活かします。

<代表的な企業>
GeoOptics、Spire、PlanetOS、Tempus Global Data、IBM、ウェザーマップ、ウェザーニュース

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気候変動監視

気候の変動や環境を監視し、温暖化や海洋の状況把握に役立てます。

<代表的な企業>
EUROSENSE、BlackBridge、Bird.i、RESTEC、三洋テクノマリン、沿岸海洋調査

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防災・防衛

観測データから地上の様子を把握し、防災・防衛に役立てます。

<代表的な企業>
DigitalGlobe、Quadra Pi R2E、パスコ、アジア航測

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人工衛星の利用③「時と場所を選ばずに通信を行う」

Credit : sorabatake

船舶監視

船舶や航空機から発信される電波を観測して、位置監視を行います。

<代表的な企業>
HawkEye、Kleos Space S.A.

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IoT活用

衛星通信を利用したIoTネットワークを提供します。

<代表的な企業>
Kepler、Hiber、Sky and Space Global、Astrocast、Chipsafer、fleet

移動通信

走行中の車や飛行機など、移動中にも大容量の通信サービスを提供します。

<代表的な企業>
JAL、Kymeta、トヨタ自動車

宇宙空間の利用①「地球とは異なる環境下でモノを作る」

Credit : sorabatake

宇宙太陽光発電

雲に邪魔されることのない宇宙空間で太陽の光を受け、発電したエネルギーを地球に伝送します。

<代表的な企業>
清水建設、日本電気硝子

バイオテクノロジー

地球上では実現できない環境を提供します。また、その環境を使って新たな薬や技術の開発を行います。

<代表的な企業>
Space Tango、ペプチドリーム、中外製薬

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宇宙空間の利用②「地球にない資源を獲得する」

Credit : sorabatake

資源探査

化石燃料などの地球上では限りがある資源を、外部天体から獲得することを目指します。

<代表的な企業>
Planetary Resources、Deep Space Industries、iSpace

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宇宙空間の利用③「地球でできない体験をする」

Credit : sorabatake

宇宙葬

故人の遺灰の一部をロケットで打ち上げ、宇宙空間や月面に送るサービスを提供します。

<代表的な企業>
Elysium Space

エンターテイメント

人工流れ星や宇宙遊泳模擬体験など、宇宙空間の特性を活かしたサービスを提供します。

<代表的な企業>
Blue Abyss、ALE、オスカー

拡大が進む宇宙利用(宇宙利用編まとめ)

宇宙を利用したビジネスの例を紹介してきましたが、宇宙利用のすべてを網羅できているわけではありません。また、宇宙分野への民間参入は始まったばかりであり、宇宙を使うからこそできることはまだまだ可能性に満ちているはずです。今後、宇宙をビジネスの手段として利用することが当たり前になる社会になることで、地球で生きる私たちの生活も豊かになっていくに違いないと考えられます。

また、課題という観点から利用事例をまとめたものがこちらです。

通常時と発災時に分けて書いてありますので、余白部分に他にもこのようなユースケースが考えられるのではないか?というものを書き込んでみてください。

★衛星データユースケースマップはこちらからPDFをダウンロードいただけます

通常時のユースケース例
発災時のユースケース例

(5)宇宙ビジネス業界マップ「宇宙探査」と注目企業

宇宙探査 業界マップ Credit : sorabatake

最後にご紹介するのは、人類が宇宙空間へ進出していく活動「宇宙探査」です。

「宇宙探査」は人が宇宙に行く「有人宇宙探査」と、探査機が宇宙で活動する「無人宇宙探査」の2つに分けられます。

「宇宙利用」で紹介したのは地球へのサービスですが、こちらは人類が宇宙空間へ活動エリアを拡げていくためのビジネスになります。

したがって、今すぐにビジネスとして成立するものではありませんが、これまで国家機関だけが担い手であった「宇宙探査」の分野にも民間企業が参入し投資が集まっています。

有人ロケット(スペースプレーン)製造

人を乗せて運ぶために、生命維持装置や人が耐えられる振動条件など特別な設計を行う必要があります。

<代表的な企業>
Virgin Orbit(米)、Stratolaunch Systems(米)、PDエアロスペース(日)、Space Walker(日)

輸送サービスプロバイダー

人や人に付随する物資を宇宙へ運んだり、地球に戻したりするサービスを提供します。

<代表的な企業>
Virgin Orbit(米)、Stratolaunch Systems(米)、SpaceX(米)、PDエアロスペース(日)、Space Walker(日)

宇宙飛行トレーニング

宇宙空間に行くために必要なトレーニングを実施します。

<代表的な企業>
Starfighters(米)、AES(日)

生活必需品の製造

宇宙服、宇宙食など人類が宇宙で暮らすために必要な物の開発と製造を行います。

<代表的な企業>
UTC Aerospace systems(米)、Honeywell Aerospace(米)、Argotec(伊)、Goldwin(日)、Euglena(日)

宇宙旅行

厳しい訓練を積まなくても宇宙まで人を運べる宇宙機を開発し、宇宙旅行の実現を目指します。

<代表的な企業>
Virgin Galactic(米)、Blue Origin(米)、PDエアロスペース(日)、HIS(日)、ANAホールディングス(日)

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宇宙ホテル

将来、人が宇宙で暮らすことを想定し、長期滞在可能な居住空間の開発を目指します。

<代表的な企業>
Axiom Space(米)、Bigelow Aerospace(米)

探査機製造

宇宙空間で観測やサンプルの採取を行う探査機を設計製造する。

<代表的な企業>
Northrop Grumman(米)、AIRBUS(欧)、NEC(日)

惑星探査

化石燃料などの地球上では限りがある資源を、月や小惑星などの外部天体から獲得するなど様々な理由から惑星探査を行います。

<代表的な企業>
Deep Space Industries(米)、Planetary Resources(米)、SpaceIL(以)、TeamIndus(印)

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宇宙の利用環境を整える

宇宙空間の環境提供

月面での実験スペースを提供します。

<代表的な企業>
Moon Express(米)、 PTScientists(独)

通信サービス

月面基地や月面探査の時の月面と地球の通信を提供しています。

<代表的な企業>
PTScientists (Nokia & Vodafone) (欧)

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深宇宙探査拠点(ゲートウェイ)

さらに遠い宇宙まで行くための拠点を建設します。

<代表的な企業>
NASAなど政府機関

宇宙探査分野は民間参入の勢いが続くのか注目(宇宙探査編まとめ)

「宇宙開発」の花形とも言える宇宙探査ですが技術的なギャップが大きく、宇宙ビジネスという視点からみると最もマネタイズが難しい分野とも言えます。

大航海時代人類が新たな大陸の発見を夢見たように、まさに今人類は新たな領域へと生存範囲を広げようとしているのです。

どのようなビジネスモデルを描くのか、投資に見合う結果が出せるのか、最初にビジネスとして成立するのはどこの会社なのか、注目です。

(6)宇宙ビジネス関連銘柄について

宇宙ビジネス銘柄は、海外であればマクサー・テクノロジーズ(MAXR)、ボーイング(BA)、ノースロップ・グラマン(NOC)など、国内であれば、スカパーJSAT(9412)やパスコ(9232)などが挙げられます。

また、宇宙ビジネスのイメージが一般的にはないだろう企業も宇宙ビジネスに参入する企業が増えており、そのような企業としてはマイクロソフト(MSFT)やアマゾン(AMZN)、三井不動産(8801)があります。

また、2019年から2022年までの間に13社の宇宙ベンチャーがSPACを使って、上場を果たしています。

SPACとは何か、また、上場を果たした企業それぞれの説明は「SPAC(特別買収目的会社)ってなに? 宇宙ビジネスでも話題の話題の新しい上場の形とメリット、課題を分かりやすく解説」に、宙畑が注目した4社の業績を分析した内容は「SPAC(特別買収目的会社)上場した宇宙ベンチャーの株価推移と財務状況を徹底分析!」にまとめておりますのでぜひご覧ください。

また、日本においても2023年4月12日にispace、4月26日にRidge-i、12月6日にQPS研究所、そして2024年6月5日にはアストロスケールと4社が上場しています。日本の宇宙ビジネスの行く末にも注目です。

(7) 宇宙ビジネスの将来

宇宙業界マップを「製造・インフラ」「宇宙利用」「宇宙探査」の3つに分けて
更新しました。一見難しいと思われがちな宇宙ビジネスですが、どの分野でもまだまだ可能性があります。

特に、「宇宙利用」は、近年盛んに言われる「ビックデータ」や「IoT」などグローバル規模でのトレンドに合致した分野であり、市場規模はますます広がっていくものと考えられます。「宇宙利用」が盛んになれば、もちろんそれを支える「製造・インフラ」も市場規模が大きくなっていくはずです。

マップを分けていますが、「宇宙探査」も「宇宙利用」「製造・インフラ」の成長に相対的に影響を受けていくと考えられます。
もっと宇宙ビジネスを学びたいという方は、こちらの記事(宇宙ビジネスを学べるおすすめの本・書籍14選)で紹介しているので、せひ参考にしてほしいです。

また、世界の宇宙ベンチャーについてはこちら(宇宙ビジネス×ベンチャー企業一覧アメリカ編 2017)で、日本の宇宙ベンチャーについてはこちら(宇宙開発×ベンチャー企業一覧 日本編 2019)で紹介しています。

今後も新たな産業、企業が参入し拡大していくことが期待される宇宙ビジネスに目が離せません。

【日本の宇宙ビジネス企業に関する記事】

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